山形県長井市が全国に先駆けて栽培を始め、日本一の生産地となった「行者菜(ぎょうじゃな)」をご存じでしょうか。行者ニンニクとニラを掛け合わせて生まれた新しいスタミナ野菜で、力強い香りと食べやすさを兼ね備え、今では家庭料理から加工品まで幅広く親しまれています。
今回の『あさイチ』では、行者菜を全国へ広めた生産者の思いや、その魅力、おいしい食べ方を紹介。山菜の豊かな風味をもっと身近な食卓へ届けたい――そんな長井市の挑戦と、日本一の産地が育んできた物語をたどります。
【放送日:2026年7月13日(月)8:15 -9:55・NHK-総合】
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行者菜とは?行者ニンニクとニラから生まれた新しい野菜
山形県長井市が全国に先駆けて栽培を始めた「行者菜(ぎょうじゃな)」は、希少な山菜として知られる行者ニンニクと、家庭でもおなじみのニラを掛け合わせて誕生した新しい野菜です。行者ニンニクの豊かな香りと、ニラの育てやすさや収穫のしやすさを兼ね備え、近年注目を集めています。
もともと行者ニンニクは、山深い場所に自生する貴重な山菜です。収穫までに数年を要し、旬もわずか2週間ほどと短いため、「もっと気軽に楽しめたら」という思いから開発が進められました。そこで誕生したのが、栽培しやすく長期間収穫できる行者菜です。
見た目は行者ニンニクとそっくりでニラによく似ていますが、一口食べると行者ニンニクを思わせる力強い香りが広がります。一方で、加熱すると辛味が和らいで甘味が引き立ち、シャキシャキとした食感も楽しめるため、おひたしや炒め物、餃子、鍋料理など幅広い料理で活躍します。
さらに、行者菜は栄養価の高さでも注目されています。疲労回復を助けるとされる硫化アリルを豊富に含み、ビタミン類や葉酸も多く含まれることから、「おいしく食べられるスタミナ野菜」として人気を集めています。
山菜ならではの豊かな風味と、毎日の食卓で使いやすい親しみやすさ。その両方を兼ね備えた行者菜は、長井市から全国へ広がり始めた、新しいふるさとの味なのです。
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なぜ山形県長井市が日本一?全国初の産地を育てた挑戦
現在、日本一の行者菜産地として知られる山形県長井市ですが、その歩みは決して順風満帆ではありませんでした。全国に先駆けて栽培に取り組んだものの、前例がないため、すべてが手探りからのスタートだったのです。
きっかけは、宇都宮大学で開催された「だいこんサミット」で、長井市の生産者グループが行者菜の開発者と出会ったことでした。実際に試食した生産者たちは、その力強い香りとおいしさに魅了され、「ぜひ長井市で育てたい」と強く願います。しかし、開発者には一つの思いがありました。
行者ニンニクが自生するような自然豊かな土地で、その土地ならではの山菜として育ててほしい。
この考えに共感した長井市の生産者たちは、地元の行者ニンニク生産組合の協力を得て、2006年から全国初となる本格的な栽培をスタートさせました。
とはいえ、栽培方法は未知の世界です。行者菜は生育が早く、一つの株から何度も収穫できますが、刈り取り過ぎると翌年の生育が悪くなることや、花を咲かせる前に収穫した方が株が元気に育つことなど、多くのことを実際の栽培を通して学んでいきました。
こうした試行錯誤は約5年間続き、生産者と技術者が知恵を出し合いながら、少しずつ長井市ならではの栽培技術を築き上げていったのです。
さらに苦労したのは、「どうすればニラとの違いを知ってもらえるか」という販売面でした。収穫する長さを工夫したり、東北芸術工科大学と協力して親しみやすいキャラクター入りのパッケージを制作したりと、味だけでなく「伝え方」にも力を注ぎました。
その積み重ねは着実に実を結び、栽培当初およそ1トンだった生産量は年々増加。現在では作付面積、生産量、生産者数のすべてで全国トップを誇る、日本一の「行者菜の里」へと成長しています。
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収穫回数からパッケージまで|行者菜を特産品にした工夫
全国で初めて行者菜の生産に乗り出した山形県長井市。しかし、新しい野菜には栽培の手引きも、産地として参考にできる前例もありませんでした。生産者たちは実際に育てながら、行者菜の性質を一つずつ確かめていきます。
行者菜は生育が早く、一つの株から年に何度も収穫できるのが特徴です。栽培を始めたころは年間5~6回ほど刈り取っていましたが、収穫を重ねすぎると地下の球根に蓄えられた養分が減り、翌年の生育に影響することがわかりました。
