北海道でもリンゴが育つの?|青森とはひと味違う火山の大地が育む壮瞥町の果樹園【あさイチ中継】

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リンゴの産地と聞いて、真っ先に思い浮かぶのは、やっぱり青森県ではないでしょうか。ところが、北海道にも、明治時代からリンゴを育て続けてきた町があるんです。

それが、洞爺湖の南東に位置する北海道壮瞥町(そうべつちょう)。すぐ近くには有珠山や昭和新山がそびえ、火山の活動によって形づくられた大地が広がっています。そんな場所で、秋になると赤や黄色のリンゴがたわわに実るなんて、ちょっと意外ですよね。

2026年10月26日の『あさイチ』中継では、今まさに旬を迎えている壮瞥町のリンゴが紹介されます。気になるのは、青森のリンゴと何が違うのか、ということ。寒さの厳しい北海道で、どうしてリンゴ栽培が盛んになったのでしょう。そして壮瞥町で栽培されている「トキ」や「初恋」といった、あまり聞き慣れない名前のリンゴには、どんな特徴があるのでしょうか?

実は、壮瞥町のリンゴを知るには、洞爺湖周辺の気候や火山由来の土壌、そして明治から受け継がれてきた果樹づくりの歴史が、大切な手がかりになりそうです。今回は、青森とはまた違った北海道のリンゴの魅力を探しながら、火山のふもとに広がる果樹園の物語をたどってみたいと思います。

【放送日:2026年10月26日(月)8:15 -9:55・NHK-総合】

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  1. 北海道でもリンゴが育つの?|壮瞥町が「果物の里」になった理由
    1. 北海道なのに、比較的温暖な町
    2. 火山がつくった、果物を育てる大地
    3. リンゴだけじゃない「果物の里」
    4. 北海道の中にある、もう一つのリンゴの故郷
  2. 壮瞥町のリンゴは、青森産と何が違うの?|気候と火山の大地が生む個性
    1. 青森の「ふじ」や「つがる」は、壮瞥町でも育つ
    2. 青森も壮瞥町も、リンゴに適した涼しい土地
    3. 壮瞥町には、火山が残した土壌がある
    4. 青森は全国へ、壮瞥町は果樹園で出会う楽しさも
    5. 同じリンゴでも、育つ土地の物語は違う
  3. 「トキ」と「初恋」ってどんなリンゴ?|知られざる品種の魅力
    1. 黄色い「トキ」は、甘くて香り豊かなリンゴ
    2. 「初恋」は、名前だけでなく誕生の物語も素敵
    3. まだまだある、壮瞥町の秋のリンゴ
    4. 品種の名前を知ると、リンゴの味わいも変わる
  4. 壮瞥町では、いつからリンゴを育てているの?|明治から続く果樹栽培の歴史
    1. 明治13年、壮瞥町に300本のリンゴがやってきた
    2. 最初のリンゴは「石りんご」と呼ばれていた?
    3. 青森だけではなかった、病害虫との闘い
    4. 火山の恵みと、噴火の試練
    5. 米づくりの転換が、果物の町を育てた
    6. 一本のリンゴの木が伝える、140年の物語
  5. もぎたてのリンゴは、なぜ特別なの?|壮瞥町で味わう秋の恵み
    1. もぎたてだからこそ楽しめる、リンゴの香りと歯ごたえ
    2. 壮瞥町の「そうべつくだもの村」で楽しむリンゴ狩り
    3. リンゴを買うだけでは出会えない、果樹園の風景
    4. 「果物の里」を未来へつなぐもの
    5. 一個のリンゴに、火山の大地と140年の歴史がある
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北海道でもリンゴが育つの?|壮瞥町が「果物の里」になった理由

「北海道でリンゴが採れるの?」そんな疑問を持つ人も、少なくないかもしれません。リンゴといえば青森県。寒さに強い果物というイメージはあっても、雪深い北海道に果樹園が広がっているとは、なかなか想像しにくいですよね。

ところが、北海道の南西部には、リンゴをはじめとする果物づくりが盛んな町があります。それが、洞爺湖の東側に位置する壮瞥町(そうべつちょう)です。

北海道なのに、比較的温暖な町

壮瞥町の風景を思い浮かべると、まず目に入るのは美しい洞爺湖。そして、有珠山や昭和新山といった火山の山々です。実は、この町は太平洋側にあって、北海道の中でも比較的温暖な地域として知られています。

