生でシャキッ、火を入れればとろり|新玉とは何が違う?北見のたまねぎ「真白」【食彩の王国】

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春先、スーパーの野菜売り場に新玉ねぎが並び始めると、ちょっとうれしくなります。薄くスライスして、鰹節をぱらり。ポン酢やドレッシングをかければ、それだけで一品になる。普通の玉ねぎなら炒めたり煮込んだりするところを、新玉ねぎだけは「今日は生で食べよう」と思わせてくれます。

そんな新玉ねぎにもよく似た、不思議な玉ねぎが北海道にあります。名前は――「真白(ましろ)」。日本一の玉ねぎ産地として知られる北海道北見市で生まれた、外皮まで真珠のように白い玉ねぎです。

水分をたっぷり含み、シャキシャキ。辛みが少なく、フルーツを思わせるような甘みがあり、水にさらさずそのまま生で味わえるといいます。……となると、ちょっと気になりませんか?

「それ、新玉ねぎとは何が違うの?」

見た目も白い。瑞々しい。生で食べられる。なんだか新玉ねぎによく似ています。けれど「新玉ねぎ」が特定の一品種を指す名前ではないのに対して、「真白」は白玉ねぎの品種のひとつ。しかも北見では、夏の短い時期に出会える玉ねぎです。

そして「真白」の面白さは、その白さや生で食べられることだけではありません。生なら、シャキッ。火を入れれば、甘みがぐっと増していく。

イタリアンでは旬の北海しまえびと出会い、町中華では冷やし担々麺の上にどっさり。和食の料理人は夏のタラと天ぷらにし、さらには「生がおいしい」という真白を、あえてじっくり加熱して和風オニオングラタンに仕立てます。

考えてみれば、玉ねぎという野菜は不思議です。生で食べれば、シャキシャキとした歯ざわり。フライパンで炒め始めれば、まだ何を作るとも言っていないのに、台所に漂う香りだけで、「今日はカレーかな?」なんて思わせてしまう(笑)。さらに火を入れれば甘くなり、煮込めば姿を消しながら、料理全体の味を支えてくれます。

いつもは肉や魚の隣にいる、名脇役。ところが北見の夏、その玉ねぎが堂々と主役になります。今回の『食彩の王国』をきっかけに、「新玉ねぎとは何が違う?」という素朴な疑問から、北見生まれの「真白」の白さを守る畑、そして料理人たちが見つけた新しいおいしさまで、一枚ずつ皮をむくように訪ねてみましょう。

【放送日:2026年8月22日(土)9:30 -9:55・テレビ朝日】

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  1. 新玉みたいで、新玉じゃない?──北見の「真白」は何が違う?
    1. そもそも「新玉ねぎ」は品種の名前ではない
    2. 真白の個性は「白さ」と「シャキシャキ」
    3. 「生で食べてみたい」と思わせる玉ねぎ
  2. 玉ねぎ王国は、なぜ「白」を選んだ?──北見に生まれた夏の一玉
    1. 北見には、すでに「いつもの玉ねぎ」があった
    2. 一年を支える玉ねぎとは違う「夏の一玉」
    3. 「保存する玉ねぎ」から「今を味わう玉ねぎ」へ
  3. 玉ねぎなのに「日焼け厳禁」!?──真夏の畑で白さを守る
    1. 北海道なのに、暑い
    2. なぜ玉ねぎが日に焼ける?
    3. 手のかかる「真白」
    4. 「白」は、おいしさの前に届くもの
  4. 生で食べたい!──シャキシャキ「真白」が北見の料理を変える
    1. 北海しまえびの隣でも、ちゃんと主役
    2. 【自然なワインと自然な地元食材を味わうイタリアン】ピッツァとパスタ イル・ドーノ
    3. 担々麺の上に、真白をどっさり
    4. 【本格中華が気軽に味わえる】居酒屋中華 はっちゃき
    5. 玉ねぎは、料理の中で何役できる?
    6. それなら、もっと火を入れたら?
    7. 【四季の移ろいと旬を味わう本格懐石】割烹 うめ笹
  5. 生でも、焼いても、煮込んでも──「真白」が教えてくれた玉ねぎの底力
    1. 生と加熱で、まるで違う野菜になる
    2. 玉ねぎは、姿を消してもそこにいる
    3. でも、ときどき主役になってみる
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新玉みたいで、新玉じゃない?──北見の「真白」は何が違う?

