暖かな春の日差しのなか、美味しいものが人を笑顔にしてくれる場所があります。
長崎県南島原市では、日本有数の手延べそうめんの里で「生そうめん」を使った料理が味わえる古民家カフェが誕生しました。出来立てのモチモチ麺と、スペイン仕込みの本格パエリア。夫婦が営む店には、地元の人や旅人が集まり、ゆったりとした時間が流れています。
一方、沖縄本島からフェリーで約1時間半の離島・粟国島では、島で唯一の焼きたてパンの店が人気です。埼玉から移住した女性が、島の塩と小麦を使って焼き上げるパンは、子どもから大人まで島の人たちの楽しみ。店はいつしか、島の人々が自然と集まる憩いの場になりました。
今回の「人生の楽園」は、長崎と沖縄、二つの海のそばで生まれた“おいしい笑顔”の物語。
南島原の生そうめんカフェと、粟国島のパン屋さん。美味しいものがつなぐ、人と地域のあたたかな時間を訪ねます。
【放送日:2026年3月7日(土)18:00 -18:56・テレビ朝日】
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手延べそうめんの里・南島原──海と歴史が育てた食文化とは?
長崎県南部、島原半島の南東に位置する南島原市。
有明海を望むこの地域は、温暖な気候と豊かな水に恵まれ、実は古くから手延べそうめんの産地として知られてきました。白く細い麺は、この土地の風土と職人の技が長い年月をかけて育ててきたものです。
島原半島は雲仙・普賢岳の火山の恵みを受けた大地と、海からのやわらかな風が特徴の場所。冬には乾いた季節風が吹き、そうめん作りに適した環境が整います。細く伸ばした麺をゆっくり乾燥させる工程は、まるで自然と対話するような作業。こうして出来上がる手延べそうめんは、日本各地へと届けられてきました。
そうめんといえば、夏の涼しい食べ物という印象を持つ人も多いかもしれません。けれど南島原では、この麺は単なる季節料理ではなく、暮らしと共にある食文化のひとつ。長い歴史の中で、人々の食卓を支えてきた土地の味です。
島原半島では江戸時代には農家の副業としてそうめんが作られてました。冬の農閑期に作れる保存食として、理にかなっていたというわけです。
そんな“そうめんの里”でいま、新しい形でその魅力を伝えようとする夫婦がいます。それも乾麺ではなく、出来立ての「生そうめん」を使った料理でもてなす古民家カフェ。築140年の建物の中で、そうめんはどんな新しい表情を見せてくれるのでしょうか?
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築140年の古民家カフェ──生そうめんとパエリアのランチ
そんな手延べそうめんの里・南島原で、新しい形でそうめんの魅力を伝えている店があります。
2025年にオープンした『古民家Café Ryu 龍(りゅうりゅう)』。築140年の建物を改装した、どこか懐かしい雰囲気のカフェです。
店を営むのは、内田繁治さんと妻の恵美さん。地元で育った二人は、それぞれ別の場所で経験を積んだあと、人生の節目を迎えたとき「地元を元気にする店を開きたい」と考えるようになりました。そして見つけたのが、かつて酢の醸造所として使われていた古民家でした。
このカフェの看板メニューは、もちろん南島原の特産である「そうめん」。けれど、ここで味わえるのは一般的な乾麺ではありません。製麺所から特別に分けてもらう、乾燥させる前の「生そうめん」です。
出来たての麺は、つるりとした喉ごしに加えて、驚くほどモチモチした食感。乾麺とはまた違う、そうめんの新しい魅力を感じさせてくれます。
そしてもう一つの人気メニューが、恵美さん特製の「パエリア」。かつてスペインで働いていた頃、友人の母から教わった本場のレシピをもとに作る一皿です。海の幸の旨みをたっぷり吸い込んだご飯は、南島原の穏やかな海の風景ともどこか重なります。
そうめんの里に生まれた古民家カフェ。出来たての生そうめんとスペインの家庭料理が並ぶ食卓には、地元の人も旅人も自然と笑顔がこぼれます。
古民家cafe Ryu龍(カフェ リュウリュウ)
- 長崎県南島原市有家町小川565
- TEL:070-8332-0736
- 営業時間:11:30~17:30
- 定休日:月・火曜
- URL:https://www.instagram.com/kominka_cafe.ryuryu
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“出来たて”の美味しさ──生そうめんが広げる新しい魅力とは?