壮瞥町の公式資料によれば、年平均気温は7.8℃。平坦地の冬の積雪も30cm前後と、道内では比較的少ないのが特徴です。もちろん、本州の温暖な地域と比べれば冬は厳しいものの、北海道のどこも同じように寒く、雪深いわけではないのです。

さらに、果樹園が広がる壮瞥盆地には、周囲を山や丘陵に囲まれた地形ならではの特徴があります。山々が風を和らげ、日当たりがよく、雨や霧も比較的少ない。リンゴの木が育ち、実をつけるための条件が、この小さな盆地にはそろっているのです。

火山がつくった、果物を育てる大地

もう一つ、壮瞥町を語るうえで欠かせないのが、火山の存在です。洞爺湖は、かつての大規模な火山活動によって生まれたカルデラ湖。その南側には、今も活動を続ける有珠山がそびえています。1943年から1945年にかけて誕生した昭和新山も、この地域の火山活動の激しさを物語っています。

火山というと、噴火や降灰など、暮らしを脅かす存在を思い浮かべるかもしれません。けれども、長い時間の中で、火山は農業に利用できる大地もつくってきました。この地域には、火山灰や軽石などを含む土壌があり、水はけのよさが果樹栽培に役立っています。

ただし、火山灰が混じっていれば、どんな土地でも果物がおいしく育つというわけではありません。土壌の性質に加えて、日照や気温、降水量、そして農家の人たちの栽培技術が重なって、初めて果樹園は成り立ちます。壮瞥町は、そんな自然条件を上手に生かしてきた土地なのです。

リンゴだけじゃない「果物の里」

壮瞥町で育てられているのは、リンゴだけではありません。春から初夏にはイチゴやサクランボ、夏にはプラム、秋にはブドウやプルーン、そしてリンゴ。季節が移り変わるたびに、果樹園の主役も変わっていきます。町には「そうべつくだもの村」という観光果樹園の集まりもあります。

1987年に結成されたこの組織には18戸の果樹園が参加し、果物狩りや直売、体験学習などを通して、訪れる人々に壮瞥町の実りを届けています。つまり壮瞥町は、果物を生産するだけでなく、訪れた人が自分の手で収穫し、その場で味わえる町でもあるのです。

そして、その果物づくりの歴史は、明治時代にまでさかのぼります。北海道の開拓が進められていた頃、この土地にリンゴの木を植え、育てようとした人たちがいたのです。その挑戦が、今日の「果物の里」へとつながっていきました。

北海道の中にある、もう一つのリンゴの故郷

青森県のような大産地と比べれば、壮瞥町のリンゴは全国的にはまだ知られていないかもしれません。けれども、洞爺湖を望む火山の大地には、長い年月をかけて育まれてきたリンゴの風景があります。

北海道だからリンゴが育たないのではなく、北海道の中にも、リンゴづくりに適した土地がある。そう考えると、日本の果物の産地図が、少し違って見えてきませんか。では、同じリンゴでも、青森県と北海道の壮瞥町では、どんな違いが生まれるのでしょう。次は、二つの産地の気候や土壌に目を向けながら、その個性を探ってみたいと思います。

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壮瞥町のリンゴは、青森産と何が違うの?|気候と火山の大地が生む個性

リンゴといえば青森県。「ふじ」「つがる」「王林」「ジョナゴールド」など、スーパーでもおなじみの名前が並びます。では、北海道の壮瞥町では、いったいどんなリンゴが育てられているのでしょうか? 実は、調べてみると意外なことがわかりました。

壮瞥町と青森県では、栽培されているリンゴの品種が、必ずしも大きく違うわけではないのです。同じ品種が、異なる土地で育てられている。つまり、二つの産地の違いを知るには、品種の名前だけでなく、そのリンゴが育つ環境にも目を向ける必要がありそうです。

青森の「ふじ」や「つがる」は、壮瞥町でも育つ

青森県は、日本のリンゴ生産量の6割以上を占める、全国最大の産地です。中でも「ふじ」は、県内の栽培面積のおよそ半分を占める代表品種。ほかにも「王林」「つがる」「ジョナゴールド」などが広く栽培され、日本全国へ出荷されています。