真っ白で、みずみずしい。辛みが少なく、そのまま生で食べればシャキシャキ。
北見生まれの玉ねぎ「真白」の特徴を聞いて、こんなことを思った人もいるのではないでしょうか。

「……それ、新玉ねぎと何が違うの?」

確かに、よく似ています。春先に出回る新玉ねぎも、みずみずしくて柔らかく、辛みが弱いので生食向き。薄くスライスして、鰹節とポン酢をかけるだけでも、いくらでも食べられそうです。

では、「真白」は単に北海道でつくられた新玉ねぎなのでしょうか? 実は、ここには少しだけ違う話があります。

そもそも「新玉ねぎ」は品種の名前ではない

私たちが普段「新玉」と呼んでいるものは、一つの品種につけられた名前ではありません。農林水産省によると、一般的な玉ねぎは収穫後に乾燥させてから出荷されるのに対し、新玉ねぎは春先に出回る早生種を収穫後すぐに出荷したもの。そのため水分が多く、柔らかくて辛みも弱い。生で食べるのにも向いています。

一方、「真白」は北見地方で生産される白玉ねぎの品種の一つ。JAきたみらいでは7月中旬から8月に出荷される、夏の短い期間にしか出会えない玉ねぎです。つまり、

「新玉ねぎ」は収穫時期や出荷方法などから呼ばれる名前。
「真白」は玉ねぎそのものの品種。

まず、ここが違います。でも――。これだけじゃ、まだ納得できませんよね(笑)。名前の分類じゃなくて、食べたら何が違うの? 結局のところ知りたいのは、そっちです。

真白の個性は「白さ」と「シャキシャキ」

普通の黄玉ねぎも、茶色い薄皮をむけば中身は白。それなら「真白」なんて名前をつけるほど違うのでしょうか?

違うのは、まず外側です。一般的な黄玉ねぎは黄銅色の薄皮に包まれていますが、真白はその名の通り、外から白い。まるで真珠のような白さが、この玉ねぎの大きな特徴です。

そして食べれば、もう一つの個性があります。シャキシャキとした食感。しかも辛みが少なく、水にさらさなくてもそのまま生でおいしく食べられるといいます。

一方、新玉ねぎについて農水省が挙げている特徴は、柔らかさと辛みの弱さ。どちらも、みずみずしく辛みが穏やかで、生食に向いている。だから食べ方はよく似ています。

けれど真白は、外から白い見た目と、噛んだときのシャキシャキ感。そこに、この玉ねぎならではの個性がありそうです。

「生で食べてみたい」と思わせる玉ねぎ

玉ねぎというと、子どものころは苦手だった人もいるでしょう。あのツンとした辛み。鼻へ抜ける独特の刺激。大人でも、生の玉ねぎはちょっと……という人はいます。その点、辛みの少ない真白なら、「玉ねぎを生で食べるのは苦手」という人にも、少し入口が広いのかもしれません。

もちろん、「子どもに好まれる」とまでは資料から断定できません。でも、辛みが少なく、水にさらさなくても食べられるという特徴を考えれば、「これなら生で食べてみようかな」と思わせてくれる玉ねぎではありそうです。

そして面白いことに、この真白。生で食べるためだけにつくられた玉ねぎではありません。煮てもいい。焼いてもいい。火を通せば、玉ねぎらしい甘みがさらに顔を出します。

生でシャキッ。火を入れれば甘くなる。新玉ねぎによく似ているようで、やっぱり少し違う。その真っ白な一枚目の皮をむいたところで、次に気になってくるのは――なぜ、日本一の玉ねぎ産地・北見が、わざわざこんな白い玉ねぎをつくったのか。ということです。

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玉ねぎ王国は、なぜ「白」を選んだ?──北見に生まれた夏の一玉

「真白がおいしいのは分かった。でも――」
ここでもう一つ、素朴な疑問が浮かびます。なぜ、わざわざ新しい玉ねぎをつくる必要があったのでしょう?

