プラチナバンド当確ムードの楽天モバイル、謎のライバル「X社」は登場するのか?

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楽天モバイルはどうしてすぐに「圏外」になってしまうのか?

楽天モバイルのスマホ回線を使ったことのある方はどれくらいいらっしゃるでしょうか?私は2年ほど前に楽天モバイルと契約してSIMを入れ替えて1年ほど使っていました。

普段からdocomoやauの回線を使われている方には信じられないかもしれませんが、楽天モバイルではしばしば「圏外」の表示が出ます。それも僻地や離島の話ではなく首都圏近郊の地域では中核となるようなJRの駅前ですら感慨になることが度々あります。

最初にその表示を目にした時には「ウソだろぉ〜?」というのが正直な感想でした。しかも駅前のターミナルで待ち合わせていたので緊急で電話連絡を取らなくてはならずちょっと慌てました。

そんなこともあって「0円プラン」の廃止とともに楽天モバイルを解約し、今ではmineo(MVNO)のDプラン(docomo回線版)を使っています。

それはおそらく楽天モバイルがその他の大手3社(docomo、au、Softbank)には割り当てられている一般に「プラチナバンド」と呼ばれる比較的繋がりやすい周波数帯を与えられていないことが原因かもしれません。

日本では警察、消防、航空、漁業、アマチュア無線などの各種無線やテレビ、ラジオの他にも各種のトランシーバーやコードレス電話機に至るまで使用を許可されている周波数帯があります。その一環として携帯電話に使える周波数帯も総務省によって決められているわけです。

例えばアマチュア無線でいえば下は1.7MHz帯から3.5MHz帯、7MHz、14MHz、21MHzといくつかの周波数帯を使うことができ、それによって無線局の免許状が与えられます。このあたりの周波数帯は「短波」と呼ばれ、ラジオの短波放送も周波数は違えど同じような周波数帯の電波を使っています。

短波は略してHF(High Frequency)と呼ばれていますが、もっと低い周波数帯には中波(Medium Frequency)と呼ばれ、ラジオのNHK第1・第2などの中波放送(いわゆるAM放送、”AM”はAmplitude Modulation・振幅変調の略で周波数帯の話ではありません。”FM”はFrequency Modulation・周波数変調の略ですが周波数帯を表しているわけではありません)があります。

短波や中波というのは電波の波長のことで、電波などの電磁波は波長が長いほど障害物の裏側に回り込みやすい性質があります。

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使いやすい電波ってどれ?

中波や短波の上の周波数帯にはVHFやUHFなどがあって、この辺りになるとかつてのアナログテレビ放送や地デジなどで使われているのでお聞きになったことのある方も多いのではないでしょうか?

携帯電話回線はその上(もっと波長が短い)の周波数帯を使っており、その中でもプラチナバンドは一番波長の長い(回り込みやすい・繋がりやすい)周波数帯になるわけです。

50年ほど前には「そんなに波長の短い電波は使い物にならない」と言われていた時代もありましたが、今ではテレビなどの各種リモコンやWi-Fi、Bluetoothなどの無線技術が数多く使われるようになって、「使えるものは使おう!」と高周波数帯まで使われており、携帯回線の5Gの大容量・高速通信では”ミリ波”という波長が1mmから10mm(30GHz〜300GHz)くらいの電波が使われています。

これは電波の直進性が極めて高く(光の性質に似てくる)ため今のところ街中ではほとんど実用化されていません。もっとも携帯回線の周波数は27GHz〜29.5GHzなので厳密には”ミリ波”ではないのですが…。

これらと比べればプラチナバンドの700MHz帯〜800MHz帯は波長も長く(1GHz = 1,000MHz)ある程度は電波の回り込みもあるのでビルや建物の影でも繋がりやすいわけです。

そんな有利な周波数帯を後発の楽天モバイルには与えられていないわけです。可哀想ではありますがまぁ日本ではどこの世界でも既得権っていうヤツが幅を利かせていますからね。

プラチナバンドが再分配される!?

