北米大陸に“大蛇”がいる!?|3000万年前に消えたプレートがつくった、白い砂漠と硫酸迷宮【体感!グレートネイチャー】

北米の大蛇の谷 BLOG
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北アメリカ大陸の荒野に、巨大な“大蛇”がいるという――。

大蛇!?日本人なら、思わずヤマタノオロチのような怪物を想像してしまいます。しかし、その正体を確かめるため北米西部へ向かってみると、待っていたのは怪物どころではありませんでした。

どこまでも続く大地に、蛇のように刻まれた巨大な裂け目。宇宙からも確認できるという、純白の砂漠。地下へ潜れば、硫酸によって岩が溶かされた巨大な迷宮。そして乾ききった荒野が、数年に一度、突然花で埋め尽くされる「スーパーブルーム」。いったい北米西部で、何が起きているのでしょう?

NHK『体感!グレートネイチャー』が今回追いかけるのは、北アメリカ西部に広がる絶景と奇観です。ところが、その謎をたどっていくと、意外なものが浮かび上がってきます。
3000万年前に“失われたプレート”。
かつて北アメリカ大陸の下へ沈み込んでいた、巨大な海洋プレート「ファラロンプレート」です。

でも――。プレートって、「なくなる」ものなのでしょうか? しかも3000万年前に姿を消したものが、どうして現在の北米大陸を裂き、真っ白な砂漠をつくり、地下に硫酸の迷宮を残し、その先で花まで咲かせるのでしょう。

大蛇を追いかけていたはずが、いつの間にか私たちは3000万年前の地球へ…。どうやら今回も、見えている絶景だけを眺めて帰るわけにはいかなさそうです。“大蛇”の正体を追いながら、今はもう見えないプレートが北米大陸に残した痕跡を探してみましょう。

……K探検隊、いよいよ出発です。

【放送日:2026年10月3日(土)21:00 -22:30・NHK-BS】

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第一章 北米大陸は、なぜ“大蛇”のように裂けているの?

北アメリカ西部の荒野に、巨大な“大蛇”がいるという――。探検隊は、その正体を確かめるため、北米大陸の奥地へ向かいました。……と書くと、いよいよ何の記事なのか分からなくなってきますが(笑)、もちろん本物の大蛇が潜んでいるわけではありません。

上空から大地を眺めてみると、そこには細長い山脈と谷が、何本も何本も並んでいます。まるで、巨大な蛇が大地を這った跡のようです。この不思議な地形が広がっているのが、アメリカ西部のネバダ州を中心とす「バシン・アンド・レンジ」と呼ばれる地域です。

英語で「Basin」は盆地、「Range」は山脈。その名の通り、山脈|盆地|山脈|盆地|山脈|盆地……という地形が、広大な北米西部に繰り返されています。

バシン・アンド・レンジ(出典:Wikipedia)
バシン・アンド・レンジ(出典:Wikipedia)

でも、ここで最初の「ん?」。どうして山と盆地が、こんなに規則正しく並んでいるのでしょう? 実はこの景色、大地が押し縮められてできたのではありません。その逆です。北米大陸が、東西方向へ引き伸ばされているのです。

一枚の板を両側から引っ張ってみると、やがて板には亀裂が入ります。北米西部でもそれと似たことが起こり、地殻が引き伸ばされて薄くなると、あちこちに巨大な断層が生まれました。その断層に沿って地面のブロックが沈み込んだところが「盆地」に。隣に残ったり持ち上がったりしたブロックが「山脈」になりました。

だから上空から眺めると、山と谷が何本も平行して並んで見えるのです。しかも、この“大蛇”は化石ではありません。北米西部では現在も断層に沿った地殻変動が続き、地震も起きています。

つまり私たちが見ているのは、「かつて裂けた大地」ではなく、「いまも裂け続けている大地」なのです。……探検開始早々、とんでもないものを見つけてしまいました。でも、本当に不思議なのはここからです。

