巨大な地割れは、大噴火の予兆か!?|ケニアで進む『大陸分裂』の正体【グレートネイチャー】

大地溝帯 BLOG
スポンサーリンク

ある朝、いつもの大地が突然、二つに裂けていたら――。アフリカ・ケニアで目撃された巨大な地割れ。その規模は、長さ数キロ。場所によっては深さ15メートル、幅19メートルにも達したといいます。巨人でも、ひとまたぎどころか向こう側へ渡ることさえビビるような巨大な裂け目です。

しかもケニアが位置するのは、アフリカ大陸を南北およそ7000キロにわたって貫く大地溝帯(グレート・リフト・バレー)。文字どおり、大地が引き裂かれつつある場所です。その地下では、いったい何が起きているのでしょう?
『驚き!地球!グレートネイチャー』「大地分裂!迫りくる大噴火の予兆~ケニア~」では、そんな大陸分裂の最前線を訪ねます。

巨大な地割れ。地下から熱水が供給されるボゴリア湖。崖一面から噴き出す大量の蒸気。そして専門家から飛び出す、「巨大噴火がいつ起きてもおかしくない」という言葉。ここまで並べられたら、「ケニアでは、もうすぐ巨大噴火が起きるの?」と思ってしまいます。

でも、ちょっと待ってください。地面が裂けた。熱水が湧いている。蒸気が噴き出している。その三つがそろったからといって、「巨大噴火が迫っている」と、そのまま結びつけてしまっていいのでしょうか。そもそも、大地溝帯ではなぜ大地が裂けているのでしょう?

地球の表面を覆うプレートは、ぶつかる場所もあれば、互いに離れていく場所もあります。その多くは海の底にある海嶺として知られています。ところが東アフリカでは、そのダイナミックな変動が大陸の上で進んでいる。大地が引き伸ばされる。地殻が薄くなる。断層が生まれる。そして地下深くから、地球内部の熱の影響が現れる。

私たちが見ている巨大な地割れも、熱水も、噴気も、その壮大な地球活動の一場面なのかもしれません。そして、この大地の変化を何百万年という時間で見れば、さらに驚くべき未来が見えてきます。

今は大陸の真ん中にある場所が、いつの日か完全に引き裂かれ、そこへ水が入り込み、新しい海が生まれる可能性さえあるのです。だとしたらケニアで起きていることは、「大陸が壊れている」だけなのでしょうか? それとも、「新しい海が生まれようとしている」のでしょうか?

今回はケニアの巨大な地割れの縁に立って、その地下で何が起きているのかを探ってみましょう。巨大な地割れは、本当に大噴火の予兆なのか? そして、私たちが目撃している「大陸分裂」の先には、どんな地球の未来が待っているのでしょう。

【放送日:2026年8月27日(木)12:00 -12:30・NHK-BSP4K】
【放送日:2026年8月30日(日)5:30 -6:00・NHK-BSP4K】

