私たちは「アルプス」を食べている!?|チーズ、スイーツ、白トリュフを育てる絶景の秘密【驚き!地球!グレートネイチャー】

アルプスのグルメ BLOG
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こんにちは!またまたまどかの登場です! スイスのチーズ。オーストリアのスイーツ。そして、イタリアの白トリュフ。ヨーロッパ・アルプスには、なぜか「おいしいもの」がたくさんあります。

アルプスの恵みと聞けば、まず思い浮かぶのは、ハイジやペーターが歩いていそうな緑の牧草地でしょうか? 澄んだ空気のなかで牛や羊、ヤギが草を食べ、そのミルクからチーズがつくられる。うん。ここまでは、なんとなくわかります。

でも――。白トリュフまで、アルプスの恵みなの? しかもNHK『驚き!地球!グレートネイチャー』「美食を育む山脈の秘密 ヨーロッパ アルプス」を見ていくと、どうやら美食を生み出しているのは、きれいな空気や豊かな牧草だけではないようです。

山をつくった大地の変動。岩石。雪や氷河。そこから生まれる水や土。私たちが「絶景」と呼んで眺めているものの一つ一つが、長い時間をかけて食材へとつながっていました。

あれ? ということは――。私たちは「アルプス」を食べている?
もちろん、山をガリガリかじっているわけではありません。けれど、ひとかけらのチーズから時間を巻き戻してみれば、ミルクがあり、牛が食べた草があり、その草を育てた土と水があり、さらにその向こうにはアルプスをつくった大地の歴史があります。

白トリュフも、スイーツも、その道筋こそ違いますが、どうやら同じようにアルプスの大自然とつながっているらしいのです。そこで今回は、まどかと一緒に「おいしい!」の時間を少しずつ巻き戻してみることにしました。

チーズから牧草へ。牧草から土へ。土から岩へ。そして、さらにその先へ――。一皿の料理から地球の歴史をたどってみたら、いったいどこまで戻るのでしょう。もしかすると私たちは、毎日の「おいしい!」のなかで、知らないうちに何千万年という地球の時間まで味わっているのかもしれません。

【放送日:2026年9月24日(木)12:00 -12:29・NHK-BSP4K】

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アルプスの絶景は、どうして「おいしい」の?

「アルプス」と聞いて、何を思い浮かべるでしょう。
雪をいただいた白い峰。どこまでも続く緑の牧草地。カラン、コロンとカウベルを鳴らしながら草を食べる牛やヤギ。そして――。ハイジとペーターが、今にも向こうから歩いてきそうな風景です。

そんなアルプスの恵みと聞けば、まず思い浮かぶのはミルクやチーズでしょうか。山の牧草地で牛が草を食べる。その牛から搾ったミルクでチーズをつくる。なるほど、アルプス → 牧草 → 牛 → ミルク → チーズ。ここまでは、なんとなくわかります。

ところがNHK『驚き!地球!グレートネイチャー』「美食を育む山脈の秘密 ヨーロッパ アルプス」に登場するのは、チーズだけではありません。オーストリアの極上スイーツ。そして、イタリアの白トリュフ。……白トリュフ?ここで、ちょっとわからなくなってきました。

牛がアルプスの草を食べてチーズになるならともかく、白トリュフが牧草を食べるわけではありません。スイーツだって、山の斜面からケーキが生えてくるわけではないでしょう。では、どうして番組はこれらを「アルプスが育む美食」と呼ぶのでしょう。

そもそも私たちは、アルプスの美しい山や湖を見れば「絶景だなあ」と思います。チーズやスイーツ、白トリュフを口にすれば「おいしいなあ」と思います。絶景は、目で味わうもの。美食は、舌で味わうもの。一見すると、まったく別の世界です。でも、この二つの間には、私たちには見えていない長い道があるのかもしれません。

山に雪が降る。春になれば雪が解け、水が流れる。岩は砕かれ、土が生まれ、そこに植物が育つ。人はその土地に手を入れ、家畜を育て、長い時間をかけて山の恵みを食べ物へ変えてきました。だとしたら、私たちが「おいしい」と感じているものの始まりは、いったいどこにあるのでしょう。

牛でしょうか。牧草でしょうか。水でしょうか。それとも――もっとずっと手前? どうやら今回の旅では、料理のお皿から時間を逆向きにたどる必要がありそうです。

まずは、一番わかりやすそうなものから始めてみましょう。アルプスといえば、緑の牧草地。そして、その牧草地から生まれるミルクとチーズ。

ところが春のアルプスでは、牛たちが山へやって来る前に、人間が黙々とやっている仕事があります。牧草地に落ちている「石」を拾うこと。
ん?チーズの話をしていたのに――。どうして石が出てくるの?