一方、壮瞥町でも「つがる」や「ふじ」の系統をはじめ、さまざまな品種が栽培されています。さらに、10月下旬の果樹園には、黄色い「トキ」、大玉の「初恋」、赤い「シナノスイート」なども登場します。

ここで興味深いのが「トキ」です。実はこのリンゴ、青森県で生まれた品種なのです。「王林」と「ふじ」を親に持つ、甘みと香りが特徴の黄色いリンゴ。青森で生まれた品種が、北海道の壮瞥町でも大切に育てられているなんて、なんだか面白いですよね。産地が違うから品種もまったく違う、というわけではないのです。

青森も壮瞥町も、リンゴに適した涼しい土地

では、同じ品種なら、どこで育てても同じ味になるのでしょうか。もちろん、そう単純ではありません。リンゴの生育には、気温、日照、降水量、土壌など、さまざまな条件が関わっています。青森県は、夏の比較的涼しい気候や、朝晩の気温差などを生かしてリンゴを栽培してきました。

一方、壮瞥町も北海道の中では比較的温暖な地域です。洞爺湖の周辺に位置し、果樹園が広がる壮瞥盆地は、山や丘陵に囲まれています。周囲の地形によって風が和らぎ、日当たりがよく、雨や霧も比較的少ない。つまり、壮瞥町は「北海道だから特別に寒い場所」というより、北海道の中でも果物づくりに向いた環境を持つ場所なのです。

また、リンゴは成熟する時期の気温や日照などによって、色づきや糖の蓄積、酸味の変化が左右されます。同じ品種でも、栽培する土地やその年の天候によって、味わいや収穫のタイミングに違いが生まれることがあります。

ただし、だからといって青森産より壮瞥産の方が甘い、あるいは酸味が強いと、一概に決めつけることはできません。その違いを確かめるには、同じ品種を実際に食べ比べてみる必要がありそうです。

壮瞥町には、火山が残した土壌がある

そして、壮瞥町ならではの特徴として見逃せないのが、火山の大地です。洞爺湖の周辺には、過去の火山活動によって生まれた火山灰や軽石を含む土壌が広がっています。こうした土壌には、水はけがよい場所があり、果樹栽培に利用されてきました。

果物の木にとって、水は大切です。けれども、根の周りに水がたまり続ければ、根が十分に呼吸できず、生育に悪影響が出ることもあります。そのため、水はけのよさは果樹園にとって重要な条件の一つなのです。

もっとも、火山灰の土壌なら必ずおいしいリンゴができる、というわけではありません。必要な水分や養分を保つための管理も欠かせず、土地の性質に合わせた農家の工夫があってこそ、リンゴの木は健やかに育ちます。火山がつくった大地を、人々が長い年月をかけて果樹園に変えてきた。そこに、壮瞥町のリンゴづくりの魅力があるのでしょう。

青森は全国へ、壮瞥町は果樹園で出会う楽しさも

もう一つ、二つの産地の違いとして注目したいのが、リンゴと消費者の出会い方です。青森県では、大規模な生産と出荷の仕組みが発達し、貯蔵技術も生かしながら、全国へリンゴを届けています。私たちが季節を問わずスーパーでリンゴを買えるのも、こうした産地の努力に支えられているのです。

一方、壮瞥町には、リンゴ狩りや直売を楽しめる観光果樹園が集まっています。自分で木からリンゴをもぎ取り、品種ごとの違いを楽しみ、気に入ったものを持ち帰る。そんな、産地ならではの体験ができるのです。

もちろん青森県にも観光果樹園はありますし、壮瞥町でも出荷は行われています。けれども、壮瞥町の「そうべつくだもの村」に象徴される、果樹園と訪れる人との近さは、この町の大切な魅力の一つといえそうです。

同じリンゴでも、育つ土地の物語は違う

青森県と北海道壮瞥町。どちらも、リンゴづくりに適した自然条件を生かしてきた土地です。そして、同じ「ふじ」や「トキ」であっても、その実が育つまでには、それぞれの土地の気候や土壌、農家の工夫があります。

リンゴの名前だけを見ていたら、気づかない違い。でも、産地を知ることで、一個のリンゴが少し違って見えてきます。では、壮瞥町の秋の果樹園で出会える「トキ」や「初恋」は、どんな味わいなのでしょうか? 次は、名前を聞くだけでも気になる、個性豊かなリンゴたちを紹介していきましょう。