<広告の下に続きます>

  1. 第一章 アフリカ大陸は、本当に裂けている?──7000kmを貫く「大地溝帯」の正体
    1. 大陸そのものが、ゆっくり引っ張られている
    2. でも、巨大な一本の亀裂がアフリカを割っているわけではない
    3. なぜ、そんなことがアフリカで起きている?
    4. アイスランドと、どこか似ている?
    5. 「大地が裂ける」の向こうには、海がある?
    6. では、あの巨大地割れは何だった?
  2. 第二章 一夜にして現れた巨大地割れは、何だった?──深さ15m・幅19mの亀裂を追う
    1. 「一夜にして大陸が裂けた」わけではない?
    2. では、大陸分裂とは関係ない?
    3. 大陸は、ポテチの袋みたいに裂ける?
    4. それでも、地割れが教えてくれること
  3. 第三章 湖は沸き、崖から蒸気が噴き出す──ケニアの地下で何が起きている?
    1. 地下の水を温めているのは何?
    2. なぜ、崖から蒸気が出てくる?
    3. 大地が裂けると、地下の熱が見えてくる?
    4. では、ボゴリア湖は「沸騰」している?
    5. 熱水があるなら、大噴火は近い?
    6. 地球の時間と、人間の「もうすぐ」
  4. 第四章 巨大地割れは、大噴火の予兆か!?──「大陸分裂」と火山活動の関係
    1. 大陸が裂ける場所では、なぜ火山活動が起きる?
    2. でも「関係がある」と「予兆である」は違う
    3. 本当に噴火が近づいたら、何を見る?
    4. 地質学者の「最近」は、人間にはちっとも最近じゃない
    5. 「いつ起きてもおかしくない」は、いつなのか?
    6. 巨大地割れが教えている、もっと大きなこと
  5. 最終章 アフリカに「新しい海」が生まれる?──大陸が裂けた先にある地球の未来
    1. 大陸が裂けたら、何が起こる?
    2. 「海ができる」は、空想の話ではない
    3. 日本海にも「海ではなかった時代」があった
    4. 1000万年後の地図には、何が描かれている?
    5. 「大噴火の予兆」から見えてきたもの
    6. 地球は、まだ完成していない
  6. あわせて読みたい
    1. 共有:
    2. いいね:
    3. 湘南ひらつかITサポートセンターをもっと見る

第一章 アフリカ大陸は、本当に裂けている?──7000kmを貫く「大地溝帯」の正体

地球儀でアフリカ大陸を見ると、巨大な一枚の大地に見えます。ところが、その東側をよく見てみると、大地には南北方向へ長く伸びる巨大な谷があります。大地溝帯(グレート・リフト・バレー)です。『驚き!地球!グレートネイチャー』では、アフリカ大陸を南北およそ7000kmにわたって貫く壮大な地形として紹介されています。

では、本当にアフリカ大陸は、真っ二つに裂けようとしているのでしょうか? 答えから言えば、長い地球の時間で見れば、実際に大陸が引き伸ばされ、分裂へ向かっている場所があります。ただし、紙を両手で引っ張って、「ビリッ!」と一筋の亀裂が伸びていくような現象ではありません。

大陸そのものが、ゆっくり引っ張られている

東アフリカでは、大陸の西側にあるヌビアプレートと、東側のソマリアプレートが離れる方向へ動いています。そのため、その間にある大陸地殻には引っ張る力が加わります。すると大地は引き伸ばされ、薄くなり、いくつもの断層が生まれます。

断層に挟まれた大地の一部が沈み込めば、細長い谷ができます。それがリフト――大地が引き裂かれていく場所です。実際、ケニア・リフトの地下を地震波で調べた研究では、地殻が南部のおよそ35kmから北部では20kmほどまで薄くなっていることが確認されています。

大陸の地殻の厚さは平均約30〜40km(厚いところでは60kmに達する)と言われていますから、これはかなり薄くなっていると考えても差し支えなさそうです。

さらに2026年には、ケニア北部のトゥルカナ・リフトで結晶質地殻が約13kmまで薄くなり、大陸分裂へ向かう「ネッキング」と呼ばれる段階にあることも報告されました。つまり「大陸が裂けている」は、単なる比喩ではないのです。

でも、巨大な一本の亀裂がアフリカを割っているわけではない

ここは今回の記事で大切にしておきたいところです。「アフリカ大陸が分裂している」と言われると、地面に一本の巨大な亀裂ができて、それが少しずつ南北へ伸びているような姿を想像したくなります。

でも実際には違います。リフト帯には、多数の断層があります。細長く沈み込んだ盆地があります。火山があります。湖があります。地震も起こります。ケニアのリフトを宇宙から見ると、ほぼ平行に並んだ多数の断層が谷を形づくっていることも確認できます。

つまり私たちが見ている「大地溝帯」は、大陸に入った一本の傷というより、大陸全体が引き伸ばされ、変形している巨大な帯と考えたほうが近そうです。

なぜ、そんなことがアフリカで起きている?

