『おいしい氷』って、何がおいしいの?|超軟水と口どけから考える氷の正体【あさイチ中継】

中央アルプスの「超軟水」 BLOG
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暑い日に、グラスの中でカランと鳴る氷。冷たい飲み物には欠かせないものですが、考えてみれば氷とは、ただ水を凍らせたものです。それなのに私たちは、ときどき、「この氷、おいしい」と言います。

でも――。「おいしい氷」って、いったい何がおいしいのでしょう? 水そのものの味なのでしょうか? それとも、氷の硬さや溶け方? 口に入れたときの、なめらかさ? かき氷なら、ふわっとほどけて消えていくような口どけなのかもしれません。

『あさイチ』の中継は、長野県飯田市から「超軟水!こだわり氷」。中央アルプスと南アルプスに囲まれた飯田市には、天然水を使って氷をつくる製氷会社があります。そこで使われているというのが、ミネラル分の少ない「超軟水」です。一般に、水の「硬度」は主にカルシウムやマグネシウムなどの量によって決まり、軟水と硬水では口当たりにも違いがあるといわれています。

ならば、超軟水を凍らせれば、それだけで「おいしい氷」になるのでしょうか? ここで少し疑問が湧いてきます。同じ水でも、家庭の冷凍庫でつくった氷と、専門の製氷会社でつくられた透明な氷は、見た目からして違います。

さらに、それをかき氷にすれば、氷をどんな温度で削るのか。刃をどう当てるのか。どれくらいの薄さに削るのか。そんな違いでも食感は変わります。そう考えると、私たちが感じている「氷のおいしさ」は、水の味だけでは説明できないのかもしれません。

たとえば、天然氷を使ったふわふわのかき氷。「あの氷だからおいしいのは当たり前」と思って食べていますが、本当に味わっているのは水の違いなのでしょうか?それとも、薄く削られた氷が舌の上ですっと溶けていく、あの「口どけ」なのでしょうか?

そもそも水は、無味無臭に近いもの。それなのに産地によって味が違うと感じたり、「この水はまろやか」「こちらは硬い」と感じたりするのも不思議です。だったら一度、「おいしい氷」を、水と氷に分けて考えてみましょう。

軟水と硬水では、本当に味が違うのか? 水をゆっくり凍らせると、氷はどう変わるのか? 透明で硬い氷は、なぜ溶けにくいのか?そして、かき氷のおいしさを左右するのは、水なのか、氷なのか、それとも削り方なのか。

たかが水。たかが氷。でも、その「たかが」の中には、人間が感じる味、食感、温度、口どけが全部詰まっているのかもしれません。『おいしい氷』って、いったい何がおいしいの?飯田市の「超軟水の氷」をきっかけに、いつも何気なく口にしている氷の正体を、少しだけ科学してみましょう。

【放送日:2026年8月25日(火)8:15 -9:55・NHK-総合】

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  1. 第一章 軟水と硬水は、本当に味が違う?──「超軟水」を舌で感じる理由
    1. 「水なんだから、そんなに変わらない」と思っていた
    2. 水の「硬さ」は、何で決まる?
    3. 「超軟水」は、もっとおいしいの?
    4. そして、水を凍らせたら?
  2. 第二章 水を凍らせると「味」はどうなる?──超軟水だから、おいしい氷になるのか?
    1. 水が凍ると、ミネラルはどこへ行く?
    2. ならば、本当に凍らせて食べてみよう
    3. 氷にしたら、「硬水の味」が分からなくなった?
    4. 違ったのは「味」より、噛んだ感触だった
    5. 「おいしい氷」は、味だけの話ではない?
  3. 第三章 なぜ「ゆっくり凍らせる」と透明になる?──48時間かける氷と家庭の白い氷
    1. 氷は「水だけ」を結晶にしたがる
    2. 透明な氷は「追い出しながら」凍らせる
    3. 「一度冷やすから透明になる」わけではなかった
    4. 透明だから「おいしい」の?
  4. 第四章 ふわふわのかき氷は、水が作る?──氷の温度と「削り方」が変える口どけ
    1. 同じ氷でも、温度が違えば削れ方が変わる
    2. 「ふわふわ」の正体は、薄さかもしれない
    3. 水だけでは「ふわふわ」にならない
    4. では「頭がキーンとしにくい」は?
    5. 「おいしい」は、舌だけで感じているわけじゃない
  5. 最終章 「おいしい氷」って、結局何がおいしいの?──水・温度・食感がつくる口どけの正体
    1. 「何もない水」が、最高においしいとは限らない
    2. 水だったときと、氷になったときでは違った
    3. かき氷になれば、「おいしい」はもっと複雑になる
    4. 「超軟水」は、答えではなく始まりだった
    5. たかが氷。でも、氷は「水」だけではなかった
  6. まとめ|「おいしい氷」は、水だけではつくれない
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第一章 軟水と硬水は、本当に味が違う?──「超軟水」を舌で感じる理由