だって北見は、もともと日本を代表する玉ねぎ産地です。私たちが普段スーパーで買っている、茶色い皮に包まれた玉ねぎ。炒めれば甘くなり、煮込めばカレーやシチューに旨みを加え、長く保存することもできる。それで十分ではないか。そう思ってしまいます。

北見には、すでに「いつもの玉ねぎ」があった

北見地方で玉ねぎの試作が始まったのは1917(大正6)年。その後、栽培技術の確立や機械化、選別施設の整備などを重ね、日本有数の玉ねぎ産地へ成長してきました。
明治時代に開拓使がアメリカから種子を輸入し、「青年よ大志を抱け」で有名なクラーク博士のいた札幌農学校で品種改良しながら、北海道全域に広がったのが日本の玉ねぎ栽培の発祥だといわれています。

JAきたみらい管内は、全国的にも日照時間が長く、降水量が少ない地域。そこで育つ玉ねぎは球の締まりがよく、加熱すると甘みが増すのが特徴です。さらに北見の強みは、たくさん作れることだけではありません。さまざまな品種を組み合わせることで、8月から翌年6月ごろまで長く出荷できる体制を築いてきました。

つまり北見にはすでに、一年の食卓を支える玉ねぎがあったのです。それなのに、なぜ「真白」だったのでしょう。

一年を支える玉ねぎとは違う「夏の一玉」

「真白」が販売され始めたのは2007年。最初はわずか3人ほどの生産者から始まり、その後も決して大量生産される玉ねぎにはなりませんでした。ホクレンの取材では2022年時点でも生産者は19人。北海道全体の玉ねぎ生産量から見れば、ごくわずかな量しか出荷されていないと紹介されています。

しかも、真白は普通の玉ねぎより手がかかります。表面が柔らかく、衝撃に弱い。発芽する力もやや弱く、苗を育てる段階から丁寧な温度管理が必要です。実が柔らかく傷つきやすいため、一つひとつ手作業で収穫していた年もあります。

そこまで手をかけて育てても、出荷できるのは7月中旬から8月という短い期間です。一年中、たくさん売るための玉ねぎではない。むしろ真白は、「夏の今だから食べてほしい玉ねぎ」なのでしょう。

「保存する玉ねぎ」から「今を味わう玉ねぎ」へ

ここに、真白の面白さがあるように思います。北見の玉ねぎ産地が長い年月をかけて磨いてきたのは、品質のよい玉ねぎを安定して全国へ届ける力でした。

真白は、そこから少し違う方向を向いています。真っ白な姿。辛みの少なさ。たっぷりの水分。そして、生で噛んだときのシャキシャキとした食感。ホクレンは真白を、夏の主役として楽しんでほしい「プレミアム」な白玉ねぎとして紹介しています。

方向性としてはいわゆる”ブランド玉ねぎ”です。いつもの玉ねぎに取って代わるものではありません。カレーにも、肉じゃがにも、炒め物にも使われながら、一年の食卓を支える黄玉ねぎには黄玉ねぎの役割がある。その一方で、「夏には、こんな玉ねぎもありますよ」と食卓にもう一つの楽しみを増やしてくれるのが、真白なのかもしれません。

日本一の玉ねぎ産地だから、今までの玉ねぎを捨てて新しいものをつくったのではない。むしろ、ずっと玉ねぎをつくってきた土地だからこそ、「玉ねぎには、まだ別のおいしさがある」と探してみた。そう考えると、真白の白さが少し違って見えてきます。

ただし、その美しい白さは、育ててしまえば勝手に守られるものではありません。白いからこそ、目立ってしまうものがある。なんと玉ねぎにも――「日焼け」があるのです。

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玉ねぎなのに「日焼け厳禁」!?──真夏の畑で白さを守る

「真白」というくらいですから、やっぱり白くなければ困ります。ところが、その白さを守るために生産者を悩ませるものがあります。それが――日焼け。

人間なら「今年も焼けちゃった」で済むかもしれませんが、「真白」にとってはそうはいきません。なんといっても、真珠のような白さも商品の大切な個性。ブランド玉ねぎとして売り出す以上、味がおいしいだけではなく、その美しい姿まで守らなければならないのです。

