若いころは、都会の賑わいが好きでした。新しい出会いがあって、刺激があって、夜遅くまで楽しめる場所があります。人が集まるところには、何か面白いことが待っているような気がしていました。
けれど、年齢を重ねるうちに、そんな暮らしが少しずつ窮屈に感じられることがあります。人が嫌いになったわけではありません。ただ、もう少し静かな場所で、自分たちの好きな時間を過ごしたい…。
テレビ朝日『人生の楽園』に登場するのは、東京・新宿での暮らしを離れ、鹿児島県の奄美大島へ移住した生江賢一郎さんと範子さん夫妻です。サーフィンに夢中になってメキシコへ渡った賢一郎さん。若いころからダイビングのために奄美へ通っていた範子さん。
それぞれに人生の転機を経験した二人は、東京のサルサダンスクラブで出会い、夫婦になりました。そして今、二人が営んでいるのは、奄美の空港近くにあるカフェ『al mar(アルマール)』。島の人も観光客も集まり、コーヒーを片手に会話を楽しむ、賑やかな場所です。
……あれ?都会の喧騒から離れたかったのに、どうしてわざわざ、人が集まる場所をつくったのでしょう? もしかすると、二人が離れたかったのは「人」ではなく、自分たちの思いどおりにならない「時間」だったのかもしれません。
青い海と、コーヒーの香りと、気の合う人たちとの語らい。奄美大島で始まった夫婦の第二の青春から、私たちが本当に求めている「楽園」のかたちを考えてみたいと思います。
【放送日:2026年10月10日(土)18:00 -18:56・テレビ朝日】
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都会の喧騒から離れたかったのに、どうして人恋しくなるの?
東京・新宿区。生江賢一郎さんと範子さんが暮らしていたのは、都会のど真ん中でした。交通の便がよく、買い物にも食事にも困らない。少し歩けば、夜遅くまで明かりの消えない店がある。若いころなら、そんな街の賑わいが魅力に感じたかもしれません。
けれど、年齢を重ねるにつれて、暮らしに求めるものは少しずつ変わっていきます。賢一郎さんも、都会での生活にストレスを感じるようになり、やがて「自然豊かな海のそばで暮らしたい」と考えるようになりました。もっとも、それは必ずしも、人との付き合いをやめたいという意味ではなかったのでしょう。
考えてみれば、都会ほど大勢の人に囲まれながら、人との距離を感じる場所もないのかもしれません。満員電車では、知らない人と肩が触れ合うほど近くにいる。駅前の交差点では、何百人もの人とすれ違う。それでも、互いの名前を知ることも、言葉を交わすこともありません。
人が多いことと、人とのつながりが豊かなことは、同じではないのです。もちろん、都会にも温かな人間関係はありますし、田舎へ行けば誰もが親しくなれるわけでもありません。ただ、毎日を慌ただしく過ごすうちに、ふと、こんなことを思うようになるのかもしれません。
「もう少し、自分たちの好きな時間を過ごしたいな」
「気の合う人と、ゆっくり話せる暮らしがいいな」
賢一郎さんと範子さんは、銀座のサルサダンスクラブで出会った夫婦です。音楽に合わせて踊り、同じ趣味を楽しむ。二人の出会いそのものが、人との交流から生まれていました。そんな二人が、奄美大島へ移住したあとに開いたのは、島の人も観光客も集まるカフェ『al mar(アルマール)』を開きます。
静かな暮らしを求めて都会を離れたはずなのに、今度は自分たちから人を迎える場所をつくったのです。……少し不思議ですよね。でも、もしかすると二人が求めていたのは、誰にも会わずに暮らすことではなかったのかもしれません。
会いたい人と出会い、話したいときに話し、好きな場所で一日を過ごす。
そんな、自分たちらしい人との距離感だったのではないでしょうか。そして、その暮らしの舞台として二人が選んだのが、奄美大島でした。けれど、日本には美しい海がいくつもあります。サーフィンが好きな賢一郎さんと、ダイビングが好きな範子さん。二人は、どうして奄美の海を選んだのでしょう?