そうめんというと、多くの人が思い浮かべるのは乾麺をゆでて食べる夏の料理かもしれません。けれど南島原の製麺所では、そうめんはもともと「出来たての麺」から始まります。細く延ばした麺を乾燥させて初めて私たちがよく知る乾麺になるのですが、その前の状態こそが“生そうめん”です。
この生そうめんは、乾燥していないぶん水分をたっぷり含み、ゆで上がりは驚くほどもっちりとした食感。つるりとした喉ごしの中に、麺そのものの小麦の香りがしっかり感じられます。乾麺とはまた違う、出来たてならではの贅沢な味わいです。
内田さんのカフェでは、この生そうめんを使ったランチが人気。シンプルに麺の美味しさを楽しむ一皿もあれば、季節の食材と合わせた料理も並びます。乾麺のイメージが強いそうめんに、「こんな食べ方もあるのか」と驚く人も少なくありません。
そこに並ぶのが、恵美さんのパエリア。スペインの家庭で学んだレシピをもとに作る一皿は、魚介の旨みを吸い込んだ香ばしいご飯が特徴です。
小麦の麺と米料理。一見するとまったく違う料理のようですが、どちらも海に近い土地で生まれた食文化です。海の幸を生かし、塩と穀物の旨みを引き出す——そんな料理の知恵が、遠く離れた島原とスペインをどこかで結びつけているのかもしれません。
出来たての麺と、香ばしいパエリア。古民家の食卓には、地元の食文化と遠い国の記憶が、ゆるやかに同居しています。
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沖縄・粟国島──小さな離島で見つけた新しい暮らし
長崎の海辺の町から、舞台は一気に南へ。沖縄本島の那覇からフェリーでおよそ1時間半。東シナ海に浮かぶ小さな島、粟国島です。
人口はおよそ600人ほど。サトウキビ畑と青い海に囲まれたこの島には、どこか昔の沖縄の暮らしを思わせるゆったりとした時間が流れています。この島に移り住んだのが、宮本真理さん。
東京生まれ、埼玉育ちの真理さんは、もともと予備校の教務や医療事務の仕事をしていました。けれど大学時代、写真部の活動で訪れた三宅島で“島の暮らし”に強く惹かれたといいます。それ以来、自分でも「島マニア」と呼ぶほど、日本各地の離島を巡るようになりました。
やがて沖縄の島々にも足を運ぶようになり、ついに出会ったのが粟国島でした。2013年、初めて訪れたこの島の風景や人々の暮らしに、真理さんは強く心を動かされたといいます。
「ここで暮らしてみたい」
その思いは次第に大きくなり、2016年には地域おこし協力隊として島へ移住。特産品の開発や島のPR活動に関わりながら、島の人たちとのつながりを少しずつ深めていきました。そんな暮らしの中で、思いがけない気づきがありました。
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島唯一のパン屋さん──焼きたてパンと島の人々
粟国島で暮らし始めた真理さんは、あることに気づきました。この島には、焼きたてのパンを売る店が一軒もなかったのです。島の人たちはパンが食べたくても、那覇から運ばれてくる商品を買うしかありません。焼きたての香ばしいパンを食べる機会は、ほとんどなかったのです。
そこで真理さんは、試しにホームベーカリーで食パンを焼いてみました。材料には、島の特産でもある「粟國の塩」と小麦を使い、週に一度、直売所で販売してみることに。すると、そのパンはすぐに売り切れてしまいました。焼きたてのパンを楽しみにする人が、島にはたくさんいたのです。
「お世話になった島の人たちに、何か恩返しがしたい」
そんな思いから真理さんは、島に残り本格的なパン屋を始めることを決意します。こうして2019年に誕生したのが『Bakery cafe AGUNI_FAN(アグニファン)』。粟国島で初めての焼きたてパンの店でした。
店には、島の塩を使ったパンをはじめ、さまざまな種類のパンが並びます。営業日は土曜と日曜の週末だけ。それでも焼き上がったパンを求めて、子どもから大人まで島の人たちが集まります。
店内にはカフェスペースもあり、パンを片手にゆっくり話をする人の姿も。いつしかこの小さなパン屋は、島の人たちが自然と集まる場所になっていきました。
さらに真理さんは、空き家を改装してゲストハウスも開業。島を訪れる人と地元の人が出会う、新しい交流の場も生まれています。
焼きたてのパンの香りは、不思議と人を引き寄せるもの。小さな離島のパン屋には、今日も穏やかな時間と笑顔が集まっています。
Bakery cafe AGUNI_FAN(アグニファン)
- 沖縄県島尻郡粟国村浜109
- 営業時間:12:00~13:30、15:00~18:00
- 営業日:土・日曜
- URL:https://www.instagram.com/aguni_fan/
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パンの香りが人を集める!?──離島の小さな憩いの場
粟国島のパン屋『Bakery cafe AGUNI_FAN』は、単なるお店以上の役割を果たしています。営業は土曜と日曜の週末だけ。けれど、その時間になると焼きたてのパンを楽しみにした島の人たちが次々と訪れます。
パンを買う人、店内でゆっくりコーヒーを飲む人、立ち話をする人。小さな店の中には、自然と人が集まります。
離島の暮らしでは、フェリーが天候で欠航することも珍しくありません。そうなると、生活用品や食料品が予定通り届かないこともあります。都会のように「欲しいものがすぐ手に入る」環境とは少し違う生活です。
だからこそ、毎週決まった日に焼きたてのパンが並ぶこの店は、島の人たちにとって楽しみのひとつ。パンの香りに誘われて人が集まり、自然と会話が生まれます。
真理さんは2023年には空き家を改装し、ゲストハウスも開業しました。島を訪れる旅人と、島で暮らす人たちが同じ場所で時間を過ごす。パン屋のカフェスペースは、そんな出会いの場にもなっています。
青い海に囲まれた小さな島で、焼きたてのパンの香りが人をつなぐ。その温かな空気が、この店のいちばんの魅力なのかもしれません。
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南国の春、おいしい笑顔──二つの場所が教えてくれることとは?
長崎県南島原市の古民家カフェ。沖縄・粟国島の小さなパン屋さん。遠く離れた二つの場所ですが、そこに流れている空気にはどこか共通するものがあります。
南島原では、手延べそうめんの里に生まれた古民家カフェで、出来たての生そうめんとスペイン仕込みのパエリアが人を迎えます。一方、粟国島では、島の塩を使った焼きたてのパンが、島の人たちの楽しみになっています。どちらも特別に大きな店ではありません。
けれど、その場所には自然と人が集まり、会話が生まれ、笑顔が広がります。美味しいものがあるところには、人が集まる。そして人が集まるところには、あたたかな時間が生まれる。
長崎と沖縄。海に囲まれた二つの土地で育まれているのは、そんなシンプルで豊かな暮らしの形なのかもしれません。
南国の春。おいしい香りに包まれながら、人と人がゆるやかにつながっていく——。「人生の楽園」が映し出しているのは、きっとそんな日常の幸せかもしれません。