北海道なのに、暑い

北海道の夏と聞くと、「カラッとして涼しそう」というイメージを持っている人もいるかもしれません。40年前なら夏でも「北海道で30℃を超える日はない!」などと言われていました。けれど近年の北海道では、厳しい暑さに見舞われる年も珍しくなくなりました。JAきたみらいの広報でも、2023年には玉ねぎの「日焼け」が気象災害として発生したことが報告されています。

今回『食彩の王国』に登場する生産者・齊藤翔平さんも、真白の白さを守るため、巨大な重機まで導入して日焼け対策に取り組んでいるといいます。玉ねぎを育てるために巨大な重機。いったい何をするのでしょう?

なぜ玉ねぎが日に焼ける?

玉ねぎは収穫期が近づくと、葉が倒れて球の部分が見えやすくなります。そこへ真夏の強い日差しと高温が重なれば、露出した玉ねぎが影響を受けることがあります。普通の黄玉ねぎだって日焼けは品質低下につながります。まして真白は、外側まで白いことが大きな特徴です。

JAきたみらいも真白を「見た目は名前の通り真っ白」と紹介しています。白い肌に焼けたような色や傷みが現れれば、その個性そのものが損なわれてしまいます。だから齊藤さんは、畑で育てるだけでは終わらない。収穫するその瞬間まで、「白」を守る。そこまでが真白づくりなのでしょう。

手のかかる「真白」

考えてみれば、ずいぶん手のかかる玉ねぎです。辛みが少ない。みずみずしい。生で食べればシャキシャキ。そして見た目は美しい純白。食べる側には魅力的な特徴ばかりですが、生産する側から見れば、その魅力を一つも失わないように畑から送り出さなければなりません。

しかも真白は、一般的な黄玉ねぎより実が柔らかく、少しの衝撃でも傷つきやすい玉ねぎです。過去には機械収穫ではなく、一つずつ手作業で収穫していたこともJAきたみらいから紹介されています。選果や箱詰めでも、柔らかな実を傷つけないよう丁寧に扱われます。

日に焼かない。傷つけない。それでも夏の短い期間に、できるだけ品質のよいものを届けたい。スーパーで白い玉ねぎを一個手に取っただけでは、そんな苦労まではなかなか見えてきません。

「白」は、おいしさの前に届くもの

野菜なのだから、味がおいしければそれでいい。そう思いたくもなります。でも私たちが売り場で野菜を選ぶとき、最初に味見することはできません。まず見るのは、姿です。

白い。きれい。みずみずしそう。おいしそう。その第一印象があって、初めて手が伸びます。だから真白にとって「白さ」は、単なる飾りではないのでしょう。生産者が畑で守った白さは、食べる人が真白と出会う最初の入口でもあります。

もっとも――。ここまで苦労して守った真っ白な玉ねぎ。眺めているだけでは、もったいない(笑)。せっかく辛みが少なく、シャキシャキしているのですから、まずは生で、かじってみたくなります。北見の料理人たちも、この夏だけの玉ねぎを放ってはおきません。次は畑から厨房へ。真白が、いよいよ皿の真ん中に出てきます。

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生で食べたい!──シャキシャキ「真白」が北見の料理を変える

ここまで「真白」がどんな玉ねぎなのか、その白さをどうやって守っているのかを見てきました。でも、玉ねぎです。いつまでも畑で眺めているわけにはいきません(笑)。そろそろ、食べましょう。

辛みが少なく、水分をたっぷり含んだ「真白」。その持ち味をいちばん素直に楽しむなら、やっぱり生です。薄く切って口に入れれば、シャキッ。噛めば、みずみずしさと甘みが広がります。

新玉ねぎを見つけると、つい薄くスライスして鰹節をのせ、ポン酢をかけたくなる人なら、「ああ、これは生で食べたい」と思うのではないでしょうか。ところが北見の料理人たちは、そこからもう一歩先へ進みます。