「超軟水でつくった氷です」
そう聞くと、なんとなくおいしそうに感じます。でも、そもそも疑問があります。軟水と硬水って、本当に味が違うのでしょうか?水は水です。砂糖が入っているわけでも、塩や果汁が入っているわけでもありません。普段、水を飲んで、「うん、今日は水の味がいい」なんて考えることも、あまりないでしょう。そこで実際に、硬度の違う水を飲み比べてみました。

「水なんだから、そんなに変わらない」と思っていた

用意したのは、普段飲んでいる水道水と日本の「富士山の天然水」。そしてフランスのミネラルウォーター、硬度304mg/Lの「エビアン」と、1468mg/Lの「コントレックス」です。まず水道水と富士山の天然水。飲んでみても、「普通の水」というのが正直な感想でした。何か特別な味がするわけではありません。そりゃそうですよね、毎日飲んでいる”普通の水”ですから(笑)

ところがエビアンを口に含んでみると、「あれ?」となりました。味がついているわけではない。それなのに、普段飲んでいる水よりも少し「硬い」感じがします。

さらに硬度1468mg/Lのコントレックスを飲むと、その感覚はもっと強くなりました。「何かが溶け込んでいる」そんな印象です。「硬い感じ」というのは私の個人的な感想です(笑) でも違いははっきりと分かります。

市販されている日本の天然水と西欧の硬水
市販されている日本の天然水と西欧の硬水

正直なところ、飲み比べる前は、「水なんだから、それほど変わらないだろう」と思っていました。ところが、実際に比べてみると違いは分かりました。では、この「硬い」という感覚は何なのでしょう。

水の「硬さ」は、何で決まる?

水の硬度を左右する代表的な成分が、カルシウムとマグネシウムです。水は雨として地上へ降り、土や岩石の間を通りながら地下へ浸透していきます。その過程で岩石などに含まれるミネラルが水に溶け込みます。カルシウムやマグネシウムを多く含む水ほど硬度は高くなり、少ない水ほど軟水になります。

つまり、同じ「水」に見えても、中に溶けているものは同じではありません。先ほど感じた「硬い」「何かが溶け込んでいるような感じ」も、こうしたミネラル成分による口当たりの違いを感じ取ったものなのでしょう。

特にヨーロッパは大陸の移動で石灰岩の地質が隆起してできた大地があちこちにあります。ですからおのずとカルシウムなどが溶け込んで一般の水道水も「硬水」になっている地域が数多くあります。ヨーロッパに暮らす知人は「やかんの内側に白いカルキが付いちゃうのがイヤ」って言いますし、沖縄の友人も同じことを言っています。

「超軟水」は、もっとおいしいの?

では、ここで今回のテーマへ戻ります。『あさイチ』で紹介される長野県飯田市の氷には、「超軟水」が使われています。ミネラル分が少ない水なら、雑味が少なく、すっきりした口当たりになることは考えられます。

でも、「硬度が低ければ低いほど、おいしい」とまでは言えません。

水のおいしさには好みもあります。硬水特有のミネラル感を好む人もいるでしょう。そして今回の飲み比べで比較したのも、「超軟水」と普通の軟水ではありません。分かったのは、硬度が大きく違えば、少なくとも口当たりの違いは実際に感じられるということまでです。

「普通の軟水」と「超軟水」の微妙な違いまで、人の舌でどれくらい感じられるのか。そこはまた別の問題です。

そして、水を凍らせたら?

