和歌山県日高町。青い海を見下ろす坂の上に、人々がゆっくりと集まってくる一軒のカフェがあります。店の名前は、「Coast Cafe 楽」。迎えてくれるのは、故郷へUターンした湯川克巳さんと、妻の由美子さんです。
香り高いコーヒーや紅茶、焼きたてのアップルパイ、ふわふわのホットケーキを味わいながら、窓の向こうに広がる海を眺める――。ここには、慌ただしい日常を少し忘れさせてくれる穏やかな時間が流れています。
克巳さんが長年勤めた会社を早期退職し、夫婦で日高町へ戻ったのは、年老いた母を支えるためでした。しかし、久しぶりに暮らし始めた故郷では、高齢化と人口減少が進み、かつての賑わいが少しずつ失われようとしていました。
「寂しくなっていく町を、少しでも元気にしたい」
その思いから二人が目指したのは、ただ飲み物や料理を提供する店ではありません。地元の人も、遠くから訪れた旅人も、自然に言葉を交わし、笑顔になれる場所でした。
けれど、開業までの道のりには、あまりにも大きな悲しみが待っていました。ニューヨークで暮らしていた長女・奈緒子さんの闘病と別れ。そして、その直後に見つかった克巳さん自身のがん。それでも二人は、家族や仲間に支えられながら、海辺の坂を一歩ずつ上ってきました。
亡き娘を思い出せる場所。懐かしい故郷の記憶を語り合える場所。そして、これから出会う誰かを迎えられる場所。海を望むカフェと新たに始めた宿には、失われた時間を埋めるのではなく、**大切な記憶を抱いたまま、もう一度前へ進むための「居場所」**が生まれています。
今回の『人生の楽園』では、悲しみを乗り越えた湯川さんご夫婦が、コーヒーの香りと海からの風に願いを込めながら、故郷に笑顔の灯りをともしていく物語をたどります。💕
【放送日:2026年7月25日(土)18:00 -18:30・テレビ朝日】
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『Coast Cafe 楽』とは?~海を見下ろす坂の上の居場所~
和歌山県日高町。紀伊水道を見下ろす坂道をゆっくり上っていくと、青い海と空が目の前に広がる一軒のカフェがあります。その名は「Coast Cafe 楽」。
大きな窓の向こうには、季節ごとに表情を変える海。店内にはコーヒーの香りがやさしく漂い、こだわりの紅茶や手づくりのアップルパイ、人気の「坂の上のふわふわホットケーキ」を楽しみながら、時間を忘れてくつろぐことができます。
最近ではゲストハウスも始まり、海辺の景色をゆっくり味わいながら一泊する人も増えました。旅人だけでなく、地元の人もふらりと立ち寄り、思い思いの時間を過ごしています。
ここには、特別な催しが毎日あるわけではありません。窓の外の海を眺めながらコーヒーを飲む人。久しぶりに顔を合わせた人同士が、昔話に花を咲かせる人。初めて訪れた旅人が、店主との何気ない会話に笑顔になる人。そんな何気ない時間が、このカフェには静かに積み重なっています。
だからでしょうか。「Coast Cafe 楽」を訪れた人は、「海がきれいだった」という思い出だけではなく、「また来たい」という気持ちを胸に帰っていくといいます。
それは景色の美しさだけでは説明できない、この場所ならではの温もりがあるからなのかもしれません。なぜ、この坂の上のカフェには、こんなにも自然と人が集まるのでしょう。その答えは、店を営む湯川克巳さんと由美子さんが歩んできた人生の中に、静かに息づいていました。
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故郷へ帰るという決断~母と町を思ったUターン~
人生には、答えが見えないまま決断しなければならない時があります。どちらを選んでも何かを失うように思えたり、「これで本当に良かったのだろうか」と何度も自分に問いかけたり。そんな経験は、多くの人にあるのではないでしょうか。
湯川克巳さんにとって、その時が訪れたのは60歳を迎えようとしていた頃でした。大学進学を機に故郷・和歌山県日高町を離れ、関東のIT企業でネットワークやセキュリティ分野の営業として長年働いてきた克巳さん。由美子さんと出会い、三人の子どもに恵まれ、家族とともに歩んできました。
一方、故郷では高齢の母が一人で暮らしていました。「長男としては、帰らなければ…。」その思いは年々大きくなり、会社を早期退職して夫婦で故郷へ戻ることを決意します。もちろん、それは簡単に答えを出せる選択ではありませんでした。
