弘前には、育て続ける人がいる|リンゴと津軽塗がつなぐ土地の時間【よみがえる新日本紀行】

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昭和43年。日本は高度経済成長のまっただ中にありました。海外から新しいものが入り、暮らしは少しずつ豊かになっていく。果物売り場にも、バナナをはじめ、さまざまな輸入果物が並び始めた時代。そんな変化の中、青森・弘前では、変わらず土と向き合い続ける人たちがいました。

もっと美味しいリンゴを作りたい。もっと喜んでもらえるものを届けたい。弘前のリンゴ農家たちは、気の遠くなるような時間をかけながら、品種改良に挑み続けていました。一方で、津軽塗の職人たちもまた、何度も漆を塗り重ね、手間を惜しまず、一つの仕事と向き合っていました。

時間をかける。簡単に答えを求めない。積み重ねる。そんな弘前の人たちの粘り強さは、半世紀が過ぎた今も、この土地に静かに息づいています。

今回の『よみがえる新日本紀行』「弘前」は、リンゴと津軽塗を通して見えてくる、土地に流れる時間の物語。育て続ける人がいる。受け継ぐ人がいる。だから、その土地の営みは時代を超えて残っていく。雪国・弘前に生きる人々の粘り強さをたどりながら、半世紀を超えて受け継がれてきた「土地の時間」に耳を澄ませます。

【放送日:2026年5月26日(火)15:30 -16:08・NHK-BSP4K】
【放送日:2026年5月27日(水)9:45 -10:25・NHK-BS】

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弘前ってどんな町?|リンゴと職人文化が息づく城下町

青森県西部、津軽地方の中心にある弘前市。弘前城を中心に発展した城下町として知られ、今も街にはどこか落ち着いた空気が流れています。春になれば弘前公園の桜。夏にはねぷた祭り。秋にはリンゴの実り。そして冬には雪景色。四季がはっきりと移り変わる土地です。

その弘前を語るうえで欠かせないのが、やはりリンゴ。青森県は全国一のリンゴ生産地として知られていますが、その中心にあるのが弘前です。

街を歩けばリンゴ畑。スーパーにはたくさんの品種のリンゴ。ジュース。お菓子。そして近年では、リンゴを使ったシードル作りも広がっています。弘前にとってリンゴは特産品というだけではありません。土地の風景そのものになっている存在です。

そしてもうひとつ。弘前には「手をかけて育てる文化」があります。津軽塗。何度も漆を塗り重ねながら作り上げる伝統工芸。時間を惜しまない。簡単に答えを求めない。そんな職人たちの姿勢も、この土地の空気を作ってきました。

岩木山を望む津軽の風景。長い冬。短い夏。厳しい自然と向き合いながら、人は少しずつ技を磨き、土地の恵みを育ててきました。

リンゴも、津軽塗も、一日では育ちません。だから弘前には、「育て続ける」という時間が流れています。今回の『よみがえる新日本紀行』は、そんな弘前に半世紀前から息づいてきた、人々の粘り強さを見つめていきます。

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弘前のリンゴはなぜ美味しいの?|品種改良を続けた農家の粘り強さ

弘前を歩いていると、あらためて気づかされます。リンゴは、この土地の風景そのものなのだと。秋になれば赤く色づく果実。雪景色の中で春を待つ木々。弘前ではリンゴは特産品というだけではありません。暮らしの中にある存在です。

青森県でリンゴ栽培が本格的に始まったのは明治時代。国策で西洋リンゴの苗木が導入され、この土地で栽培が始まりました。けれど、最初から順調だったわけではありません。病気。害虫。寒さ。津軽の厳しい自然。農家の人たちは試行錯誤を繰り返しながら、この土地に合うリンゴを育ててきました。

昭和43年。輸入果物が増え始めた時代。バナナなど新しい果物が身近になり、農家の人たちは大きな変化の中にいました。そんな中でも弘前の農家は考え続けます。どうしたらもっと美味しくなるのか。どうしたらもっと喜んでもらえるのか。

品種改良。栽培方法の工夫。一本一本、木と向き合う時間。簡単に結果が出る仕事ではありません。リンゴの木は、一年では育たない。新しい品種も、すぐには完成しない。時間をかける。失敗する。また挑戦する。そうした積み重ねが、今の弘前のリンゴを作ってきました。

