「おかえり!」
そんな一言が聞こえてきそうな家があります。大分県日田市にある民泊「日田グリーンツーリズム花の木」は、空き家になろうとしていた実家を守るために始まった宿です。けれど夫婦が本当に残したかったのは、一軒の家だけではありません。
野菜を収穫し、一緒に料理を囲み、土地の自然や人にふれながら、日田という時間の流れに身を置くこと。「消費する旅から、関わる旅へ。」そこには、旅人にも「おかえり」と迎えたくなる夫婦の願いが込められていました。
【放送日:2026年8月8日(土)18:00 -18:56・テレビ朝日】
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「実家を残したい」が旅の始まりになった
長い年月、家族の笑い声や季節の移ろいを見守ってきた実家があります。大分県日田市で生まれ育った厚子さんにとって、その家は幼い頃の思い出が詰まった、かけがえのない場所でした。しかし、ご両親が施設へ入ることになり、実家は静かに役目を終えようとしていました。
「思い出の残る実家を、他人に貸したり売ったりしたくない」
厚子さんのその想いを受け止めたのが、夫の久満さんです。夫婦はともに小学校教員として長年子どもたちと向き合い、退職後も久満さんは地域の公民館長や広報誌づくりを通して、日田という土地の魅力を改めて見つめ直してきました。
その中で芽生えたのは、「この素晴らしい日田を、もっと多くの人に知ってもらいたい」という願いです。一方は「実家を守りたい」、もう一方は「故郷を伝えたい」。別々に見えた二つの想いは、やがて一つの答えへとたどり着きます。それが、2025年5月にオープンした民泊「日田グリーンツーリズム花の木」でした。
ここは、ただ泊まるための宿ではありません。家族を迎えてきた実家は、今度は旅人を迎える家へと生まれ変わりました。「おかえり。」そんな言葉が自然と似合うこの場所には、建物だけではなく、人と人とのぬくもりや、故郷の時間そのものを未来へ残したいという夫婦の願いが息づいています。
この一軒の実家から始まった小さな決断は、やがて旅人にとっても「帰ってきたくなる場所」を育てる、新しい物語の始まりとなったのです。
日田グリーンツーリズム 花の木
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「見る旅」から「暮らす旅」へ──日田で過ごす時間が思い出になる
旅に出る理由は、人それぞれです。歴史ある町並みを歩きたい人もいれば、豊かな自然に癒やされたい人もいます。
大分県日田市には、江戸時代に幕府の直轄地として栄えた天領の歴史が息づき、今も古い町並みや文化が残されています。また、人気作品の舞台や作者ゆかりの地を巡る”聖地巡礼”を目的に、この地を訪れる人も少なくありません。それだけでも、日田は十分に魅力あふれる旅先です。
けれど、「日田グリーンツーリズム花の木」が届けたいのは、その先にある旅なのかもしれません。畑で野菜を収穫し、季節の恵みを手にすること。台所に立ち、一緒に料理を囲みながら笑い合うこと。庭を吹き抜ける風や鳥の声に耳を澄ませ、土地の人との何気ない会話に心がほどけていくこと。
そこには、観光地を巡るだけでは出会えない日田の暮らしがあります。宿を訪れた人は、日田を「見る」だけではなく、日田の時間の中で過ごし、この土地の営みにそっと触れていきます。
公式サイトには、「消費する旅から、関わる旅へ。」という印象的な言葉が掲げられています。その一文には、旅は思い出の数で競うものではなく、その土地や人と心を通わせる時間として受け取ってほしいという、夫婦の願いが込められているように感じました。
旅が終わる頃、手元に残るのは、お土産だけではありません。畑で土に触れた感触。食卓を囲んで交わした笑顔。
「また来てね。」
「また帰っておいで。」
そんな何気ない言葉とともに過ごした時間は、やがて旅人一人ひとりの心の中で、かけがえのない思い出へと育っていきます。
景色は写真として残せても、その土地で交わした時間は、心の中にしか残せません。だからこそ、「花の木」が届けているのは宿泊ではなく、日田という土地と静かにつながる体験なのでしょう。
その旅は、きっと帰る頃には「訪れた町」ではなく、「また帰りたくなる場所」へと変わっているはずです。
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教室から古民家へ──先生夫婦が伝え続ける日田の魅力
長年、小学校の先生として子どもたちと向き合ってきた久満さんと厚子さん。教壇に立つ毎日は、勉強を教えるだけではなく、子どもたち一人ひとりの成長を見守り、地域の自然や文化、人とのつながりの大切さを伝える日々でもあったのでしょう。定年を迎えたことで、その役目が終わったわけではありませんでした。
久満さんは退職後、公民館の館長として地域に関わり、広報誌づくりにも携わります。その中で改めて気づいたのは、自分たちが暮らしてきた日田という土地には、何気ない日常の中にこそ、人へ伝えたい魅力が息づいているということでした。
歴史ある町並みや豊かな自然だけではありません。畑で育つ季節の野菜。食卓を囲みながら交わす何気ない会話。地域の人たちの温かな笑顔。日田らしさは、観光パンフレットだけでは伝えきれない暮らしの中にも、たくさん息づいていたのです。