長年築いてきた仕事や暮らしを離れることへの迷いもあったでしょう。それでも二人は、「今、自分たちにできること」を考え続けた末に、故郷で新しい人生を始める道を選びました。しかし、帰ってきた日高町で目にしたのは、少しずつ静かになっていく故郷の姿でした。
人が減り、かつて当たり前だった賑わいも少しずつ遠ざかっていく――。だからこそ克巳さんは思います。
「寂しくなっていく町を、少しでも元気にしたい。」
その願いは、一軒のカフェを開くという夢へと、静かにつながっていきました。
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夢の途中で訪れた別れ~奈緒子さんと家族の時間~
新しい人生へ向かって歩き始めたその道が、いつも思い描いた通りに続くとは限りません。カフェの準備を進めていた頃、湯川さん夫妻のもとへ、大きな知らせが届きます。
ニューヨークで暮らしていた長女・奈緒子さんが、重い病を患ったのです。二人は何度も海を越え、娘の治療を支えました。その一方で、故郷ではカフェのリフォーム工事も進んでいました。喜びへ向かう時間と、大切な人を案じる時間。まったく違う二つの時間が、同じ日々の中を流れていたのです。
2017年、多くの人の支えを受けながら「Coast Cafe 楽」はオープンしました。しかしその後、奈緒子さんは家族に見守られながら、その生涯を閉じます。どれほど悲しかったかは、きっと言葉では表せません。それでも朝は訪れ、人は生きていきます。
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それでも扉を開ける~病を越えて始まった新しい日々~
娘との別れを胸に抱えながら歩き始めたご夫婦に、今度は克巳さん自身の病が見つかります。どれほど不安だったのか、その胸の内はご本人にしか分かりません。それでも、二人は立ち止まり続けることはありませんでした。
治療を受けながら、体と向き合い、少しずつ日常を取り戻していきます。店では、いつものようにコーヒーの香りが漂い、海を眺めながら語り合う人たちの笑顔があります。
地元の人がふらりと立ち寄り、旅人が新しい出会いを楽しみ、イベントの日には笑い声が響く。その一つひとつの時間が、ご夫婦にとっても新しい力になっていったのかもしれません。
人生には、自分ではどうにもならない出来事があります。それでも、人は誰かと支え合いながら、今日という一日を積み重ねていきます。「Coast Cafe 楽」の扉が今日も静かに開くのは、そんな何気ない一日を大切にしてきた二人の歩みがあるからなのでしょう。
CoastCafe楽
- 和歌山県日高郡日高町志賀3820
- TEL:0738-64-2659
- 営業時間:11:30~16:00
- 営業日:土・日・月曜
- URL:https://coast-cafe-gaku.p-kit.com/
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故郷に、もう一つの居場所を~海辺のカフェ宿がつなぐ未来~
「Coast Cafe 楽」には、今日もさまざまな人がやって来ます。海を眺めながら静かな時間を過ごす人。久しぶりに会った友人と笑い合う人。旅の途中で立ち寄り、この町の景色に心をほどく人。それぞれ訪れる理由は違っても、不思議とこの場所には穏やかな時間が流れています。
それはきっと、湯川克巳さんと由美子さんが、自分たちの人生の中でさまざまな喜びや迷い、そして試練と向き合いながら、一日一日を大切に積み重ねてきたからなのでしょう。
人生は思い通りにならないことがあります。「これでいこう」と決めたその先に、思いがけない出来事が待っていることもあります。それでも人は、誰かと支え合いながら、また次の一日を歩き始めます。だからこそ、このカフェには人を安心させる空気が流れているのかもしれません。
故郷の人にとっては、気軽に立ち寄れるもう一つの居場所。旅人にとっては、また帰って来たくなる海辺の宿。そして湯川さん夫妻にとっても、大切な人との思い出を胸に抱きながら、新しい出会いを迎える場所。「Coast Cafe 楽」は、人が人を思い、支え合うことの温かさを静かに教えてくれる場所でした。