甘み。酸味。香り。シャキッとした歯ざわり。「ふじ」。「王林」。「ジョナゴールド」。「つがる」。たくさんの品種が育まれてきた背景には、「もっと良いものを届けたい」と願い続けた人たちの粘り強さがあります。簡単に答えを求めない。少しずつ積み重ねる。弘前のリンゴには、そんな土地の時間が詰まっています。

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津軽塗はなぜ手間を惜しまないのか?|何度も塗り重ねる職人の仕事

弘前には、もうひとつ時間をかけて育まれてきた文化があります。津軽塗。青森県津軽地方に伝わる伝統工芸です。特徴は、何といっても独特の模様。漆を何度も塗り重ね、研ぎ出すことで生まれる奥行きのある表情。ひとつとして同じ模様はありません。けれど、その美しさの裏側には、気の遠くなるような時間があります。

塗る。乾かす。磨く。また塗る。また磨く。工程は一度では終わりません。何度も、何度も、40回以上も手をかける。すぐには完成しない。簡単には答えが出ない。それでも職人たちは、目の前の仕事を積み重ねていきます。

津軽塗(出典:明日の扉)
津軽塗(出典:明日の扉)

昭和43年の番組にも、そんな津軽塗の職人の姿が映し出されていました。黙々と作業を続ける。派手ではない。けれど、妥協しない。良いものを作るために、手間を惜しまない。それは弘前のリンゴ農家にも通じる姿でした。

自然を相手に、長い時間をかけて育てる人。技を磨きながら、何度も手を重ねる人。土地は違っても。仕事は違っても。そこに流れる時間は、どこか似ています。

早く。効率よく。そんな言葉が増えた今だからこそ、津軽塗が教えてくれるものがあります。時間をかけること。積み重ねること。簡単に答えを求めないこと。津軽塗の艶の向こうには、そんな弘前の時間が静かに流れています。

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半世紀たっても変わらないもの|若い世代へ受け継がれる弘前の気質

昭和43年。リンゴ農家は、もっと美味しいリンゴを作ろうとしていました。津軽塗の職人は、何度も漆を重ねながら、ひとつの仕事を仕上げていました。半世紀以上が過ぎた今。時代は大きく変わりました。暮らしは便利になり、世の中のスピードはずっと速くなりました。

けれど弘前には、変わらないものがあります。簡単に答えを求めないこと。手間を惜しまないこと。時間をかけて育てること。それはリンゴ作りだけではありません。ものづくりも。暮らしも。人との関わりも。この土地には、「積み重ねる」という時間の流れが静かに息づいています。若い世代もまた、その姿を見ながら育ってきました。

効率だけでは作れないもの。時間をかけるからこそ育つもの。そうした価値を、自然と受け継いでいるのかもしれません。

東北の人は忍耐強い。そんな言葉を耳にすることがあります。もちろん厳しい冬や雪深い自然もあるでしょう。けれど、それだけでは説明できない何かがあります。すぐに結果が出なくても続ける。今年うまくいかなくても、また挑戦する。長い時間をかけて育てる。

弘前の粘り強さとは、「我慢」ではなく、未来を信じて積み重ねる力。そんな土地の時間が、半世紀を超えて今も静かに受け継がれています。

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弘前には、育て続ける人がいる|リンゴと津軽塗がつなぐ土地の時間

弘前には、ゆっくり流れる時間があります。春を待つ雪景色。秋を待つリンゴの木。何度も漆を塗り重ねる職人の手。すぐには完成しないものを、少しずつ育てていく時間です。リンゴ農家は、今年だけを見て仕事をしているわけではありません。来年。その先。もっと先。木が育つ時間を信じながら、土と向き合い続けています。

津軽塗の職人も同じです。一度では終わらない。何度も手を重ねる。少しずつ形になっていく。簡単に答えを求めない。積み重ねる。弘前の人たちが半世紀を超えて守り続けてきたものは、技術だけではありません。時間との向き合い方。手間を惜しまない姿勢。未来を信じる粘り強さ。そうした土地の気質そのものが、若い世代へ受け継がれてきました。

世の中は速くなりました。便利にもなりました。けれど、時間をかけなければ育たないものがあります。ゆっくりだからこそ届くものがあります。リンゴの甘さも。津軽塗の艶も。長い時間をかけて生まれます。

弘前には今日も、育て続ける人がいます。積み重ねる人がいます。誰かが続けてきたから、今があります。そして今日の営みもまた、きっと半世紀先へつながっていく。『よみがえる新日本紀行』「弘前」。そこに映るのは、リンゴの町ではありません。職人の町でもありません。時間を育てながら生きる人たちの町でした。

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