逃げた修業、捨てなかった夢──30年後に開いた小さなケーキ屋|人生の楽園

夜のケーキ屋に入ろうとしている男性 BLOG
夢は逃げても、消えなかった。ただ、静かに待っていただけだ。もう一度、灯される日を…。
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若い頃、夢はあった…。
神戸の一流洋菓子店に就職し、ケーキ職人を目指した今村晋一さん。けれど、厳しい修業の現実に直面し、道半ばでその世界を離れた。

夢から逃げた――。

そう思われたこともあったかもしれない。しかし、完全に手放したわけではなかった。会社勤めをしながらも、息子の誕生日には毎年ケーキを焼き続けた。家族の笑顔を思い浮かべながら、スポンジを焼き、クリームを塗る。その時間だけは、若き日の自分に戻れた。そして30年後。54歳で会社を退職し、ついに念願のケーキ店を開いた。

「人生の楽園」は、そんな“捨てなかった夢”の物語を届ける。逃げた修業も、遠回りした年月も、すべてが今のケーキの味になっている。

【放送日:2026年2月28日(土)18:00 -18:30・テレビ朝日】

20代の挫折──神戸の一流洋菓子店で見た現実とは?

若き日の今村晋一さんは、ケーキ職人になる夢を抱き、神戸の一流洋菓子店へ就職した。華やかなショーケースの裏側には、想像以上に厳しい修業の日々があった。早朝から深夜まで続く仕込み。繊細な技術。緊張感のある現場。甘い香りの世界は、決して甘くはなかった。

理想と現実の間で揺れ、やがて晋一さんはその道を離れる。「逃げた」と思われたかもしれない。けれど、挫折は必ずしも終わりではない。夢を諦めたというより、いったん棚に置いた。その証拠に、ケーキへの想いは消えなかった。

修業から逃げたことは事実でも、“好き”までは逃げなかった。若さゆえの選択。でも、その選択があったからこそ、30年後の再出発がある。挫折は、夢の消滅ではない。熟成のはじまりかもしれない。

息子の誕生日に焼いたケーキ──父として続けた30年

洋菓子店を離れたあと、今村晋一さんは会社員として働き、家族を支えた。夢は、いったん胸の奥へ。けれど息子が生まれたとき、久しぶりにケーキを焼いてみた。

スポンジを泡立て、クリームを塗り、苺を並べる。それは仕事ではなく、父としての贈りものだった。息子は大喜びした。その笑顔が、忘れていた何かをもう一度灯した。以来、家族の誕生日には必ずケーキを焼き続けた。

30年。プロの厨房ではない。家庭のキッチン。評価も売上もない。でもそこには、確かな“受け取る人”がいた。職業でなくても、肩書きがなくても、好きなことは続く。息子の誕生日ケーキは、ただのイベントではなかった。それは、夢を完全には手放さなかった証。

会社員でいる時間と、ケーキを焼く時間。その二つが静かに並行しながら、30年が過ぎていった。気づけば、“趣味”という言葉では収まらないものになっていた。夢は、声高に主張しなくても、静かに続いていることがある。

54歳の決断──会社を辞めてもう一度夢へ!

30年、会社員として働いた今村晋一さん。家族を守り、責任を果たし、安定した日々を重ねてきた。けれど、胸の奥にはずっと残っていた。ケーキを焼く時間。誕生日のたびに灯る、小さな火。

54歳での退職は、勇気のいる決断だったはずだ。安定を手放す。肩書きを手放す。年齢という現実とも向き合う。でも、夢は若さの特権じゃない。むしろ、時間を経た夢のほうが強い。

若い頃は“憧れ”だったものが、30年の生活を経ると“覚悟”に変わる。晋一さんは、逃げた過去をなかったことにせず、そのまま背負ってもう一度立った。失敗を知っているからこそ、次はどう進むかがわかる。

会社を辞めることは、過去を否定することではない。積み重ねた人生の上に、新しい一歩を置くだけ。30年越しの再出発。それは無謀ではなく、熟成された選択だった。

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支える妻・尚美さんと家族の存在

30年越しの夢は、一人だけの決断では叶わない。54歳で会社を辞め、ケーキ店を開く。それは勇気だけでは足りない。理解と支えがいる。

妻の尚美さんは、若い頃の挫折も、会社員として働いた年月も、ずっとそばで見てきた。夢を一度あきらめた姿も、それでも誕生日ケーキを焼き続けた姿も。

再挑戦のとき、必要だったのは「大丈夫」という一言だったのかもしれない。家族の後押しがあったからこそ、晋一さんはもう一度立てた。

夢は個人のもののようでいて、実は共有される。息子の笑顔。妻の理解。家族の応援。それらが、30年分の時間を静かに支えていた。

ケーキ店のショーケースに並ぶ一つひとつのケーキの奥には、家族の時間が重なっている。ひとりで抱いた夢でも、叶えるときは“ひとり”じゃない。人生の楽園が描くのは、成功ではなく、支え合い。ケーキの甘さは、その積み重ねの味だ。

お客さんの笑顔が原動力!──誕生日ケーキに込める想い

今村晋一さんがいちばん大切にしているのは、ケーキの見た目でも、流行でもない。“受け取る人の顔”。誕生日ケーキは、その日だけの特別な存在だ。

ロウソクの灯り。家族の拍手。切り分ける瞬間のわくわく。その中心に、ケーキがある。息子の誕生日に焼き続けた30年。あのときの笑顔が、今も原動力になっている。

店を開いてからも、一つひとつ丁寧に仕上げる。派手な演出より、安心できる味。流行を追うより、「おいしいね」と言ってもらえること。

ケーキは作品である前に、贈りもの。ショーケースの向こうには、それぞれの家族の物語がある。晋一さんは、その物語の一部を預かっている。だからこそ、甘さの奥に、覚悟がある。

お客さんの笑顔が見たい。ただそれだけ。でも、その“ただそれだけ”が、30年越しの夢を支えている。

まとめ|夢は逃げても、消えなかった…。

若い頃、挫折した。厳しい修業から離れ、別の道を歩いた。

それでも、夢は消えなかった。息子の誕生日に焼いたケーキ。家族の笑顔。30年続けた、小さな積み重ね。やがてそれは、54歳の決断へとつながった。

夢は、一直線に叶うとは限らない。逃げたと思った時間も、遠回りに見えた年月も、実は熟成の時間だった。人生の楽園が描くのは、成功ではなく“続けたこと”。好きなものを完全には手放さなかったこと。

お父さんのケーキ店は、30年分の想いでできている。そしてそれは、今も誰かの誕生日を明るく照らしている。夢は逃げても、消えなかった。ただ、静かに待っていただけだ。もう一度、灯される日を…。

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