北海しまえびの隣でも、ちゃんと主役

北見市のイタリアンシェフ・加藤誠さんも、「真白」に惚れ込んだ料理人の一人です。合わせるのは、同じオホーツクの夏の味覚である北海しまえび。色鮮やかな北海しまえびに、真っ白な玉ねぎ。見た目にも北海道の夏らしい組み合わせですが、大切なのはやはり食感です。

真白のシャキシャキ感を生かすことで、海の幸にもう一つの歯ざわりが加わります。考えてみれば、ここでも玉ねぎは面白い立場にいます。普通なら魚介料理に添えられる野菜。けれど「真白」の場合、このシャキシャキをどう食べさせるか。そこから料理が始まっているように見えるのです。
玉ねぎが、脇役から少し前へ出てきました。そして次の料理では――もう遠慮しません。

シャキシャキ!ジューシー!「真白」グルメ(出典:テレビ朝日)
シャキシャキ!ジューシー!「真白」グルメ(出典:テレビ朝日)

【自然なワインと自然な地元食材を味わうイタリアン】ピッツァとパスタ イル・ドーノ

担々麺の上に、真白をどっさり

町中華の店主・八木澤正雄さんがつくるのは、冷やし担々麺。その上に、薄くスライスした真白をどっさり盛りつけます。これは、食べてみたい。担々麺といえば、胡麻のコクや肉味噌、ラー油の辛さと香りが重なった、かなり力強い料理です。そこへ、みずみずしくシャキシャキした真白。

濃厚な味の中で、生の玉ねぎの食感が入れば、ひと口ごとに口の中を切り替えてくれそうです。しかも普通の生玉ねぎをこれだけ盛ったら、「ちょっと辛すぎない?」と心配になりそうなところ(笑)。

冷やし担々麺(出典:テレビ朝日)
冷やし担々麺(出典:テレビ朝日)

辛みが穏やかで、そのまま食べられる真白だからこそ、玉ねぎそのものを具としてたっぷり食べるという発想が生まれるのでしょう。薬味ではありません。飾りでもありません。担々麺の上で、「今日は私を食べなさい」と言わんばかりの存在感です(笑)。

【本格中華が気軽に味わえる】居酒屋中華 はっちゃき

玉ねぎは、料理の中で何役できる?

八木澤さんは、真白をシュウマイにも使います。こちらでは生のシャキシャキとは反対に、じっくり火を通して甘みを引き出します。同じ一個の玉ねぎなのに、生なら、瑞々しい食感をつくる。火を入れれば、甘みをつくる。細かくすれば、ほかの食材と一体になって料理を支える。

シュウマイ(出典:Googleマップ)
シュウマイ(出典:Googleマップ)

玉ねぎが長く私たちの食卓にいる理由は、案外こんなところにあるのかもしれません。何にでも使えるから、いつも冷蔵庫や野菜かごにいる。カレーを作るときも。ハンバーグを作るときも。炒め物にも、スープにも。あまりに当たり前にいるので、わざわざ、「今日の主役は玉ねぎです」なんて考えることはありません。

ところが「真白」は、その当たり前を少しひっくり返します。生で食べておいしいから、たっぷり使える。シャキシャキしているから、その食感自体が料理になる。そして火を入れれば、今度は違う甘さが現れる。玉ねぎって、こんなに表情の多い野菜だったんだ。北見の料理人たちが真白で遊んでいるのを見ていると、そんな当たり前のことを思い出します。

それなら、もっと火を入れたら?

