父性はどこから生まれる?|わが子を抱く父親に起きる驚きの変化【フロンティア】

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赤ちゃんが生まれた瞬間に母親は母親になるのでしょうか?では、父親はいつ父親になるのでしょうか? 初めてわが子を抱いた時。小さな手を握った時。夜泣きで眠れない夜を過ごした時――。きっと「父親になった!」と感じる瞬間は、人それぞれ違うのかもしれません。

しかし近年の研究から、父親になった男性の体や脳には思いがけない変化が起きていることが分かってきました。育児に積極的に関わる父親ほど変化するホルモンや脳の働き。さらに、子育てに奮闘するサルやカエルの姿から見えてきた父性のルーツ。

「父性」は生まれつき備わったものなのか。それとも、わが子と向き合う中で育まれていくものなのか。NHK「フロンティア」は、最新研究と進化の視点から、人間の中に眠る「父性の力」に迫ります。

【放送日:2026年6月9日(火)22:40 -23:40・NHK-BSP4K】
【放送日:2026年6月12日(金)14:00 -15:00・NHK-BSP4K】

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父親はいつ父親になるのか?「父性」という不思議な力

「父親になりました。」そんな言葉はよく聞きます。けれど、父親になる瞬間とはいつなのでしょうか? 子どもを授かったと知った時でしょうか? 出生届を提出した時でしょうか? それとも、初めてわが子を腕に抱いた時でしょうか?

母親の場合、妊娠や出産を通して、自分の身体の変化とともに新しい命の存在を実感していきます。一方で父親は、同じような身体的な経験をするわけではありません。だからこそ、「父親になった」という実感は、母親とは少し違う形で訪れるのかもしれません。

昔から父親は家族を守り、働き、子どもを育てる存在と考えられてきました。しかし、その「父性」がどこから生まれるのかは長い間よく分かっていませんでした。ところが近年の研究によって、父親になった男性の体や脳には実際にある変化が起きることが分かってきたのです。

つまり”父性”は、単なる社会的な役割や責任感だけではないのかもしれません。私たちの中には、わが子を守り、育てようとする力が生物として備わっている可能性があります。

では、その不思議な力はいつ芽生え、どのように育っていくのでしょうか? 最新の研究は、人間の中に眠る「父性」の正体に少しずつ迫り始めています。

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わが子を抱くと脳が変わる?父親の体に起きる変化

父親になると変わるのは、気持ちだけではありません。近年の研究では、育児に積極的に関わる父親の体や脳にも変化が起きることが分かってきました。特に注目されているのがホルモンの変化です。

男性ホルモンとして知られるテストステロンは、競争心や攻撃性と関わることが知られています。ところが父親になり育児に深く関わる男性では、このテストステロンの値が低下する傾向があることが報告されています。一方で、人との絆や愛着に関係するとされるオキシトシンは増加しやすくなると考えられています。

こうした変化は、子どもを守り育てる行動を後押ししているのかもしれません。さらに脳の研究では、赤ちゃんの泣き声や表情に反応する領域の活動が変化することも分かってきました。つまり父親の脳は、わが子と接する中で少しずつ「育児モード」へと変わっていく可能性があるのです。

もちろん、こうした変化はスイッチを押したように突然起きるわけではありません。初めて抱っこした日。夜泣きで起こされた夜。一緒に遊び、一緒に笑った時間。そうした日々の積み重ねの中で、父親の体と脳は少しずつ変化していくのかもしれません。

父性とは、子供が生まれた瞬間に完成するものではない。わが子と過ごす時間の中で育まれていく力なのかもしれません。

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母性と父性はどう違う?共通点と違いを探る

父性について考える時、自然と気になるのが「母性」との違いです。
私たちは普段、「母性本能」という言葉はよく耳にします。しかし、「父性本能」という言葉はあまり使われません。それは母親が妊娠や出産を通じて子どもと深く結びつく一方で、父親は少し離れた場所から子どもを迎える存在だと考えられてきたからかもしれません。

確かに、妊娠や出産は女性の身体に大きな変化をもたらします。胎動を感じ、出産を経験し、授乳を行う。こうした経験は、母親と子どもの間に特別なつながりを生み出していくのでしょう。

