静岡といえば「お茶」と「富士山」——でももうひとつ、忘れてはいけない名産があります。それが、清流が育む“本わさび”を贅沢に使った「わさび漬け」。中でも静岡市有東木(うとうぎ)地区は、わさびの栽培発祥地とされる歴史ある土地なんです。
わさび漬けは、澄んだ湧き水と伝統の技で育まれてきた本わさびの香りと辛みがぎゅっと詰まった発酵グルメです。
この記事では、静岡がわさび漬けで有名な理由や、わさび漬けの歴史・作り方・おすすめの老舗メーカーまで、まるっとご紹介します!
1.はじめに
あさイチの中継で注目!静岡とわさび漬けのつながりとは?
静岡のわさび漬けってなぜ名産?起源・歴史・魅力をまるっと解説しちゃいます。
2.わさび栽培発祥の地「有東木(うとうぎ)」ってどこ?
わさびの発祥は、慶長年間(1596~1615年)に、それ以前から静岡市葵区の有東木地区の佛谷山(ぶっこくさん)に自生していた野生のわさびを、地元の村人が湧水地に移植して栽培を始めたのが起源です 。
有東木は静岡市北部の山間にあって、そのわさびは、その風味と品質の高さから、徳川家康公にも献上されました。現在、有東木地区は「静岡水わさびの伝統栽培」として、2017年に日本農業遺産、2018年に世界農業遺産に認定されています 。

有東木は、標高約500メートルの山間部に位置し、清らかな湧水が豊富で、年間を通じて水温が13℃前後と安定しています。わさびの生育には8~18℃の水温が適しているので、特に水温差が少ない環境が望ましいとされています。また、わさびの根は酸素要求性が高く、溶存酸素量が多く低温に保たれることが重要です。有東木の湧水はこれらの条件を満たしており、わさびの栽培に最適な環境だったわけです。
また江戸時代初期の慶長年間(1596~1615年)に、有東木沢の源流に自生していたわさびを集落内の湧水地に植えたところ、わさびが育つ環境に適していたために繁殖したのが始まりとされています。
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3.献上品とされた“家康の御法度”伝説
その後、駿府城で晩年を過ごしていた徳川家康が同地区からわさびを持ち出すことを禁じました。なぜなら家康は、家康が駿府城に入城した際に有東木の庄屋から献上されたわさびを口にし、その独特な味と香りの卓越性に特別な価値を見出したからです。
また、わさびの葉の形が、徳川家の家紋である「三つ葉葵」に似ていることから、家康はわさびを特に珍重し、この象徴的な類似性が、わさびを門外不出とする決断の一因となったと考えられています。
そして家康が有東木のわさびを「門外不出の御法度品」として指定したのは、その栽培方法や苗の持ち出しを厳しくすることで、わさびの品質を保つと同時に、徳川家の特権的な食材としての地位を確立するための政策だったとされています。
しかし、18世紀半ばになると徳川の直轄地でもあった伊豆地域へ栽培法が伝播していきました。中伊豆地域(現在の静岡県伊豆市や伊豆の国市周辺)や、特に西伊豆の土肥地区は金の産出地として知られていたので、江戸時代において徳川幕府の「天領」であり、幕府の重要な財源の一つとなっていました。そこへわさび栽培の技術が伝わったとしても不思議はありません。
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4.わさび漬けとは?起源と製法
山葵漬けは、明治22年に開駅した旧国鉄東海道線の静岡駅構内で販売したことが始まりといわれていて、現在でも定番の静岡土産の一つですし、家庭でも日常の食卓にあがることがよくあります。特にわさびのつんとくる辛みと酒粕の風味のため、主に大人に好まれる料理です。
わさび漬けは、わさびの茎・根を細くきざんで一晩、塩漬けにしたものを、酒粕と砂糖・酒を入れてよくこね、滑らかになったら、塩漬けにしたわさびを布巾でよく絞り酒粕の中に入れます。密封容器に移して2~3日おくと辛みが出て食べ頃になります。「ツーンとした辛さは発酵が生み出す旨みの裏返し」はまさに大人の味といってもいいでしょう。(参考資料:静岡わさび農業遺産推進協議会)
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5.静岡・有東木のわさび漬けと発酵の知恵にふれる旅