大陸の端なら、まだ分かります。プレート同士がぶつかったり離れたりする境界では、激しい地殻変動が起こります。ところがバシン・アンド・レンジは、北米大陸そのものの内部に広がっています。いったい誰が、こんな巨大な大陸を左右へ引っ張っているのでしょう。

その犯人を探して時間をさかのぼっていくと――。探検隊の前に、もっと奇妙な存在が現れます。およそ3000万年前、北米大陸の西側から姿を消していった巨大な海洋プレート。その名は、「ファラロンプレート」。

大蛇の正体を追っていたはずなのに、どうやら私たちは、すでに存在しないプレートを探すことになってしまったようです。探検隊はこのまま3000万年前へ向かいます。

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第二章 3000万年前に“消えたプレート”は、どこへ行ったの?

北米大陸を裂いた“犯人”を探して、探検隊は3000万年前へ――。そこで出会ったのが、「ファラロンプレート」という巨大な海洋プレートでした。

現在、北米大陸の西側にあるのは太平洋プレートです。ところが、かつてその北米大陸との間にはファラロンプレートという海洋プレートがあり、長い時間をかけて北米プレートの下へ沈み込んでいました。では、3000万年前に突然、「はい、ファラロンプレート消滅!」と消えてしまったのでしょうか? もちろん、そんな手品みたいなことが起きたわけではありません(笑)。

ファラロンプレートの大部分は、北米プレートの下へ少しずつ沈み込んでいきました。そしておよそ3000万年前になると、ファラロンプレートと太平洋プレートを生み出していた海底の境界まで北米大陸の縁へ近づき、やがて太平洋プレートと北米プレートが直接接する部分が生まれます。

それまで、北米プレート← ファラロンプレートが沈み込むという関係だった西海岸の一部が、太平洋プレート ⇄ 北米プレートという、プレート同士が横へすれ違う関係へ変わっていったのです。現在のサンアンドレアス断層につながる巨大なプレート境界の始まりです。

でも――。ここで探検隊には、もう一つの謎が残ります。海のプレートが沈み込まなくなったからといって、どうして内陸の大地まで裂け始めたのでしょう? その答えは、どうやら一つではありません。ファラロンプレートが沈み込んでいた時代、北米西部では長いあいだ大地がファラロンプレートによって圧縮され、地殻が厚くなっていました。

ここで、私たちの探検隊には少々似つかわしくないものを用意しましょう。お餅です。熱いお餅を横からぎゅーっと押してみます。すると横幅が狭くなるかわりに、上へ盛り上がって分厚くなります。北米西部の大地にも、これと少し似たことが起きていました。

ところがファラロンプレートの沈み込み方が変わり、その一部が分裂・除去され、さらにプレート境界そのものも大きく組み替えられていきます。マントルの中に落ち込んでしまったものもあったかもしれません。すると、それまで圧縮されていた大地を取り巻く条件も変わります。

さらに地下では火成活動が起こり、地殻(お餅?)は熱の影響を受けて弱くなっていきました。そこで――。分厚くなっていたお餅が、べちゃ〜っ。高く厚くなった大地が、自らの重さもあって横へ広がっていく。これが北米西部で起きた「伸張」をイメージする、一つの分かりやすい方法です。

ただし、ここは少し注意が必要です。「分厚くなった大地が重力で崩れたから、バシン・アンド・レンジができた」と、それだけで説明できるほど地球は単純ではありません。

近年の研究では、ファラロンプレートの最後の部分が地下で分裂・除去されていったこと、地下からの熱によって地殻が弱くなったこと、そして北米西岸のプレート境界そのものが大きく変化したことなど、いくつもの要因が重なったと考えられています。

しかも、現在のバシン・アンド・レンジを特徴づける大規模な断層運動が活発になったのは、およそ3000万年前よりさらに後のことでした。

つまり、「ファラロンプレートが消えた瞬間、北米大陸がパカッと裂けた」わけではないのです。何千万年もかけて地下の条件が変わり、大地が温められ、弱くなり、プレート同士の力関係も変わっていく。その長い変化の末に、北米西部は少しずつ引き伸ばされていきました。