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二人が選んだ海は、どうして奄美大島だったの?
海のそばで暮らしたい。そう思ったとき、賢一郎さんの頭には、どんな海が浮かんだのでしょう。大学進学を機に、湘南の親戚の家で暮らし始めた賢一郎さん。そこで出会ったサーフィンに夢中になり、やがて海を越えてメキシコへ渡ります。
現地の日系旅行会社に就職し、その後は独立して仕事も始めました。サーフィンが好きだからといって、誰もが海外へ渡るわけではありません。若いころの賢一郎さんにとって、海は眺めるだけの場所ではなく、新しい世界へ踏み出すきっかけにもなっていたのでしょう。
一方、範子さんにも、長い付き合いのある海がありました。それが、奄美大島です。20代のころからダイビングのために通っていたという範子さん。同じ海が好きでも、波の上を滑るサーフィンと、海の中へ潜るダイビングでは、見える景色がずいぶん違います。
賢一郎さんが波を追いかけていたころ、範子さんは海の中の静かな世界を楽しんでいたのかもしれません。同じ「海が好き」という言葉の中に、二人はそれぞれ違う海を持っていたのです。やがて二人は、東京のサルサダンスクラブで出会い、夫婦になりました。
そして賢一郎さんが、自然豊かな海のそばで暮らしたいと考えるようになったとき、範子さんが提案したのが奄美大島への旅行でした。日本には、サーフィンを楽しめる海も、ダイビングを楽しめる海も、たくさんあります。宮崎や沖縄、伊豆など、ほかにも候補は考えられたでしょう。それでも範子さんには、以前から親しんできた奄美という場所がありました。
初めて訪れる土地でも、夫婦のどちらかに長年の思い出がある。それは、移住先を考えるうえで、小さくない安心感につながったのではないでしょうか。そして実際に奄美を訪れた賢一郎さんは、美しい海と豊かな自然に魅了され、「ここに住みたい!」と強く望むようになります。
範子さんにとっては、何度も訪れたことのある島。賢一郎さんにとっては、新しく出会った憧れの島。二人が見ているのは同じ海でも、そこへたどり着くまでの道のりは違っていたのですね。けれど、移住先を決めるのに、美しい景色だけで十分なのでしょうか。
旅行で訪れるのと、そこで暮らすのとでは、話が違います。買い物も、仕事も、近所付き合いもある。観光客として歓迎されることと、住民として受け入れられることも、必ずしも同じではありません。そんな二人に、思いがけない出会いが訪れます。
移住を視野に入れて再び奄美へ向かったとき、飛行機の中で島民の平川さんと知り合ったのです。平川さんは二人に親切にしてくれ、その後も大変お世話になったといいます。
たった一度、飛行機で隣り合わせたことから始まった縁。その出会いがなければ、二人の奄美での暮らしは、また違うものになっていたかもしれません。
美しい海に惹かれて訪れた島で、今度はそこに暮らす人の温かさに触れた。「この景色の中で暮らしたい」という憧れが、「この人たちのいる場所で暮らしたい」という気持ちへ広がっていったのかもしれません。そして二人は、島の人も外から来た人も集まれるカフェをつくりたいと考えるようになります。
海が好きで選んだはずの奄美大島。けれど、そこで始めようとしたのは、海の仕事ではなく、人を迎える仕事でした。……どうしてなのでしょう?静かな島暮らしを夢見た二人が、次に選んだのは、賑やかなカフェを開くことだったのです。
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静かに暮らしたい二人が、なぜ賑やかなカフェをつくったの?
旅行で奄美大島を訪れるとき、人は何を思い浮かべるのでしょう。青く透き通った海。白い砂浜。波に乗ったり、海の中を泳いだり、夕日を眺めたり。そこにいる自分は、きっと楽しそうです。
けれど、「ここで暮らそう」と考えた瞬間、頭に浮かぶ景色は少し変わってくるのではないでしょうか。朝起きたら、何をするのか? 毎日の買い物は、どこへ行くのか? どんな仕事をして、誰と顔を合わせ、どんなふうに一日を終えるのか?