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春のアルプスでは、どうして人が「石」を拾うの?

アルプスの牧草地を見ていると、どこか懐かしい気持ちになる人もいるかもしれません。緑の斜面をヤギたちが駆け回り、遠くには雪をかぶった山々。そう、『アルプスの少女ハイジ』で、ハイジやペーターが歩いていたような風景です。

ところで――。あの山の牧草地が、現地で「アルプ(Alp)」と呼ばれることを知っていましたか? スイスなどのアルプス地域では、夏のあいだ牛や羊、ヤギを放牧する高地の牧草地を「Alp」と呼びます。

「アルプス(Alps)」という山脈名そのものの語源については諸説があり、「Alp=牧草地だからAlpsになった」と単純に決めることはできません。でも、私たちが「アルプス」と聞いて思い浮かべる、あの緑の風景と「Alp」という言葉が深く結びついているのは確かなようです。

そして春。長かった冬が終わり、山の雪が解け始めると、人々は牛たちより一足先に牧草地へ向かいます。そこで始める仕事の一つが――。石拾い。冬のあいだに雪や斜面の動きによって草地へ運ばれてきた石や枝などを取り除き、これから草が育つ場所を整えていくのです。

石を拾う。草地を整える。草が育つ。やがて牛たちが山へ上がってきて、その草を食べる。そして牛から搾ったミルクが、人の手によってチーズへと変わっていきます。こうして並べてみると、私たちが「アルプスの大自然」と呼んでいる牧草地も、自然だけがつくった風景ではないことに気づきます。

雪が降る。雪が解ける。草が芽吹く。そこへ人間が手を入れる。家畜が草を食べる。人間と山と動物が、毎年同じ営みを繰り返してきたからこそ、あの緑の牧草地は受け継がれてきたのでしょう。そして、その先にミルクがあり、チーズがあります。

だとしたら――。アルプスのチーズは、牛だけがつくっているわけではありません。牧草を育てる山があり、その牧草地を守ってきた人の手がある。「アルプスの恵み」とは、自然から一方的にもらうものではなく、人間が山と一緒につくってきたものなのかもしれません。

でも、ここで一つ気になります。人々が春になると拾っている、その「石」。私たちにとっては、牧草地から取り除いてしまう邪魔者に見えます。ところが、その石のもっと大きな仲間――アルプスをつくっている岩石まで目を向けてみると、話が変わってきます。

もしかすると、牛が食べている牧草の「味」にさえ、足元の大地が関係しているとしたら? 石を拾っていたはずなのに、今度はその石を調べたくなってきました。では、チーズの味をもう少しだけ逆向きにたどってみましょう。チーズの向こうに、どうして「岩」がいるのでしょう?

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チーズの味をたどったら、どうして「岩」に行き着くの?

春の牧草地で拾った、一つの石。牛たちが草を食べやすいように、人間が取り除いてしまえば、それで役目は終わり――。……のように思えます。でも、せっかくなので捨てる前に、その石を少し眺めてみましょう。

そもそも、この石はどこから来たのでしょう。答えはもちろん、私たちの目の前にそびえているアルプスです。そして、そのアルプスの岩石は、ただそこに転がっているだけではありません。雨や雪、氷河、気温の変化などによって長い時間をかけて削られ、砕かれます。

細かくなった岩石は、水や生き物の働きも受けながら、やがて土をつくる材料の一部になっていきます。その土に、草が生える。牛が、その草を食べる。牛からミルクを搾る。そして人間が、チーズをつくる。あれ?さっきまで邪魔者だと思って拾っていた石と、私たちが「おいしい!」と食べているチーズが、一本の道でつながってしまいました。

もちろん、岩を砕いてチーズに混ぜているわけではありません。岩石だけで土ができるわけでもなければ、岩石の成分がそのままチーズの味になるわけでもありません。でも、岩石の種類や地形は、土壌の性質や水の流れ、そこに育つ植物などと関わっています。