では、そもそもなぜ大陸が引き伸ばされているのでしょう? その答えを探そうとすると、今度は私たちの足元より、さらにずっと深い場所へ潜らなくてはなりません。

地球の表面を覆う硬い岩盤――リソスフェアの下には、より流動的なアセノスフェアがあります。東アフリカの地下では、深部から高温の物質が上昇するマントル活動がリフト形成に深く関係していると考えられています。ただし、リフト形成にマントルプルームが具体的にどう関わり、大陸を引き裂く力のどこまでを担っているのかについては、研究上の議論も残っています。

だから、地下から押し上げる力だけで大陸がパカッと割れたというほど単純な話ではありません。大陸を引き伸ばすプレート運動。もともと地殻に存在していた弱い場所。地下から供給される熱。マグマ活動。それらが長い時間をかけて作用して、巨大なリフト帯をつくっています。そしてケニアは、その変化を陸上で見ることのできる場所なのです。

アイスランドと、どこか似ている?

ここで思い出すのがアイスランドです。アイスランドには、北米プレートとユーラシアプレートが互いに離れていく境界があります。でもアフリカ大陸とは大きな違いがあります。アイスランドを貫く大西洋中央海嶺は、すでに海洋底が拡大している場所。それに対して東アフリカでは、まだ大陸地殻を引き伸ばしている途中です。

USGS(United States Geological Survey・米国地質調査所)も東アフリカ・リフトを、大陸のリフトが将来、中央大西洋海嶺のような海洋拡大軸へ発達していく過程を観察できる、世界でも特別な場所としています。だとしたら――。今のケニアは、いわば「海嶺になる、はるか昔の姿」を見せているとも考えられます。これは途方もなく壮大な話です。

「大地が裂ける」の向こうには、海がある?

大陸地殻が引き伸ばされる。薄くなる。やがて分断される。その後も拡大が続けば、新しい海洋地殻がつくられ、その間を海が満たしていく可能性があります。実際、東アフリカ・リフトの北端にあたるアファール地域では、大陸分裂の最終段階から初期の海洋底拡大へ近づいていると考えられています。

そう考えると、私たちにも身近な日本海の誕生も急に身近に感じられます。今の私たちは、日本列島があって、日本海があって、その向こうにユーラシア大陸がある風景を当たり前だと思っています。でも日本海にも、まだ「海」ではなかった時代がありました。約2000万年前~1500万年前にユーラシア大陸から離れて現在の位置まで移動してきたのです。

地球にとって、大陸と海の配置は完成した地図ではありません。今も書き換えられ続けています。そしてケニアでは、その途方もなく遅い書き換えの途中を、私たちは目の前で見ているのです。

では、あの巨大地割れは何だった?

ここまで分かると、番組に登場する巨大な地割れを見た瞬間、「ほら! アフリカ大陸が割れている!」と言いたくなります。でも――。ここで命綱を引っ張って、一度止まっておきましょう。大陸が分裂へ向かっていることと、地表に突然現れた一本の巨大地割れが、そのまま「大陸分裂の亀裂」であることは別の話です。

地下で何百万年も続いている巨大な地殻変動と、一夜にして地表に現れた深さ15m、幅19mもの裂け目。この二つは、どうつながっているのでしょう。

<広告の下に続きます>

第二章 一夜にして現れた巨大地割れは、何だった?──深さ15m・幅19mの亀裂を追う

2018年、ケニアの大地に突如として巨大な裂け目が現れ、大きな話題になりました。『驚き!地球!グレートネイチャー』で紹介されるその地割れは、長さ数キロ。場所によっては、深さ15メートル。幅19メートル。にも達したといいます。

ケニアに突如できた巨大な裂け目(出典:curioctopus)
ケニアに突如できた巨大な裂け目(出典:curioctopus)

道路まで寸断する巨大な裂け目を目の前にしたら、誰だって思うでしょう。「アフリカ大陸が、とうとう裂け始めた!」しかも、ここは大地溝帯。第一章で見てきたように、実際に大陸地殻が引き伸ばされている場所です。だったら、この巨大な地割れこそ、「大陸分裂を目撃した瞬間」なのでしょうか。ところが、話はそれほど単純ではありません。

「一夜にして大陸が裂けた」わけではない?

