なぜdocomoは繋がりにくくなっているのか? 5Gエリア拡大の遅れが原因!?

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「docomoの携帯(スマホ)が遅い、つながりにくい…」

 最近、知り合いやSNSなどからこのような声を聞くことが増えました。私自身はいわゆる格安SIMのMVNO(Mobile Virtual Network Operator・仮想移動体通信事業者)のmineo(マイネオ)でDプラン(docomo回線を借りている)を使っているし普段は都内に出ることも少ないのであまり気になったことはありませんが、都内(山手線の内側)などでdocomoのキャリア端末を使っている人に聞くと酷い時には下り(ダウンロード・ホームページや動画の閲覧など)では1Mbpsも出ないことがあるといいます。上り(アップロード・SNSへの投稿など)ではさらに酷くて0.1Mbpsも出ないさえあるそうです。私の住んでいる神奈川県平塚市あたりでは昼休みの時間帯でも下りで常時15Mbps、上りでも5Mbps程度は出ているので状況はかなり悪いといえるでしょう。ドコモの利用者からは、通信障害が起きている訳でもないにもかかわらず「通信速度が遅い」「つながらない」といった不満の声を多く聞きます。SNSにもそうした声が少なからず上がっていて、ユーザーはかなり不満を募らせているようです。

 一体、docomoのネットワークで何が起きているのか。NTTドコモは4月26日に5Gネットワーク戦略に関する説明会を開催しましたが、その質疑応答では、このネットワーク品質の低下に関する質問が集中したそうです。NTTドコモの説明によれば背景にあるのはトラフィックの増大ということです。動画など通信量を多く消費するサービスの増加に加え、コロナ禍の影響が小さくなって外出する人が増えたことで、自宅の固定回線に流れていた通信量がモバイルの回線に移ってきているというです。

 そこでNTTドコモでは増大するトラフィックへの対処を進めており、その軸となっているのが「瞬速5G」とのことです。これは4G向けの周波数帯を5Gに転用するのではなく、最初から5G向けに割り当てられた3.7GHz帯や4.5GHz帯、28GHz帯を用いた5Gネットワークを指します。これら周波数はもともと5Gでの利用を前提としていて、使用する周波数の帯域幅が従来よりも広く大容量通信を実現できるのです。ドコモは5Gのサービス開始当初から「瞬速5G」に重点を置いた整備を進めています。そこで主としてトラフィックが大きい都市部で瞬足5Gを積極展開しているといいます。しかし、2023年時点では整備途上となっていて、整備済、整備中、今後整備予定のエリアが混在しています。そして、今回の「繋がらない」問題は、瞬足5Gが整備途上であるという環境が大きく影響して発生したと説明しています。

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しかし他のキャリアでは問題が起きていません

 一方でKDDIやソフトバンクなど、他社のネットワークを利用しているユーザーからは、そうした声はあまり聞こえてきません。一体なぜ、docomoの回線だけが繋がりづらくなっているのでしょうか。今回の一連の問題によって「NTTドコモから”MNPしたい”」という声が増えており、同社のビジネスを考慮しても深刻な状況となっていることは間違いありません。だからこそメディア向けに現状を説明する必要に迫られたのでしょうが、最も不満を抱いているのはユーザーです。同社にはつながりにくさの対策を進めると同時に、ユーザーに対する現状と対処の丁寧な説明も求められるのではないでしょうか?

 5Gの整備に絡んで起きた通信障害といえば、2021年頃に話題となった「パケ止まり」が思い出されます。私は当時「楽天モバイル」の回線を使っていたので直接の被害を受けることはありませんでしたが、その後、用心のためにmineoのメイン回線(docomo回線を利用)の他にデュアルSIMでauが提供する「povo」をサブ回線として契約して万一の事態に備えることにしたほどです。これは主として5Gの通信が入るかどうかの境界線上で起きたもので、電波が弱い場所でも5Gへの接続を優先した結果、接続をうまく確立できず通信ができなくなっていた問題だといいます。しかし今回の事象はそれとは全く異なる内容のようです。今回はトラフィックが特に大きい都市部を中心に起きていて、先に触れた瞬速5Gの整備がなされておらず4Gのみで通信しているエリアで起きているといいます。トラフィックの急増で4Gの容量がひっ迫して対応しきれなくなっていることが繋がりにくさの原因だと説明しています。

つまり瞬速5Gの整備において地権者との交渉に時間がかかるケースがあることや、都心部の大規模な再開発で基地局が撤去されたり人の流れが変わったりしたことで、当初の予想と異なる状況が生まれていることが背景にあるようです。中でも大きな影響が出ているのがいわゆる「プラチナバンド」と呼ばれるの800MHz帯だといいます。一部のエリアでは屋外基地局の電波を用いて屋内をカバーしている場合もあるそうです。これを起因としてトラフィックのバランスが崩れ、最も電波が飛びやすい800MHz帯にトラフィックが集中してひっ迫してしまうケースが多いと説明しています。