だからこそ久満さん夫婦が選んだのは、言葉だけで地域を紹介するのではなく、自らの暮らしを通して日田を感じてもらうという方法でした。
教室で子どもたちに語りかけていた先生は、古民家で旅人を迎える案内人へ。広報誌の紙面で地域を紹介していた人は、食卓を囲みながら日田の魅力を語り合う人へ。伝える場所は変わっても、「この土地の素晴らしさを誰かに届けたい」という想いは、今も変わることなく受け継がれています。
それは知識を教えることではなく、一緒に畑へ出て土に触れ、食卓を囲み、何気ない時間を分かち合うこと。
そんな穏やかなひとときの中で、旅人はいつの間にか日田という土地に心を寄せ、この町を好きになっていくのでしょう。先生として育んできた「伝える力」は、古民家という新しい教室で、今日も静かに息づいています。
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日田に迎えられる旅──「おかえり」が聞こえる宿
古民家の引き戸を開けると、木のぬくもりに包まれた静かな時間が流れています。庭では四季折々の草木が風に揺れ、鳥のさえずりや川のせせらぎが耳に届く。畑には季節の野菜が実り、台所からは食事の支度をするやさしい音が聞こえてきます。
その景色は決して特別なものではありません。けれど、その何気ない日常こそが、都会で忙しく過ごす人にとっては、忘れかけていた「暮らし」の豊かさを思い出させてくれるのでしょう。
「日田グリーンツーリズム花の木」が目指しているのは、旅人を迎えることだけではありません。日田という土地に迎えられ、この場所の時間に身を委ねながら、人や自然と静かにつながっていく旅。それは観光地を巡るだけでは味わえない、この土地だからこそ出会える時間です。
そして、その時間を育んでいるのが、久満さんと厚子さんという二人の存在です。長年、小学校の先生として子どもたちの成長を見守り、退職後も地域と関わり続けてきた二人は、今も変わらず誰かを迎え、誰かに何かを伝えています。
教室という場所は卒業しても、「人に寄り添い、その人の心に何かを残したい」という願いは、少しも変わっていません。だから、この民泊には「第二の人生」という言葉以上の意味があるように感じます。
定年とは、一つの仕事を終える節目ではあっても、その人が積み重ねてきた経験や想いまで終わるわけではありません。これまで大切にしてきたことを、違う形で誰かへ手渡していく。そんな生き方も、人生にはあるのだと、久満さん夫婦は静かに教えてくれているようです。
宿をあとにする旅人は、お土産だけを持ち帰るのではありません。日田で交わした会話や、一緒に囲んだ食卓、土の香りや風の心地よさを胸に、「また帰ってきたい」という気持ちを持ち帰ります。そして、この物語は旅人だけのものではないのかもしれません。
これから第二の人生を歩もうとしている人にとっても、「自分はこれから、誰に何を届けられるだろう。」と、そっと考えるきっかけを与えてくれる――そんな「おかえり」が、この宿には静かに息づいているように思えます。
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旅の終わりに持ち帰るのは、お土産ではなく「帰りたくなる場所」
旅には必ず終わりがあります。荷物をまとめ、玄関で靴を履き、車や電車に乗って、それぞれの日常へ帰っていく。けれど、本当に旅はそこで終わるのでしょうか?
日田グリーンツーリズム花の木で過ごした時間は、きっと帰宅したその日からも、静かに心の中で続いていきます。畑で土に触れたこと、食卓を囲みながら交わした笑顔、縁側を吹き抜ける風の心地よさ。そして、「また帰っておいで…」そんな言葉に包まれた、あたたかな時間。
旅先で出会う景色は、いつしか少しずつ記憶の中で色あせていくかもしれません。けれど、その土地で出会った人の優しさや、一緒に過ごした何気ない時間は、不思議と心の奥に残り続けます。
だから久満さんと厚子さんが届けているのは、一泊二日の宿泊ではありません。旅人一人ひとりの心の中に、「また帰りたい」と思える場所を育てることなのではないでしょうか?
厚子さんが守りたかった実家、久満さんが伝えたかった日田の魅力。その二つの夢が重なったことで、一軒の古民家は、旅人にとっての「ふるさと」になりました。
人生には、定年という節目があります。けれど、人を迎え入れる優しさや、誰かに何かを伝えたいという想いに、終わりはありません。だからこそ、この夫婦の第二の人生は、新しい人生を始めた物語ではなく、これまで歩んできた人生を、もっと豊かに実らせる物語だったのでしょう。
『人生の楽園』が教えてくれるのは、楽園とは遠くにある特別な場所ではないということです。誰かを思い、誰かを迎え、その土地の魅力を次の人へ手渡していく。そんな日々の積み重ねの中にこそ、本当の「人生の楽園」は静かに育まれていくのかもしれません。
そして、いつかまた日田を訪れたとき。玄関先で聞こえてくる「おかえり。」という一言は、旅人を迎える言葉であると同時に、自分らしい生き方を見つけた人への、やさしい祝福のようにも聞こえてくるのでした。