もう一つ、大きな疑問が残ります。水の状態では違いが分かった。では――凍らせても、その違いは分かるのでしょうか? 水道水。日本の天然水。エビアン。コントレックス。今度は同じ条件で凍らせて、氷にして比べてみることにしました。

水のときには感じられた「硬さ」は、氷になっても残るのか? それとも冷たさや氷の食感によって、違いが分からなくなってしまうのか。そして、ここからさらに大きな疑問へつながります。そもそも、水に溶けていたミネラルは、水が凍るときにどうなるのでしょう?

水が氷へ変わるとき、すべての成分がそのまま均等に氷の中へ閉じ込められるとは限りません。「おいしい水を凍らせれば、そのままおいしい氷になる」。どうやら話は、それほど単純ではなさそうです。次は、水が氷へ変わる瞬間を少し覗いてみましょう。

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第二章 水を凍らせると「味」はどうなる?──超軟水だから、おいしい氷になるのか?

軟水と硬水を実際に飲み比べてみると、思っていた以上に違いを感じることができました。水道水や日本の天然水は、飲み慣れた「普通の水」。硬度304mg/Lのエビアンでは、それより少し「硬い」ような口当たりを感じます。さらに硬度1468mg/Lのコントレックスでは、「何かが溶け込んでいる」ような感覚が、もっと強くなりました。

では、この水を凍らせたらどうなるのでしょう? 水で感じた「硬さ」は、氷になっても残るのでしょうか? そこで今度は、実際に凍らせて比べてみることにしました。

水が凍ると、ミネラルはどこへ行く?

そもそも、水道水やミネラルウォーターは、水分子だけでできているわけではありません。カルシウムやマグネシウムをはじめ、さまざまな成分が溶け込んでいます。水が凍るとき、水分子は規則正しく並んで氷の結晶をつくっていきます。

その際、水に溶けている成分の多くは、そのまま均等に氷の結晶へ取り込まれるのではなく、まだ凍っていない液体側へ押し出されます。凍結が進むにつれて、残った液体側に溶けている成分が集まっていく。いわゆる**「凍結濃縮」**です。海水を凍らせても、海水と同じ塩辛さの氷がそのままできるわけではない、と考えると分かりやすいかもしれません。

つまり、「水の中にあったものが、そのまま均等に氷になる」わけではない。だったら、液体でははっきり感じた硬度の違いも、氷になると変わってしまうのでしょうか?

ならば、本当に凍らせて食べてみよう

用意したのは、第一章と同じ4種類です。水道水。日本の「富士山の天然水」。硬度304mg/Lのエビアン。そして硬度1468mg/Lの超硬水・コントレックス。できるだけ同じ条件で少量ずつ家庭の冷凍庫へ入れて凍らせました。

まずは見た目。水道水も富士山の天然水も、家庭でつくる氷らしく白く濁った部分があります。では硬水はどうでしょう。少なくとも今回の実験では、ひと目で分かるような大きな違いはありませんでした。硬度がこれだけ違えば、濁り方にも何か変化が出るかと思ったのですが、見ただけではよく分かりません。そして、いよいよ食べてみます。

氷にしたら、「硬水の味」が分からなくなった?

凍った氷を少し室温に置いて、表面がわずかに溶け始めたところで食べ比べてみました。すると、面白いことが起きました。エビアンの氷の表面にできた水を口にすると、「あ、エビアンだ」と感じます。液体だったときに感じた、少し硬いような口当たりが残っています。

コントレックスも同じでした。溶けた水の部分では、エビアンよりさらに強い「硬さ」を感じます。ところが――。まだ凍っている氷そのものを口にすると、液体のときほど口当たりの違いを感じませんでした。

水道水だからこう。エビアンだからこう。コントレックスだからこう。そんな明確な「味」の違いは、今回の氷の食べ比べでは分かりません。それなのに、別のところに違いを感じました。