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「トキ」と「初恋」ってどんなリンゴ?|知られざる品種の魅力

秋の果樹園には、赤や黄色のリンゴがたわわに実っています。でも、リンゴとひと口に言っても、その種類は実にさまざま。スーパーでよく見かける「ふじ」や「王林」なら知っていても、「トキ」や「初恋」という名前を聞くと、どんなリンゴなのか気になりませんか。

北海道壮瞥町の「ほりぐち果樹園」では、2026年10月10日のお知らせで、この二つの品種が旬を迎えていると紹介されていました。実は、どちらも青森県で生まれたリンゴ。青森のリンゴと北海道のリンゴを比べていたら、二つの産地をつなぐ品種に出会ったのです。

黄色い「トキ」は、甘くて香り豊かなリンゴ

「トキ」(出典:食べチョク)
「トキ」(出典:食べチョク)

「トキ」は、黄色から黄緑色の果皮が特徴のリンゴです。日光が当たった部分が、ほんのり赤く染まることもあります。赤いリンゴが並ぶ中に、明るい黄色のトキが混じっていると、果樹園の風景も一段と華やかになりそうですね。

このトキは、青森県五所川原市の土岐傳四郎(とき でんしろう)さんが育成した品種です。名前の「トキ」も、育成者の名字に由来しています。そして、親となったのは「王林」と「ふじ」。王林の芳醇な香りと、ふじのシャキシャキした歯ごたえを受け継ぎ、甘みが強く、果汁も豊富なリンゴとして知られています。

実は、品種登録時には「王林」と「紅月」の交配とされていましたが、その後の遺伝子解析によって「王林」と「ふじ」の組み合わせだとわかったそうです。リンゴの親子関係にも、後から明らかになる秘密があるのですね。

青森県では9月下旬から10月上旬にかけて収穫されることが多いトキ。壮瞥町の果樹園でも、10月には旬のリンゴとして紹介されています。甘いリンゴが好きな人なら、ぜひ一度味わってみたい品種です。

「初恋」は、名前だけでなく誕生の物語も素敵

「初恋」(出典:リンゴ大学)
「初恋」(出典:リンゴ大学)

続いて気になるのが、「初恋」という名前のリンゴ。なんとも可愛らしい名前ですよね。でも、名前だけではありません。この品種は、青森県立弘前実業高等学校の農業経営科にゆかりのあるリンゴなのです。同校の旧藤崎校舎の卒業生で、講師も務めた太田昌文さんが、「つがる」の実生から選び出して育成しました。

そして、このリンゴに「初恋」という名前をつけたのは、なんと俳優の梅沢富美男さん。テレビのロケで太田さんの園地を訪れた際に命名したと紹介されています。まさか、リンゴの品種名に俳優が関わっていたなんて、ちょっと驚きですよね。

初恋は、濃い赤色の果皮に縞模様が入り、果実の重さはおよそ300〜350g。糖度は14〜15度ほどで、酸味は比較的少なく、歯ごたえもよいとされています。

壮瞥町のほりぐち果樹園でも、初恋は大きな実が特徴として紹介されています。木になった大きなリンゴを見つけて、自分の手でもぎ取る。そんな体験も、果樹園ならではの楽しみなのでしょう。

まだまだある、壮瞥町の秋のリンゴ

壮瞥町で楽しめるのは、トキと初恋だけではありません。ほりぐち果樹園では、10月10日に「華宝(かほう)」のリンゴ狩りが終了したことが案内され、10月20日には「シナノスイート」の収穫が始まったと紹介されています。

シナノスイートは、長野県で生まれた赤いリンゴ。「ふじ」と「つがる」を親に持ち、甘みが強く、果汁の多い品種として知られています。青森で生まれたリンゴも、長野で生まれたリンゴも、北海道の果樹園で実っている。

こうして見ていくと、壮瞥町のリンゴ栽培は、全国各地で育成されてきた品種を、この土地の環境に合わせて育てる営みでもあることがわかります。そして、収穫する時期が品種によって異なるからこそ、秋の果樹園では、訪れる時期によって違うリンゴに出会えるのです。

