こんにちは鳥巣です。5/20のあさイチでは、水郷の町として有名な福岡県柳川市の鉄工所の”挑戦”が中継されるようです。では柳川の鉄工所は何に”挑戦”しているのでしょうか?
なぜ柳川には老舗の大きな鉄工所があるの?
柳川は有明海に面した筑後川の下流にある水郷の町です。満潮時には柳川市内に張り巡らされている掘割に、潮の満ち引きが最大で6mもあるため、有明海から海水が流れ込んでしまい、飲料水や田畑の水源として使うことが出来なくなってしまいます。
弥生時代から河川から水を引いた掘割を作っていたのですが、川が満潮時に海水の影響を受ける区間(感潮区間)は、市内を流れる沖端川(おきのはたがわ)の河口から7キロ以上も上流になります。
つまり柳川市の中心で河口近くにある「柳川城」の近くで掘割を川に繋げてしまうと、掘割にも海水が流れ込んでしまって不都合が起こるわけです。
そこで柳川の掘割に流れている水は、河口から9キロ以上上流にある分岐から二ツ川という人工の川を掘って採取しています。
ただ分岐させただけでは本流の沖端川が大雨で増水したときには、大量の雨水が柳川城下に流れ込んで、城下が水浸しになってしまうため、分岐点に水門を作って、余計な水が掘割に流れ込まないような工夫もされています。

柳川城下に縦横無尽に張り巡らされている掘割の全長は、約930kmもあって、古くから住民の生活を支えてきました。掘割を流れる水も田畑の場所などによって流れる方向を制御する必要があったため、柳川市内の各所に水門が設けられています。
戦後になって水門が鉄製になるのに伴って、柳川市で創業されたのが「乗富鉄工所」です。現在でも柳川市内に本社を置いて水利施設事業を中心に営業されています。
乗富鉄工所は福岡県内では最大規模を誇る、創業75年の老舗企業です。水利施設を中心に、年間200件近い機械設備の設計・製作・設置・補修を一貫して手がけています。
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乗富鉄工所の経営危機を乗り越えるための”挑戦”とは?
そんな乗富鉄工所には、鉄工職人の幅広い技術と知見がありますが、最盛期を支えた職人たちが次々に定年を迎えた2017年から2020年にかけては、若手を含む未来に希望をもてなくなった社員の1/3が離職してしまうという経営危機を迎えました。
そんな時に実家の家業に戻ってきた3代目社長の乘冨賢蔵さんは、鉄工職人を「メタルクリエイター」と呼んで、彼らの技術と発想を生かした自社商品開発に着手することにしました。それは職人たちのプライドの高揚や、下請け体質からの脱却という意味もあったのかもしれません。
そこで現在行っていることの一つは、これまでになかった木のピザ窯「アップダウングリル」の開発と生産、販売です。これは次世代の柱となる事業を起こすために、鉄工職人の技術を生かした自社商品の開発に着手した一つの結果です。
鉄工職人が出したアイデアをもとに、外部のデザイン会社ともタッグを組んで2年の歳月をかけて、アウトドアシーンの新定番となるピザ窯を開発しました。
「普通はレンガやセラミックで作るピザ窯を木と金属で作ったら安全で持ち運びもできるのではないか」という、そんなメタルクリエイターのアイデアから生まれた画期的な「アップダウングリル」は、窯内部が本格的なピザが焼ける350℃以上の高温状態になっても、表面が危険な温度にならず、持ち運びもできるコンパクトさを実現したといいます。
また下部(ダウン)のオーブンでピザを焼きながら上部(アップ)の炭床でバーベキューを楽しめるのもこれまでにはない特徴です。前例がない製品であったため金属の熱変形や木材の不燃対策など検討事項が非常に多く、試作と実験を繰り返し完成したといいます。

また薪ではなく、”炭”を燃料とするため煙が少なく、キャンプだけではなく自宅の庭や縁側でのホームパーティーなども気軽に楽しむことが出来ます。使い方も炭に火をつけるだけとシンプルで、着火後約30分でオーブン内部は350℃以上の高温状態になります。
ステンレス製の窯部は取り外し可能で後片付けも簡単。オプションの蓋には消火機能もついています。
アップダウングリルはコンパクトで持ち運びができるため、キッチンカーやバーベキュー施設、キャンプ場、屋外レストランなどでも使えます。レストランや旅館を経営されている人にも導入してもらったそうです。
株式会社乗富鉄工所
- 福岡県柳川市三橋町柳河934-4
- 社員数:78名(2025年4月時点)
- URL:https://noritetsu.com/
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まとめ
なぜ柳川には老舗の大きな鉄工所があるの?
柳川市内に縦横無尽に張り巡らされている掘割の全長は、約930kmもあります。掘割を流れる水も田畑の場所などによって流れる方向を制御する必要があったため、柳川市内の各所に水門が設けられています。戦後になって水門が鉄製になるのに伴って、柳川市で創業されたのが「乗富鉄工所」です。乗富鉄工所は創業75年の老舗企業で水利施設を中心に、年間200件近い機械設備の設計・製作・設置・補修を一貫して手がけています。
乗富鉄工所の経営危機を乗り越えるための”挑戦”とは?
そんな乗富鉄工所も、最盛期を支えた職人たちが次々に定年を迎えた2017年から2020年にかけては、若手を含む未来に希望をもてなくなった社員の1/3が離職してしまうという経営危機を迎えました。そこで現在行っていることの一つは、これまでになかった木のピザ窯「アップダウングリル」の開発と生産、販売です。これは次世代の柱となる事業を起こすために、鉄工職人の技術を生かした自社商品の開発に着手した一つの結果です。