違ったのは「味」より、噛んだ感触だった

水道水の氷と比べると、エビアンの氷は噛んだときに少し柔らかく、サクサクと崩れていくような感触がありました。そしてコントレックスでは、その傾向をさらに強く感じました。不思議なのは、液体では「硬い」と感じた水が、今回凍らせて噛んでみると、むしろ崩れやすく感じられたことです。

ただし、これは家庭の冷凍庫で少量の水を凍らせ、一人で食べ比べた小さな実験です。この結果だけから、「硬水ほど柔らかい氷になる」と結論づけることはできません。凍る速さや気泡の入り方、氷の大きさ、室温に置いた時間など、硬度以外の条件が影響した可能性もあります。

それでも、一つ興味深いことがありました。水の状態では「味や口当たり」に意識が向いていたのに、氷にした途端、「噛んだとき、どう崩れるか」のほうが気になったのです。

「おいしい氷」は、味だけの話ではない?

ここで最初の問いへ戻ります。超軟水だから、おいしい氷になるのでしょうか? 今回用意した水の中に、飯田市の氷に使われている「超軟水」はありません。そのため、超軟水と普通の軟水を比較した実験ではありません。また、今回感じた氷の崩れ方の違いが硬度によるものなのかも、この実験だけでは分かりません。

だから、「超軟水なら、もっと硬い氷になるはずだ」とも、まだ言えません。でも、一つ新しい疑問が生まれました。もしかすると「おいしい氷」を考えるときには、水そのものの味だけではなく、氷がどんな構造をしていて、どんな硬さで、どう崩れ、どう溶けるのか。そんな物理的な性質も考える必要があるのではないでしょうか。

かき氷なら、なおさらです。同じ氷でも、薄くふわりと削れる氷と、細かな粒になってガリガリと砕ける氷では、舌に触れたときの印象はまったく違います。となると次に知りたいのは、水の種類よりも、「どう凍らせるか」で氷はどれくらい変わるのかということです。

家庭の冷凍庫でつくった白い氷。専門の製氷会社がつくる、向こう側まで透けて見えるような透明な氷。同じ水を凍らせているのに、どうしてあれほど違うのでしょう。そして、その違いは「おいしさ」にまでつながっているのでしょうか。次は、水の種類からいったん離れて、「凍らせ方」そのものを見てみましょう。

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第三章 なぜ「ゆっくり凍らせる」と透明になる?──48時間かける氷と家庭の白い氷

家庭の冷凍庫から取り出した氷を見ると、真ん中あたりが白く濁っていることがあります。一方、バーのグラスに入っている氷や、専門の製氷会社がつくった純氷は、向こう側が見えるほど透明です。同じ水を凍らせただけなのに、なぜこれほど違うのでしょう?

もしかすると、「水をあらかじめ冷たくしてから凍らせれば、透明になるのでは?」と思うかもしれません。実は家庭用冷蔵庫にも、冷蔵室の給水タンクから水を送って自動製氷するものがあります。つまり水は、すでにある程度冷えています。それなのに――。できあがった氷は、やっぱり白い。どうやら単純に「冷たい水から凍らせる」だけでは、透明な氷にはならないようです。

氷は「水だけ」を結晶にしたがる

水が凍るとき、水分子は規則正しく並びながら氷の結晶をつくります。ところが水の中には、水分子だけではなく、空気などの気体やミネラルなども溶け込んでいます。氷の結晶が成長すると、そうした成分の多くは結晶の中に入りにくいため、まだ凍っていない水のほうへ押し出されます。ここまではH2②で見た「凍結濃縮」と同じです。

問題は、押し出されたものが、どこへ行くのか。家庭の冷凍庫の製氷皿では、水が容器の外側などから内側へ向かって凍っていきます。すると氷から押し出された空気は、まだ凍っていない中心部分へ集まっていきます。