一方で父親は、同じ体験を共有することはできません。しかし近年の研究は、父親にもまた独自の変化が起きていることを示しています。わが子の泣き声に敏感になること。抱っこを繰り返すこと。一緒に過ごす時間が増えること。その積み重ねが、父親の脳や行動にも影響を与えていくのです。

つまり母性と父性は、まったく別のものではなく、「子どもを守り育てたい」という共通の願いを持ちながら、それぞれ異なる道筋をたどって育まれていく力なのかもしれません。

母親は子どもを育てながら母親になっていく。父親もまた、子どもと向き合いながら父親になっていく。その形は違っても、親になっていく過程そのものには、どこか共通するものがあるように思えます。

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サルもカエルも子育てする?動物たちの父性の世界

父性は人間だけの特別な能力なのでしょうか? 実は生き物の世界を見渡すと、父親が子育てに深く関わる例は決して珍しくありません。鳥類では、オスとメスが協力して卵を温め、ヒナを育てる種が数多く知られています。

一方で、カエルの仲間には、父親が卵を守ったり、オタマジャクシを安全な場所へ運んだりする種もいます。さらに人間に近い霊長類の中には、父親が子どもを抱きかかえたり、一緒に行動したりすることで成長を支える種も確認されています。

こうした姿を見ると、「子育ては母親の役割」という考え方は、生き物全体から見ると必ずしも当たり前ではないことが分かります。では、なぜ父親が子育てをするのでしょうか?

その答えは種によって異なりますが、共通しているのは「わが子を生き残らせる」という目的です。父親が協力した方が子どもの生存率が高まる環境では、子育てに関わる行動が進化の中で受け継がれてきました。人間の父性もまた、こうした長い進化の歴史の中で育まれてきた力なのかもしれません。

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なぜ人類は父親も育児をするのか?進化から見た父性

生き物の世界を見渡すと、父親が子育てに深く関わる種もあれば、ほとんど関わらない種もいます。では、人類はなぜ父親も育児を担うようになったのでしょうか?

その理由のひとつとして考えられているのが、人間の子どもが非常に長い時間をかけて成長することです。多くの動物は、生まれてから比較的短期間で自立していきます。しかし人間の子どもは、歩けるようになるまでに約1年、社会の中で一人前になるまでにはさらに長い年月を必要とします。

そのため母親ひとりだけで子どもを育てるよりも、父親や家族、仲間たちが協力した方が、子どもが生き残る可能性は高まります。人類は長い進化の過程で、そうした協力による子育ての仕組みを発達させてきたと考えられています。

近年の研究では、育児に関わる父親の脳やホルモンに変化が起きることも分かってきました。つまり父性は、単なる社会的な役割ではなく、人類が長い時間をかけて育んできた能力のひとつなのかもしれません。

もちろん父親のあり方は人それぞれです。しかし、わが子を守りたい、成長を見届けたいという気持ちは、多くの父親たちに共通するものではないでしょうか。そう考えると父性とは、生まれながらに完成されたものではなく、子どもとともに育まれていく力なのかもしれません。

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父性はどこから生まれる?わが子が育てる父親という存在

父性とは、生まれつき備わった本能なのでしょうか? それとも、子どもと過ごす時間の中で育まれていくものなのでしょうか? 最新の研究は、父親の脳や体に変化が起きることを示しています。また進化の視点から見れば、父親が育児に関わることは人類という種の生存にとって大きな意味を持っていたのでしょう。

けれど、それだけでは語り尽くせないものもあります。初めてわが子を抱いた日のこと。眠れない夜をともに過ごしたこと。転びながら歩く姿を見守ったこと。子どもと過ごした何気ない時間は、子どもの成長だけでなく、父親自身にも少しずつ変化をもたらしていきます。

守るつもりだったのに、気づけば支えられていた。教えるつもりだったのに、気づけば教えられていた。育てているつもりだったのに、自分もまた育てられていた。そんな経験をした父親は少なくないのではないでしょうか。

父性は、ある日突然完成するものではありません。子どもと向き合い、ともに時間を重ねる中で少しずつ育っていくものなのかもしれません。そしてその過程では、父親が子どもを育てるだけでなく、子どももまた父親を育てているのでしょう。

父性とは、親から子への一方通行の力ではない。親と子がともに育ち合う中で生まれる、不思議で温かな力なのかもしれません。

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