JR予讃線の比地大(ひじだい)駅を降りると、すぐ目の前に小さな鉄道の世界があります。香川県三豊市にある「Kトレインワールド」。館内には鉄道模型や国内外から集められた鉄道部品、手作りの大きなジオラマが並び、屋外ではミニ列車に乗ることもできます。
そして、そのすぐそばを走っているのは模型ではありません。目の前のJR予讃線を、本物の列車が走っていきます。『あさイチ』では、そんな鉄道パークを家族で営む人たちを訪ねます。
でも、この場所について知っていくうちに、少し気になることがありました。そもそも、どうしてここまで大きな鉄道の世界ができたのでしょう。始まりは、館長が子どものころから好きだった鉄道でした。
子どものころ、夢中になって集めたもの。何度見ても飽きなかったもの。大人から見れば小さな趣味に思えても、本人にとっては世界でいちばん面白かったもの。
私たちは大人になる途中で、そんな「好き」をいくつ置いてきたのでしょう。でも、置いていかなくてもいいのかもしれません。好きなものと一緒に大人になり、家族と分かち合い、誰かが遊びに来てくれる場所にまで育てることだってできます。
子どものころに敷いた小さな線路は、大人になったら終わるとは限らない。その先には、まだ見たことのない駅が待っているのかもしれません。
【放送日:2026年9月3日(木)8:15 -9:55・NHK-総合】
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駅を降りたら、そこが鉄道パーク?
JR予讃線の列車を比地大駅で降りる。すると、その駅前にあるのが「Kトレインワールド」です。2019年9月にオープンした鉄道博物館で、館内には館長が長年集めてきた鉄道模型や、国内外の鉄道部品、鉄道にまつわる資料などが並んでいます。
さらに、鉄道模型が走る大きなジオラマもあります。模型の小さな列車を眺めていると、そのすぐ近くを走っていくのは本物のJR予讃線。模型の世界と本物の鉄道が、同じ場所でつながっているのです。
屋外ではミニ列車に乗ることもでき、館内にはカフェコーナーもあります。鉄道が大好きな人なら、模型や部品を一つひとつ眺めているだけでも時間が足りなくなりそうです。
でも、鉄道にそれほど詳しくない人や子どもでも、走る模型を眺めたり、ミニ列車に乗ったり、本物の列車が通り過ぎるのを見たりしながら、それぞれの楽しみ方を見つけることができます。駅を降りたら、そこからまた別の鉄道の旅が始まる。なんとも不思議な場所です。
でも、もっと不思議なのは、この鉄道パークが最初から大きな企業によってつくられた施設ではないということ。始まりにあったのは、ひとりの少年の「鉄道が好き」という気持ちでした。その小さな「好き」は、いったい何十年の線路を走って、ここまでたどり着いたのでしょう。
鉄道博物館 Kトレインワールド
- 香川県三豊市豊中町比地大2509
- TEL:050-7115-6203
- 営業時間:10:00~16:00
- 営業日:土・日曜
- URL:https://k-train.kilo.jp/
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子どものころの「好き」が、こんなに大きくなった!
Kトレインワールドの館長、木川泰弘さんが鉄道を好きになったのは、まだ3歳のころでした。買ってもらった鉄道のおもちゃをきっかけに、鉄道の世界へ夢中になっていきます。幼いころには、お母さんと一緒にお父さんを駅へ送り迎えすることもありました。汽車が鳴らす大きな汽笛に驚いて耳をふさぐ。それでも、駅へ行くのは楽しみでした。
そんな鉄道少年だった木川さんですが、大人になって選んだ仕事は鉄道関係ではありません。中学校の体育教師でした。しかも木川さん、鉄道だけに夢中だった人でもありません。棒高跳びの選手として高校時代にインターハイを連覇し、1974年のアジア大会では金メダルを獲得するほどの選手でした。
その後は教師となり、結婚し、二人の娘さんが生まれます。大人としての人生が進んでいきました。でも、子どものころから好きだった鉄道も、ちゃんと一緒についてきました。鉄道模型や資料を集め続け、やがて機関車の部品など大きなものまで増えていきます。
そして36年間の教員生活を終えた木川さんは、長年集めてきたものを自分だけで楽しむのではなく、みんなに楽しんでもらえる場所をつくろうと考えます。それが、Kトレインワールドでした。
子どものころの「好き」を、大人になる途中で置いていかなかった。でも、それだけではありません。仕事をし、家庭を持ち、別のことにも夢中になりながら、「好き」も一緒に人生を走らせてきたのです。
3歳のころに手にした小さな鉄道のおもちゃ。そこから始まった線路は、何十年もの時間を走り続け、とうとう本物の鉄道が走る駅の前に、自分の鉄道博物館をつくるところまで延びました。
子どものころの「好き」って、いったいどこまで大きくなるのでしょう。でも鉄道の「好き」は、これだけではありません。同じ鉄道が好きな人でも、夢中になるところは驚くほど違うのです。
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鉄道好きって、みんな同じじゃない?