旅行で見ていたのは、島で遊ぶ自分たちの姿。移住を考え始めると、島で生きる自分たちの姿が見えてくるのです。賢一郎さんと範子さんも、奄美大島への移住を考えるなかで、そんな日常を思い描いていたのかもしれません。
二人が島で始めたのは、カフェ『al mar(アルマール)』。空港近くに土地を購入し、自宅と店舗を兼ねた建物を建て、2年前に店を開きました。ここで、少し不思議に思うことがあります。賢一郎さんは、都会の暮らしにストレスを感じ、自然豊かな海のそばで暮らしたいと願っていました。
それなのに、移住先で選んだのは、人が集まるカフェだったのです。静かな暮らしを求めていたのなら、もっと人と接する機会の少ない生活も考えられたでしょう。それでも二人は、島の人も、外から来た人も、気軽に集まれる場所をつくりたいと思った。
その思いには、飛行機の中で出会った平川さんとの縁もつながっているようです。まだ島で暮らしていなかった二人に、親切にしてくれた島の人。知らない土地で、誰かが温かく迎えてくれる。それだけで、その場所は少し身近に感じられるものです。
そして今度は、二人自身が誰かを迎える側になりました。島で暮らす人も、旅行で訪れた人も、同じ店でコーヒーを飲み、言葉を交わす。『al mar』は、そんな場所になっているといいます。
考えてみれば、都会の喧騒から離れたいという気持ちは、必ずしも人との付き合いを減らしたいという意味ではないのでしょう。知らないどこかの大勢の人が行き交う駅の雑踏と、顔なじみのお客さんが訪れるカフェの賑わい。どちらも人が集まる場所ですが、そこで感じるものはずいぶん違います。
都会では、周囲の速さに合わせて歩かなければならないことがあります。けれど、自分たちの店なら、コーヒーを淹れる時間も、お客さんと交わす会話も、暮らしの一部になっていく。
もちろん、カフェの経営は気楽なことばかりではありません。開店時間があれば、仕込みも片付けもあります。お客さんを迎える以上、自分たちの都合だけでは動けない日もあるでしょう。それでも、二人が望んだのは、誰にも会わない静けさではなかったのでしょう。
al mar Food & Drink アルマール
- 鹿児島県奄美市笠利町大字節田1648−8
- TEL:080-5671-0346
- 営業時間:8:30~16:00
- 定休日:水・木曜
- URL:https://almarumie.com/
人に囲まれる暮らしから、人と向き合う暮らしへ。その違いが、二人にとって大切だったのではないでしょうか。
もう一つ、面白いことがあります。賢一郎さんと範子さんが出会ったのは、銀座のサルサダンスクラブでした。音楽が流れ、同じ趣味を持つ人たちが集まり、踊りながら交流する場所。二人は、そんな賑やかな場所で出会い、夫婦になったのです。
そして今度は、自分たちが奄美大島で、人の集まる場所をつくっている。かつて誰かが用意してくれた場所で出会った二人が、今は誰かの出会いや語らいのために、店の扉を開けている。そう考えると、なんだか素敵ですね。
ご近所の人たちとは、家族同様の付き合いも生まれているそうです。海の美しさに惹かれて移住した二人ですが、島での暮らしを豊かにしているのは、海だけではないのでしょう。
波の上でも、海の中でも見つからなかった景色。それは、コーヒーカップを挟んで向かい合う、島の人たちの笑顔だったのかもしれません。
さて、そんな二人は、賢一郎さんが57歳、範子さんが62歳。サーフィンもダイビングも楽しみながら、カフェを営む毎日を送っています。けれど、人生の後半に見つける「第二の青春」とは、若いころと同じように、何もかも全力で楽しむことなのでしょうか?