以前、NHKのEテレで2025年5月22日に「小雪と発酵おばあちゃん」という番組が放送されました。番組では、俳優の小雪さんが静岡県静岡市の山あいにある有東木(うとうぎ)集落を訪れて、刻んだわさびと酒粕で作る伝統の発酵食「わさび漬け」を作りました。
江戸時代からこの地に伝わるシンプルながらも奥深い味わいの発酵食に、小雪さんが実際にふれ、自然の恵みと人の知恵が詰まった暮らしの魅力を感じることができました。
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6.静岡各地のわさび漬けの銘店を紹介
田丸屋 本店
田丸屋 本店の名が、全国へと広まったのは、明治二22年の東海道本線が開通したときのことです。明治8年から、静岡市で漬物屋を開業していた田丸屋初代の望月虎吉は、文明開化の先端を行く陸蒸気(蒸気機関車)に着目し、幾多の苦労を重ねた末に、静岡駅構内でのわさび漬の販売権を獲得しました。
わさび漬は江戸時代の宝暦時代(1751~1763年)に開発されたと言われています。静岡県の安倍川上流の有東木地区では、ワサビの茎(葉柄)をぬか味噌漬にした自家製の漬物を食卓にのせていました。
この地に味噌や醤油の行商のために出入りしていた行商人が、この漬物の種々工夫して、塩漬けした細断ワサビに酒粕を混ぜることを考案しました。 さらに商品化して、『わさび漬』と命名して販売したのが始まりと言われています。
- 静岡県静岡市駿河区下川原5丁目34-18
- TEL:054-258-1115
- 営業時間:9:00~19:00
- 定休日:なし
- URL:https://www.tamaruya.co.jp/
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うつろぎ
うつろぎは、静岡市葵区の標高600mほどにある有東木地区にあります。地元の皆さんが「宝」と呼ぶ清流が、山葵田や茶畑を育んでいます。
有東木は山葵栽培発祥の地であり、1607年に徳川家康に献上された記録もあり、その栽培には長い歴史があります。新緑、紅葉、雪景色と、四季折々に変化する天空の美しい集落です。
「うつろぎ」では地元のお茶や山葵、農産物を販売しています。地元食材を使って有東木のお母さんたちが作るうつろぎ定食、わさび漬け、金山寺味噌やわさびのり、お饅頭が人気です。

わさび漬け(出典:公式サイト)
併設されたお食事処では、時期で変わる地元の食材を使った天ぷら(わさびの葉、お茶の葉、茄子、しいたけなど)を楽しむことが出来ます。揚げたての自然な美味しさを抹茶塩をつけてお召し上がり下さい。また、手打ちそばの上には、わさびの茎を塩昆布で和えた葵漬けがのっていてサッパリとした美味しさです。
ここではまさに「本場のわさび漬け」を体験することができます。ちょっと足を伸ばして訪れてみるのもいいかもしれません。
- 静岡県静岡市葵区有東木280-1
- TEL:054-298-2900
- 営業時間:10:00~15:00(土・日は9:00~16:00)
- 定休日:火曜
- URL:https://utougi.hiho.jp/
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野櫻山葵漬
安政5年(1858年)創業の歴史ある店舗で、地元のわさび農家から直接仕入れた新鮮なわさびを使用しています。特に「三葉葵」ブランドの辛口わさび漬けは、熟成された酒粕と高品質なわさび根を使用し、風味豊かな味わいが魅力です。
- 静岡県静岡市葵区宮ヶ崎町8番地の2
- TEL:054-253-3840
- 営業時間:10:00~12:00、13:00~18:00
- 定休日:水・日曜
- URL:http://www.nozakura.jp/
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まとめ
わさび漬けは、ただの名物じゃなく、静岡の風土と歴史がぎゅっと詰まった“文化”です。静岡のわさび漬けは“発酵グルメ×伝統の結晶”ともいえるものです。
- 自然と触れあいながら味わいたいなら「うつろぎ」で体験&ランチ
- お土産や贈り物には「田丸屋」や「野櫻山葵漬」の逸品をチョイス
静岡の“ツーンと深い”おいしさ、ぜひ味わってみてくださいね!