熊を追い払うのは、もう人間じゃなくていい?|AI四足歩行ロボット「HLQ Pro」が挑む熊対策【あさイチ中継】

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山から下りてきてしまった熊を、誰が山へ帰すのか?これまで熊の追い払いは、人間が危険と隣り合わせになりながら行ってきました。けれど、その役目をロボットに任せることができたら――。8月27日放送予定のNHK「あさイチ」中継「熊対策・威嚇ロボット」では、埼玉県所沢市から、新しい熊対策の取り組みが紹介される予定です。

注目されているのが、東京大学発のスタートアップHighlandersが開発する四足歩行ロボット「HLQ Pro」。目指しているのは熊を捕まえたり、傷つけたりすることではありません。人間に代わって熊を威嚇し、人里から遠ざけることで、そもそも人と熊が出遭わない環境をつくることです。

ならば、このロボットは熊より「強い」必要さえないのかもしれません。でも、熊が怖がらなかったら? ロボットに慣れてしまったら? それどころか、熊に壊されちゃったら……?

今回は放送に先駆けて、熊対策ロボット「HLQ Pro」とはどんなものなのか。なぜ開発されたのか、何ができるのか。そして実用化に向けて残されている課題まで見ていきます。

【放送日:2026年8月27日(木)8:15 -9:55・NHK-総合】

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熊対策・威嚇ロボットってどんなもの?──東大発スタートアップが開発する「HLQ Pro」

熊対策と聞いて思い浮かべるのは、箱罠や電気柵などではないでしょうか? ところが、熊を捕まえるのではなく、四足歩行ロボットを使って人里から追い払おうという取り組みが始まっています。それが、東京大学発のスタートアップ・Highlanders株式会社が進めている熊対策プロジェクト「KUMAKARA MAMORU」です。

そこで活用されるのが、犬のような4本の脚を持つ四足歩行ロボット「HLQ Pro」。Highlandersが2025年12月に発表した「KUMAKARA MAMORU」は、HLQ Proを人里と山林との境界などに配置し、熊の接近を検知して威嚇することで、人間との遭遇を減らそうというプロジェクトです。

HLQ Pro(出典:PR TIMES)
HLQ Pro(出典:PR TIMES)

大切なのは、熊を捕獲するためのロボットではないということ。熊が人里へ深く入り込み、人間と出遭ってしまってから対処するのではなく、その前にロボットが熊との間に入り、再び山側へ戻ってもらう。目指しているのは、熊を倒すことではなく、人と熊との「距離」を取り戻すことなのです。

そして、この取り組みを進めているHighlandersの代表取締役CEO・増岡厳さんは東京大学大学院出身。2024年に会社を設立し、AIを活用した四足歩行ロボットの開発を進めてきました。では、犬のような姿をした「HLQ Pro」は、実際にどうやって熊を見つけ、追い払うのでしょうか? 次は、その仕組みを見てみましょう。

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熊をどうやって追い払う?──AI・赤外線カメラ・スピーカーで人の代わりに山へ

では、「HLQ Pro」はどのようにして熊を追い払うのでしょうか。まず特徴的なのが、犬のような4本の脚です。車輪で走るロボットとは違い、四足歩行なら舗装された道路だけでなく、藪や斜面、段差のある場所にも入っていくことができます。

しかも「HLQ Pro」にはAIによる自律歩行機能が搭載され、周囲の状況を判断しながら移動することが可能。最大30kgの機材を載せられるため、熊対策に必要なさまざまな装備を組み合わせることも想定されています。

その一つが赤外線カメラです。人間の目では確認しにくい暗い場所でも熊などの野生動物を捉え、接近を検知。そして大型スピーカーから大きな音を出したり、フラッシュライトで光を照射したりすることで、熊を人里から遠ざけます。つまり、ロボットが熊と取っ組み合いをするわけではありません。
「見つける」「近づく」「威嚇する」「山へ戻す」
そこまでを、人間の代わりにロボットに任せようという発想です。

これは熊にとってだけでなく、対策にあたる人間にとっても大きな意味があります。熊を追い払うために人が近づけば、当然ながら襲われる危険があります。しかしロボットなら、作業する人は熊から離れた場所にいながら対応できる可能性があります。