つまり、アルプスのチーズをつくっているのは、牛と牧草と人間だけではない。そのずっと下――。牛たちの足元にある大地まで、「おいしい」の物語に参加しているのです。では、その大地はどうやってできたのでしょう。

ここでようやく、時計を何千万年も巻き戻してみます。現在のアルプスがある場所では、かつて複数のプレートが関わる大規模な地殻変動が起こりました。大地は押され、沈み込み、折り重なり、岩石は地下深くへ運ばれたり、再び地表へ現れたりしながら、現在のアルプス山脈が形づくられていきます。

つまり――。私たちが手にしていた小さな石にも、アルプスが生まれるまでの巨大な地球の歴史が刻まれている。そして、その岩石から生まれる土や地形、水の環境の上で牧草が育ち、牛が草を食べ、そのミルクからチーズがつくられている。そう考えると、ひとかけらのチーズを見る目が少し変わってきます。

チーズの時間を逆向きにたどってみると、
チーズ→ミルク→牛→牧草→土と水→岩石→アルプスをつくった地球の営み
まで戻ってしまったのです。ずいぶん遠くまで来てしまいました。最初はチーズを食べていただけなのに…。

そういえば、スーパーの調味料売り場にも「アルプスの味」はあります。「アルペンザルツ」。アルプスの地下にある塩を山の水が溶かし、その塩水からつくられる塩です。ところが、その塩そのものの歴史をさらに遡ってみると、約2億5000万年前の海へたどり着きます。

……また海です。前の記事で、ヒマラヤの岩から海が出てきたばかりなのに…。どうやら山の「おいしい」を逆向きにたどると、海は思った以上にしつこく追いかけてくるようです。

そして、もう一つ。番組に登場したオーストリアのスイーツにも、アルプスの岩石が意外なところで関わっていました。……といっても。

山からケーキが生えてくるわけではありません。間にいたのは――。てんさい。砂糖の原料になる植物です。番組が訪ねたのは、「石の海」を意味するカルクアルプスの岩山。この地域をつくる岩石の一つが、マグネシウムを含む石灰岩のドロマイトです。

番組によれば、はるか昔、この地域が海と深く関わっていた時代の火山活動を経て、マグネシウムを含む岩石がつくられました。その大地と、そこで育つてんさい。てんさいから、砂糖。そして砂糖から、オーストリアのスイーツへ。

もちろん、オーストリアが「スイーツの国」になった理由を地質だけで説明することはできません。番組では、ハプスブルク家が砂糖を珍重した歴史も紹介されていました。つまり、ここでも「おいしい」をつくったのは岩石だけではありません。

大地が食材の育つ舞台をつくり、そこへ人間の歴史と文化が重なって、ようやく一皿のスイーツになる。ずいぶん遠回りです。でも、私たちが今回やっているのは、その「遠回り」を逆向きにたどる旅でした。
スイーツ→砂糖→てんさい→土→アルプスの岩石
……やっぱり、お皿の向こうに山がいました。

そしてイタリアには――。土の中でひっそり育つ、白トリュフ。牛も牧草も登場しない白トリュフまで、どうしてアルプスとつながるのでしょう。どうやら「岩から、おいしいものができる」という不思議な話は、まだ始まったばかりのようです。

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白トリュフを育てた「二つのアルプス」

アルプスの牧草地から、チーズへ。チーズから牧草へ戻り、さらに土や岩石までたどってきました。途中でアルプスの岩塩まで拾ってしまい、その時間を巻き戻してみたら――。約2億5000万年前の海。……また海でした。

どうやら「おいしい」の時間を逆向きにたどる旅は、私たちが思っていたより、ずっと遠くまで続いているようです。でも、ここまではまだわかります。岩塩なら、もともとは海の水に含まれていた塩。牧草なら、土の上に生えている植物。そこから牛のミルクを経て、チーズになる。では――。白トリュフは?

