東京・江戸川区で育つ“小松菜”。シャキシャキとした食感と、ほろ苦い旨味。そして、どこか清涼感を感じる香り。炒め物や味噌汁、お浸しなど、毎日の食卓で親しまれる身近な野菜ですが、その美味しさの裏側には、300年以上受け継がれてきた江戸の食文化がありました。
『食彩の王国』が今回訪ねるのは、東京湾から吹く潮風と肥沃な土壌に恵まれた東京・江戸川区。「小松菜」は江戸時代、現在の東京都江戸川区小松川周辺で栽培されていた青菜です。
江戸幕府第8代将軍・徳川吉宗が鷹狩りでこの地を訪れた際、献上された青菜のすまし汁を非常に気に入り、地名にちなんで「小松菜」と命名したと言われています。
名門ホテルの料理人が仕立てる一皿。地元で愛され続ける小松菜グルメ。そして、酷暑の中でも品質を守ろうと工夫を重ねる農家の挑戦。毎日の食卓に当たり前のように並ぶ野菜だからこそ、その背景にある土地の恵みや、人の営みを見つめてみたい——。
『食彩の王国』「東京江戸川のブランド“小松菜” 美味の秘密〜B級グルメ㊙カクテル⁉」から、江戸の時代から続く“小さな誇り”の物語をたどります。
【放送日:2026年5月23日(土)9:30 -9:55・テレビ朝日】
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小松菜はなぜ江戸川で愛される?|徳川吉宗が名付けた江戸東京野菜
東京・江戸川区は、小松菜発祥の地として知られています。いまでは全国で親しまれている小松菜ですが、その歴史は江戸時代までさかのぼります。
江戸時代、現在の江戸川区周辺では、川沿いの豊かな土壌を生かした農業が盛んに行われていました。その中で育てられていた青菜を気に入った人物がいます。徳川8代将軍の徳川吉宗です。
鷹狩りでこの地を訪れた吉宗が、その土地で採れた青菜を食べ、その美味しさに感心した——。そして、この地の「小松川」にちなんで、「小松菜」と名付けたという言い伝えが残っています。約300年前に生まれた名前が、いまも毎日の食卓に並んでいる。そう思うと、小松菜が少し違って見えてくる気がします。
江戸川区周辺は、一級河川が運ぶ肥沃な土壌と、水はけの良さに恵まれた土地です。さらに東京湾から吹く潮風が、土のミネラルバランスにも良い影響を与えているといいます。そうした土地の力が、小松菜ならではのシャキシャキとした食感と、ほろ苦さの奥にある旨味、そして爽やかな香りを育ててきました。
毎日の食卓で親しまれてきた野菜。けれどその背景には、江戸の時代から続く土地の記憶と、人々が守り育ててきた時間が流れています。当たり前のように食べていた野菜だからこそ、その物語を知ると、少し特別に見えてくる。江戸川の小松菜は、そんな野菜なのかもしれません。
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江戸川の小松菜はなぜ美味しい?|潮風と土が育てる東京ブランド
江戸川区の小松菜が長く愛されてきた理由。その答えは、まず土地にあります。江戸川区周辺は、荒川と江戸川の一級河川に囲まれた土地です。川が長い時間をかけて運んできた土は肥沃で、水はけも良い。野菜を育てる環境として、昔から恵まれた場所でした。
さらに特徴的なのが、東京湾から届く潮風です。海に近い江戸川区では、風に乗って運ばれる海のミネラルが畑の環境にも影響を与えると言われています。
川と海。二つの自然に育まれながら、江戸川の小松菜は育ってきました。だからこそ、小松菜らしいシャキシャキした歯ざわり。ほろ苦さの奥にある旨味。そして食べた時にふわっと抜ける清涼感のある香りが生まれます。
そして、もうひとつ。小松菜を育てる人たちの工夫も、美味しさを支えています。本来、小松菜は寒い季節を得意とする野菜。けれど近年は夏の暑さが厳しくなり、品質を保つことも簡単ではありません。そんな中でも、生産者たちは土と向き合い、天候と向き合いながら、美味しい小松菜を育て続けています。
土地の力。自然の恵み。そして、人の手。江戸川の小松菜が300年もの間愛されてきた背景には、その全部が重なり合っているのかもしれません。毎日の食卓に並ぶ、何気ない一束。けれどその一本一本には、江戸の時代から続く土地の物語が、静かに詰まっているのでしょう。
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酷暑でも品質を守る|6代続く農家が挑む“夏の小松菜”