ひとことで「鉄道が好き」といっても、その楽しみ方は人によってずいぶん違います。
・列車の写真を撮るのが好きな人。
・実際に列車に乗るのが好きな人。
・鉄道模型を走らせるのが好きな人、作るのが好きな人。
駅や駅舎を訪ねるのが好きな人もいれば、切符や駅弁の掛け紙、行先表示板、ヘッドマークなどを集める人もいます。さらに、蒸気機関車が好き、昔の国鉄が好き、私鉄が好き、貨物列車が好き――。
同じ「鉄道」という一本の線路から、「好き」は驚くほど細かく枝分かれしていきます。鉄道にそれほど興味のない人から見れば、「そこまで違うの?」と思ってしまうかもしれません。でも、好きな人にとっては違うのでしょう。車両の形が違う。走る音が違う。路線ごとに景色が違う。昔使われていた部品の一つにも、その時代の鉄道の記憶があります。
だからKトレインワールドに、鉄道模型だけでなく、機関車の部品やヘッドマーク、行先表示板、国内外から集められた鉄道資料まで並んでいるのも、なんとなく分かるような気がします。「鉄道が好き」というひとことだけでは収まりきらない、たくさんの「好き」があるのです。
考えてみれば、これは鉄道に限った話ではありません。音楽が好きでも、聴くのが好きな人もいれば、演奏する人、レコードを集める人、コンサートへ行く人もいます。料理だって、作るのが好きな人と食べ歩くのが好きな人では、同じ「好き」でも楽しみ方はまったく違います。好きなものって、近づいてみるほど細かくなっていく。
そして細かくなればなるほど、その人にしか分からない面白さが見えてくるのかもしれません。だから、誰かが夢中になっているものを見て、「そんなものの何が面白いの?」と思っても、その人には私たちには見えていない景色が見えているのでしょう。
駅弁の掛け紙を一枚一枚ファイルにしまって、何度でも眺めたくなるほどに。……もっとも、それを遊びに来た友達に毎回見せるかどうかは、また別の問題ですが。
さて、一人で始まった「好き」なら、好きなだけ夢中になればいい。でも、その「好き」が家いっぱいに広がり、ついには鉄道パークにまでなってしまったら――。一緒に暮らす家族は、いったいどうするのでしょう。
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一人の「好き」は、家族の「好き」になれる?
木川泰弘さんが、どれほど鉄道を好きだったのか。妻の佐智子さんがそのことを知ったのは、なんと二人の結婚式の日だったそうです。披露宴の祝辞で夫の鉄道好きについて語られ、そこで初めて知ったのだとか(笑)
結婚してからは、鉄道模型だけでなく、機関車の部品など大きなものまで増えていきました。好きな本人にとっては宝物でも、一緒に暮らす家族にとって同じように宝物とは限りません。まして、それが家の中をどんどん占領していったら――。
「好きなんだから仕方ないよね」だけでは済まないこともありそうです。それでも木川さんの「好き」は、いつしか木川さん一人だけのものではなくなっていきました。Kトレインワールドを開くときには妻の佐智子さんも一緒に準備を進め、二人の娘さんも運営に関わるようになります。
館内には鉄道模型や貴重な資料を見るだけではなく、子どもが遊べるスペースやカフェなど、家族で訪れて楽しめる場所もつくられました。もしかすると、一人の「好き」を家族みんなが同じように好きになる必要はないのかもしれません。
鉄道が好きな人は、鉄道を思いきり楽しむ。その隣で、家族は自分なりの楽しみ方や関わり方を見つける。そうやって誰かの「好き」の隣に、別の誰かがいられる場所をつくっていく。それもまた、家族で「好き」を育てるということなのでしょう。
3歳の少年から始まった鉄道への「好き」は、何十年もかけて家族へ、そしてこの場所を訪れる人たちへと広がっていきました。一本だった線路に、いつの間にかいくつもの線路が合流していたのです。
では、その線路に終着駅はあるのでしょうか。子どものころに始まった「好き」は、大人になり、年齢を重ねても、ずっと続いていくものなのでしょうか。
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子どものころに敷いた線路は、どこまで続く?