やがて周囲を氷に囲まれる。逃げ場がなくなる。そして最後には、小さな気泡などとして氷の中へ閉じ込められてしまいます。この無数の気泡などが光を散乱させるため、氷は白く濁って見えるのです。つまり家庭の氷の白い部分は、「最後まで逃げられなかったもの」が集まった場所ともいえそうです。

透明な氷は「追い出しながら」凍らせる

では、透明な氷はどうするのでしょう?
重要になる方法の一つが、一定方向から凍らせることです。あちらこちらから一斉に凍らせるのではなく、一方向から少しずつ氷の結晶を成長させていく。すると、氷に入りにくい空気や不純物を、凍っていない水の側へ押し出しながら凍結させることができます。

最後まで逃げ道が残っていれば、それらを氷の外へ出すこともできます。Purdue大学の材料工学の解説でも、透明な氷をつくる方法として、この方向性を持たせた凍結が説明されています。さらに、大きな透明氷をつくる場合には、水をゆっくり凍らせながら撹拌したり流したりする方法もあります。

これは、氷と水の境界に集まってくる気泡や溶存成分を、その場に留めないためです。ゆっくり凍らせ、水を動かすことで、成長している氷の表面からそれらを遠ざける。University of Alaska Fairbanks(アラスカ大学フェアバンクス校)の解説でも、透明な氷を育てるには、気泡を氷と水との境界から取り除くこと、そしてゆっくり凍らせながら水を動かすことが有効だと説明されています。

つまり、「48時間かければ透明になる」というより、時間をかけながら、氷の結晶をきれいに成長させ、余計なものを閉じ込めない。そこに意味があるのでしょう。

「一度冷やすから透明になる」わけではなかった

ここで一つ、最初の予想を修正しておきましょう。水を凍る直前まで冷やせば、その途中で溶け込んでいた空気が抜け、透明な氷になるのではないか。そんな気もします。ところが、透明な氷をつくるうえで重要なのは、単に水を冷たくしておくことではありません。

むしろ、氷が成長している最中に、結晶から排除された気体や不純物をどう逃がすか。こちらが重要です。だから、あらかじめ冷えた水を使っている家庭用製氷機でも、それだけで透明な氷にはならないのでしょう。

ちなみに、水を一度沸騰させて空気を抜けば透明になる、という方法を聞くこともあります。加熱によって溶存気体を減らすこと自体はできます。ただし、水は冷めれば再び空気を取り込みます。そのため「一度沸かせば必ず透明になる」というほど単純でもありません。

透明だから「おいしい」の?

さて。ここまでで、なぜ専門店の氷が透明なのかは少し分かってきました。でも、私たちが知りたかったのは透明な氷の作り方ではありません。最初の問いは、「『おいしい氷』って、何がおいしいの?」でした。透明な氷には、気泡などが少ない。不純物も結晶から排除されながら凍っていく。見た目も美しい。

では、透明な氷ほど硬いのでしょうか? そして、硬い氷ほど溶けにくいのでしょうか? さらに、かき氷にしたときには、透明な氷ほど「ふわふわ」になるのでしょうか? ここは全部、同じ話のように見えて、実は分けて考えたほうがよさそうです。

透明度は、氷の中で光がどう散乱するかという問題。硬さは、氷の構造や気泡、温度などに関わる問題。溶ける速さには、氷の温度や大きさ、表面積、周囲の温度なども関係します。そして「ふわふわ」は、氷そのものだけではなく、どう削るかまで関わってきます。

透明な氷ができた。だから、おいしい。まだ、その間にはいくつもの「なぜ?」が残っています。そこで次は、いよいよかき氷です。

ふわふわのかき氷をつくっているのは、本当に「いい水」なのでしょうか? それとも――。氷の温度と、刃の仕事なのでしょうか?