この巨大地割れが現れた時期、ケニアでは激しい雨が降っていました。そこで指摘されたのが、侵食の影響です。この地域の地面には、火山活動によって積もった火山灰など、侵食されやすい地層があります。そこに大量の雨水が入り込み、地下にあった弱い部分が削られる。

やがて地表を支えきれなくなり、崩れ落ちる。すると、それまで地表からはよく見えなかった弱い構造が、巨大な裂け目として突然姿を現すことがあります。ケニアで行われる「WRCサファリラリー」でも本番前に大雨が降ると、数日前の試走時にはまったくなかった巨大な溝に車ごと落ちてしまうことがあるほどです💦 つまり、昨日まで何もなかった大地が、一晩で15メートル裂けたと考えるのは、少し違う可能性があるのです。

私たちが目撃したのは、長い時間をかけてつくられてきた大地の弱点が、豪雨をきっかけに一気に表面化した姿なのかもしれません。

では、大陸分裂とは関係ない?

ここで今度は、「なーんだ。じゃあ大地溝帯とは関係なかったのか」と思いたくなります。でも、それも少しs早計です。そもそも、なぜこの場所に大地の弱い部分があるのでしょう。

ケニアは、巨大なリフト帯の真っただ中です。長い時間をかけて大地が引き伸ばされ、数多くの断層がつくられてきました。だから、大陸分裂によって一夜で地面がパックリ割れたとは言えなくても、大陸が引き伸ばされ続けてきた地質学的な舞台の上で起きた現象として考える必要があります。ここが、ちょっとややこしいところです。

大陸は、ポテチの袋みたいに裂ける?

大陸分裂と聞くと、一枚の紙を左右へ引っ張って、ビリッ――。と中央に一本の裂け目ができる姿を想像します。でも実際の大地は、そんなに素直ではありません。硬いところ。弱いところ。昔できた断層。火山活動の影響を受けたところ。さまざまな性質を持つ岩石が入り組んでいます。

そこを両側から引っ張れば、力は一か所だけに集中するとは限りません。あちらで断層が動き、こちらでは地面が沈み、別の場所では亀裂ができる。たとえるなら――ポテトチップスの袋を左右へ引っ張って開けようとしたら、きれいに一直線には裂けず、あっちこっちギザギザに破れてしまった。「あっ、失敗💦」……ちょっと似ているかもしれません。

地球規模の話が急にお茶の間っぽくなりましたが(笑)。重要なのは、大地溝帯そのものが一本の巨大な亀裂なのではなく、広い範囲で大地が変形している場所だということです。だから地表に現れた一本の裂け目だけを見て、「これがアフリカ大陸を二つに割る亀裂だ!」とは言えません。

それでも、地割れが教えてくれること

そう考えると、この巨大地割れは「大陸分裂そのものを一夜で目撃した証拠」ではないかもしれません。でも、つまらなくなったわけではありません。むしろ逆です。

目の前に突然現れた裂け目の背景には、豪雨という数日単位の出来事があり、侵食というもっと長い時間の変化があり、さらにその下には、大陸を引き伸ばしてきた何百万年という地球の時間があります。私たちが見ている一本の地割れには、いくつもの時間が重なっている。そう考えると、深さ15メートルの裂け目が、さっきよりずっと壮大に見えてきます。

そしてケニアでは、大地の異変はこれだけではありません。大地溝帯の谷間にあるボゴリア湖では、地下から熱水が供給されています。さらに崖には無数の噴気孔が開き、大量の蒸気が噴き出している。地面は裂け、水は熱せられ、大地から蒸気が上がる。ここまで見せられたら、今度こそ気になります。

地下には、いったい何があるのでしょう? そしてそれは、本当に「大噴火が迫っている」ことを意味するのでしょうか?

<広告の下に続きます>

第三章 湖は沸き、崖から蒸気が噴き出す──ケニアの地下で何が起きている?