子どものころ、夢中になっていたものはありますか?電車や自動車、昆虫、恐竜。絵を描くことや、何かを集めること。時間を忘れて遊び、「どうしてそんなに好きなの?」と聞かれても、うまく説明できない。ただ、好きだった。
大人になるにつれて、いつの間にか離れてしまったものもあるでしょう。一方で、ずっと好きなままの人もいます。私にも、小学生のころから鉄道が大好きだった友人がいます。高校生のころには、新しい電車が登場すればパンフレットを持ってきて、「この車両は新しい方式だから、モーターの音が違うんだ」と熱心に説明していました。
当時は「音まで聞き分けるのかよ?」と笑っていたのですが、その友人は大人になった今でも鉄道が好きで、ときどき列車に乗りに出かけています。何十年たっても、好きなものは好き。考えてみれば、それもなかなか素敵なことです。
木川泰弘さんの鉄道への「好き」も、3歳のころから始まりました。仕事をして、家庭を持ち、年齢を重ねても、その気持ちはなくなりませんでした。むしろ集めるものは増え、鉄道模型の世界は大きくなり、やがて家族まで巻き込み、とうとう駅前に鉄道パークをつくってしまいました。
子どものころの「好き」は、何かの役に立たなければいけないものではありません。仕事にしなくてもいい。誰かに理解してもらえなくてもいい。途中で離れたっていいし、何十年も続けたっていい。
そして、ずっと好きでいられたものが、いつか思いもしなかった場所へ自分を連れていってくれることもあるのでしょう。3歳の少年が手にした、小さな鉄道のおもちゃ。あのとき敷かれた線路が、何十年後に本物の鉄道が走る駅前の鉄道パークまで続いているなんて、きっと少年自身にも想像できなかったはずです。
子どものころに敷いた線路が、どこまで続いていくのか。それは、大人になった自分にも分かりません。だから、まだ終着駅を決めなくてもいいのでしょう。好きなら、もう少し先まで…。次の駅には、今はまだ想像もしていない景色が待っているのかもしれません。
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まとめ|「好き」には、終着駅がなくてもいい
香川県三豊市、JR予讃線の比地大駅前にある「Kトレインワールド」。鉄道模型や国内外から集められた鉄道部品、大きなジオラマ、ミニ列車。そのすぐそばを、本物の列車が走っていきます。そんな鉄道パークの始まりにあったのは、木川泰弘さんが3歳のころから持ち続けてきた「鉄道が好き」という気持ちでした。
大人になって体育教師になり、家庭を持っても、その「好き」はなくなりませんでした。模型を集め、部品を集め、少しずつ世界を広げていく。そして何十年もの時間をかけて、一人の「好き」は家族が関わる鉄道パークにまで大きくなりました。
もちろん、誰もが子どものころに好きだったものを、一生好きでいなければならないわけではありません。途中で興味が変わってもいい。すっかり忘れてしまってもいい。何十年かたって、突然また好きになってもいい。そして、周りの人から「まだ好きなの?」と笑われながら、ずっと同じものを追いかけ続けたっていいのです。
好きなものに、決められた時刻表はありません。いつ出発してもいいし、途中の駅で降りてもいい。また乗りたくなったら、そこから乗ればいい。そして、ずっと乗っていたい人は、そのままどこまでも行けばいい。
子どものころに敷いた小さな線路。その先に何があるのかは、誰にも分かりません。だからこそ、「好き」は面白いのでしょう。次の駅で降りるのか。それとも、もう少し先まで乗ってみるのか。あなたの「好き」という列車は、今、どのあたりを走っていますか?
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