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第二の青春って、もう一度若者に戻ることなの?
「第二の青春」という言葉を聞くと、どんな姿を思い浮かべるでしょう。若いころのように夢中になって遊ぶこと。新しいことに挑戦すること。年齢を忘れて、思いきり人生を楽しむこと。もちろん、それも素敵な第二の青春です。
奄美大島へ移住した生江賢一郎さんは57歳、妻の範子さんは62歳。二人はカフェ『al mar(アルマール)』を営みながら、海辺の暮らしを楽しんでいます。サーフィンにダイビング、そして二人を結びつけたサルサダンス。若いころから親しんできた楽しみが、今の暮らしにもつながっているのですね。
でも、ここで少し考えてみたいことがあります。第二の青春とは、第一の青春をもう一度繰り返すことなのでしょうか?
たとえば、若いころにスキーへ出かけたときのこと。朝からリフトの一日券を買ったら、少しでも多く滑りたい。一本滑ってはリフトに乗り、また滑り降りる。昼食の時間さえ惜しくなって、「せっかく来たんだから、元を取らなくちゃ!」なんて思ったものです。
それはそれで、楽しかった。体を動かし、時間を忘れ、夕方にはくたくたになって帰る。一日を思いきり使い切ったことが、満足につながっていたのでしょう。ところが、年齢を重ねると、同じスキー場でも違う楽しみ方が見えてきます。
午前中に気持ちよく何本か滑ったら、もう十分。午後はカフェのテラスでコーヒーを飲みながら、雪山を眺める。若い人たちが元気よく滑り降りていく姿を見て、「楽しそうだなぁ」と微笑む。風の冷たさも、日差しの温かさも、遠くの山並みも、ゆっくり味わえる。
滑っている時間だけが、スキー旅行の楽しみではなくなっているのです。もちろん、何歳になっても朝から夕方まで滑りたい人もいるでしょう。それもまた、その人らしい楽しみ方です。大切なのは、若いころと同じように頑張ることでも、年齢を理由に諦めることでもないのかもしれません。
今の自分が心地よいと思える時間を、自分で選べること。それこそが、人生を重ねる楽しさの一つではないでしょうか? 奄美大島で暮らす生江夫妻も、若いころと今とで、海との付き合い方がどう変わったのかはわかりません。今も波を追いかけ、海の中の景色を楽しみ、ダンスに夢中になる時間があるのでしょう。
ただ、かつての二人にとって、海はわざわざ出かけていく場所でした。湘南でサーフィンに出会った賢一郎さんは、やがてメキシコへ。範子さんは、ダイビングのために奄美大島へ通っていました。好きな海に会うために、時間をつくり、荷物をまとめ、遠くまで出かけていたのです。
ところが今は、その海のそばに家があります。朝、窓の外に広がる空。仕事の合間に感じる潮風。店を閉めたあと、思い立って出かけられる海。海に入る日もあれば、ただ眺める日もあるかもしれません。
「海へ遊びに行く人生」から、「海のそばで暮らす人生」へ。二人の暮らしには、そんな変化が生まれました。そして、そこにはカフェで過ごす時間もあります。
コーヒーを淹れ、お客さんと話し、ご近所さんと笑い合う。若いころのように、何か特別な出来事を探し続けなくても、毎日の中に楽しみがある。もちろん、店を営む以上、忙しい日も苦労する日もあるでしょう。
それでも、自分たちが選んだ場所で、自分たちの好きなものに囲まれて暮らす。そんな日常そのものが、二人にとって大切な時間になっているのかもしれません。
考えてみれば、若いころは「もっと」という言葉が似合う時代だった気がします。もっと遠くへ、もっと速く、もっとたくさん。若いころのキョンキョンことアイドルの小泉今日子さんもCMで「もっと!もっと!」と言っていました(笑)
でも、人生を重ねるうちに、「これで十分」と思える瞬間にも、豊かさを感じるようになることがあります。それは、夢が小さくなったということではありません。幸せを感じる場所が、遠くのどこかから、今日という一日の中へ近づいてきた。そういうことなのかもしれません。
第二の青春は、若さを取り戻すことではなく、今の自分にしか味わえない時間を楽しむこと。奄美の海は、若いころと変わらず、波を寄せているのでしょう。でも、その海を見つめる二人の目には、昔とは少し違う景色が映っているのかもしれません。
そして、一日を存分に楽しんだあとには、帰る家がある。そこには、同じ島で暮らす、大切な人がいるのです。では、そんな二人にとっての「楽園」とは、いったいどこにあるのでしょうか?