そう考えると、「消えたプレート」という言葉もちょっと不思議に聞こえてきます。ファラロンプレートは、跡形もなく消滅したわけではありません。その大部分は地球内部へ沈み込み、現在もファラロンプレートの名残と考えられる海洋プレートが残っています。ファンデフカプレートやココスプレートです。

そして何より――。ファラロンプレートが沈み込み、姿を変えていったことで、北米西部の大地そのものが大きく変わりました。ファラロンプレートは、「いた時」も北米を変え、「いなくなる時」も北米を変えた。3000万年前に消えたはずのプレートは、今も地上の景色の中に、その記憶を残しているのです。

では、その痕跡を探してみましょう。探検隊が“大蛇”を追ってたどり着いたのは――。宇宙からも見える、真っ白な砂漠でした。……砂漠なのに、なぜ砂が白いのでしょう?探検隊、今度は砂漠へ向かいます。

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第三章 砂漠なのに、なぜ砂が“真っ白”なの?

3000万年前に姿を消していったファラロンプレート。その痕跡を追って、探検隊は北米西部の荒野をさらに南へ――。すると突然、目の前の景色が真っ白になりました。

雪? いいえ。ここはアメリカ南西部、ニューメキシコ州。乾燥した砂漠の真ん中です。その名も、「ホワイトサンズ」。およそ700平方キロメートルにも及ぶ、世界最大の石膏砂丘です。

でも――。砂漠といえば、茶色や黄色の砂を思い浮かべませんか? なぜ、ここの砂だけがこんなに白いのでしょう。白い岩と聞くと、石灰岩を想像したくなります。ところが、この砂の正体は石灰岩ではありません。「石膏(せっこう)」です。

硫酸カルシウム二水和物、化学式では「CaSO₄・2H₂O」。建物の石膏ボードなどにも使われている、私たちの身近にもある鉱物です。医療用のギプスや、学校のグランドに線を書くライン引きなどでも使われていましたね。

では、どうして大量の石膏が砂漠に集まったのでしょう。その答えを探して時間をさかのぼってみると――。また、海が現れます。今からおよそ2億8000万年前。現在のニューメキシコ州周辺には、浅い海が広がっていました。海水が蒸発したり、海が満ちたり引いたりする長い時間の中で、海底には大量の石膏が堆積していきます。

やがて海は消え、その石膏層は地層の中へ。さらに長い時間が過ぎ、大地が隆起すると、石膏を含んだ地層が周囲の山々に現れるようになりました。そして約3000万年前。北米西部の大地が引き伸ばされ始めると、この地域にも巨大な断層が生まれます。

地面の一部が沈み込み、サンアンドレス山脈|トゥラロサ盆地|サクラメント山脈という地形ができました。ここで重要なのが、真ん中のトゥラロサ盆地です。

この盆地、巨大なお椀のような形をしていて、流れ込んだ水が海まで逃げていく出口がほとんどありません。周囲の山に雨や雪が降る。その水が石膏を少しずつ溶かす。石膏を含んだ水が盆地へ流れ込む。でも――。出口がない。

水だけが砂漠の強い日差しで蒸発すると、溶けていた石膏は盆地の中に取り残されます。最後の氷河期には、現在より湿潤だったこの場所に「オテロ湖」という大きな湖まで存在していました。やがて気候が乾燥して湖が縮小すると、湖底には石膏の結晶が残されます。

その結晶が水や風、凍結と融解によって少しずつ砕かれ、さらに風に運ばれながら細かくなっていく。そうして生まれたのが、真っ白な石膏の砂。つまりホワイトサンズは、海が石膏を残し、大地が裂けて“器”をつくり、水が石膏を集め、太陽が水を蒸発させ、風が結晶を砂にした。そんな途方もなく長い共同作業によって生まれた景色なのです。