しかしそれだけでは他のキャリアで問題が起きていないことの説明にはなっていません。他のキャリアでも同様に5G基地局の整備を進めているのですから。もっともNTTドコモの契約数は他社より多いのでユーザー数の違いが影響している可能性はあるでしょうが、都市の再開発で基地局に影響を受けるというのはNTTドコモに限った話ではありません。また、スマートフォンでデータ通信が使い放題になるプランは他の2社も提供していますからトラフィック増加の傾向も大きく変わらないはずです。

現在の主なキャリアのシェアは

  • NTTドコモ:41.7%(MVNO含む)
  • KDDI au:30.4%(同)
  • Softbank:25.6%(同)
  • 楽天:2.2%(同)

       (2022年9月・総務省)

 「0円プラン」の廃止によって契約者数が大幅に減少した楽天モバイルは別としても、もちろんNTTドコモのシェアが多いとはいえそれ以外のキャリア2社で問題が起きていないのは腑に落ちません。もちろん、今後トラフィックの増大で他社でも同様の事象が出てくる可能性は十分あり得ますが、しかし少なくとも現時点ではNTTドコモと他の大手2社とで都市部での通信品質に大きな開きが出ているのは確かです。それゆえ一連の問題にはNTTドコモの5Gネットワーク整備方針も少なからず影響しているのではないかと考えられるのです。

 その他に考えられるのは、4G向けから5G向けに転用した周波数帯の活用に対する方針の違いです。先にも触れた通りNTTドコモは5G向けに割り当てられた周波数帯を重視して整備を進めていますが、これはNTTドコモだけが衛星通信との干渉の影響を受けにくい4.5GHz帯を割り当てられた影響が大きいのかもしれません。他の2社は5G向けに割り当てられた3.7GHz帯が衛星通信との干渉で思うように整備できませんでした。そこで4Gから転用した周波数帯を積極的に活用して5Gのエリアを早く広げる方針を取ったのです。一方でNTTドコモは転用周波数帯をトラフィックが少ないエリアに限定して活用しているのが現状です。つまり転用周波数帯をより積極的に活用して5Gのエリアを早期に広げることに重きを置いた方が、一連の問題解消につながる可能性も考えられます。ただNTTドコモ側は、4Gの周波数帯が5G向け周波数帯より容量が少ないことからそれを活用しての対策は難しいと否定しています。

 もう1つは「Massive MIMO」です。Massive MIMOとは多数のアンテナ素子を用いることで、人が多く集まる場所などで高速化を実現する技術で、5GではMassive MIMOを高速大容量通信の切り札として積極導入している国や地域が多いのですが日本では導入があまり進んでいない状況にあります。しかも、Massive MIMOの導入に関しては携帯各社で温度差があり、ソフトバンクは4Gの時代からMassive MIMOを導入し、楽天モバイルも5Gで全面的に導入を進めているといいますが、NTTドコモはMassive MIMOの導入を現在も「検討中」と話すなど消極的な姿勢を取り続けてきた感は否めません。チューニングの問題だけでなく採用する技術の選択によって急増するトラフィックへの対処で差が付いた可能性も十分考えられるのではないでしょうか。

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どうするドコモ

 NTTドコモとしては、こうした課題を瞬速5Gの整備で解消したいもののそれには時間がかかるといいます。そこで2023年夏までに2つのチューニングを施して対処すると明かしました。1つは瞬足5G対応基地局のエリアを少し広げて瞬速5G未対応の基地局にかかっていた負担を減らすよう調整することだ。ちょうど私の自宅もdocomoの5Gと4Gエリアの端境にあって、”基地局の機嫌が良ければ” 5Gに繋がるものの通常は4Gしか繋がらない場所にあります。つまりNTTドコモの説明通りなら私が普段から使っている基地局は他に比べて負荷の高い基地局といえます。もっとも普段は自宅では固定回線によるWi-fiを使っているので”被害”はあまり受けていないのですが、この夏までにどのようなチューニングが施されるのか見ものではあります。

 もう1つはプラチナバンドである800MHz帯にトラフィックが集中しないよう、他の周波数帯に分散するよう制御することだそうです。最近のスマートフォンは、複数の周波数帯を束ねて高速化する「キャリアアグリゲーション」という技術を活用していてプラチナバンド(800MHz帯以外)の周波数帯もフル活用しているように思えますがドコモ側の説明によると、端末側が最初に800MHz帯の電波を捉えてしまうことから800MHz帯以外の周波数帯に先に接続するよう、キャリアアグリゲーションも含め制御していくとのことです。すなわち4Gと5Gの端境である我が家付近では今までよりパフォーマンスが落ちる可能性もあるわけですが、まぁそれはヨシとしましょう。自宅ではPCがメインでスマホを使うことはほとんどない上に、仮に使うときもWi-fiほとんどがですから…。

 5G整備の方針や新技術の導入の消極性に関しても、元電電公社時代から受け継がれてきた”親方日の丸”意識が、図らずもNTT本体のみならずNTTドコモにまで受け継がれてしまっているのだとしたら、今後同社に起こりうる問題や障害への対応についても懸念が広がります。

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