目指しているのは、熊に勝てる強いロボットを作ることではなく、人間が熊の前に立たなくても済む仕組みを作ること。そう考えると、「熊対策ロボット」という少し物々しい名前とは違った姿が見えてきます。

ところが――。相手は、人間の思い通りには動いてくれない野生の熊です。大きな音や光を怖がって逃げてくれるとは限りません。それどころか、ロボットそのものに慣れてしまったり、近づいて壊してしまったりする可能性もあります。

では「HLQ Pro」は、本当に熊を追い払い続けることができるのでしょうか?次は、実用化に向けて残されている課題を見てみましょう。

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熊はロボットを怖がるの?──破壊・慣れ・通信環境、実用化までの課題

赤外線カメラで熊を見つけ、大きな音や光で山へ追い払う。ここまで聞くと、「HLQ Pro」がいれば熊との遭遇をかなり減らせるようにも思えます。しかし、相手は野生の熊。ロボットが想定した通りに行動してくれるとは限りません。開発を進めるHighlandersも、いくつかの課題を想定しています。

その一つが、熊がロボットを怖がらない可能性です。最初は大きな音や光に驚いて逃げたとしても、同じ威嚇を繰り返しているうちに、「これは危険ではない」と熊が学習してしまうかもしれません。いわゆる「慣れ」の問題です。

さらに困るのが、逃げるどころか熊が「HLQ Pro」に近づいてきた場合。熊の力は強く、最悪の場合にはロボットそのものを破壊される可能性もあるといいます。熊と戦うためのロボットではない以上、これはなかなか悩ましい問題です。

そしてもう一つ、大きな課題があります。山の中で、どうやってロボットを動かすのか。熊との遭遇が想定される山間部では、携帯電話の電波など通信環境が十分に整っていない場所も少なくありません。通信が途切れれば、遠隔操作やロボットから送られてくる映像の確認などに支障が出る可能性があります。

AIによる自律歩行ができても、熊を相手にする以上、すべてをロボット任せにするわけにはいかないでしょう。つまり「HLQ Pro」の実用化には、

熊をどうやって怖がらせ続けるか?
熊に壊されないようにするか?
そして、通信できない山の中でどう運用するか?

まだ越えなければならない山があります。それでも、この取り組みが目指しているのは「熊に勝つこと」ではありません。人が熊へ近づかなくても、熊を人里から山へ戻せるようにすること。もしそれが実現すれば、守られるのは人間だけではないのかもしれません。

人と出遭わなければ、熊もまた、人間によって捕獲されたり駆除されたりする可能性を減らせるからです。熊を倒すためではなく、人と熊が出遭わないためにロボットを使う。クマと人間がお互いに離れて幸せに暮らす。そこに、この熊対策ロボットの本当の意味があるのではないでしょうか?

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まとめ 熊と戦うためではなく、人が熊と出会わないために

熊が現れたら、人間が追い払う。これまで当たり前だったその役割を、いつかロボットが代わってくれる日が来るのかもしれません。東京大学発のスタートアップ・Highlandersが開発する四足歩行ロボット「HLQ Pro」が目指しているのは、熊と戦って倒すことではありません。

熊が人里へ近づいたことを察知し、人間と出遭う前に威嚇して、再び山へ戻ってもらうこと。そのためにAIや赤外線カメラ、スピーカー、フラッシュライトといった技術が使われようとしています。

もちろん、まだ課題はあります。熊が威嚇に慣れてしまうかもしれない。ロボットが壊されるかもしれない。そして山間部では、通信環境そのものが十分ではない場所もあります。それでも、このロボットが目指している未来には、少し希望を感じます。

熊と人間のどちらかが勝つのではなく、そもそも出遭わなくて済むようにする。人間は安心して暮らし、熊は熊の暮らす山へ帰っていく。そんな距離を保つことができたなら、それもまた、クマと人間がお互いに幸せに暮らす方法の一つなのかもしれません。

熊対策に必要なのは、熊より強くなることではなく、熊と人間が出遭わない環境をつくること。「HLQ Pro」の4本の脚が向かっているのは、そんな人と野生動物との新しい付き合い方なのではないでしょうか?


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