イタリアを代表する高級食材、白トリュフ。あの独特な香りをもつ食材まで、番組では「アルプスが育む美食」として登場します。でも白トリュフは、アルプスの岩を食べて育つわけではありません。そもそもトリュフは植物ではなく、菌類です。

しかも土の中で勝手に大きくなるのではなく、オークやハシバミ、ポプラ、ヤナギなどの樹木の根と「菌根」をつくり、共生しながら生きています。樹木から栄養を受け取る一方、菌類は土の中へ菌糸を広げ、樹木が水や養分を得るのを助ける。つまり白トリュフを育てようと思ったら、白トリュフだけを見ていても足りないのです。

では、白トリュフはどうでしょう。番組には、コバルトブルーに輝く美しい湖「ラーゴ・キアレット」が登場しました。こんな映像を見せられたら、「この湖の水が、白トリュフを育てているのでは?」と思いたくなります。ところが――。

どうやら、そういう話ではありませんでした。ラーゴ・キアレットさん。今回は、主に絶景担当だったようです。では、アルプスと白トリュフをつないでいたものは何だったのでしょう。番組が注目したのは、白トリュフの名産地として知られるアルバの土でした。

白トリュフが育つには、水分を保つことのできる細かな土と、水や空気が通る隙間の両方が大切だといいます。実際、白トリュフの生育環境を調べた研究でも、水分を保ちながら水が滞留せず、土の中に十分な孔隙があることなど、複数の条件の組み合わせが重要だとされています。そして番組によれば、アルバではその条件をつくる二つの材料が出会っていました。

一つは、氷河によって細かく砕かれたシルト。もう一つは、堆積岩に由来する小石。保水性をもたらす細かな土と、通気性をもたらす粗い粒。異なる場所からやってきたものが混ざり合ったことで、白トリュフが育ちやすい土壌がつくられたというのです。

つまり、白トリュフを育てていたのは、あの青い湖そのものではありませんでした。アルプスが削られ、運ばれ、混ざり合ってできた「土」。ずいぶん地味です。でも考えてみれば、私たちが最初から探していたのは、こういうものだったのかもしれません。

絶景そのものを食べているわけではない。山が長い時間をかけてつくった岩や土や水の環境。その上で植物や菌類が生き、人間が食材を見つけ、食文化をつくってきた。絶景と美食は、直接つながっているのではなく、その足元でつながっていた。だから白トリュフから時間を巻き戻せば、

白トリュフ→樹木との共生→水分と空気を含む土→シルトと小石→氷河と岩石→コンティアルプス+リグリアルプス

やっぱり最後には、山へ戻ってしまうのです。

ここで、これまで拾ってきたピースを並べてみましょう。アルプスをつくった地殻変動がある。岩石がある。そこへ雪や氷河が作用し、山を削る。水が流れる。土壌がつくられる。植物が育つ。その樹木の根と菌類が共生する。そしてようやく――。白トリュフが育つ。

ずいぶん長いリレーです。しかも、このリレーには料理人も登場しません。人間が「おいしい」と感じるものをつくるために地球が働いているわけでもありません。地殻が動き、山ができる。氷河が山を削る。水が流れ、植物が育ち、菌類と共生する。

その自然の営みの途中に、人間が偶然「これはおいしい!」と見つけたものがあった。それが白トリュフだった、と考えたほうが近いのでしょう。

そう考えると、アルプスの「美食」という言葉の意味も少し変わってきます。アルプスが直接チーズをつくっているわけでも、白トリュフを料理しているわけでもない。でも――。「おいしい」が生まれるための舞台を、地球は気の遠くなるような時間をかけて準備していた。そして私たちは、その舞台の上で育ったものを食べています。

チーズ。スイーツ。白トリュフ。まったく違う三つの美食を追いかけていたはずなのに、その向こうに見えてきたものは同じでした。岩、土、水、植物、生き物…。そして、それらすべてをつないできた長い時間…。
では最初の問いへ戻りましょう。私たちは、本当に「アルプス」を食べているのでしょうか?

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私たちは、本当に「アルプス」を食べている?

