群馬県太田市と聞くと、かつては中島飛行機の工場があったことから、駅前にスバルの大きな工場があったり郊外には巨大な三洋電機の工場が合ったりして、かつては工場の町、ものづくりの町というイメージを思い浮かべる人も多いかもしれません。
けれど最近、その太田市が「甘さ」で注目を集めています。NHK「あさイチ」の中継テーマは、「あま~いトマト」。舞台となるのは、日照時間が長く、冬でも晴天の多い群馬・太田市です。
そこで育てられているのが、糖度9度以上を誇るフルーツトマト「ブリックスナイン」。小ぶりながら果肉がぎゅっと詰まり、フルーツのような甘さと、トマトらしいコクをあわせ持つことから、“赤い宝石”とも呼ばれています。
なぜ、太田市でここまで甘いトマトが生まれるのか。そして、工業の町として知られてきた地域が、いま農業の分野でどんな挑戦を続けているのか。あさイチ中継を手がかりに、群馬・太田市の「あま~いトマト」の秘密を見ていきます。
【放送日:2026年1月14日(水)8:15 -9:55・NHK総合】
あさイチ中継は群馬・太田市から
群馬県太田市は、長く「工場の町」として知られてきました。自動車関連をはじめとする製造業が集まり、かつては多くの外国人労働者がこの町で働いていました。市内に国際電話がかけられる公衆電話が多く設置され、その数が全国でもトップクラスだった時代もあります。
成田空港でタクシーに乗り、行き先に「オオタ」と告げると、東京の大田区ではなく、群馬の太田市に向かう――そんなエピソードが生まれるほど、この町は外国人にとっても身近な「働く場所」でした。
一方で、暮らしやすいかと聞かれると、正直、首をかしげたくなる面もあります。夏は厳しい暑さに加え、雷が頻繁に鳴り響き、冬には赤城山から吹き下ろす「赤城おろし」が体を冷やす。自然条件は決して穏やかではありません。
けれど、その厳しさこそが、農業にとっては強みになることもあります。日照時間の長さ、昼夜の寒暖差、そして水や土と向き合う知恵。工業の町として培われた管理と品質への意識もまた、農の現場に活かされてきました。
今回のあさイチ中継で注目される「甘いトマト」は、そんな太田市の風土と人の工夫が重なって生まれたもの。町のイメージは、いつの間にか一つではなくなっているのかもしれません。
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赤い宝石「ブリックスナイン」とは?
太田市の「あま~いトマト」として知られるブリックスナインは、糖度9度以上を基準としたフルーツトマトです。一般的なトマトよりも小ぶりながら、ひと口かじると、果肉の密度と濃厚な甘みがはっきりと感じられます。甘いだけではなく、トマトらしい酸味がきちんと残っているのも特徴です。

この甘みと酸味のバランスが、「フルーツのよう」と言われる理由のひとつかもしれません。ブリックスナインは、見た目にも艶があり、実が締まっていることから、“赤い宝石”と呼ばれることもあります。水分を抑えた栽培によって旨みを凝縮させるため、ヘタのまわりに濃い緑色が残る「ベースグリーン」が出やすいのも特徴です。
この色の濃さが、甘さの目安になるとも言われています。トマトは水を多く与えれば育ちやすくなりますが、ブリックスナインではあえて水分を制限し、時間をかけて育てる方法が取られています。その分、収穫量は増えませんが、一粒一粒に味が凝縮されていきます。
工業製品のように、規格と品質を厳しく管理する発想。その姿勢が、太田市で培われてきた“ものづくりの感覚”とどこか重なって見えるのも印象的です。
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なぜ太田市で、ここまで甘くなる?
ブリックスナインは、主にハウス栽培で育てられています。そう聞くと、「外の気候は関係ないのでは?」と思うかもしれません。けれど実際には、ハウス栽培だからこそ、土地の気候が味に影響するのです。
太田市は、冬でも晴天の日が多く、年間を通して日照時間が長い地域として知られています。トマトの甘さを生み出す糖は、光合成によって作られるもの。日差しが安定して確保できる環境は、甘いトマトづくりにとって大きな強みになります。
さらに、太田市周辺は赤城山 系の地下水に恵まれています。清らかな水を使いながらも、ブリックスナインではあえて水分を与えすぎない栽培が行われます。この水分コントロールによって、トマトは自ら糖分を蓄え、実を締めていきます。
ハウスの中では、温度や湿度、水の量が細かく管理されていますが、外の気温差や日射量は、その“基準”を作る重要な要素です。太田市特有の昼夜の寒暖差や乾いた空気は、トマトの味を引き締める方向に働いています。
つまり、ハウスは自然を遮断する箱ではなく、土地の条件を最大限に活かすための装置。太田市の気候があってこそ、その中で育つトマトの甘さも引き出されるのです。工夫と管理、そして土地の力。その三つが重なったとき、ブリックスナインの“あま~さ”は完成します。
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品質はどう守られている?
ブリックスナインの特徴である「糖度9度以上」という基準は、感覚や経験だけで守られているわけではありません。そこには、徹底した品質管理の仕組みがあります。
まず、収穫されたトマトは、糖度センサーによって一つ一つチェックされます。基準に満たないものは出荷されず、「ブリックスナイン」として店頭に並ぶのは、その厳しい基準をクリアしたものだけです。

