子どものころ、「もうすぐ3時だ」と時計を見ながら、おやつの時間を楽しみに待っていた人も多いのではないでしょうか。甘いお菓子やおせんべい、季節の野菜や手作りのおはぎ――おやつは空腹を満たすだけでなく、忙しい毎日にほっとひと息つく時間や、大切な人と笑顔を交わす時間でもありました。
『新日本風土記』「おやつの時間」は、日本各地に受け継がれてきたさまざまなおやつと、それを囲む人々の暮らしを見つめます。宮大工の緊張をほぐす休憩時間、海女たちがかまどを囲む語らい、故郷を思い出させるサーターアンダギー、子どもたちを応援するコロッケ――ひと口のおやつには、その土地の風土や人々の思いやりが息づいています。
この記事では、おやつがつないできた人と人との絆や、日本各地に根付く豊かな食文化を、『新日本風土記』とともにたどっていきます。
【放送日:2026年8月3日(月)17:00 -18:00・NHK-BS】
【放送日:2026年8月9日(日)7:00 -7:59・NHK-BS】
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おやつは、暮らしの中の小さな楽しみ
「おやつの時間」と聞くと、子どものころ、時計の針が3時を指すのを楽しみに待っていた記憶がよみがえる人も多いのではないでしょうか。学校から帰ると食卓に並んでいたお菓子や果物、手作りのおやつは、お腹を満たすだけでなく、一日の楽しみでもありました。
しかし、おやつは子どもだけのものではありません。仕事の合間にお茶を飲みながらひと息ついたり、家族や仲間とお菓子を囲んで語り合ったりと、大人にとっても気持ちを切り替える大切な時間になっています。
今回の『新日本風土記』では、日本各地に受け継がれてきたさまざまなおやつを通して、人々の暮らしを見つめます。宮大工や海女、建設現場で働く人たちなど、それぞれの現場で「おやつの時間」が果たしてきた役割は決して小さくありません。
おやつは、空腹を満たすためだけのものではなく、人の心をほぐし、誰かと笑顔を交わすきっかけをつくってくれるものでもあります。
忙しい毎日の中でほんの少し立ち止まり、お茶を飲み、おやつを口にする――そんな何気ない時間が、昔も今も変わらず人々の暮らしを支えてきたのでしょう。
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働く人を支える、おやつの時間
おやつは、子どもの楽しみというイメージがありますが、日本では古くから働く人たちにとっても欠かせない存在でした。
今回の『新日本風土記』では、宮大工の10時と3時のおやつが紹介されます。緻密な作業が続く現場では、一瞬の気の緩みが大きな事故や失敗につながることもあります。だからこそ、おやつの時間は単なる休憩ではなく、張り詰めた緊張をやわらげ、気持ちを切り替える大切なひとときとして受け継がれてきました。
三重県・鳥羽で海に潜る海女たちにとっても、おやつの時間は特別です。かまどを囲みながら温かいものを口にして体を温め仲間と語り合う時間は、命を預け合う仲間との信頼を深める大切な時間でもあります。
また、夏の建設現場で働く人たちにとっては、「塩バナナ」のようなおやつが熱中症対策としても役立っています。おやつは甘いものとは限らず、その土地の気候や仕事に合わせて工夫され、人々の健康や安全を支えてきました。
仕事の内容は違っても、どの現場にも共通しているのは、「少し休んで、また頑張ろう」という時間があることです。おやつは、働く人の体だけでなく、心にもそっと寄り添い、次の一歩を支える大切な役割を果たしてきたのでしょう。
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故郷と季節を味わう、おやつ文化
おやつには、その土地ならではの風土や季節が映し出されています。同じ「おやつ」でも、地域が変われば食べるものも、その意味も少しずつ違ってきます。
今回の『新日本風土記』では、沖縄のサーターアンダギーや、くるみの里で受け継がれるおはぎ、田植えの時期だけにつくられるよもぎのお菓子、地元野菜を使ったコロッケなど、日本各地のおやつ文化が紹介されます。
サーターアンダギーは、遠く離れた故郷を思い出させる懐かしい味として、人々の心を支えてきました。おはぎには、お客様を温かく迎える「おもてなし」の心が込められ、よもぎのお菓子には、春から初夏へと移り変わる季節の息吹が感じられます。
また、「季節のおやつ」と聞くと、多くの人は夏のかき氷や水ようかんを思い浮かべるかもしれません。しかし、日本には福井県のように、冬に水ようかんを味わう地域もあります。同じ食べ物でも、その土地の気候や暮らしによって「旬」の感じ方はさまざまなのです。
おやつは、その土地の食材を味わうだけでなく、季節の訪れを感じ、故郷を思い、人とのつながりを確かめる時間でもあります。ひと口のおやつには、日本各地で受け継がれてきた暮らしの記憶が、今も静かに息づいているのでしょう。
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おやつは、人と人をつないできた
おやつには、お腹を満たす以上の役割があります。誰かと同じお菓子を囲み、お茶を飲みながら語り合う時間には、不思議と人の心を近づける力があります。
今回の『新日本風土記』に登場する宮大工や海女たちも、おやつの時間を通して仲間との絆を深めてきました。仕事の話だけではなく、家族のことや季節の話を交わしながら笑い合う、そんな何気ないひとときが、長い年月をかけて信頼関係を育んできたのでしょう。
また、地元の野菜を使ったコロッケで子どもたちを応援する人々や、お客様を迎えるために心を込めておはぎを作る人々の姿からも、おやつが「誰かを思う気持ち」と深く結びついていることが伝わってきます。
おやつは、特別なごちそうではありません。だからこそ、毎日の暮らしの中で自然に人と人をつなぎ、笑顔を生み出してきました。仕事の合間のひと息も、故郷を思い出す味も、家族と囲むお茶の時間も、その中心にはいつも小さなおやつがありました。
ひと口のおやつが運んでいたのは、甘さだけではなく、人を思いやる温かい気持ちだったのかもしれません。
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ひと口のおやつが、今日という日を少し幸せにする
おやつは、豪華なごちそうではありません。ほんのひと口のお菓子や、湯気の立つお茶とともに過ごすわずかな時間です。それでも、そのひとときは忙しい毎日の中で心をゆるめ、「また頑張ろう」と前を向く力をそっと与えてくれます。
宮大工の仕事を支える休憩時間も、海女たちがかまどを囲む語らいも、故郷を思い出すサーターアンダギーも、季節を感じるおはぎやよもぎのお菓子も、それぞれの土地で人々の暮らしに寄り添いながら受け継がれてきました。
おやつは、空腹を満たすためだけではなく、人と人との距離を縮め、季節の移ろいを感じ、暮らしに小さな彩りを添えてくれる存在です。
忙しい日々を過ごしていると、つい「早く終わらせなきゃ」と前ばかりを見てしまうことがあります。そんなときこそ、お茶を一杯淹れて、ひと口だけおやつを味わってみる。その小さな時間が、今日という日を少しだけ穏やかに、少しだけ幸せに変えてくれるのかもしれません。
『新日本風土記』「おやつの時間」は、日本各地に受け継がれてきたおやつを通して、何気ない毎日の中にある豊かな時間の大切さを、あらためて教えてくれることでしょう。