魚は魚で育てるしかないのか?“魚粉を減らす真鯛”が変える養殖の常識|あさイチ中継

真鯛養殖 BLOG
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魚は魚で育てるしかない――そんな常識を、少しだけ揺さぶる取り組みが愛媛県西予市で始まっています。養殖魚はこれまで、イワシなどを原料とした魚粉を主なエサとして育てられてきました。けれど、その方法では、育てる魚以上の水産資源を消費してしまうという課題も抱えています。

そこで注目されているのが、植物性の原料を取り入れた新しい養殖のかたちです。赤坂水産が開発した、ブランドマダイ「白寿真鯛0(はくじゅまだいゼロ)」は、成長の後半にあたる時期に、魚粉の使用を抑えた独自の飼料へと切り替えることで、資源への負担を減らす試みに挑んでいます。

ただし、もともと肉食であるマダイにとって、植物性のエサは決して食べやすいものではありません。その課題を乗り越えるために導入されたのが、食べ具合に応じて給餌量を調整するAI技術です。

「完全に変える」のではなく、「できるところから変えていく」。そんな現実的な挑戦の中に、これからの養殖と食のあり方を考えるヒントが見えてきます。

【放送日:2026年4月13日(月)8:15 -9:55・NHK-総合】

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なぜ養殖は魚粉に頼ってきたのか?変えられなかった理由とは?

養殖において、魚粉は長いあいだ欠かせない存在でした。イワシなどの小魚を原料とした魚粉は、たんぱく質や脂質を豊富に含み、魚にとって栄養バランスのとれた理想的なエサとされてきたからです。

特にマダイのような魚はもともと肉食で、自然界では小魚や甲殻類を捕食して生きています。そのため、魚粉を中心としたエサは食いつきがよく、成長も安定しやすいという大きな利点がありました。

一方で、植物性のたんぱく質を使ったエサは、栄養面では補える部分があっても、どうしても食べにくさが課題になります。魚が十分に食べなければ、成長に影響が出てしまうため、養殖の現場ではなかなか踏み切れない状況が続いてきました。

つまり、魚粉に頼るのは単なる慣習ではなく、「確実に育てるための合理的な選択」でもあったのです。だからこそ、この方法を変えることは簡単ではありませんでした。

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魚粉を減らすと何が起きる?養殖が抱える課題

魚粉は優れたエサである一方で、その原料となるのは海で獲られる小魚です。つまり、養殖魚を育てるために、別の魚資源を消費しているという構造があります。

たとえば、1kgの魚を育てるために、それ以上の量の魚がエサとして使われるケースもあり、養殖が広がるほど、海の資源に負担がかかるという課題が指摘されてきました。

さらに近年では、魚粉の原料となる水産資源の減少や価格の高騰も問題となっています。安定してエサを確保することが難しくなれば、養殖そのものの持続性にも影響が出てしまいます。

こうした背景から、「魚を育てるために魚を使い続ける」という仕組みを、どこかで見直す必要があるのではないか――そんな問いが、養殖の現場でも少しずつ共有されるようになってきました。

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白寿真鯛0の工夫とは?最後の半年に隠された意味

こうした課題に向き合う中で生まれたのが、ブランドマダイ「白寿真鯛0」です。その特徴は、養殖のすべてを変えるのではなく、成長の一部に工夫を集中させている点にあります。

マダイは成長するにつれて体が大きくなり、食べるエサの量も増えていきます。そこで、最も多くのエサを必要とする“最後の半年”に着目し、この期間に魚粉の使用を抑えた植物性の飼料へと切り替えています。

この工夫によって、全体のエサ使用量の中で大きな割合を占める部分を見直すことができ、結果として水産資源への依存を減らすことにつながります。無理にすべてを変えるのではなく、効果の大きい部分から変えていく――その発想が、この取り組みの特徴です。

また、エサの量が増える時期は、食べ残しが出やすい時期でもあります。適切に管理されなければ、余ったエサが海底に沈み、環境に影響を与えることもあります。だからこそ、このタイミングでエサの質と与え方を見直すことには、大きな意味があるのです。

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AIが支える養殖——食べにくさをどう克服したのか?

植物性のエサに切り替えるうえで、大きな壁となるのが「食べにくさ」です。もともと肉食のマダイにとって、植物由来の飼料は食いつきがよくなく、十分に食べてもらえなければ成長にも影響が出てしまいます。

そこで導入されたのが、AIを活用した自動給餌システムです。この仕組みでは、水中の様子や魚の動きをもとに、エサの食べ具合を判断し、その都度、与える量を細かく調整していきます。

たとえば、魚の動きが鈍くなればエサの量を減らし、逆に活発に食べている様子が見られれば、適切な量を追加する。人の目と経験に頼っていた判断を、データとリアルタイムの分析によって支えているのです。

こうした技術によって、食べ残しを減らしながら、魚に無理なくエサを受け入れてもらうことが可能になります。植物性のエサという“難しさ”を、そのまま押し通すのではなく、技術でやさしく補っていく――AIは、その橋渡しの役割を担っているのかもしれません。

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味はどう変わる?食べてわかる違い

エサを変えることで、魚の味にも変化が現れます。ただし、その違いは強い個性として現れるというよりも、口にしたときの印象の中で、静かに感じられるものかもしれません。

白寿真鯛0は、出荷前の半年間の間、魚粉の使用を抑えることで、特有の魚臭さが少なく、すっきりとした味わいになるといわれています。雑味が少ないぶん、身のやわらかな甘みや旨みが、より素直に感じられるのが特徴です。

また、脂ののり方や身質にも変化が見られ、時間が経っても味が落ちにくいといった点も評価されています。流通や保存の面でも扱いやすく、結果として安定した美味しさにつながっているのです。

大きく味が変わるわけではないけれど、食べているうちに「なんとなく違う」と感じる。そのやさしい変化こそが、この真鯛の魅力なのかもしれません。

赤坂水産

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完全ではないからこそ意味がある——現実的な養殖の未来

白寿真鯛0の取り組みは、すべてを一度に変えるものではありません。魚粉の使用を完全にゼロにするのではなく、できる範囲で減らしていく――その現実的なアプローチにこそ、大きな意味があります。

理想だけを追い求めても、現場で続かなければ広がることはありません。一方で、少しずつでも確実に変えていくことで、結果として大きな変化につながっていく可能性があります。

魚は魚で育てるしかないのか――その問いに対して、この真鯛は明確な答えを示しているわけではありません。ただ、「変えられる部分はある」という事実を、静かに示しているようにも感じられます。

完全ではないからこそ、無理がない。そして無理がないからこそ、続いていく。白寿真鯛0の挑戦は、養殖という枠を超えて、これからの食と環境のあり方を考えるヒントを与えてくれているのかもしれません。

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まとめ|魚は魚で育てるしかないのか?

養殖において、魚は魚で育てるしかない――そんな考え方は、長いあいだ当たり前のものとされてきました。それは、魚の性質や成長を考えれば、ごく自然な選択でもあります。

けれど今回紹介された取り組みは、その常識に対して「少しだけ変えられるかもしれない」という可能性を示してくれました。すべてを否定するのではなく、できる部分から見直していく。その積み重ねが、これからの養殖や食のあり方を、ゆっくりと変えていくのかもしれません。

完全な答えはまだありません。それでも、こうした試みがあることで、私たちはあらためて“食べること”の意味を考えるきっかけを得ることができます。

魚は魚で育てるしかないのか――その問いに対して、今はまだ、はっきりとした答えを出す必要はないのかもしれません。ただ、その問いを持ち続けること自体に、これからのヒントがあるように思えます。

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