激流が育てた黄金アジ 決して手で触らない理由とは?|沼島を守る一本釣り漁師の物語【食彩の王国】

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「魚を釣ったのに、どうして手で触らないの?」

兵庫県・淡路島の南に浮かぶ小さな島、沼島(ぬしま)では、黄金アジを一本釣りで釣り上げても、漁師は決して魚に直接手を触れません。釣り針は船に張った一本の針金を使って外され、そのまま生け簀へ。人の体温による身焼けや鱗の傷を防ぎ、極上の鮮度と美しさを守るために受け継がれてきた、島ならではの知恵です。

激しい潮流が育む肉厚で上品な脂、そして一本釣り漁師たちが守り続ける伝統の技。さらに、その想いを受け継ぐ料理人たちが、黄金アジの魅力を和のフレンチや江戸前ずしへと昇華させます。

この記事では、「食彩の王国『決して手で触らない!? 沼島の黄金アジ〜一本釣りの極意&淡路フレンチ〜』」をもとに、黄金アジのおいしさを支える一本釣りの極意と、島の海を未来へつなぐ漁師たちの挑戦を紹介します。

【放送日:2026年7月4日(土)9:30 -9:55・テレビ朝日】

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黄金アジになぜ手で触れないの?~一本釣り漁に受け継がれる驚きの工夫~

沼島の黄金アジ漁でまず驚かされるのは、釣り上げた魚に漁師が決して手で触れないことです。一本釣りで海から上がってきたアジは、手でつかまれることなく、船に張られた一本の針金を使って針を外され、そのまま下にある穴から生け簀へと入っていきます。

この一連の動きは、とても静かで無駄がありません。釣り上げる、針を外す、生け簀へ送る。そのすべてが流れるように行われ、魚に触れる時間はほとんどありません。沼島で黄金アジを獲って34年の漁師・石井和夫さんが受け継いできた、一本釣りならではの繊細な技です。

船に張られた針金で針を外す(出典:ABCテレビニュース映像からキャプチャ)
船に張られた針金で針を外す(出典:ABCテレビニュース映像からキャプチャ)

手で触れない理由は、黄金アジの鮮度と美しさを守るためです。人の手の温度が魚に伝わると、身焼けと呼ばれる品質の低下につながるおそれがあります。また、手でつかむことで鱗が傷つけば、魚体の美しさや商品価値にも影響します。だからこそ、漁師たちは釣り上げた瞬間から魚を大切に扱い、できる限り傷つけない方法で生け簀へ送り込んでいるのです。

定置網などで大量に獲る漁とは違い、一本釣りは一匹ずつ魚と向き合う漁です。指先に伝わるわずかな感覚を頼りに釣り上げ、最後まで手を触れずに扱う。その工夫の奥には、黄金アジ本来の味を最高の状態で届けたいという、漁師たちの強い思いが込められています。

この「触れない」という技こそ、沼島の黄金アジを特別な存在にしている理由の一つなのです。

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激流が育てる沼島の黄金アジ~肉厚で脂がのる理由とは?~

兵庫県・淡路島の南に浮かぶ沼島。その沖合に広がる紀伊水道は、黒潮の影響を受けた潮流が複雑にぶつかり合う、全国でも有数の好漁場です。この激しい潮の流れこそが、沼島の黄金アジを育てる最大の秘密です。

速い潮の中を泳ぎ続ける黄金アジは、身が引き締まり、ほどよく脂がのります。肉厚でありながら上品な甘みとうま味を兼ね備え、金色に輝く美しい魚体から「黄金アジ」と呼ばれるようになりました。その品質は高く評価され、東京の寿司職人たちも太鼓判を押すほどです。

東京・新宿の江戸前ずしの名店では、黄金アジの握りや季節の薬味を合わせた「梅酢巻き」として提供され、その繊細な味わいを存分に楽しむことができます。激流という厳しい自然環境が、一匹一匹に豊かな味わいを育んでいるのです。