大地に突然現れた巨大な裂け目。それだけでも十分に不気味ですが、ケニアの大地溝帯を歩いていくと、さらに奇妙な光景が現れます。

水が、熱い。大地から、蒸気が噴き出している。『驚き!地球!グレートネイチャー』に登場するボゴリア湖では、地下から熱水が供給され、周辺には高温の温泉や噴気活動が見られます。さらに崖には無数の噴気孔が開き、白い蒸気が立ち上っています。

地面は裂けている。水は熱せられている。大地から蒸気まで噴き出している。ここまでそろえば、つい考えてしまいます。「地下に巨大なマグマが迫っているんじゃないの?」でも、ここでも少し立ち止まってみましょう。

地下の水を温めているのは何?

温泉の仕組みを考えると、少し分かりやすくなります。雨などとして地面に染み込んだ水は、岩石の割れ目を通って地下深くへ入り込むことがあります。そこで地下の熱によって温められれば、今度は熱水となって上昇する。それが地表まで達すれば、温泉や熱水泉として姿を現します。

つまり地表から見える熱水は、地下から熱そのものが運ばれてきた証拠ともいえます。そして大地溝帯では、大陸地殻が引き伸ばされて薄くなり、火山・マグマ活動も活発です。地球内部の熱を感じられる場所が、私たちの足元へ近づいているのです。

なぜ、崖から蒸気が出てくる?

熱水がさらに高温になれば、水の一部は蒸気になります。地下にある岩石の亀裂や断層は、水や蒸気が移動する通り道にもなります。その通り道が地表につながれば、シューッ――。白い蒸気が大地から噴き出す。これが噴気活動です。

遠くから見れば幻想的な風景ですが、そこで起きているのは、地下にある巨大な地熱システムの一端が地表に現れたもの。つまり私たちが見ているのは、単なる「湯気」ではありません。地球内部の熱と、地下を巡る水と、割れた大地がつくった風景なのです。大地溝帯ではありませんが、箱根の大涌谷でも似たような風景が見られますよね。

大地が裂けると、地下の熱が見えてくる?

ここで第一章からの話がつながってきます。東アフリカでは、大陸そのものが引き伸ばされています。大地が引き伸ばされれば、地殻は薄くなる。断層や亀裂も発達する。さらにそこの地下でマグマ活動が起こる。そうすると亀裂は、地下水や熱水、火山性ガスなどが移動する経路にもなります。

だから大地溝帯には、火山があり、温泉があり、熱水泉があり、噴気活動がある。第二章で巨大地割れを見たときには、「大地が壊れている」ように見えました。でも地下まで覗いてみると、その裂け目は同時に、地球内部で起きていることが地表へ現れる道にもなっているのです。

では、ボゴリア湖は「沸騰」している?

ここは表現を少し丁寧にしておきたいところです。番組概要を読むと「沸騰する湖」という、とても強烈な言葉が使われています。でも、巨大なボゴリア湖全体が鍋のようにグツグツ沸騰している、という意味ではありません。

湖岸周辺には非常に高温の熱水泉や地熱活動があり、場所によっては沸騰する熱水が見られる。その地下から供給される熱水が、湖へ流れ込んでいます。だから、「湖そのものが丸ごと沸騰している」と想像すると、少し違います。とはいえ、大きな湖のすぐそばで熱水が湧き、大地から蒸気が上がる光景は、それだけでも十分に異様です。

熱水があるなら、大噴火は近い?

そして、いよいよ今回最大の問いが見えてきます。地下には熱がある。マグマ活動もある。熱水が湧いている。噴気孔から蒸気が噴き出している。だったら、「巨大噴火が近づいている」と考えていいのでしょうか?ここで重要なのは、地熱活動が活発であることと、噴火が目前に迫っていることは同じではないということです。

火山地域には、長期間にわたって温泉や噴気活動が続いている場所が世界中にあります。日本だってそうですよね。温泉へ入るたびに、「地下に熱源がある! 明日噴火するぞ!」なんて逃げ出していたら、露天風呂どころではありません♨️(笑)

