京都府舞鶴市の港町には、昔から受け継がれてきた“かまぼこ作り”があります。工房に入ると、立ちのぼる湯気。魚のすり身を練り上げる音。そして、蒸したての香り――。舞鶴のかまぼこは、近海で水揚げされた新鮮な魚の生すり身を使い、独自の「2段蒸し」で仕上げられるのが特徴です。
ぷりっとした弾力。シコシコとした食感。その味わいには、日本海の港町ならではの手仕事が息づいています。今回の『あさイチ』中継では、そんな舞鶴の“伝統かまぼこ”の世界を紹介。
ちくわやかまぼこ作りを体験できる「舞鶴かまぼこ工房」では、職人たちが受け継いできた技や、出来たてならではのおいしさにも出会えるようです。
普段は何気なく食べているかまぼこ。けれどその一本の中には、港町の暮らしと魚を生かす知恵が、ぎゅっと詰まっているのかもしれません。
【放送日:2026年5月19日(火)8:15 -9:55・NHK-総合】
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港町に立ちのぼる湯気――舞鶴で受け継がれる“かまぼこ文化”
京都府北部、日本海に面した舞鶴市は、古くから港町として栄えてきました。朝、水揚げされた魚が並ぶ港。海の香りを含んだ風。そして工房から立ちのぼる、ほんのり白い湯気――。舞鶴では、近海で獲れた魚を使った“かまぼこ作り”が、長いあいだ受け継がれてきました。
かまぼこは、魚のすり身を練り、蒸して作るシンプルな食べ物です。けれどその味わいには、港町ならではの知恵と手仕事が詰まっています。新鮮な魚をどう生かすか。どんな食感に仕上げるか。魚の旨みをどう閉じ込めるか。舞鶴のかまぼこ文化は、そうした工夫の積み重ねの中で育まれてきたのでしょう。
工房では、魚のすり身を練る音や蒸気の熱気が広がり、どこか昔ながらの“食の仕事場”らしい空気が流れています。大量生産の食品が増えた今でも、こうした手仕事の現場には、不思議な温かさがあります。そして、蒸したてのかまぼこから立ちのぼる湯気には、港町の暮らしそのものが宿っているのかもしれません。
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“2段蒸し”が生み出す弾力――舞鶴かまぼこのおいしさの秘密
舞鶴かまぼこの大きな特徴のひとつが、「2段蒸し」と呼ばれる独特の製法です。魚のすり身を一度に仕上げるのではなく、蒸し工程を段階的に行うことで、舞鶴ならではの強い弾力とシコシコとした食感を生み出しているのだそうです。
実際に食べると、ただ柔らかいだけではありません。ぷりっとした歯ごたえ。しっかりした弾力。噛むほどに広がる魚の旨み。同じ“かまぼこ”でも、地域によって食感や味わいには個性があります。
たとえば神奈川・小田原のかまぼこは、なめらかで上品な口当たりが特徴として知られていますが、舞鶴のかまぼこには、日本海の港町らしい力強さが感じられます。
そのおいしさを支えているのが、近海で水揚げされた新鮮な魚の生すり身です。鮮度の良い魚を使うことで、独特の弾力や旨みが生まれる。そこには、港町ならではの“魚を生かす知恵”があります。
さらに、蒸し加減や練り具合には、長年受け継がれてきた職人の感覚も欠かせません。ほんの少しの違いで、食感は変わってしまう。だからこそ、舞鶴かまぼこには機械だけでは作れない“手仕事の味”が残っているのかもしれません。
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魚を練る、形を作る――職人たちが守り続ける手仕事
かまぼこ作りは、一見するととてもシンプルです。魚をすり身にして、練り、形を整え、蒸し上げる。けれど実際には、その工程のひとつひとつに、職人たちの経験と感覚が詰まっています。
魚の状態は、季節や水温によって少しずつ変わります。同じように見えるすり身でも、水分や脂の乗り方が違えば、練ったときの感触も変わってくる。だから職人たちは、手の感覚や練り上がりの状態を見ながら、その日の魚と向き合っているのだそうです。
また、舞鶴かまぼこの特徴である“弾力”も、ただ機械で作れば生まれるものではありません。どのくらい練るのか。どんな形に整えるのか。どのタイミングで蒸し上げるのか。ほんの少しの違いが、ぷりっとした食感やシコシコ感を左右します。
富山の細工かまぼこのように華やかな見た目ではなくても、舞鶴のかまぼこには、“おいしさを支える職人技”が静かに息づいているのです。工房で作業を見ていると、職人たちの手は無駄なく動き、魚のすり身が少しずつ“かまぼこ”へ変わっていきます。その姿には、港町で長く受け継がれてきた食文化の誇りが感じられます。
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焼きたてちくわも!?――「舞鶴かまぼこ工房」で味わう体験型の魅力
舞鶴市にある「舞鶴かまぼこ工房」では、伝統のかまぼこ作りを“見る”だけでなく、実際に体験することもできます。魚のすり身を練り、形を整え、竹に巻きつける。普段は何気なく食べているちくわやかまぼこも、自分の手で作ってみると、その工程の細やかさに驚かされます。
特に人気なのが、焼きたてのちくわ。こんがり焼ける香ばしい香り。表面はほんのりパリッとして、中はふわっとやわらかい。出来たてならではの食感や魚の旨みは、スーパーで買うちくわとはまた違うおいしさがあります。
また、蒸したてのかまぼこも、工房ならではの楽しみです。立ちのぼる湯気。ふわっと広がる魚の香り。ぷりっとした弾力。港町で受け継がれてきた“練り物文化”を、五感で味わえる場所なのかもしれません。
こうした体験型の工房が人気を集めている背景には、「食べるだけでは分からない面白さ」があります。どんな魚を使うのか。どう練るのか。なぜあの食感になるのか。実際に手を動かしてみることで、舞鶴かまぼこの奥深さが、ぐっと身近に感じられるのでしょう。
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一本のかまぼこに、港町の知恵が詰まっている――舞鶴の味が愛される理由
かまぼこは、とてもシンプルな食べ物です。魚を練り、形を整え、蒸し上げる。けれどその一本の中には、港町で暮らしてきた人たちの知恵や工夫が、ぎゅっと詰まっています。
新鮮な魚をどう生かすのか。魚の旨みをどう引き出すのか。限られた海の恵みを、どうおいしく受け継いでいくのか。舞鶴のかまぼこ文化は、そんな日々の積み重ねの中で育まれてきました。そして今も、工房では職人たちが魚と向き合いながら、変わらない手仕事を続けています。
立ちのぼる湯気。練り上げられるすり身。焼きたてちくわの香ばしい匂い。そこには、効率だけでは語れない“食の温度”があります。
大量生産の時代になっても、人の手で作られた食べ物には、どこか安心するおいしさがあります。舞鶴のかまぼこが長く愛されてきた理由も、ただ弾力があるから、ただおいしいから、というだけではないのかもしれません。
港町の海と、人の手仕事。その両方が重なった味だからこそ、舞鶴のかまぼこは今も、多くの人の心とお腹を満たしているのでしょう。