粋でいなせ ― 江戸のおやつで訪れた名店と美のツボ【美の壺・File 643】

榮太郎本舗の金鍔を作っているところ BLOG
江戸の町には、忙しない日々の合間にふと立ち寄る“小さな甘味処”がありました。
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江戸の町には、忙しない日々の合間にふと立ち寄る“小さな甘味処”がありました。
香ばしい醤油の匂い。蒸したて餅の湯気。素朴ながらも、どこか凛とした美しさを宿す味わい。
ここでは、『美の壺』「粋でいなせ 江戸のおやつ」で紹介された名店や職人の技をたどりながら、江戸の人々が愛した“おやつの美学”を紐解きます。

放送時間

NHK BS(BS101チャンネル)
2025年12月19日(金) 12:00~
BSプレミアム4K
2025年12月13日(土) 06:45~

一の壺、素朴にして艶やか ― 江戸のおやつの原点

江戸の菓子には、手のひらに収まる小さな世界観がありました。甘味を控え、素材を最大限に引き出す。飾り立てず、潔いほどのシンプルさ。

● 浅草「亀屋忠兵衛」──焼き団子に宿る焦げの美

番組では、職人・山田忠之助さんが焼く“江戸焼き団子”が紹介されました。

  • もち米を粗挽きにし、歯ざわりを残した団子
  • 醤油を一度煮切り、香りだけを立たせる“刷毛塗り”の技
  • 焦げ目の濃淡で味を調える熟練の感覚

とろりと舌の上で広がる香ばしさは、江戸の町人が愛した“粋な味”そのものです。

● 日本橋「菓匠 竹葉亭」──蒸し羊羹の静かな艶

木村多江さんが訪れたのは、日本橋の老舗 竹葉亭
蒸し羊羹が黒々と深い艶をまとい、切り口からほのかな光を放つ姿はまさに“静謐の美”。

  • 小豆の皮を残すことで生まれる素朴な甘み
  • 余計な寒天を使わず、蒸気だけで仕上げる江戸前の製法
  • 切り分ける際に響く、しっとりとした“吸い付く音”

江戸の甘味に流れる時間のゆったりさが、羊羹にそのまま宿っています。

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二の壺、職人の所作がつくりだす—江戸前の美意識

江戸のおやつを支えるのは、簡素な材料を格別の味に変える職人の“所作”。その動きは無駄がなく、早すぎず、静かな緊張感に包まれています。

● 草刈正雄さんが惚れ込んだ “手返しの妙”

浅草の飴細工師 本所健介さんの工房では、飴を手返ししながら形づくる一連の所作が紹介されました。

  • 火から下ろした瞬間の温度を“手のひら”で読む
  • 空気を含ませて輝きを演出する“引き延ばし”の技
  • 生き物の姿を一瞬で造形するスピードと集中

どれも、江戸の町場で培われた“見せる技”の名残りです。

● 日本橋「ゑび寿屋」──揚げ饅頭の音を聴く

揚げ油に沈む饅頭から、かすかに立つ泡。
職人・岡村栄太郎さんは、その音の変化で火の通り具合を判断します。

  • “パチッ”から“トトト…”へ変わる音色
  • 油が饅頭の水分をまとい、香りを深める瞬間
  • 揚げたてを手渡すときの、決して熱くない絶妙な温度

耳で、鼻で、そして指先で。江戸前の菓子は五感で完成します。

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三の壺、現代に息づく江戸のおやつ ─ 暮らしを彩る小さな贅沢

江戸の甘味は、ただの“おやつ”ではなく、生活のリズムを整える存在でした。今も東京の下町に息づくそれらの味は、現代の暮らしにも静かに寄り添います。

● 散歩の途中に立ち寄る、江戸の余白

番組でも触れられたように、江戸の甘味処は“歩いて行ける距離”にありました。現代の店もその精神を受け継いでいます。

  • 焼き団子の「亀屋忠兵衛」──午後のひと息に
  • 蒸し羊羹の「竹葉亭」──手土産としての上品さ
  • 揚げ饅頭の「ゑび寿屋」──温度の記憶を持ち帰る楽しみ

小さな甘みは心の余白をつくり、季節の移ろいを感じさせてくれます。

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エピローグ

江戸のおやつは、華美ではありません。けれど、そのひと口に宿る“静かな美しさ”は、今も変わらず私たちの感覚をやさしく揺らします。

焦げ目の香り。蒸し上がりの艶。職人の手元に宿る緊張と柔らかさ。それらはすべて、日常の中に潜むささやかな豊かさの象徴です。

ふと甘いものが欲しくなった午後、江戸のおやつを手にしてみる。その瞬間、時間はゆっくりと流れ、心は静かに整っていくでしょう。

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紹介スポット一覧(まとめ表)

名称所在地紹介された品特徴
浅草梅園東京都・浅草あわぜんざいこし餡ときび餅を合わせたおやつ
長命寺 山本や墨田区向島桜餅浮世絵にも描かれた桜餅
松崎桜葉商店静岡県・松崎桜葉の塩漬け大島桜の桜葉を塩漬けしている
羽二重団子東京都・東日暮里羽二重団子生醤油に2度くぐらせた甘くない団子
榮太郎総本舗東京都・日本橋きんつばたっぷり詰まったつぶし餡が特徴
船橋屋東京都・亀有くず餅ヒノキの樽で450日発酵させた餅
秋色餡大坂屋東京都・三田最中丸い月に見立てた丸い最中
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