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人生の楽園は、遠くへ探しに行くものなの?
人生の楽園。
そう聞くと、どこか遠くにある、美しい場所を思い浮かべます。青い海が広がる南の島。緑に囲まれた山あいの村。都会の喧騒から離れ、時間がゆっくり流れる場所。そこへ行けば、今までとは違う人生が待っているような気がします。
生江賢一郎さんと範子さんにとって、奄美大島も、最初はそんな憧れの場所だったのかもしれません。けれど、二人がここへたどり着くまでの道のりは、決して一直線ではありませんでした。
賢一郎さんは、湘南でサーフィンに出会い、メキシコへ渡りました。現地で働き、独立し、結婚と離婚も経験しました。範子さんは、大切な伴侶との死別を経験したあと、東京への転勤を決断しました。それぞれに違う人生を歩んできた二人。そして、銀座のサルサダンスクラブで出会い、夫婦になったのです。
もし、どちらかが違う道を選んでいたら…。もし、あの日、同じ場所で踊っていなかったら…。二人が今、奄美大島で同じ海を眺めていることも、なかったのかもしれません。
人生には、あとから振り返って初めて、その意味に気づく出会いがあります。移住を考えて奄美へ向かう飛行機で出会った、島民の平川さんも、そんな一人だったのでしょう。
美しい海に惹かれて訪れた島で、人の温かさに触れる。そして二人は、今度は自分たちが人を迎える場所をつくろうと考えました。
カフェ『al mar(アルマール)』。そこには、島の人も観光客も集まり、コーヒーを片手に会話を楽しむ時間があります。ご近所さんとは、家族のような付き合いも生まれました。
都会の喧騒から離れたかった二人が、奄美で見つけたのは、誰もいない静けさではありませんでした。自分たちが心地よいと思える、人とのつながりだったのかもしれません。
もちろん、島で暮らすことにも、仕事を続けることにも、苦労はあるでしょう。南の島だからといって、毎日が休日になるわけではありません。それでも、店を開ければ訪ねてくれる人がいる。仕事が終われば、好きな海へ出かけられる。
そして、一日の終わりには、帰る家がある。考えてみれば、若いころの二人は、好きな海を求めて遠くへ出かけていました。賢一郎さんは、海を越えてメキシコへ。範子さんは、ダイビングのために奄美大島へ。けれど今は、わざわざ遠くへ行かなくても、好きな海が日常のすぐそばにあります。
そして、その海を楽しんだあとには、二人の暮らす場所へ帰ってこられるのです。帰る場所があるから、自由になれる。それは、若いころには気づかなかった幸せのかたちなのかもしれません。
人生の楽園は、遠くへ探しに行くものなのでしょうか? それとも、誰かと出会い、好きなことを見つけ、何でもない毎日を重ねるうちに、いつの間にか生まれているものなのでしょうか?
奄美の海に、夕暮れが近づいてきます。一日を終えた二人が、どこかで同じ空を眺めているかもしれません。若いころのように、もっと遠くへ行こうとしなくてもいい。今日という一日を、もう十分に楽しんだのだから…。
海の向こうへ、ゆっくりと日が傾いていきます。その光を見つめながら、ふと、こんなことを思います。楽園とは、いつかたどり着く場所ではなく、今日もここへ帰りたいと思える場所なのかもしれません。
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