復興の地・南三陸町の海と大地が育む──海の香り漂う“さとうみ羊”の物語【うまいッ!】

南三陸町の志津川湾を背景に、草原で“さとうみ羊”がのんびり草を食む。干したわかめを吊るした船と、海を見つめる和装の女性の後ろ姿が描かれている。 うまいッ!
南三陸町の海と大地が育む「さとうみ羊」。海の恵みが大地を潤し、命の循環が続いていく──そんな希望の風景を切り取った一枚。
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宮城県南三陸町。かつて東日本大震災で甚大な被害を受けたこの海沿いの町で、今、思いがけない“再生の物語”が生まれています。その主役は、なんと「羊」。潮風を運ぶ海辺の牧場で、ワカメなどの海藻を飼料に育てられる“さとうみ羊”です。
海の香りをまとったその肉は、まろやかでコク深く、口の中でやさしくとろける味わい。震災を乗り越えた人々の手で育まれた、海と大地の恵みがひとつになった一皿には、この町の「希望」と「誇り」が、静かに息づいています。

海が育てる羊──南三陸“さとうみ羊”誕生のきっかけ

宮城県南三陸町。かつて海の恵みで栄えたこの町は、2011年の東日本大震災で壊滅的な被害を受けました。港は流され、養殖施設も失われ、人々の生活は一変しました。それでも、海と共に生きてきた人たちは立ち上がります。そのひとつの象徴が「さとうみ羊」。

この取り組みが始まったのは、「海の恵みを無駄にしたくない」という想いからでした。震災後、養殖わかめの生産が再開される中で、どうしても出てしまう“未利用部分”——茎や葉先などが課題となりました。その行き場を探す中で、「この栄養豊富な海藻を、陸の動物たちに活かせないだろうか?」という発想が生まれたのです。

こうして、南三陸の海の恵みを羊の飼料として再利用する試みがスタートしました。ワカメを乾燥・粉砕し、地元の牧草と合わせて配合することで、潮の香りをほんのり含んだ「海のミネラル羊肉」が誕生。それが、“さとうみ羊”という名の新しいブランドのはじまりでした。

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海と大地がつながる場所──“さとうみ羊”を育てる人たち

さとうみファームの牧場は、南三陸町の海を見下ろす小高い丘の上にあります。潮の香りが風に混じり、遠くにはキラキラと光る志津川湾。そんな場所で羊たちは、ゆったりと草を食みながら育ちます。

餌には地元で採れた乾草や穀物のほか、南三陸産のわかめを粉末状にした飼料が加えられています。わかめに含まれる豊富なミネラルや食物繊維が、羊の健康を支え、肉に深みのある旨味を生み出しているのです。
潮風を感じながら、自然の循環の中で育つその姿は、まるで海と陸が手を取り合っているよう。このプロジェクトを始めた人々は、ただ「おいしい肉を作りたい」だけではなく、震災で分断された“人と海とのつながり”をもう一度取り戻したいと願っていました。

わかめを育てる漁師、羊を飼う農家、地域を支える人々──それぞれの仕事が、もう一度ひとつの輪になって回りはじめたのです。

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“海の香り”をまとう味わい──食卓に届く南三陸の恵み

「さとうみ羊」の肉は、最初に口にした瞬間に“やさしい海の香り”がふっと広がります。決して魚のような匂いではなく、潮風がほんのりと混ざったような深い旨み。脂は甘く、赤身にはしっかりとしたコクがあります。わかめ由来のミネラルが肉質を引き締め、後味は驚くほどさっぱりしているのです。

料理人の間でも、この独特の風味が高く評価されています。南三陸町内のレストランでは、地元野菜と合わせた“さとうみ羊のグリル”や、“海藻ソース”を添えたローストなど、地域の恵みを融合させた料理が人気です。海の町ならではの羊」として、観光客にも知られる存在になりつつあります。

また、オンライン販売を通じて全国の食卓にも届けられています。「南三陸の空気を感じる味」「冷めても旨味が残る」とリピーターも多く、単なる特産品ではなく、“復興の味”として静かに広がっているのです。

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未来へつなぐ“海と人の絆”──南三陸からのメッセージ

「さとうみ羊」は、単に“新しいブランド肉”ではありません。それは、海と人と大地がもう一度手を取り合うための“象徴”です。南三陸町の人々が見つめてきたのは、失ったものではなく、これから育てていく“未来の風景”。

そこには、かつて海の上で働いていた漁師たちの誇りも、今、丘で羊を育てる人たちの希望も、同じように流れています。この町では「壊れたものを修理する」よりも、「もう一度自分たちの手でつくり直す」ことを選びました。

わかめを海で育て、それを羊が食べ、羊の糞が再び土を潤す。そしてその潤った土が海の栄養となり、海の生き物たちを育む。その循環が町全体をやさしく包み込み、未来への命のリレーとなっています。

海の幸で育つ羊。それは、南三陸が再び“豊かな海の町”として歩み出すための、新しい希望のかたちです。


🌿そして最後に、読者への小さな架け橋として──

📌 情報補足

宮城県・南三陸町のさとうみファームが手掛けるブランド羊肉「さとうみ羊」は、未利用の南三陸産わかめを飼料に活かして育てられ、ネット通販でも購入可能です。少量生産の希少ブランドゆえ、気になる方は早めにチェックを。(satoumifarm.base.shop

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まとめ

南三陸の海と大地、そしてそこに生きる人々の手によって生まれた「さとうみ羊」。それは、失われた風景を取り戻すだけでなく、海と人との関係をもう一度“つくり直す”挑戦でもありました。
海藻が羊を育て、羊が土を潤し、やがてその土が海へと還っていく。南三陸の循環する命の物語は、これからも静かに、確かに続いていきます。

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