だから、「北米大陸が裂けたから、白い砂漠ができた」だけではありません。その過去は2億8000万年前にも遡るのです。

大地が裂けてトゥラロサ盆地という“器”ができても、そこに石膏がなければ白くならない。石膏があっても、水が運ばなければ集まらない。水があっても、乾燥した気候と風がなければ巨大な砂丘にはならない。いくつもの偶然が、正しい順番で重なって初めて、この景色が生まれました。

でも、探検隊としては一つ引っかかります。私たちは3000万年前に消えたプレートを追いかけていたはずなのに――。ここで出会った石膏は、2億8000万年前の海の置き土産。

消えたプレートを追いかけたら、今度は消えた海に出会ってしまいました。地球の絶景というのは、どうやら一つの時代だけではつくれないようです。そして探検隊は、さらに奇妙な場所へ向かいます。

今度は白い砂漠ではありません。岩を“硫酸”が溶かしてつくったという、地下の巨大迷宮。……。今度こそ毒グモが出てきそうですが(笑)、探検隊は地下へ向かいます。

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第四章 洞窟を溶かしたのは、本当に“硫酸”なの?

真っ白な砂漠を抜けた探検隊は、さらに北米西部の大地を進みます。そして次にたどり着いたのは――。地下に広がる巨大な洞窟。……いよいよ毒蛇でも出てきそうですが(笑)、今回待ち構えているのは蛇ではありません。「硫酸」です。

硫酸!?理科室なら「危険!劇薬」と書かれた薬品棚に入っていそうなものが、どうして大自然の洞窟に出てくるのでしょう。舞台はニューメキシコ州の「カールズバッド洞窟群」。ここには119以上もの洞窟が確認され、巨大な地下空間が広がっています。

その岩石の主役は、石灰岩。石灰岩の主成分は「炭酸カルシウム(CaCO₃)」です。石灰岩の洞窟と聞けば、雨水が地下へ染み込み、長い時間をかけて岩を溶かしていく――そんな鍾乳洞を思い浮かべます。実際、世界の石灰岩洞窟の多くは、雨水が二酸化炭素を取り込んでできる弱い「炭酸」によって溶かされていきます。

ところがカールズバッドでは、どうも様子が違いました。巨大な洞窟をつくった主役は、上から染み込んできた雨水だけではなかったのです。地下から上がってきたものがありました。それが、硫化水素(H₂S)。

地下深くの石油や天然ガスに関係する地層から、硫化水素を含む水が断層や亀裂を通って上昇してきたと考えられています。そこへ地表から、酸素を含んだ水が染み込んでくる。地下で二つが出会うと――。硫化水素が酸化されて、硫酸(H₂SO₄)が生まれます。

その硫酸が石灰岩を溶かしていったのです。しかも、この反応には“置き土産”がありました。硫酸が石灰岩と反応すると、石膏(CaSO₄・2H₂O)ができます。……石膏?どこかで聞いたばかりです。そう。さっきまで探検隊が歩いていた、真っ白なホワイトサンズです。

でも、同じ石膏でも生まれ方はまったく違います。ホワイトサンズの石膏は、はるか昔の海で堆積した石膏が山から水に溶け出し、盆地に集まり、再び結晶になったもの。一方、カールズバッド洞窟群の石膏は、硫酸が石灰岩を溶かした結果、生まれたもの。

洞窟の壁や床に残された大量の石膏は、かつてここで硫酸が岩を溶かしていたことを教えてくれる“証拠品”でもあるのです。しかも、この洞窟が大きく溶かされたのは、およそ400万〜600万年前。地球の歴史から見れば、かなり最近の出来事です。

そして、もう一つ面白いことがあります。私たちはここまでずっと、「裂ける大地」を追いかけてきました。北米西部が引き伸ばされる。断層ができる。大地に亀裂が走る。それは地表から見れば、大地が壊れていくようにも見えます。

でも地下では、その亀裂や断層が、水や地下深部の流体が移動する“通り道”にもなっていました。大地の傷口が、地下の景色をつくる入口にもなっていたのです。

“大蛇”を追って始まった私たちの探検。真っ白な砂漠を越え、硫酸がつくった地下迷宮までたどり着きました。ところが次に待っていたのは――。毒グモでも、サソリでも、硫酸でもありません。花でした。

しかも、一輪や二輪ではありません。乾ききった荒野が、ある年突然、見渡す限りの花畑に変わってしまうというのです。いったい砂漠で、何が起きているのでしょう。探検隊、ようやく地上へ戻ります。

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最終章 なぜ乾いた荒野が、突然“花の海”になるの?