また、花を咲かせると株の養分を多く消費するため、花が開く前に刈り取る必要があります。収穫量だけを追い求めるのではなく、翌年も元気な株を育てることまで考えながら、適切な収穫時期と回数を見極めていったのです。
販売を始めると、今度は見た目がよく似たニラとの差別化が課題になりました。当初は約30センチにそろえて出荷していましたが、生育の早い行者菜はすぐに伸びるため、収穫の負担が大きくなります。しかも、十分に成長しなければ行者菜らしい香りが乗らないこともわかってきました。
そこで生産者たちは、野菜そのものの形だけで違いを見せるのではなく、パッケージに目を向けます。東北芸術工科大学の協力を得て、親しみやすいキャラクターを制作。ひと目で行者菜だとわかる包装へ変えたことで、売り場でもニラとの違いを伝えやすくなりました。
栽培方法を確立するだけでなく、収穫の仕方や出荷規格、パッケージまで工夫する。行者菜が長井市の特産品へ成長した背景には、生産者や技術者、地域の大学が力を合わせ、誰も知らなかった野菜の価値を一緒に形にしてきた歩みがありました。
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行者菜の栄養とおいしい食べ方|おひたしから餃子まで
行者菜の魅力は、力強い香りだけではありません。毎日の食卓で使いやすく、さまざまな料理に合うことも人気の理由です。
栄養面では、行者ニンニク由来の硫化アリルを豊富に含むほか、ビタミン類や葉酸も多く含まれています。シャキシャキとした歯ごたえが心地よく、炒め物や鍋料理、薬味など、ニラと同じ感覚で幅広く使えるのも行者菜ならではの魅力です。
おすすめの食べ方の一つがおひたしです。さっと加熱すると辛味や香りがほどよく和らぎ、行者菜本来の甘味が引き立ちます。にんにくの香りが苦手な方でも食べやすく、素材そのもののおいしさを楽しめます。
そして、生産者おすすめの人気料理が餃子です。ニラの代わりに行者菜を使うことで、噛んだ瞬間に豊かな香りが広がり、肉や野菜のうま味ともよく調和します。行者ニンニクの風味を感じながらも、毎日の家庭料理として気軽に楽しめるのが魅力です。
さらに、行者菜はアレンジの幅も豊富です。ミキサーでリンゴジュースやオレンジジュースと合わせる「行者菜ミックスジュース」、甘酒に漬け込む一品、行者菜入り味噌など、生産者ならではのアイデアも数多く生まれています。また、春の短い時期だけ収穫できる花穂は葉よりも甘味が強く、見かけたらぜひ味わってみたい季節のごちそうです。
行者菜は、山菜ならではの豊かな風味と、家庭で使いやすい手軽さを兼ね備えた新しい野菜です。冷蔵庫に常備しておけば、おひたしから餃子、炒め物まで、いつもの料理が少し贅沢な一皿へ変わるかもしれません。
道の駅 川のみなと長井
- 山形県長井市東町2−50
- TEL:0238-87-1121
- 営業時間:9:00~18:00
- 定休日:なし
- URL:https://kawanominato.jp/
- 行者菜通販:https://shop.jibasan.com/?pid=157383448
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山の恵みを日々の食卓へ|行者菜が広げる長井市の未来
行者菜は、一人の生産者だけが育てた野菜ではありません。開発者の思いに共感した生産者、栽培技術を支えた研究者、パッケージづくりに協力した大学、そして新しい味を受け入れた地域の飲食店や消費者など、多くの人の力によって育てられてきました。
現在では、生の行者菜だけでなく、ウインナーやメンチカツ、ピザ、ベーグル、味噌など、さまざまな加工品にも活用されています。地元の飲食店でも行者菜を使った料理が並び、「長井市といえば行者菜」と言われるほど地域に根付いた特産品へと成長しました。
もともとは、収穫できる期間が短く、栽培にも長い年月を要する行者ニンニクのおいしさを、もっと身近に届けたいという願いから始まった行者菜。その思いは、新しい野菜を生み出すだけではなく、地域に新たな産業と交流を生み出しました。
自然の恵みを大切にしながら、人の知恵を重ね、次の世代へ受け継いでいく――。行者菜には、そんな長井市らしいものづくりの姿勢が息づいています。
北海道や青森の山々で親しまれてきた行者ニンニクの豊かな風味は、山形県長井市で「行者菜」という新しい形へ受け継がれました。自然の力と人々の挑戦が育てたこの一株は、これからも全国の食卓へ山の恵みを届けながら、新しいふるさとの味として愛され続けていくことでしょう。