一方で、地下のマグマが実際に移動すれば、周辺で起こる地震の変化、地殻変動、火山ガスの成分や放出量など、さまざまな兆候が現れることがあります。だから噴火の切迫性を考えるには、「蒸気が出ている」だけでは足りない。複数の観測結果を組み合わせて、地下で何が変化しているのかを見る必要があります。

地球の時間と、人間の「もうすぐ」

そしてもう一つ、気をつけたい言葉があります。「いつ噴火してもおかしくない」です。地質学で扱う時間は、とてつもなく長い。数千年。数万年。数百万年。そんな時間を相手にしている世界での「いつ起きても不思議ではない」と、私たちがニュースを聞いて感じる、「来週にも起きるかもしれない」は、まったく同じ意味とは限りません。

だからこそ、番組に登場する専門家が何を根拠に「巨大噴火」を語っているのかは、きちんと見てみたいところです。巨大地割れ。熱水。噴気。火山活動。確かにケニアの地下では、巨大な地球活動が続いています。でも――。それらは本当に、「迫りくる大噴火の予兆」なのでしょうか? ここまで来て、ようやくタイトルの核心へたどり着きました。

<広告の下に続きます>

第四章 巨大地割れは、大噴火の予兆か!?──「大陸分裂」と火山活動の関係

巨大な地割れ。沸騰する熱水。崖から噴き出す大量の蒸気。そして、「巨大噴火がいつ起きてもおかしくない」という専門家の言葉。これだけ並べられたら、「もしかしてケニアでは、巨大噴火へのカウントダウンが始まっているのでは?」と思ってしまいます。

でも、ここまで大地溝帯を歩いてきた私たちなら、もう一度立ち止まれます。巨大な地割れは、本当に「大噴火の予兆」なのでしょうか? どうやら、この問いには二つの時間を分けて考える必要がありそうです。

大陸が裂ける場所では、なぜ火山活動が起きる?

まず、大陸分裂と火山活動に関係があること自体は不思議ではありません。東アフリカでは大陸地殻が引き伸ばされています。引き伸ばされれば、地殻やその下のリソスフェアは薄くなっていく。地下深部から上昇してきたマントル物質は、圧力が低下することで部分的に融け、マグマを生じることがあります。

そのマグマが地殻内部へ入り込んだり、地表まで上昇したりすれば、火山活動につながります。つまり、大陸分裂と火山活動は、まったく無関係な二つの事件ではありません。地面が引き伸ばされる。地下ではマグマが生まれる。断層や亀裂が発達する。熱水が循環する。火山ができる。ケニアで目にするさまざまな現象は、巨大なリフト活動という一つの舞台の上で起きています。

でも「関係がある」と「予兆である」は違う

ここが重要です。火山活動が活発な大地溝帯で巨大地割れが見つかったからといって、その地割れ自体が、間もなく巨大噴火が起こることを示す直接的な予兆とは限りません。第二章で見た巨大地割れも、豪雨や侵食など複数の要因を考える必要がありました。第三章の熱水や噴気活動も同じです。

地下に熱源が存在し、活発な地熱システムがあることは示していても、「だから○日後、○年後に噴火する」とは言えません。言い換えれば、「噴火が起こり得る地質学的な環境」と「噴火が切迫していることを示す予兆」は、同じものではないのです。

ここを一緒にしてしまうと、「大地が裂けた! 大噴火が来る!」という、とても分かりやすいけれど少し乱暴で民放のワイドショー的な物語になってしまいます。

本当に噴火が近づいたら、何を見る?

では火山学者は、何を見て噴火の可能性を判断するのでしょう。一つだけではありません。地下でマグマが移動すれば、その周囲の岩石が壊れ、地震活動に変化が現れることがあります。マグマが上昇してくれば、地面が膨張したり変形したりすることもあります。火山ガスの量や組成が変化する場合もあります。

そこで、地震活動・地殻変動・火山ガス・熱活動など複数の観測を組み合わせ、地下で何が起きているのかを推定します。それでも、「○月○日の午後3時に噴火します」なんて正確に予言できるわけではありません。地球は、そこまで親切に予定表を送ってくれないのです。