品種の名前を知ると、リンゴの味わいも変わる

これまで、スーパーでリンゴを選ぶとき、赤いか黄色いか、大きいか小さいか、値段はいくらか。そんなことばかり気にしていたかもしれません。でも、一つひとつの品種には、それぞれ生まれた場所があり、育てた人がいて、名前に込められた物語があります。

土岐さんの名前を受け継いだ「トキ」。高校での育種の取り組みから生まれ、俳優によって名づけられた「初恋」。そんな背景を知ってから食べるリンゴは、少し特別なものに感じられそうです。

そして、そのリンゴたちを北海道の壮瞥町で育てている人々がいます。明治時代から果物づくりが続いてきたこの町では、どのようにしてリンゴ栽培が根づいたのでしょうか。次は、壮瞥町の果樹園が歩んできた歴史をたどってみたいと思います。

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壮瞥町では、いつからリンゴを育てているの?|明治から続く果樹栽培の歴史

北海道壮瞥町の果樹園には、秋になると赤や黄色のリンゴがたわわに実ります。けれども、この美しい風景が生まれるまでには、長い年月がかかりました。リンゴの木を植えたからといって、すぐにおいしい実が収穫できるわけではありません。

病気や害虫、厳しい自然環境、そして社会の変化。壮瞥町の果樹農家も、そうした困難を乗り越えながら、リンゴづくりを続けてきたのです。その歴史は、今から140年以上前の明治時代にさかのぼります。

明治13年、壮瞥町に300本のリンゴがやってきた

日本で西洋リンゴの本格的な栽培が始まったのは、明治時代のことです。1874年(明治7年)、北海道開拓使はアメリカから75品種の果樹を導入し、函館近郊の七飯で苗木の増殖を進めました。そして1880年(明治13年)、壮瞥には300本のリンゴの苗木が配布されたと記録されています。

当時の北海道は、開拓が進められていた時代。新しい農作物を育て、土地に合った農業を模索する中で、リンゴもその候補の一つになったのでしょう。さらに1886年(明治19年)、札幌農学校の校長も務めた橋口文蔵が壮瞥に農場を開設し、リンゴ栽培の指導にあたりました。

ここから、本格的な果樹栽培が広がっていったとされています。興味深いことに、青森県で西洋リンゴの苗木が植えられたのは1875年(明治8年)。つまり、青森と壮瞥町のリンゴ栽培は、ほぼ同じ時代に始まっていたのです。今では生産規模に大きな違いがありますが、どちらも明治の人々が新しい果物に可能性を見いだした土地だったのですね。

最初のリンゴは「石りんご」と呼ばれていた?

今のリンゴといえば、甘くてみずみずしく、シャキシャキした歯ごたえが魅力です。ところが、壮瞥町で栽培が始まった頃のリンゴは、必ずしもそうではありませんでした。北海道果樹協会の資料によると、当時は栽培管理が十分ではなく、実が小さく、味もよくなかったため、「石りんご」と呼ばれていたそうです。

なんとも厳しい名前ですよね。でも、考えてみれば無理もありません。海外から導入されたリンゴを、北海道の気候に合わせて育てる。剪定や施肥、病害虫対策など、必要な技術を身につけるまでには、試行錯誤があったはずです。それでも栽培をあきらめず、経験を重ねていった人たちがいました。

その努力によって、1897年(明治30年)頃には、リンゴを中心にナシ、ウメ、サクランボなども栽培されるようになったといいます。一つの果物から、さまざまな果物へ。現在の「果物の里」につながる風景が、少しずつ形づくられていったのです。

青森だけではなかった、病害虫との闘い

実は、青森県のリンゴ栽培も、決して順調に発展したわけではありません。1900年(明治33年)にはモニリア病が大発生し、収穫がほとんどなくなった園地もありました。1902年には害虫や腐らん病などによる被害が広がり、リンゴの木を伐採する農家も続出しました。そこで、袋かけや薬剤散布、剪定方法の改善など、さまざまな対策が試みられたのです。

では、壮瞥町はどうだったのでしょうか。実は、壮瞥町の歴史をまとめた資料にも、果樹栽培を妨げた要因として病害虫の問題が記されています。ただし、青森と同じ病気が同じ時期に流行したのか、どれほどの被害があったのかまでは、この資料からはわかりません。

