春の訪れを告げる雛人形。豪華な段飾りも素敵だけれど、いま注目されているのは、もっとやさしいかたちです。
山口県光市で作られている「陶びな」は、その名の通り、陶器でできた雛人形。土のぬくもりを感じる丸みのある表情と、素朴であたたかな風合いが魅力です。現代の住宅事情に合わせて、コンパクトに飾れるサイズ感。けれどそこには、職人の手仕事が息づいています。
あさイチ中継で紹介されるのは、光市の「美土里陶房」や「椿窯」。それぞれの窯元が生み出す、土から生まれた新しい雛人形の世界とは?
春を迎える食卓や玄関先に、やさしい土の彩りを添える「陶びな」。その魅力を探ります。
【放送日:2026年3月3日(火)8:15 -9:55・NHK-総合】
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陶びなとは?──土から生まれた新しい雛人形
雛人形といえば、豪華な段飾りや、きらびやかな衣装を思い浮かべる人が多いかもしれません。木や布、漆や金箔で彩られた伝統的な雛人形は、春の訪れを華やかに告げる存在です。
では、「陶びな」とはどんなお雛さまなのでしょうか? その名の通り、陶びなは陶器で作られた雛人形。土をこね、形を作り、乾燥させ、窯で焼き上げる。焼き物ならではの工程を経て生まれます。

特徴は、なんといってもそのやさしい表情。丸みを帯びたフォルムと、素朴であたたかな質感。どこかほっとする佇まいが魅力です。
陶器は、同じ型を使っても、焼き上がりによって微妙に色や表情が変わります。つまり、ひとつとしてまったく同じものはありません。また色付けにも人形の個性が現れます。
そしてもう一つの魅力は、飾りやすさ。コンパクトなサイズが多く、リビングや玄関、棚の上など、限られたスペースにも自然になじみます。豪華さとは違う、静かなかわいらしさ。陶びなは、現代の暮らしに寄り添う、新しいかたちの雛人形なのです。
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光市の窯元が生み出す個性──美土里陶房と椿窯
光市室積村伊保木地区には、陶びなを手がける窯元があります。「美土里陶房」と「椿窯」。2026年2月7日・8日には、伊保木コミュニティセンターで共同の「陶びな展」も開催されました。地域に根ざした、あたたかな取り組みです。
まず目を引くのは、美土里陶房の作品。素朴で丸みのあるフォルム。やさしく微笑むような表情。土の色味を活かした落ち着いた風合いは、どこか昔話に出てきそうな雰囲気があります。成形途中の写真を見ると、一体ずつ丁寧に作られているのがわかります。同じ形に見えても、少しずつ違う。焼き上がりで表情も変わります。

一方、椿窯の陶びなは、やや大胆な造形が印象的です。両手を大きく広げた姿は、祝福するようにも、春を迎える喜びを表しているようにも見えます。釉薬の色合いも柔らかく、光を受けるとほんのりとした艶が生まれる。

同じ「陶びな」でも、窯元ごとにこんなにも表情が違う。それは、土と向き合う人の個性がそのまま形になるから。陶びなは、量産品ではなく、つくり手の息づかいが残る雛人形なのです。
美土里陶房
- 山口県光市室積村東伊保木869
- TEL:0833-79-1545
- 営業時間:10:00~16:00
- 定休日:なし(土・日は不定休)
- URL:https://www.instagram.com/midoritoubou/
椿窯
- 山口県光市室積村770
- TEL:0833-79-2261
- 営業時間:10:00~16:00
- 定休日:なし
- URL:https://www.instagram.com/tsubakigama2018/
※残念ながらどちらもオンライン販売はされていないようですが、ふるさと納税の返礼品には指定されているようです。
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なぜいま陶びな?──現代の住宅事情と雛人形
かつて雛人形といえば、七段飾りが当たり前。広い和室に、豪華な段飾りを並べる光景が春の風物詩でした。けれど、いまはどうでしょうか。マンションや集合住宅に暮らす家庭も多く、収納スペースや飾る場所に限りがあるのが現実です。
大きな段飾りを出すのは大変。しまうのもひと苦労。そんな現代の暮らしに、陶びなは自然と寄り添います。コンパクトで、軽やか。棚の上やテレビボードの一角、玄関の小さなスペースにも飾れるサイズ感。それでいて、ちゃんと“ひな祭り”の気配をつくってくれる。
さらに、陶器ならではの安定感もあります。木製や布製に比べて倒れにくく、扱いも比較的シンプル。小さなお子さんがいる家庭でも、「触ってみたい」と思わせる丸みがあります。豪華さではなく、暮らしの中の春。陶びなは、伝統行事を“がんばらなくてもいい形”で続けられる選択肢なのです。
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土の温もりが伝えるものとは?──やさしさという価値
陶びなを手に取ると、まず感じるのはその重みです。軽すぎず、けれど負担にならないほどの重さ。それは、土と火がつくり出す安心感。きらびやかな装飾とは違い、素朴な色合いと丸みのある形は、どこかほっとする存在です。
万が一ほこりがついても、やさしく拭き取ればいい。扱いに神経質になりすぎなくていい。飾ることが“緊張”ではなく、暮らしの一部になる。それが陶びなの魅力です。
雛人形は、子どもの健やかな成長を願うもの。その願いは変わりません。ただ、その伝え方は、時代とともに少しずつ変わっていく。
豪華さよりも、身近さ。特別な日だけでなく、日常の中でそっと春を感じられるかたち。土のぬくもりが伝えるのは、派手さではなく、やさしさという価値なのかもしれません。光市の窯元が生み出す陶びなは、現代の暮らしに寄り添う、あたたかな選択肢です。