地質学者の「最近」は、人間にはちっとも最近じゃない

そして今回、もう一つ注意したいのが時間感覚です。私たちがニュースで、「いつ起きてもおかしくない」と聞いたら、今日?明日?来月?今年?と思います。でも地球科学では、扱っている時間のスケールそのものが違います。

何万年前という出来事さえ、地球46億年の歴史から見ればかなり新しい出来事です。だから専門家が、「地質学的には最近です」と言っても、こちらが、「あ、先週くらいですかね」と受け取ったら大変です(笑)。

もちろん、火山防災では人間の生活に合わせ、日・月・年という短い時間スケールで観測や評価をしています。だから「地質学者は何でも数万年単位で考えている」という話でもありません。問題は、地球そのものが持っている時間と、私たちがニュースから感じ取る時間を混同しないことなのでしょう。

「いつ起きてもおかしくない」は、いつなのか?

だから番組で専門家が語る、「巨大噴火がいつ起きてもおかしくない」という言葉についても、本当に知りたいのはその先です。何を観測して、そう考えているのか。過去にどんな噴火があったのか。地下にはどんなマグマ系が存在すると考えられているのか。

そして何より、ここでいう「いつ」とは、どれくらいの時間を指しているのか。この説明があって初めて、「大噴火」という言葉の意味が見えてくるはずです。放送を見るときにも、ここは注目してみたいところです。

だって日本で起きた大噴火だっていつも”突然”のように感じますが、それも30年前から「いつ起きてもおかしくないって言っていたじゃないですか!」なんて感覚なのかもしれません。「次の関東大震災はもうすぐ来る!」なんて子供のころから何度も聞いていますが、あれから数十年、とりあえず”まだ”起きていません。

巨大地割れが教えている、もっと大きなこと

では結局、巨大地割れは大噴火の予兆なのでしょうか。少なくとも、ここまで分かっていることだけから、「あの地割れが巨大噴火の直接的な予兆だ」と結論づけるのは早そうです。でも、だからといって地割れがつまらなくなるわけではありません。むしろ、その向こうにはもっと大きなものが見えてきました。

大陸が引き伸ばされている。地殻が薄くなっている。地下ではマグマ活動が起きている。地表には断層、火山、熱水、噴気という形でその影響が現れている。私たちが見ているのは、一回の巨大噴火だけでは終わらない、アフリカ大陸そのものをつくり変えていく地球活動なのです。

そこで、今度は時計の針をさらに進めてみましょう。100年でもありません。1000年でもありません。何百万年、何千万年という未来へ。大陸を引き裂く動きが、このまま続いたら――。現在ケニアの大地がある場所に、いつの日かが生まれるのでしょうか?

<広告の下に続きます>

最終章 アフリカに「新しい海」が生まれる?──大陸が裂けた先にある地球の未来

巨大な地割れを見て、地下の熱水を追い、大地から噴き出す蒸気を眺め、「巨大噴火は起こるのか?」と考えてきました。でも最後は、時計の針を一気に進めてみましょう。100年後でもありません。1000年後でもありません。100万年、1000万年、そのもっと先へ。

すると、いま私たちが「異変」として見ている大地溝帯の姿が、まったく違って見えてきます。大地が裂けているのは、何かが壊れているからだけではない。その先では、まだ地球上に存在しない新しい海が生まれる可能性があるのです。

大陸が裂けたら、何が起こる?

東アフリカでは、アフリカ大陸の東側と西側がゆっくりと離れる方向へ動いています。その動きがこの先も長く続けば、大陸地殻はさらに引き伸ばされます。薄くなる。断層ができる。沈み込む場所が生まれる。地下からマグマが上昇する。

そして最終的に大陸地殻が完全に分断されれば、その間では新しい海洋地殻がつくられる段階へ進む可能性があります。さらに低くなった場所へ海水が入り込めば――。そこに現れるのは、新しい海。現在の大地溝帯は、その気の遠くなるような物語の途中にあると考えることができます。