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第四章 ふわふわのかき氷は、水が作る?──氷の温度と「削り方」が変える口どけ

夏になると人気を集める、天然氷や純氷を使ったかき氷。器の上にふわりと積み上がった氷は、家庭のかき氷機でつくったものとはまるで別物に見えます。口に入れれば、ふわっ。そして、すっと消えていく。そんなかき氷を食べると、「やっぱり、いい水でつくった氷は違う」と思いたくなります。

でも、本当にそうなのでしょうか? ここまで調べてきた私たちには、別の疑問が浮かびます。あの「ふわふわ」をつくっているのは、水なのでしょうか? それとも――。削り方なのでしょうか。

同じ氷でも、温度が違えば削れ方が変わる

冷凍庫から出したばかりの氷は、とても冷たく硬い状態です。そんな氷へ刃を当てれば、氷は薄く削られるというより、細かく砕けやすくなります。ところが、かき氷専門店などでは、氷を冷凍庫から取り出してすぐに削らず、少し温度を上げてから削ることがあります。

氷の表面を融点に近い状態へ近づける。すると刃が氷へ入りやすくなり、氷を細かな粒として砕くのではなく、薄い氷の層として削り出しやすくなります。つまり「ふわふわ」は、氷そのものの品質だけではなく、削る瞬間の温度にも左右されます。

「ふわふわ」の正体は、薄さかもしれない

さらに重要なのが、刃です。かき氷機の刃をどれくらい氷へ当てるのか。厚く削るのか。薄く削るのか。ここで出来上がる氷の形は大きく変わります。厚く削られた氷は粒として感じやすく、噛めばシャリシャリ、ガリガリとした食感になります。赤城しぐれのような「みぞれアイス」みたいな感じです。

一方、ごく薄く削られた氷は、一枚一枚が軽い。それが幾重にも重なれば、器の中にたくさんの空気を含んだような状態になります。口へ入れた瞬間、薄い氷は急速に溶ける。だから私たちは、「ふわふわ」と感じるのでしょう。同じH₂Oなのに、形が変わっただけで食感がまったく違う。そう考えると、「おいしい氷」の正体が少しずつ見えてきます。

水だけでは「ふわふわ」にならない

もちろん、元になる氷の状態も大切です。大きな気泡や亀裂が多い氷と、均質につくられた大きな氷では、刃を当てたときの削れ方も同じとは限りません。だから、「水なんて何でもいい」という話でもありません。でも逆に、「超軟水だから、ふわふわになる」とも言い切れません。

水を選ぶ。氷を丁寧につくる。削るのに適した温度へ調整する。そして、よく切れる刃で薄く削る。それらが組み合わさって、あの独特な口どけが生まれます。つまり、水は「ふわふわ」をつくる条件の一つではあっても、水だけがつくっているわけではない。ということなのでしょう。

では「頭がキーンとしにくい」は?

ここでもう一つ、かき氷についてよく聞く話があります。天然氷や上質な氷を使ったかき氷は、「頭がキーンとなりにくい」というものです。でも、これも「水がいいから」と説明するのは慎重になったほうがよさそうです。

いわゆる「アイスクリーム頭痛」は、冷たいものが口の中や喉を急激に冷やすことで起こる頭痛です。だったら重要なのは、水の硬度そのものより、どれくらい冷たいものを、どれくらい急速に口へ入れるかではないでしょうか? 薄く削られたかき氷なら、口の中での溶け方も、ガリガリした氷の粒とは違います。

さらに専門店では、氷を冷凍庫から出して温度を少し上げてから削ることもあります。そうした条件が重なれば、「キーン」と感じにくくなる可能性は考えられます。少なくとも、「超軟水だから頭がキーンとしない」と、水質だけで説明するのは難しそうです。

「おいしい」は、舌だけで感じているわけじゃない

ここで、私たちが実際に行った水と氷の食べ比べを思い出してみます。水の状態では、エビアンやコントレックスに明らかな口当たりの違いを感じました。ところが氷にすると、まだ凍っている部分ではその違いが分かりにくくなった。

その代わり気になったのは、噛んだときの崩れ方でした。水では「味」や「口当たり」。氷では「硬さ」や「崩れ方」。かき氷になれば、さらに「薄さ」や「口どけ」が加わる。どうやら「おいしい氷」という言葉の中には、味覚だけでは説明できないものが、ずいぶんたくさん入っています。