スイスのチーズ。オーストリアのスイーツ。イタリアの白トリュフ。ずいぶん豪華なアルプスディナーになりました。でも私たちは、ただ「おいしそう」と眺めていただけではありません。ひと口食べるたびに、その時間を逆向きにたどってきました。

チーズからミルクへ。ミルクから牛へ。牛から牧草へ。牧草から土と水へ。そして、その下にある岩石へ。気がつけば私たちは、食卓から何千万年という地球の時間まで戻っていたのです。

もちろん、私たちがアルプスの山そのものを食べているわけではありません。岩をガリガリかじっているわけでもありません。けれど、アルプスをつくった大地の変動が岩石や地形をつくり、雪や氷河が山を削り、水が流れ、土が育まれ、そこに植物や動物、菌類が生きています。

そして人間は、その自然の中へ入り、牧草地を整え、家畜を育て、長い時間をかけて土地に合った食文化をつくってきました。

春の牧草地で石を拾っていた人たちの姿を思い出します。山の恵みは、ただ待っていれば食卓へ届くものではありませんでした。自然がつくった舞台に人間が手を入れ、その土地で暮らし続ける。その積み重ねの先に、ひとかけらのチーズがあります。

そして白トリュフを追いかければ、今度は人間だけではつくることのできない世界が見えてきました。水、土、樹木、その根と共生する菌類。どれか一つだけでは、あの「おいしい」にはたどり着けません。そう考えると――。「アルプスの恵み」という言葉は、思っていたよりずっと大きいのかもしれません。

山から何かをもらうことだけが「恵み」ではない。山をつくった地球の営みがあり、雪や氷河があり、水があり、土があり、そこに命が暮らし、人間もその循環の中へ加わる。その長い物語のいちばん最後に、私たちの「おいしい!」があるのです。

最初に、「私たちは『アルプス』を食べている?」と問いかけました。答えは、もちろん「山を食べています」ではありません。でも、ひとかけらのチーズを口に運ぶとき。白トリュフの香りを楽しむとき。その向こうには、私たちの目には見えないアルプスの時間が流れています。

何千万年も前から動き続けてきた大地。山を削った氷河。そこから流れ出した水。岩から生まれた土。その土地に根を張った植物。そして、その自然とともに暮らしてきた人々。

そう考えたら――。いつもの「いただきます」が、ほんの少し違って聞こえてきます。私たちが味わっているのは、食材だけではない、料理だけでもない。その土地が歩んできた、とてつもなく長い時間まで、一緒にいただいているのかもしれません。

アルプスの絶景を眺めながら食べるから、おいしいのではなく。あの絶景をつくったものと、私たちの「おいしい」をつくったものは、ずっと奥のほうでつながっていた。

だから今度、アルプスのチーズをひとかけ口にしたら。ほんの少しだけ、その向こうにある山を思い浮かべてみようと思います。そして静かに――。いただきます。

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まとめ|「おいしい!」の向こうに、アルプスがあった

スイスのチーズ。オーストリアのスイーツ。イタリアの白トリュフ。今回の旅を始めたとき、私たちが追いかけようとしていたのは、アルプスが育む「美食」でした。ところが、一つ一つの「おいしい!」を逆向きにたどってみると、いつの間にか料理のお皿からずいぶん遠いところまで来ていました。

牧草がある。その牧草を育てる土と水がある。その下には岩石がある。山には雪が降り、氷河が大地を削り、水が流れる。そこに植物や動物、菌類が生き、人間もまた山へ入り、石を拾い、牧草地を整え、家畜を育ててきました。そして、さらに時間を巻き戻してみれば、その大地そのものをつくった、何千万年という地球の営みがあります。

そう考えると、「アルプスの恵み」という言葉も少し違って見えてきます。自然が一方的に食べ物を与えてくれるわけではありません。地球が長い時間をかけて舞台をつくり、そこに命が暮らし、人間が手を加えながら、その土地ならではの「おいしい」を受け継いできた。だから、アルプスの美食は誰か一人の作品ではないのでしょう。

地球と、自然と、生き物と、人間との共同作品。私たちが食べているのは、もちろん山そのものではありません。でも、ひとかけらのチーズにも、一皿のスイーツにも、土の中から掘り出された白トリュフにも、その土地でなければ生まれなかった理由があります。だから次に「アルプスの恵み」を口にするときは、その味の向こう側をほんの少し想像してみたいと思います。

緑の牧草地。雪をいただく山。流れ出す水。足元の岩。そして、そこで暮らしてきた人々。私たちの「おいしい!」は、今日突然生まれたものではありません。何千万年という地球の時間が、長い長いリレーをして、ようやく私たちの食卓まで届いたもの。そう思ったら、いつもの一言も少しだけ重みを増すような気がします。

今日も、この地球の長い物語を――。いただきます🙏(文責:まどか)


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