硫酸がつくった地下迷宮から、ようやく地上へ戻ってきた探検隊。ここまで見てきたものといえば、

大蛇のように裂けた大地。3000万年前に姿を消したプレート。真っ白な石膏の砂漠。そして、硫酸によって溶かされた巨大洞窟。ずいぶん荒々しい地球の姿ばかりでした。

ところが最後に待っていたのは――。花です。しかも数本の花が咲いている、という程度ではありません。普段は茶色い大地が、黄色、紫、ピンク、白……見渡す限りの花で覆われてしまう。「スーパーブルーム」と呼ばれる現象です。

でも、ここで最後の「ん?」。こんな乾ききった砂漠の、いったいどこにこれほど大量の花が隠れていたのでしょう。

答えは、私たちの足元です。砂漠の土の中には、たくさんの植物の種が眠っています。デスバレーなどに生える一年草の多くは、暑さと乾燥に耐えて地上で生き続けようとはしません。条件の悪い年は、種のまま待つ。雨が少なければ、待つ。次の年も乾燥していれば、また待つ。

そうして何年ものあいだ土の中で眠り続け、条件が整う時を待っている種もあります。だからといって、雨さえ降ればスーパーブルームになるわけでもありません。大切なのは、雨の量だけではなく降り方とタイミング。秋から冬にかけて十分な雨が降り、その後も適度な間隔で雨が続く。

春になって土が暖かくなる。そして芽吹いた植物を乾燥させてしまう強い風が少ない。いくつもの条件がうまく重なった年に、長いあいだ眠っていた種が一斉に目を覚まします。

「今年なら、いける。」

もちろん花がそんなことを考えているわけではありません(笑)。でも砂漠の植物たちは、雨が降ったからといって毎回すぐにすべての種を発芽させるわけではありません。予測できない砂漠で生き残るために、次の機会へ種を残す植物もいます。

一度の雨に、すべてを賭けない。砂漠では、それも生き残るための方法なのです。そして条件が揃った、ごくまれな春。荒野は突然、花の海へ変わります。

考えてみれば、今回の探検は不思議な旅でした。北米大陸にいるという“大蛇”を追いかけてみたら、その正体は引き裂かれ続ける大地でした。なぜ大地が裂けたのかを追えば、3000万年前に姿を消していったファラロンプレートに出会いました。

その痕跡を追っていくと、古代の海が残した石膏から真っ白な砂漠が生まれ、地下では硫酸が石灰岩を溶かして巨大な迷宮をつくっていました。そして最後に出会ったのが、花。でも、この花も突然現れたわけではありません。何もないように見えた荒野の土の中で、ずっとその時を待っていました。

そう考えると、今回見てきた景色には、どこか共通するものがあります。見えないからといって、なくなったわけではない。ファラロンプレートは地上から姿を消しました。古代の海も消えました。湖も消えました。砂漠の花も、ほとんどの時間は見えません。それでも、それぞれが残したものは消えずに、大地の中に受け継がれていました。

3000万年前に消えたプレートも。2億8000万年前に消えた海も。何年も雨を待ち続けていた、小さな種も。見えない時間を積み重ねながら、いつか地上の景色になって現れる。北米西部の絶景をつくっていたのは、そんな途方もなく長い地球の時間だったのかもしれません。

“大蛇”を追いかけて始まった今回の旅。最後に見つけたのは、怪物ではありませんでした。荒野いっぱいに咲く、花でした。K探検隊はこれにて帰還です。


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