江戸川区で代々小松菜づくりを続けてきた農家・石川哲善さん。江戸時代から続く小松菜文化を受け継ぎながら、いまも畑に立ち続けています。けれど近年、小松菜づくりを取り巻く環境は大きく変わり始めています。そのひとつが、夏の暑さです。
本来、小松菜は寒い季節を得意とする野菜。冬に甘みが増し、みずみずしく育つ一方、強い暑さにはあまり強くありません。けれど近年は、夏の厳しい暑さが当たり前になりつつあります。
高温が続けば、生育にも影響が出る。品質を保つことも難しくなる。そんな中でも、生産者たちは工夫を重ねながら、小松菜を育て続けています。番組では、石川さんが夏でも高品質な小松菜を育てるための工夫も紹介されます。
土と向き合う。気温と向き合う。天気予報と向き合う。自然相手の仕事だからこそ、毎年同じやり方では通用しません。少しずつ変わる環境に合わせながら、その年、その季節に最適な育て方を探し続ける。それは、300年前から続く農業を、いまの時代へつないでいく挑戦でもあるのでしょう。
毎日の食卓に当たり前のように並ぶ小松菜。その一束の向こうには、暑さにも負けず、美味しさを守ろうとする人たちの静かな努力がありました。
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小松菜は“主役になれる野菜”|料理人たちが引き出す新しい魅力
小松菜は、脇役の野菜。そう思っている人も少なくないかもしれません。炒め物に入る。味噌汁に入る。食卓を支える存在。けれど料理人たちは、小松菜の中に「主役になれる力」を見つめています。
東京・丸の内の名門・パレスホテル東京。日本料理の料理人は、小松菜の清涼感に着目しました。濃厚な旨味を持つ松阪牛。その脂の力強さを、小松菜のほろ苦さと香りが引き締める。ただ添えるのではない。素材同士が互いを引き立て合う。そこに料理人の工夫があります。さらに、小松菜と桜海老を合わせた一皿。小松菜そのものの存在感を生かしながら、江戸東京野菜としての魅力を丁寧に表現していきます。
そして高田馬場にある創作イタリアンレストランEnの鳥海将彦シェフが注目したのは、小松菜の「根」。普段は切り落としてしまう人も少なくない部分です。けれど、そこには甘みがあり、香りがあり、土と向き合って育った小松菜の個性があります。
高田馬場 Ristorante En エン
- 東京都新宿区高田馬場2丁目14−5 サンエスビル 1F
- TEL:03-5287-5991
- 営業時間:11:30~15:00、18:00~22:00
- 定休日:日曜
- URL:https://capolavoro.tokyo/
素材を最後まで生かす。見落としていた美味しさを見つける。料理人の仕事とは、素材の魅力を引き出すことなのかもしれません。
農家が育てる。料理人が磨く。そして食べる人へ届く。小松菜は、ただの「青菜」ではありません。土地の力と、人の仕事が重なり合って生まれる、東京の誇りでもあるのでしょう。
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毎日の野菜が、東京の誇りになる|小松菜がつなぐ江戸の食文化
東京・江戸川区で300年以上受け継がれてきた小松菜。日々の食卓では当たり前のように並ぶ野菜かもしれません。けれど、その一束の向こうには、長い時間をかけて育まれてきた土地の記憶があります。
肥沃な土。東京湾から届く潮風。暑さと向き合いながら育てる農家の工夫。素材を磨き上げる料理人たちの技。そうした多くの仕事が重なり合い、今日も小松菜は私たちの食卓へ届いています。
江戸時代、徳川吉宗がその美味しさに気づき、「小松菜」と名付けたと言われる江戸東京野菜。300年を超える時間の中で、小松菜は人々の暮らしとともに歩いてきました。
豪華なごちそうではないかもしれません。けれど、毎日食べられること。飾らず、当たり前に食卓を支えてくれること。それもまた、大切な食文化なのでしょう。
小松菜は、ただの青菜ではありません。土地を育てる人。野菜を育てる人。料理を届ける人。そして食べる人。たくさんの人の営みをつなぎながら、江戸の時代から今へ続いてきた、東京の誇りなのかもしれません。
毎日の野菜が、東京の誇りになる。『食彩の王国』が映し出す小松菜の物語は、そんな“当たり前の中にある豊かさ”を、静かに教えてくれているようでした。
