杉の木が、やさしく丸く弧を描く。そこには、職人の技だけではない、日本人が長く育んできた「木と暮らす知恵」が息づいています。
福岡県志免町(しめまち)に受け継がれる「博多曲物(はかたまげもの)」。薄く削った杉をしなやかに曲げ、美しい器へと仕立てる伝統技法は、見た目の美しさだけでなく、暮らしに寄り添う実用性も備えてきました。2026年5月26日の「あさイチ」中継では、杉の香りと手仕事のぬくもりが生きる「博多曲物」の世界へ。
なぜ木を曲げるのか。なぜ今も人は木の器に惹かれるのか。受け継がれてきた職人の技と、木とともに暮らす知恵をたどります。
【放送日:2026年5月26日(火)8:15 -9:55・NHK-総合】
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博多曲物とは?杉を曲げて生まれる福岡・志免町の伝統工芸
福岡県に受け継がれる「博多曲物(はかたまげもの)」は、杉やヒノキなどの木材を薄く削り、しなやかに曲げて形を作る伝統工芸です。
まっすぐ育った木が、職人の手によってやさしい曲線へと姿を変えていく――。その美しい丸みは、見た目の美しさだけではなく、日本人が長く育んできた「木とともに暮らす知恵」そのものでもあります。
曲物は古くから、お櫃(おひつ)や弁当箱、寿司桶、菓子器など、暮らしのさまざまな場面で使われてきました。木が持つ調湿性や通気性によって、ご飯をおいしく保ち、軽く扱いやすい道具として、多くの家庭に寄り添ってきたのです。
中でも博多曲物は、福岡に受け継がれてきた曲物文化のひとつ。薄く削った杉を熱や水分でやわらかく整えながら、美しい曲線を描いて形づくっていきます。
木の香り。なめらかな手ざわり。使うほど少しずつ深まっていく風合い。そこには、ただ「ものを作る」だけではない、自然の恵みを無駄なく生かし、長く大切に使う日本の暮らしの知恵が息づいています。
まっすぐ伸びた木に、やさしい丸みを与えること。その曲線の中にこそ、博多曲物が受け継いできた美しさがあるのかもしれません。
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なぜ木を曲げるの?博多曲物に宿る職人技と木の知恵
博多曲物の美しさを見ていると、不思議に思えてきます。まっすぐ育った木を、なぜわざわざ曲げるのだろう――。そこには、見た目の美しさだけではない、日本人が長く受け継いできた「木と向き合う知恵」がありました。
博多曲物では、まず杉の木を薄く削るところから始まります。薄く整えられた木材は、そのままでは硬く、無理に力を加えれば割れたり傷んだりしてしまいます。そこで職人は、水分や熱を加えながら、木の性質を見極め、少しずつ丁寧に曲線を作っていきます。
急がない。無理をさせない。木が本来持っているしなやかさを引き出していく。まるで木と対話するような仕事です。
さらに曲物には、昔ながらの知恵も息づいています。木には湿気をほどよく調整する性質があり、お櫃なら炊きたてのご飯をふっくら保ちやすく、弁当箱なら余分な水分を逃がしながらおいしさを支えてくれます。軽く、持ち運びやすく、修理を重ねながら長く使えることも、木の道具ならではの魅力でした。
便利なものが増えた今でも、木の器にどこか心が落ち着くのは、機能だけではない「自然の心地よさ」を、人がどこかで覚えているからなのかもしれません。
木を思い通りに変えるのではなく、木が持つ力を生かして形をつくる。博多曲物の曲線には、職人の技だけではない、人と自然が寄り添いながら暮らしてきた時間も、そっと宿っているようです。
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なぜ今また注目される?博多曲物が教えてくれる木と暮らす豊かさ
便利なものは、昔よりずっと増えました。軽くて丈夫な容器。電子レンジにも入れやすく、手入れもしやすい道具たち。暮らしは便利になりました。けれどその一方で、どこか「手ざわり」や「時間をかける心地よさ」を求める人も増えているのかもしれません。
そんな中で、いま改めて注目されているのが、木とともに暮らす道具です。博多曲物も、そのひとつ。杉のやわらかな香り。手に持ったときの軽さ。使い込むほど少しずつ深まっていく風合い。新品がいちばん美しいのではなく、使う時間ごと暮らしになじんでいく。そこには、効率や便利さだけでは測れない豊かさがあります。
例えば、蒸籠(せいろ)が再び人気を集めていることも、どこか通じるものがあるのかもしれません。木が余分な水分を整え、食べ物をやさしく包むこと。自然の力を借りながら暮らす知恵は、昔の人の工夫であると同時に、今の暮らしにも静かにつながっています。
博多曲物 玉樹
- 福岡県糟屋郡志免町別府西2丁目2−1
- TEL:092-935-5056
- 営業時間:10:00~17:00(土曜は~15:00まで)
- 定休日:日曜
- URL:https://www.magemono.com/
博多曲物が受け継いできたのは、ただ器を作る技術ではありません。木の声を聞くこと。自然の性質を生かすこと。長く大切に使い続けること。まっすぐ伸びた木を、やさしく曲げて生まれる曲線。そこに宿っていたのは、美しさだけではなく、人が自然とともに暮らしてきた時間と知恵だったのかもしれません。
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まとめ|曲線に宿っていたのは、木と暮らす時間だった
福岡県志免町に受け継がれる「博多曲物」。杉の木を薄く削り、熱と水を使いながら、職人の手でゆっくりと曲線を描いていく技には、長い時間をかけて育まれてきた暮らしの知恵が息づいていました。
軽さや通気性、木が持つ自然の力を生かす工夫。そこには、ただ便利な道具を作るだけではない、人が自然と寄り添いながら暮らしてきた時間が流れています。便利なものに囲まれる今だからこそ、杉の香りや木のぬくもりに、どこか心がほどける瞬間があるのかもしれません。
まっすぐ伸びた木が、やさしい曲線へと変わっていくように。忙しい毎日の中にも、少しだけゆっくりと流れる時間を迎え入れてみたくなる――。博多曲物には、そんな静かな豊かさが宿っていました。