また、沼島は日本神話で「最初に誕生した島」とも伝えられる神秘的な島でもあります。古くから海とともに歩んできたこの小さな島では、自然の恵みを大切に受け継ぎながら、黄金アジという島の宝を今も守り続けています。

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一本釣り漁師が守る島の宝~温暖化に挑む新たな取り組み~

沼島で34年にわたり黄金アジを追い続けてきた石井和夫さんは、近年、海の変化を肌で感じています。番組でも、漁師たちが「魚が減っている」と切実な思いを語る場面があり、黄金アジを取り巻く環境が大きく変わりつつあることが伝わってきます。

番組では、その背景の一つとして温暖化の影響にも触れられていました。しかし、漁師たちにとって大切なのは原因を議論することではなく、目の前の海と向き合い、島の宝をどう未来へつないでいくかということです。

そこで石井さんが立ち上げたのが、「沼島一本釣産直部」です。仲買人を介さず、豊洲市場へ直接出荷する仕組みを整えたことで、黄金アジは従来のおよそ1.5倍という価格で取引されるようになりました。漁獲量が減る中でも、一匹一匹の価値を高めることで、漁業を持続可能なものへと変えていこうとしているのです。

黄金アジを傷つけない一本釣りの技も、産地から直接届ける新たな挑戦も、その根底にある思いは同じです。島の宝を次の世代へ受け継ぎたい――。漁師たちは今日も海と向き合いながら、その未来を切り拓いています。

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黄金アジを生かす料理人たち~江戸前ずしと淡路フレンチ~

一本釣り漁師たちが大切に守り抜いた黄金アジ。その価値を受け取るのが、食材に真摯に向き合う料理人たちです。

東京・新宿の江戸前ずし店では、黄金アジの持ち味を生かした握りや、季節の薬味を合わせた梅酢巻きとして提供されます。丁寧な一本釣りによって傷の少ない魚体と上質な身質は、素材そのものの魅力を引き出す江戸前ずしだからこそ、その違いが際立ちます。

【本格江戸前ずしが食べられる店】鮨さがね

一方、淡路島のホテルアナガでは、料理長・島岡雄一が黄金アジを使った新しい和のフレンチに挑戦します。フランス料理で培った技術に和の感性を重ね、黄金アジの繊細なうま味を生かした一皿へと仕上げていきます。番組では、漁師たちの思いに共感した料理人が、その価値をさらに高める新作料理を生み出していく様子が描かれます。

ホテルアナガ

漁師が傷ひとつ付けないよう大切に扱った黄金アジは、料理人の手でさらに輝きを増し、食べる人のもとへ届けられます。一本釣りの技で始まった物語は、料理という形になって、多くの人へ受け継がれていくのです。

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一本の針金が守る極上の味~黄金アジに込められた想い~

沼島の黄金アジは、激しい潮流だけが育てた魚ではありません。
一本釣りで一匹ずつ丁寧に釣り上げ、決して手で触れることなく生け簀へ送り込む漁師の技。その価値を理解し、最高の一皿へと仕上げる料理人たち。そして、その味を楽しみに待つ食べる人たち。それぞれの思いがつながることで、黄金アジは特別な一匹となります。

近年は漁獲量の減少という課題にも直面しています。しかし石井さんたちは、「沼島一本釣産直部」を立ち上げ、新たな販路を切り拓くことで、島の宝を未来へつなぐ挑戦を続けています。魚の価値を守ることは、島の暮らしを守ることでもあるのです。

船に張られた一本の針金は、単に針を外すための道具ではありません。魚を傷つけず、最高の状態で届けたいという漁師たちの思いやりが形になったものです。

黄金アジのおいしさは、激流が育んだ自然の恵みだけではありません。魚に決して手で触れない一本釣り漁師たちの思いやりと、その恵みを大切に守り抜こうとする人々の技と情熱があってこそ、その一匹は食卓で本当の輝きを放つのです。

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