だから楽天は「不公平だ」「ウチにも分けろ」と必死なわけです。そりゃそうですよね、後発だからっていっても消費者は「便利な方がいい!」って言います。

総務省もさすがにこれらの声に重い腰を上げて「それじゃもう一度、周波数の割り当てを見直しましょう」ということになったわけです。そこで慌てたのが大きな既得権を持っているdocomo、au、Softbankの大手3社です。

「そんなのダメだよ」とばかりに反対していたのですがあまりに不公平な状況を続けて総務省に睨まれると、「端末の不当割引禁止」「回線とのセット販売禁止」「契約の2年縛り禁止」「SIMロック解除命令」に続いて何を言われるかわかりません。

ちょっとは話を聞く態度も見せておかないとね、というわけで2022年11月、最大手のNTTドコモが「700MHZ帯だったら再編して(楽天にも分けて)みんなで使えばいいんじゃない?」と言い始めたのです。

そもそも700MHz帯はdocomoはほとんど使ってなかったし帯域(周波数帯の幅)も狭いからdocomoにはあまり旨味がなかった帯域なのです。その提案と引き換えに今、自分たちが独占している800MHz帯を守れるなら安いもんだ(と言ったかどうかは知りませんが)というわけです。損したフリして得とれってところでしょうか?

ところがプラチナバンドの再編をめぐっては見方によっては面白い展開になっています。総務省は2022年12月に、周波数の再編にあたっては「既存の大手3社が使っているプラチナバンドを後発で参入してきた楽天が奪える仕組みを作る一方、この再編で大手3社に発生する費用は3社の自己負担とする」と決めてしまったのです。つまり(かわいそうな)楽天には負担させない、ということです。

ところがそれはNTTドコモにしてみれば実に”オモシロクナイ”わけで、先の「700MHz狭小帯を分けてあげるからさ」と言って800MHz帯の再編だけは避けようとしたところ、意外にも楽天が2023年4月19日に「それでいいよ!じゃあ早くちょーだい!」と言い始めたので話は急展開することになりました。

楽天モバイルにしてみれば、まずは「うちもプラチナバンドになりました!」と一刻も早く宣言したいわけで、それで「0円プラン」廃止で激減した契約を何が何でも巻き返したいという思いが見え隠れしています。

そもそも楽天モバイルはNTTドコモに比べれば圧倒的にユーザー数が少ないので、とりあえずは狭小な帯域でも問題ないのです。それよりもなんとしてもプラチナバンドを確保する方が先なのです。というわけで早くも「当確」ムードの楽天ですが、コトはそう簡単には済まないかもしれません。

楽天モバイルにもう一つの敵、現る!?

当初はNTTドコモが調子のいいことを言っても楽天モバイルはそれにハナもひっかけずに、本陣である800MHz帯を狙いにいくのではないかという予想もありました。

でも楽天モバイルにとって当面は狭帯域で十分なのです。700MHz帯が狭帯域とはいえ、NTTドコモの契約数と帯域幅から比例計算すると1,100万件を収容できることになります。楽天モバイルの契約数は2022年12月末時点で449万件(MVNOサービスを除く)なのです。

と思っていたところ、総務省が2023年4月19日に公表した「移動通信システムの周波数利用に関する調査の結果」では、総務省が今後割り当てる周波数の利用意向を各社に聞いたもので、現行の(楽天モバイルを含む)携帯4社とは別に社名・回答内容の非開示を希望した「X社」という存在が明らかになったのです。楽天モバイルに続く新規参入の可能性があるのではないかと携帯大手の中で大きな話題になっているのです。

現在の(楽天モバイルを含めた)競争環境を踏まえると新規参入は非常に難しいのではないかと考えるのですが、仮にX社が狭帯域の割り当てを希望した場合、楽天モバイルにとっては厄介な存在となるかもしれません。

総務省が2021年4月に1.7ギガヘルツ帯周波数の割り当てを決めた際は「審査基準を見た時点で楽天モバイルが獲得するとすぐに分かった」(携帯大手幹部)というほど“楽天寄り”になっていたことは有名ですが、今度は逆にそうもいかなくなるのです。

なぜなら例えば「割り当て済みの周波数幅(総計)がより少ない」という審査基準を入れると、新規参入のX社に軍配が上がってしまうわけです。

大手3社は「大人の対応」に徹して、楽天モバイルが挟帯域を本気で取りに来ない可能性があるものの、「謎のX社という存在が判明した以上、楽天モバイルは全力で動かざるを得なくなった。エリア展開や特定基地局開設料といった審査項目の計画数値を積み増さなければならず、無事に獲得できたとしても手痛いのではないか」(携帯大手幹部)との指摘が出ています。

数々の通信障害の温床にもなっている5G通信網の整備状況も気になるところですが、これらのプラチナバンドを巡る抗争も目を離せないところです。

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