秋田県鹿角市の豊かな自然の中で育まれる「かづの牛」は、“幻の赤身肉”と呼ばれる希少なブランド牛です。全国でも飼育数が少ない日本短角種ならではの濃厚な旨味と力強い赤身は、多くの料理人を魅了しています。
「食彩の王国」で紹介されるのは、そんな「かづの牛」のおいしさだけではありません。祖父の代から受け継がれてきた牧場を守るため、亡き兄の遺志を継いで奮闘する生産者・湯沢政幸さんの歩み、そして故郷・秋田の魅力を一皿に込めようと挑む料理人たちの情熱が描かれます。
放牧で育つ赤身肉の奥深い味わい、山菜やきりたんぽなど秋田の食材との出会い、そして兄弟の夢を未来へつないでいく人々の想い。
今回は、“幻の赤身肉”と呼ばれる「かづの牛」の魅力と、その一皿の向こうにある家族の物語、そして秋田の豊かな食文化をご紹介します。
【放送日:2026年7月18日(土)9:30 -9:55・テレビ朝日】
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「かづの牛」とは?~幻の赤身肉と呼ばれる理由~
秋田県鹿角市の豊かな自然の中で育てられている「かづの牛」は、“幻の赤身肉”と呼ばれる希少なブランド牛です。
その理由は、「かづの牛」が全国でも飼育頭数の少ない日本短角種であることにあります。現在、日本で飼育されている和牛の多くは霜降りが特徴の黒毛和種ですが、日本短角種は赤身本来の旨味を楽しめる肉質が特徴です。噛むほどに肉の旨味が広がり、ほどよい弾力と深いコクを味わえることから、近年では赤身肉を好む人々の間で高い評価を集めています。
また、「かづの牛」のおいしさを支えているのが、鹿角地域に古くから伝わる「夏山冬里(なつやまふゆさと)方式」と呼ばれる飼育方法です。夏は広大な牧場でのびのびと放牧し、冬は里の牛舎で大切に育てることで、引き締まった肉質と豊かな風味が育まれます。
こうして自然の恵みを受けながら大切に育てられる「かづの牛」は、生産量が限られていることから“幻の赤身肉”とも呼ばれ、多くの料理人を魅了してきました。
そんな「かづの牛」を守り続けようと、ある男性が兄の遺志を胸に歩み始めています。次の章では、生産者・湯沢政幸さんが受け継いだ、家族の物語をご紹介します。
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兄の遺志を継いで~「かづの牛」を守る生産者~
「かづの牛」を育てているのが、秋田県鹿角市で牧場を営む湯沢政幸さんです。しかし、政幸さんが牧場に立つようになったのは、最初から牛の生産を志していたからではありません。
祖父の代から続く牧場では、三代目として兄・栄喜さんが「かづの牛」の生産に力を注いでいました。ところが2年前、その栄喜さんが突然この世を去ります。家族にとって大きな悲しみの中、「この牧場を絶やしてはいけない」という思いから、政幸さんは兄の遺志を受け継ぐ決意をしました。
現在は本業と両立しながら牧場へ通い、一頭一頭の牛と向き合う毎日です。牛の飼育は決して思いどおりにはいかず、慣れない仕事に戸惑うことも少なくありません。それでも試行錯誤を重ねながら、「かづの牛」を未来へつないでいこうと歩み続けています。
そんな政幸さんの背中を支えているのが、兄・栄喜さんが生前に残した言葉でした。その言葉は、牧場を守る理由であると同時に、「かづの牛」を育て続ける覚悟を、今も静かに教えてくれているのです。
兄から弟へ
受け継がれたのは牧場だけではありません。一頭一頭の牛に向き合う真っすぐな想いもまた、政幸さんの手によって未来へと受け継がれていました。
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秋田の自然が育てる赤身肉~伝統の「夏山冬里方式」~
「かづの牛」のおいしさを支えているのは、鹿角市の豊かな自然と、昔から受け継がれてきた伝統的な飼育方法です。