そして、ここで一つ妙な疑問が残りました。もし、「ミネラルや不純物が少ない水ほど、おいしい氷になる」というのなら――。いっそのこと、不純物を極限まで取り除いた「純水」を凍らせれば、最高においしい氷になるのでしょうか?……なんだか、おかしい。純度を上げれば上げるほど、おいしくなる。本当にそんな単純な話なのでしょうか。

「超軟水だからおいしい」。そこから始まった私たちの疑問は、とうとう、「そもそも『おいしい』って何だろう?」というところまで来てしまいました。最後はもう一度、一杯の氷を口へ入れて考えてみましょう。

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最終章 「おいしい氷」って、結局何がおいしいの?──水・温度・食感がつくる口どけの正体

「超軟水でつくった氷だから、おいしい」そう聞けば、なんとなく納得してしまいます。ミネラルや不純物が少ない。雑味がない。だから、おいしい。

でも、ここまで水と氷について調べ、実際に硬度の違う水を飲み、それを凍らせて食べてみると、そんな単純な話ではないように思えてきました。そもそも、不純物が少ないほど、おいしいのでしょうか? もしそうなら、不純物を極限まで取り除いた純水に近づけば近づくほど、水はおいしくなるはずです。

でも、私たちが水に求めている「おいしさ」は、単なる純度ではありません。水に含まれるミネラルもまた、口当たりや味わいをつくっています。つまり、「純粋であること」と「おいしいこと」は、同じではない。ここを分けて考えたほうがよさそうです。

「何もない水」が、最高においしいとは限らない

今回、硬度の違う水を飲み比べてみました。水道水と日本の天然水は、いつもの「普通の水」。硬度304mg/Lのエビアンになると、少し硬い。1468mg/Lのコントレックスでは、さらに「何かが溶け込んでいる」ような口当たりを感じました。

だからといって、軟水がおいしく、硬水がおいしくない。ということではありません。「この口当たりが好き」という人もいれば、「すっきりした水が好き」という人もいるでしょう。水のおいしさには、成分だけでなく、飲み慣れている水や好みも関係しています。

日本で軟水を飲み慣れていれば、その口当たりを「普通の水」と感じる。私たちが「おいしい」と感じる基準には、自分がこれまで飲んできた水の記憶まで含まれているのかもしれません。

水だったときと、氷になったときでは違った

さらに面白かったのが、実際に凍らせた結果です。エビアンもコントレックスも、表面で溶けた水には、液体で飲んだときの口当たりが残っていました。ところが、まだ凍っている部分を食べると、その違いはほとんど分かりませんでした。

代わりに気になったのが、氷の硬さや崩れ方。エビアンの氷は水道水よりサクサクと崩れるように感じ、コントレックスではさらに柔らかく感じました。もちろん一度の家庭実験なので、この違いが硬度によるものだとは断定できません。

でも、このとき私たちが気にしていたものが変わったことは確かです。水では「味や口当たり」を比べていたのに、氷では、「どう噛めるか」「どう崩れるか」を比べていた。つまり「おいしい」の中身が、液体と固体では変わっていたのです。

かき氷になれば、「おいしい」はもっと複雑になる

さらに氷を削れば、話はもっと複雑になります。冷凍庫から出したばかりの冷たい氷なのか。少し温度を上げてから削った氷なのか。厚く削るのか。紙のように薄く削るのか。舌の上で粒を感じるのか。それとも、触れた瞬間にすっと溶けてしまうのか。同じH₂Oでも、私たちが受け取る感覚はまるで違います。

そこでようやく、「口どけ」という言葉が大切になってきます。「おいしい氷」とは、水の味だけではありません。舌に触れた冷たさ。氷の硬さ。削られた薄さ。口の中で溶ける速さ。そのとき初めて現れる水の味。そうした感覚をまとめて、私たちは、「おいしい」と呼んでいるのではないでしょうか。

「超軟水」は、答えではなく始まりだった

そう考えると、飯田市の「超軟水の氷」の見え方も少し変わります。超軟水を選ぶこと。時間をかけて氷をつくること。空気や不純物をできるだけ閉じ込めず、透明な氷にすること。適切な温度まで氷を緩めること。そして薄く削ること。「おいしい氷」は、そのどれか一つだけで完成するものではないのでしょう。

