温泉の町として知られる鳥取県三朝(みささ)町に、日本で唯一のバイオリン美術館があるのをご存じでしょうか?
三朝バイオリン美術館では、バイオリンの歴史や製作工程を学べるだけでなく、実際に楽器に触れたり、職人の道具を使った製作体験を楽しんだりすることもできます。まるでジブリ映画『耳をすませば』の世界に迷い込んだかのように、一本の木が美しい音色を持つ楽器へと生まれ変わる過程を間近で感じられるのも魅力です。
今回の『あさイチ』では、そんな体験型のバイオリン美術館を中継で紹介。温泉だけではない三朝町の新たな魅力や、音楽文化を育てようとする町の取り組みに迫ります。
【放送日:2026年6月18日(木)8:15 -9:51・NHK-総合】
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温泉の町になぜバイオリン?|三朝バイオリン美術館とは
鳥取県三朝町と聞いて、多くの人が思い浮かべるのは三朝温泉ではないでしょうか。世界有数のラドン含有量を誇る温泉地として知られ、古くから湯治の町として親しまれてきました。
そんな温泉の町に、日本で唯一のバイオリン美術館があります。それが「三朝バイオリン美術館」です。美術館と聞くと、ガラスケースの中に展示された楽器を静かに眺める場所を想像するかもしれません。しかし三朝バイオリン美術館は少し違います。
ここではバイオリンの製作工程を学べるだけでなく、実際に楽器を手に取って音を出したり、職人が使う道具に触れながら製作体験を楽しんだりすることもできます。まさに「体験する美術館」です。
運営するのは、バイオリン製作家・岡野壮人さんが代表を務める「みささ弦楽プロジェクト」。2013年から新たなスタートを切り、「日本を代表するバイオリンの聖地を三朝町につくりたい」という大きな夢を掲げています。
温泉で体を癒やし、音楽で心を豊かにする。そんな新しい町の魅力が、三朝バイオリン美術館には詰まっています。なぜ温泉の町でバイオリンなのか。その答えは、一本の木から美しい音楽が生まれる不思議な世界の中に隠されているのかもしれません。
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一本の木が音楽になる|バイオリン製作の世界
美しい音色を奏でるバイオリン。その姿を見ると、完成された楽器として当たり前に存在しているように思えます。けれど、その始まりは一本の木です。
バイオリン作りでは、表板にはスプルース、裏板や側板にはメープルといった木材が使われます。職人は木目や硬さ、響きを見極めながら材料を選び、少しずつ削り出していきます。その作業に使われるのは、小さなカンナやノミなどの道具たち。ほんのわずかな削り方の違いが、完成した楽器の音色を左右するといわれています。
三朝バイオリン美術館では、そんな製作工程を間近で見ることができます。展示されているのは完成品だけではありません。まだ楽器になる前の木材や、製作途中のパーツ、職人たちが使う道具なども紹介されており、一本の木が音楽へと生まれ変わる過程を知ることができます。完成した楽器を眺めるだけでは見えてこない世界です。
なぜ職人は何日もかけて木を削るのか。なぜ何百年も同じ形が受け継がれているのか。その理由を知ると、バイオリンの音色が少し違って聞こえてくるかもしれません。映画『耳をすませば』で、天沢聖司くんがバイオリン職人を目指した理由も、こうした世界に魅せられたからなのでしょう。
木に触れ、形を作り、音を生み出す。そこには大量生産の工業製品にはない、人の手仕事の美しさがあります。一本の木が音楽になる。三朝バイオリン美術館は、その不思議な瞬間を教えてくれる場所なのです。
三朝バイオリン美術館
- 鳥取県東伯郡三朝町三朝199−1
- TEL:0858-43-3111
- 開館時間:10:00~18:00
- 休館日:火曜
- URL:http://misasavm.com/
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作る・弾く・感じる|体験型美術館ならではの魅力
三朝バイオリン美術館の魅力は、展示を見るだけでは終わらないことです。ここでは実際に手を動かし、耳で音を感じながら、バイオリンの世界に触れることができます。
特に人気なのが製作体験です。職人が使う小さなカンナや道具を使いながら木を削る作業を体験でき、楽器作りの繊細さを肌で感じることができます。ほんの少し削るだけでも思い通りにはいかず、職人の技術の高さに驚かされる人も少なくありません。
また、試奏体験も三朝バイオリン美術館ならではの楽しみです。バイオリン演奏の経験がなくても実際に楽器を手に取り、弓を動かして音を出すことができます。もちろん最初から美しい音が出るわけではありません。けれど、自分の手で初めて音を鳴らした瞬間には、小さな感動があります。