湯沢さんの牧場では、「夏山冬里(なつやまふゆさと)方式」と呼ばれる飼育法を受け継いでいます。夏は東京ドーム約20個分もの広大な放牧地で牛たちをのびのびと育て、冬になると里へ戻して大切に飼育するという、自然のリズムに寄り添った方法です。
青々とした草を食べながら牧場を歩き回ることで、牛たちは健康的に育ち、適度に引き締まった赤身肉になります。その肉質は脂の甘さを楽しむ霜降り肉とは異なり、噛むほどに旨味とコクが広がる、日本短角種ならではの味わいを生み出します。
また、湯沢さんは牛たちが健やかに育つよう、餌や健康管理にも細やかに気を配っています。一頭一頭の様子を見守りながら、その日の体調や季節の変化に合わせて世話を続けることも、生産者にとって大切な仕事です。
広い牧場を吹き抜ける風、四季折々に表情を変える自然、そして牛と向き合う生産者の手間と愛情。そのすべてが重なり合って、「かづの牛」の力強い赤身のおいしさが育まれているのです。だからこそ、その一皿には、秋田の自然と生産者の想いが、静かに息づいています。
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秋田の恵みと「かづの牛」が出会う~料理人たちの挑戦~
丹精込めて育てられた「かづの牛」は、多くの料理人たちの創作意欲もかき立てています。秋田県出身のフレンチシェフ・木村和則さんは、「県外の人にも秋田の魅力を知ってほしい」という思いから、「かづの牛」を使った新作メニューに挑戦しました。
まず木村シェフが向かったのは、湯沢さんが牛を育てる放牧場です。広大な牧草地を歩きながら、牛たちがどのような環境で育ち、どんな餌を食べているのかを自らの目で確かめます。そして、生産者おすすめの「かづの牛」料理も味わい、その土地ならではの食文化から新たな発想を膨らませていきました。
完成した一皿は、旬の山菜と「かづの牛」の旨味を組み合わせた、秋田の春を感じさせるフレンチ。そしてもう一皿には、秋田ならではの食材を巧みに取り入れ、この土地の風土を一皿の上で表現しました。
また、東京都内のイタリアンでは部位ごとの個性を生かした料理が提供され、鹿角市では洋食店が牛すじの旨味を引き出した一皿を考案。さらに創作割烹では、東北に伝わる調味料や郷土料理のきりたんぽを取り入れた料理が並びます。
同じ「かづの牛」であっても、料理人によって表現はさまざまです。それぞれの一皿には、生産者が大切に育てた赤身肉への敬意と、秋田の豊かな自然や食文化を多くの人へ届けたいという料理人たちの想いが込められていました。
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兄弟の夢は、未来へ続く~命をつなぐ一皿~
「かづの牛」は、ただ希少なブランド牛というだけではありません。そこには、祖父から兄へ、そして兄から弟へと受け継がれてきた牧場の歴史と、一頭一頭の牛に向き合い続ける生産者の想いがあります。
その想いは料理人たちへ託され、一皿の料理となって訪れた人のもとへ届けられます。赤身肉の力強い旨味を味わうひとときは、秋田の豊かな自然や、生産者の努力、料理人の技術に触れる時間でもあるのです。
亡き兄の遺志を胸に、「かづの牛」を守り続ける湯沢政幸さん。そして、その想いを料理で表現しようと挑戦するシェフたち。それぞれの立場は違っても、「秋田の魅力を未来へ伝えたい」という願いは、一本の糸のようにつながっています。
食材は、人の手から人の手へ受け継がれます。その先にある食卓には、育てる人、料理する人、味わう人、たくさんの笑顔があります。
「かづの牛」が教えてくれるのは、本当のおいしさとは、味だけではなく、その一皿に込められた人の想いも一緒に味わうことなのかもしれません。兄弟の夢は、一皿の料理となり、これからも多くの人の心へ静かに受け継がれていくことでしょう。