「海ができる」は、空想の話ではない

そんな話を聞くと、「いくらなんでも壮大すぎるでしょう!」と思いたくなります。でも地球は、過去に何度も同じようなことを繰り返してきました。大陸が引き裂かれ、その間に海が生まれ、海が広がる。今の日本海が生まれたのもほんの2000万年~1500万年前のことです。その頃はもう恐竜もずっと前に絶滅した後のことです。

その反対に、プレート同士が近づいて海が狭くなり、やがて消えてしまうこともあります。私たちが世界地図で見慣れている、「ここが大陸で、ここが海」という姿は、地球の完成形ではありません。長い地球史の中の、たまたま現在を切り取った一枚の写真にすぎないのです。

日本海にも「海ではなかった時代」があった

ここで、少しだけ私たちの足元へ戻ってみましょう。日本列島とユーラシア大陸の間には、現在、日本海があります。でも、この配置も昔から同じだったわけではありません。およそ2000万年前から1500万年前ごろにかけて、大陸縁辺の地殻が引き伸ばされ、日本海の拡大が進み、日本列島は現在のように大陸から離れた位置へ移っていきました。

もちろん、日本海の形成史と現在の東アフリカ・リフトが、まったく同じ道筋をたどっているわけではありません。それでも、大陸地殻が引き伸ばされ、その先に海が形成されていくという大きな地球の営みには、重なるところがあります。

いま私たちが当たり前のように眺めている日本海にも、「まだ海ではなかったころ」があったのです。そう考えると、ケニアで進んでいる出来事も、少しだけ現実味を帯びてきます。

1000万年後の地図には、何が描かれている?

もちろん、「○○万年後にはここからここまで海になります」と未来の地図を正確に描くことはできません。プレート運動の速度や方向が将来も現在と同じとは限らないからです。でも想像してみることはできます。現在、道路が走っている場所。人々が暮らしている場所。私たちが「ケニア」と呼んでいる大地。

その一部が遠い未来には別々の陸地となり、その間に海が広がっているかもしれない。そこには今とは違う岸線があり、波が打ち寄せ、魚が泳ぎ、さらに長い時間が経てば、私たちには想像もできない生態系が生まれているかもしれません。その海には当然、今はまだ名前がありません。だって、まだ存在していないのですから。

「大噴火の予兆」から見えてきたもの

今回の入口は、「巨大な地割れは、大噴火の予兆か!?」でした。確かに東アフリカの地下では、活発な地殻変動や火山・地熱活動が続いています。巨大噴火という言葉を聞けば、私たちはどうしても、「いつ起こる?「危険なの?」「大丈夫なの?」と考えます。それは、人間として当然のことです。

でも地球の時計を少しだけ借りてみると、違うものが見えてきます。一度の地震。一度の噴火。一つの地割れ。それだけを見ていたら「異変」にしか見えなかったものが、100万年、1000万年という時間の中では、大陸そのものが姿を変えていく長い物語の一場面として見えてくるのです。

地球は、まだ完成していない

私たちはつい、現在の世界地図を完成した地球の姿だと思ってしまいます。アフリカはここ。日本はここ。海はここ。国境はここ。でも地球自身は、そんな線を気にしてはいません。

大陸は動きます。山は生まれます。海は開きます。そして海が消えることさえあります。地球は、46億年たった今も変わり続けています。ケニアの巨大地割れを見て、「大噴火が来るのだろうか?」と心配することから始まった今回の旅。その裂け目の向こうに最後に見えてきたのは、破壊だけではありませんでした。

それは、まだ名前のない海が生まれるかもしれない未来。私たちがその海を見ることは、おそらくありません。今ある国も、町も、人間の社会も、そのころにはまったく違う姿になっているでしょう。それでも地球は、人間の時間とは比べものにならないほどゆっくりと、今日もほんの少しずつ、次の地図を描き続けています。


湘南ひらつかITサポートセンターをもっと見る

購読すると最新の投稿がメールで送信されます。

湘南ひらつかITサポートセンターをもっと見る

今すぐ購読し、続きを読んで、すべてのアーカイブにアクセスしましょう。

続きを読む

タイトルとURLをコピーしました