でも――。ここで一人の料理人が、さらに先を考えました。「真白は生がおいしい」それがこの玉ねぎの魅力なら、生食のおいしさを伸ばしていくのが普通でしょう。

ところが北見の「割烹 うめ笹」の店主・梅田隆弘さんは、反対方向へ向かいます。生がおいしい玉ねぎを、あえてじっくり火にかけたらどうなるのか? 玉ねぎは、加熱するほど甘みを見せてくれる野菜です。ならば、もともと甘みのある真白をじっくり加熱したら――。そこには、生産者の齊藤翔平さんさえ驚く、まだ知らなかった「真白」の顔が待っていました。

和風オニオングラタン(出典:テレビ朝日)
和風オニオングラタン(出典:テレビ朝日)

【四季の移ろいと旬を味わう本格懐石】割烹 うめ笹

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生でも、焼いても、煮込んでも──「真白」が教えてくれた玉ねぎの底力

最初に「真白」の特徴を聞いたとき、気になったのは新玉ねぎとの違いでした。白くて、みずみずしい。

辛みが少なく、生で食べられる。それなら新玉ねぎと何が違うのだろう、と。けれど北見の畑から料理人たちの厨房まで見てくると、いつの間にか別のことが気になってきます。そもそも玉ねぎって、ずいぶん不思議な野菜ではないでしょうか。

生と加熱で、まるで違う野菜になる

生の玉ねぎには、独特の辛みがあります。だから普通の玉ねぎをサラダなどに使うときには、辛みを和らげるために水にさらしたりなどのひと手間を加えることもあります。ところが「真白」は、その辛みが少ない。

薄く切れば、シャキシャキとした食感とみずみずしさをそのまま楽しめます。北見の料理人たちが、北海しまえびと合わせたり、冷やし担々麺の上にどっさり盛ったりするのも、この個性があるからでしょう。

ところが、火を入れるとまた違う。シュウマイに使えば、加熱によって玉ねぎの甘みが引き出される。そして「割烹 うめ笹」の梅田隆弘さんは、天ぷらや和風オニオングラタンという料理から、真白の別の可能性を探ります。生でおいしいから、生だけで食べる必要はない。むしろ生がおいしい玉ねぎだからこそ、「火を入れたら、どんな顔になるのだろう?」料理人なら、試してみたくなるのかもしれません。

玉ねぎは、姿を消してもそこにいる

考えてみれば、普段の料理でも同じです。カレーを作ろうと、刻んだ玉ねぎをフライパンで炒め始める。まだ肉も入れていない。ルーなんてもちろん入れていない。それなのに、漂ってくる香りだけで、「今日はカレー?」と分かってしまうことがあります(笑)。

さらに煮込んでいけば、あれほど存在感のあった玉ねぎは、やがて形が分からなくなっていきます。でも、なくなったわけではありません。甘みや旨みとなって、料理の中にちゃんと残っている。

生なら、自分の食感を堂々と主張する。加熱すれば、甘くなる。そして煮込まれれば、自分の姿を消しながら料理全体を支える。前へ出ることも、後ろへ下がることもできる。玉ねぎが「名脇役」と呼ばれるとしたら、そんなところなのかもしれません。

でも、ときどき主役になってみる

そんな玉ねぎが、北見の夏には主役になります。名前は「真白」。真珠のような白さを守るため、畑では日焼けさせないように気を配る。傷つきやすい玉を丁寧に扱う。

そうして送り出された一玉を、今度は料理人たちが、生で、揚げて、蒸して、じっくり火を入れて、さまざまな料理へ変えていきます。いつも料理の中にいるのに、普段はあまり意識することのない玉ねぎ。「真白」という少し変わった玉ねぎを追いかけたことで、むしろいつもの玉ねぎのおいしさまで見えてきたような気がします。

最初に抱いた疑問は、「真白って、新玉ねぎとは何が違うの?」でした。もちろん違いはあります。「真白」は品種の名前。新玉ねぎは、一つの品種を指す名前ではありません。見た目も、食感も、それぞれに個性があります。

でも最後に残ったのは、どちらが上かという話ではありませんでした。新玉には、新玉のおいしさがある。真白には、真白のおいしさがある。そして一年中、私たちの台所を支えてくれるいつもの玉ねぎにも、その玉ねぎにしかできない仕事があります。

だから今度、一個の玉ねぎを手に取ったら――今日はどうやって食べようか? そんなことを少し考えてみたくなります。生でシャキッといこうか?それとも、火を入れて、甘くしてみようか? たった一個の玉ねぎなのに、料理はそこからいくつもの方向へ広がっていきます。


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