それでも、二つの産地が共通して、リンゴを守り育てる難しさに向き合ってきたことは確かでしょう。私たちが当たり前のように食べているリンゴには、そうした長年の技術の積み重ねがあるのです。

火山の恵みと、噴火の試練

そして壮瞥町には、青森とはまた違った自然の試練がありました。それが、火山の噴火です。1943年(昭和18年)から1945年にかけて、有珠山の東側で地面が隆起し、溶岩ドームが成長しました。こうして誕生したのが、昭和新山です。

昭和新山
昭和新山

現在では壮瞥町を代表する観光名所ですが、当時の人々にとっては、突然畑が盛り上がり、身近な大地が動き始めるという、恐ろしい出来事だったはずです。壮瞥町のリンゴ栽培の歴史にも、昭和新山の降灰による影響が記録されています。

火山灰や軽石を含む土壌は、場所によっては水はけのよさにつながり、果樹栽培に利用されてきました。けれども、噴火によって降り積もる火山灰は、農作物に被害をもたらすことがあります。火山がつくった土地で果物を育てながら、火山そのものの活動にも苦しめられてきた。壮瞥町のリンゴの歴史には、そんな自然との複雑な関係があるのです。

米づくりの転換が、果物の町を育てた

さらに、戦中戦後の食糧難も果樹栽培に影響を与えました。食糧増産が求められる中では、果物よりも穀物の生産が優先されることがあったのです。

その後、昭和40年代に入ると、日本の農業は新たな転換期を迎えます。米の生産調整が始まり、壮瞥町でも果樹栽培を専門とする農家が増えていきました。そして、国道453号線沿いの果樹農家は、交通の利便性を生かして直売所を開設。

リンゴを生産して出荷するだけでなく、訪れた人が自分で果物をもぎ取れる観光果樹園としての取り組みを進めていきました。1987年(昭和62年)には、「そうべつくだもの村」が結成されます。果物をつくる町から、果物を楽しみに人々が訪れる町へ。壮瞥町の果樹栽培は、時代に合わせて、その姿を変えてきたのです。

一本のリンゴの木が伝える、140年の物語

実は、壮瞥町の「浜田園」には、開拓当時に植えられたと伝わる古いリンゴの木が、今も残されているそうです。明治の人々が植えたリンゴの木が、長い年月を経て、現在の果樹園につながっている。そう思うと、秋の果樹園の風景が、少し違って見えてきませんか。

最初は「石りんご」と呼ばれた小さな実。病害虫に苦しみ、火山の降灰に向き合い、社会の変化に合わせて栽培の方法を変えてきた人々。その歴史の先に、今の甘くてみずみずしいリンゴがあります。果物の里は、自然の恵みだけで生まれたのではありません。その土地で果物を育て続けようとした、人々の努力によってつくられてきたのです。

では、そんな壮瞥町のリンゴを、最も身近に感じられるのはどんな瞬間でしょうか。次は、果樹園で自分の手でもぎ取る、秋のリンゴの魅力を訪ねてみましょう。

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もぎたてのリンゴは、なぜ特別なの?|壮瞥町で味わう秋の恵み

秋の果樹園を歩いていると、枝いっぱいに実った赤や黄色のリンゴが目に入ります。手を伸ばせば届きそうなところに、丸々と育ったリンゴ。その一つを自分の手でもぎ取り、シャキッとひと口かじる。想像するだけでも、おいしそうですよね。

北海道壮瞥町では、そんな秋ならではの楽しみを味わうことができます。でも、もぎたてのリンゴには、スーパーで買うリンゴとは違う、どんな魅力があるのでしょうか。

もぎたてだからこそ楽しめる、リンゴの香りと歯ごたえ

リンゴをかじったときの、あの小気味よい音。口の中に広がる果汁と、甘酸っぱい香り。リンゴのおいしさには、甘みや酸味だけでなく、歯ごたえや香りも大きく関わっています。果樹園で味わうリンゴの魅力は、何といっても、自分の目で実を選び、収穫したばかりの果実を楽しめることです。

木の上で十分に育ったリンゴを選べば、その品種らしい味わいを感じられるでしょう。ただし、もぎたてのリンゴが、保存されたリンゴより必ずおいしいとは限りません。リンゴは収穫後も変化を続け、品種によっては適切に貯蔵することで味わいが整うものもあります。