水を選び、凍らせ、育て、削り、最後に人間の口の中で溶ける。「おいしい」は、その長い工程のいちばん最後に生まれる。そう考えると、「48時間かけて氷をつくる」という意味も少し違って見えてきます。時間をかけることそのものがおいしいのではありません。最後の一口をどう感じてもらうのか。そこから逆算して、水の選び方や凍らせ方を考えているのでしょう。

たかが氷。でも、氷は「水」だけではなかった

朝、この話を始めたときには、「だって、所詮は水でしょ?」と思っていました。ところが水を4種類買って飲み比べてみたら、本当に口当たりが違った。凍らせたら、今度は味よりも硬さや崩れ方が気になった。そしてかき氷まで考えると、温度や削り方まで「おいしさ」の中へ入ってきました。

結局、「おいしい氷って、何がおいしいの?」という最初の問いに、一つだけ答えを選ぶことはできそうにありません。水がおいしい。氷の状態がいい。削り方がいい。口どけがいい。その全部です。そして、おそらく一番大切なのは、その全部が、口の中で一瞬にして一つになること。

氷は舌の上で溶ければ、また水に戻ります。けれど、そのほんの数秒の間に、水だったときにはなかった「食感」が生まれ、氷だったときには分からなかった「味」が戻ってくる。だから私たちは、ただの水を凍らせたものにまで、「おいしい」と感じるのかもしれません。

『あさイチ』は、長野県飯田市から「超軟水!こだわり氷」を中継します。もし画面に透明な氷が映ったら、「超軟水だからおいしそう」だけで終わらず、ほんの少し想像してみてください。

その一滴の水が、凍り、氷になり、削られ、そして舌の上でもう一度、水へ戻るまでを。「おいしい氷」とは、水をおいしくする技術ではなく、水がおいしく戻ってくる瞬間をつくる技術なのかもしれません。

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まとめ|「おいしい氷」は、水だけではつくれない

「超軟水でつくった氷はおいしい」そう聞いたところから、今回の疑問は始まりました。でも、そもそも水を凍らせただけの氷に、「おいしい」と「おいしくない」があるのでしょうか?

まずは、水そのものを飲み比べてみました。水道水、日本の天然水、エビアン、そしてコントレックス。「水なんて、そんなに変わらないだろう」と思っていたのに、硬度が高くなると、確かに口当たりが変わります。

では、それを凍らせたらどうなるのか。実際に同じように凍らせて食べてみると、今度は水で感じたほどの口当たりの違いが分かりません。その代わり気になったのが、氷の硬さや、噛んだときの崩れ方でした。

水だったときには「味」を探していたのに、氷になると「食感」を探していた。ここで、「おいしい氷」の見え方が少し変わってきます。さらに製氷について調べると、透明な氷をつくるためには、水を選ぶだけではなく、凍らせ方も大切なことが見えてきました。

そして、かき氷ならさらに、氷の温度。刃の当て方。削られる氷の薄さ。そして舌の上での口どけ。さまざまな条件が「おいしい」に加わります。つまり、「超軟水だから、おいしい」。それだけではなかったのです。

水を選ぶ。丁寧に凍らせる。適切な状態まで温度を調整する。薄く削る。そして最後に、口の中で溶けて水へ戻る。その一連の過程すべてが、「おいしい氷」をつくっているのでしょう。

『あさイチ』は長野県飯田市から「超軟水!こだわり氷」を中継します。透明な氷を見たら、その向こう側にある「水」だけではなく、その水を、どうやって氷にしたのか。そこにも少し注目してみてください。

たかが水。たかが氷。でも今日、実際に飲んで、凍らせて、食べてみて分かったのは、「おいしい」は、水の中に最初から入っているものではないということでした。

水から氷へ。そして氷から、もう一度水へ。そのほんの短い旅の途中に、人間が手間と技術を加えることで、ただの水にも、「おいしい」と感じる瞬間が生まれる。それが、「おいしい氷」の正体なのかもしれません。


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