さらに、出荷後も検査員による糖度測定が行われ、ダブルチェック体制で品質が保たれています。甘さを“うたう”だけでなく、数値として保証する姿勢が、信頼につながっているのです。
品質を支えているのは、機械だけではありません。生産者同士が定期的に食味会を開き、実際に味を確かめ合いながら、栽培方法や改善点を共有しています。
ハウスの巡回を通じて、互いの技術を学び合う取り組みも続けられてきました。こうした努力が評価され、ブリックスナインの生産グループは、農業の技術革新や経営改善への取り組みが認められ、日本農業賞 の優秀賞を受賞しています。
「甘いトマト」は、偶然できるものではありません。手間を惜しまない管理と、味に対する妥協のなさ。その積み重ねが、ブリックスナインの一粒一粒に詰まっています。
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どこで買える?いつ食べられる?
「あま~いトマト」と聞いて気になるのは、実際にどこで買えて、いつ食べられるのかという点です。
直売で買いたい人は
太田市内や近隣の邑楽郡などでは、JAファーマーズブレイス などの直売所でブリックスナインが販売されています。収穫時期には、朝どれのトマトが並ぶこともあり、地元の人にとっては“季節の楽しみ”のひとつです。
遠方の人はオンラインで
太田市まで足を運べなくても大丈夫。ブリックスナインは、公式サイトやJAの通販を通じて購入できます。
- ブリックスナイン公式サイト(https://www.brixnine.jp/)
- JAタウン内の 新鮮ぐんまみのり館(https://www.ja-town.com/shop/g/g3201-3201midori12/)
贈答用としても人気があり、化粧箱入りの商品が用意されているのも特徴です。

ブリックスナイン(出典:ブリックスナイン研究会)
ふるさと納税でも手に入る
ブリックスナインは、太田市 のふるさと納税返礼品としても選ばれています。例年、3月頃から順次発送されることが多く、「旬の時期に確実に味わいたい」という人には、ひとつの選択肢になりそうです。
いつ食べられる?
ブリックスナインの主な出荷時期は、1月上旬から6月下旬ごろまで。冬から初夏にかけてが、もっとも甘さがのるシーズンです。暑い夏を思わせるトマトですが、実は、太田市の冬の日差しの中で育つからこそ、あの濃厚な甘みが生まれています。
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“知っている町”が、違って見える!?
かつて 太田市 に住んでいた人にとっては、この町のイメージは、決して華やかなものではなかったかもしれません。店は少なく、鉄道は東武線が通るだけ。どこへ行くにも車が当たり前で、正直なところ「便利な町」とは言いにくい場所でした。
工場の町としての顔が強く、働くために集まり、また別の場所へ向かっていく。そんな通過点のような印象を持っていた人も多かったはずです。
けれど今、あさイチ中継で紹介されるのは、太田市で育つ「あま~いトマト」。厳しい気候と向き合いながら、時間と手間をかけて育てられたブリックスナインです。
住んでいた頃には気づかなかった土地の力。工業で培われた管理意識や、環境を読み、活かす知恵。それらが、“甘さ”というかたちで表に現れているのを見ると、太田市はいつの間にか、別の表情を持つ町になっていたことに気づかされます。
知っているつもりだった町が、少しだけ違って見える。そんな感覚は、ブリックスナインを味わうことで、いっそうはっきりするのかもしれません。
太田市は、工場の町でもあり、多文化の町でもあり、そして今、おいしさで驚かせてくれる町でもあります。あさイチ中継は、そんな町の“現在地”を、私たちにそっと教えてくれるのです。
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まとめ|太田市の“甘さ”は、偶然じゃなかった
群馬県太田市の「あま~いトマト」は、単に糖度が高いから話題になっているわけではありません。日照時間の長さや水分管理といった自然条件に加え、工業の町として培われてきた品質管理の意識と、生産者の地道な工夫が重なって生まれた味です。
糖度9度以上のフルーツトマト「ブリックスナイン」は、厳しい基準と二重チェックによって品質が守られ、“赤い宝石”と呼ばれるにふさわしい存在になりました。
かつて住んでいた町、通り過ぎるだけだった町が、いつの間にか別の顔を見せている。あさイチ中継は、そんな太田市の「今」を、甘さというわかりやすい形で教えてくれます。行きたいと思わなくてもいい。でも、食べてみたくなる。それだけで、町の見え方は少し変わるのかもしれません。