また、青森県などでは、低温や酸素濃度を管理する貯蔵技術によって、収穫から時間がたっても品質を保つ工夫がされています。

それでも、秋の果樹園で食べるリンゴには、特別な魅力があります。目の前の木になっていた果実を、自分で選んで味わう。その体験そのものが、リンゴをいっそうおいしく感じさせてくれるのかもしれません。

壮瞥町の「そうべつくだもの村」で楽しむリンゴ狩り

壮瞥町には、果物狩りや直売を楽しめる観光果樹園が集まっています。その代表的な取り組みが、1987年に結成された「そうべつくだもの村」です。リンゴだけでなく、サクランボやプラム、ブドウ、プルーンなど、季節ごとにさまざまな果物を楽しめるのが特徴です。

秋になると、果樹園にはリンゴを目当てに訪れる人々の姿があります。たとえば「ほりぐち果樹園」では、収穫時期に合わせてリンゴ狩りを案内しています。「くだもの農家 浜田園」でも、果物の直売や季節の果物狩りなどを行っています。

こうした果樹園では、訪れる時期によって出会える品種が変わります。黄色く香り豊かな「トキ」。大きな実が印象的な「初恋」。そして、甘みが強い「シナノスイート」。名前を知ってから果樹園を訪れれば、リンゴを選ぶ楽しみも増えそうですね。

ただし、収穫できる品種や果物狩りの実施状況は、その年の天候や収穫の進み具合によって変わります。訪れる際には、各果樹園の最新情報を確かめておきたいところです。

リンゴを買うだけでは出会えない、果樹園の風景

壮瞥町の果樹園の魅力は、リンゴの味だけではありません。周囲には、洞爺湖や有珠山、昭和新山といった、この土地ならではの風景が広がっています。火山の活動によって形づくられた大地。その上で、長い年月をかけて育てられてきた果物の木々。そして、実りの季節を迎えると、枝いっぱいに赤や黄色のリンゴが並びます。

私たちがスーパーで目にするリンゴは、きれいに並べられた果実です。けれども果樹園を訪れれば、そのリンゴがどんな木になり、どんな場所で育っているのかを、自分の目で見ることができます。木の高さも、葉の形も、実のつき方も、品種によって少しずつ違う。果物を食べるだけでは気づかなかった発見が、そこにはあるのでしょう。

「果物の里」を未来へつなぐもの

壮瞥町でリンゴ栽培が始まったのは、明治時代のことでした。最初から、おいしいリンゴが実ったわけではありません。栽培技術が十分でなかった時代には、「石りんご」と呼ばれるような実しかできなかったこともありました。

病害虫や火山の降灰に苦しみ、社会の変化に合わせて農業のあり方を変えながら、それでも人々は果物づくりを続けてきました。そして今、その果樹園には、収穫を楽しみに訪れる人々がいます。農家が育てたリンゴを、訪れた人が自分の手でもぎ取る。

その小さな体験が、果物づくりへの関心を生み、次の季節にもまた訪れたいという気持ちにつながっていくのかもしれません。果樹園は、ただ果物を生産する場所ではありません。その土地の自然と、人々の仕事と、訪れる人の楽しみが出会う場所でもあるのです。

一個のリンゴに、火山の大地と140年の歴史がある

「北海道でもリンゴが育つの?」そんな素朴な疑問から始まった、今回の壮瞥町のリンゴ物語。調べてみると、そこには青森県ともつながる品種の歴史があり、火山がつくった土壌があり、明治から続く人々の努力がありました。

青森のリンゴにも、壮瞥町のリンゴにも、それぞれの土地ならではの物語があります。そして、その物語をいちばん身近に感じられるのが、果樹園で一個のリンゴを手に取る瞬間なのかもしれません。

木からもぎ取ったリンゴを、ひと口かじる。シャキッという音とともに、甘酸っぱい果汁が口いっぱいに広がります。そのおいしさの向こうには、洞爺湖の風景があり、有珠山の火山活動があり、リンゴを育て続けてきた人々の歴史があります。

一個のリンゴを食べることは、その土地が育んできた時間を味わうことなのかもしれません。いつか秋の壮瞥町を訪れることがあったら、ぜひ果樹園にも足を運んでみたいものです。そして、赤や黄色に実ったリンゴの中から、お気に入りの一個を選んでみたいですね。


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