展示ケースの中にあるだけだった楽器が、突然身近な存在になるのです。そして体験して初めて気づくことがあります。それは、一本のバイオリンが生まれるまでに職人がどれほど丁寧な仕事を積み重ねているのかということです。
木を選び、削り、組み上げる。さらに完成したあとも演奏者に弾き込まれながら音を育てていく。バイオリンは完成品ではなく、長い時間をかけて成長していく楽器なのかもしれません。だからこそ三朝バイオリン美術館は、楽器を見る場所ではなく、音楽を体験する場所なのです。ここで初めてバイオリンに触れた子どもの中から、未来の演奏家や職人が生まれる日もあるかもしれません。
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日本のバイオリンの聖地へ|町が描く大きな夢
三朝バイオリン美術館が目指しているのは、単なる観光施設ではありません。その先にあるのは、「日本を代表するバイオリンの聖地を三朝町につくる」という大きな夢です。運営を担う「みささ弦楽プロジェクト」は、弦楽器を通じて音楽文化を育て、それが人や町の豊かさにつながると考えています。
一見すると壮大な目標に思えるかもしれません。しかし、その出発点はとても身近なものです。一人でも多くの人に本物の楽器に触れてもらうこと。音楽を身近に感じてもらうこと。そして演奏する楽しさや、ものづくりの喜びを知ってもらうこと。そんな小さな体験の積み重ねが、やがて町の文化を育てていくと信じているのです。
世界には、楽器づくりで知られる町があります。イタリアのクレモナはその代表例でしょう。ストラディバリウスを生んだ地として知られ、今も世界中から職人や音楽家が集まります。三朝町が目指しているのも、単なる観光名所ではなく、音楽を愛する人々が自然と集まる場所なのかもしれません。もちろん、その道のりは簡単ではありません。
けれど、夢は最初から完成された形で存在するものではなく、多くの人の共感や挑戦によって少しずつ育っていくものです。温泉の町に響き始めた一つの音色。その音は今も静かに広がりながら、三朝町の未来を奏で続けています。
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音楽が人と町を豊かにする|三朝町の挑戦
三朝バイオリン美術館の取り組みは、単にバイオリンを展示することではありません。その根底にあるのは、「音楽が豊かな町は、人も町も豊かになる」という考え方です。
一見すると、音楽と町づくりは結びつかないように思えるかもしれません。けれど実際には、音楽は人と人をつなぐ力を持っています。演奏を聴いて感動する人がいる。楽器を弾く楽しさに目覚める子どもがいる。共通の趣味を通じて新しい交流が生まれる。そんな小さな出来事の積み重ねが、やがて町の魅力になっていきます。
三朝町が目指しているのは、バイオリンを観光資源にすることだけではありません。弦楽器を通じて音楽文化を育て、人々が豊かな時間を共有できる町をつくることです。製作体験や試奏体験にも、そんな願いが込められています。
初めて楽器に触れた子どもが音楽を好きになるかもしれない。その中から演奏家や職人を目指す人が現れるかもしれない。あるいは、大人になってから新しい趣味として音楽を楽しむ人が増えるかもしれません。文化は一日で育つものではありません。誰かが種をまき、それを多くの人が少しずつ育てていくことで根づいていきます。
三朝町が続けている挑戦もまた、そんな長い時間を見据えた町づくりなのです。温泉の湯けむりが立ち上る町で、今日もどこかからバイオリンの音色が聞こえてくる。その音は、人と町の未来を少しずつ豊かにしているのかもしれません。
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音色は未来へ続く|夢を育てる美術館
三朝バイオリン美術館には、完成した楽器だけではなく、その先に続く未来があります。ここを訪れる人の中には、初めてバイオリンに触れる子どももいます。製作体験で木を削りながら、職人の仕事に興味を持つ人もいるでしょう。あるいは、何気なく弓を動かしてみた音がきっかけで、音楽を好きになる人もいるかもしれません。
夢はいつも、小さな出会いから始まります。一本の映画を見たこと。一冊の本を読んだこと。誰かの演奏に心を動かされたこと。そんな何気ない瞬間が、人生の進む方向を変えることがあります。映画『耳をすませば』の天沢聖司くんも、バイオリン職人という夢に出会ったことで、自分の未来へ向かって歩き始めました。
三朝バイオリン美術館もまた、そんな夢の入口のひとつなのかもしれません。もちろん、ここを訪れたすべての人が演奏家や職人になるわけではありません。けれど、本物に触れた経験は心のどこかに残ります。そしてその記憶は、いつか人生のどこかで新しい挑戦を後押ししてくれるかもしれません。
温泉の町に響く一つの音色。その音は今日も誰かの心を震わせながら、未来へと受け継がれていきます。三朝バイオリン美術館は、楽器を展示する場所ではありません。夢を育てる場所なのです。
