【食彩の王国】“幻のわさび”が蘇る町──島根・匹見わさびの復活物語と味わいの魅力

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こんにちは鳥巣です。8/2のテレビ朝日「食彩の王国」(午前9:30〜9:55 放送予定)で、今注目の「幻のわさび」、島根県益田市の「匹見(ひきみ)わさび」の復活物語が特集されます。匹見わさびの魅力と伝説の復活物語をまるっとご案内します。

はじめに

匹見町は”東の静岡”に対して「西のわさび王国」といわれ、かつて文政年間から昭和初期にかけて島根県のわさび生産の中心地でした。現在は復興途中でこの地で生産される「匹見わさび」は“幻のわさび”と呼ばれています。

匹見町ってどんなところ?

匹見町は清流・高津川の支流に沿う山間部の急斜面で、標高500m以上、石積み渓流式わさび田の環境が特長です。

このような環境でゆっくり育つため、肉質が緻密で、辛味・甘味・香りが三拍子揃った高品質のわさびに育つのだそうです。

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匹見わさびって津和野のわさび?匹見わさびが衰退してしまったわけは?

匹見わさびは、島根県益田市匹見町で栽培される西日本屈指の高級わさびです。津和野町でも高津川流域でわさび栽培は行われてきましたが、匹見わさびそのものは津和野由来ではなく「匹見生まれ」のわさびとして知られています。津和野は高津川流域にありますが、「匹見わさび」は津和野ではなく匹見町の伝統産品です。

匹見町では、古くから渓流式と呼ばれる方法で「匹見わさび」が栽培されてきました。しかし、近年では高齢化や人口減少の影響で手入れが行き届かなくなり、谷は放置されるようになってしまいました。

石積み渓流式わさび田(出典:おいでよ!しまね)
石積み渓流式わさび田(出典:おいでよ!しまね)

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復活への挑戦

幻と呼ばれる匹見ワサビの生産者の安藤達夫さんは、200年以上前から伝承される自然の谷を利用した渓流わさび田で匹見わさびを育てています。
匹見ワサビは、最盛期の昭和30年代以降、度重なる水害や高齢化により、生産量が激減していました。
匹見町の自然に惹かれていた安藤さんは、「“幻のワサビ”を、自分の手で復活させたい!」という想いで、京都から匹見町に移住し、第二の人生を、ワサビ栽培に賭けることにしたわけです。
しかし借りたワサビ田は、長年放棄されていて、荒れ放題でした。整備を進め、栽培を始めたものの、やっと成長したワサビが大雨で流されてしまったこともあったこともありました。

「匹見ワサビ」の栽培は、人工的に石を組んだ「畳石式ワサビ田」と違って、急斜面に石を積んだ「渓流式ワサビ田」と呼ばれる、限りなく自然に近い方法で栽培されています。

匹見わさびは標高500m以上の高冷地での栽培のため、夏は非常に冷涼ですが、冬には2m以上の雪に覆われます。この間ワサビの成長が止まります。
そのため、栽培期間は他の地域のワサビより長くかかり、形も歪になりますが、この期間があることから擦ったときの風味と甘味が一層引き立つワサビができるのです。

そして幾多の苦難の末に成し遂げられた匹見ワサビ復活の物語を辿ります。まずはビニールハウスで、わさび田に植えるわさびの苗の掘り出し作業からスタートします。そこで100株ほどを掘り出した後、中国山地の山深い中にある、わさび谷へと向かいます。
この日は、谷の最下部にある、長らく放置されていたわさび谷での作業でした。荒れたわさび田に落ちている倒木や落ち葉、雑草を一つひとつ丁寧に取り除き、大小様々な大きさの石を動かして並べなおしたりします。

復旧前(出典:葵屋公式サイト)
復旧前(出典:葵屋公式サイト)
復旧後(出典:葵屋公式サイト)
復旧後(出典:葵屋公式サイト)

【幻の匹見ワサビを育てる】葵屋

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なぜ匹見わさびを復活しようと思ったの?

風情ある町並みで”山陰の小京都”とも言われる島根県津和野町ですが、町を流れる高津川は清流日本一とも評価され、天然鮎の産地として知られています。

かつては、東の静岡、西の島根と讃えられ、香り豊かで甘みを強く感じる島根のワサビは涼やかな鮎の洗いを引き立て、甘みのあるワサビが、鮎の旨み引き立てます。
そんな島根県のワサビの中で、幻といわれているのが「匹見ワサビ」です。収穫量が少なく、なかなか手に入らない貴重なワサビで、糸を引くような粘りがあり、ワサビの爽やかな香りと共に、まろやかな辛味と甘みが広がります。

そんな匹見ワサビの産地は、益田市匹見町。匹見町は津和野からは離れていますが、匹見町の地元のレストランでは、匹見ワサビを使った郷土料理を味わうことができます。

具材をご飯で覆い隠す「うずめ飯」。一見、出汁をかけてわさびをそえたお茶漬けのように見えますが、ごはんの下には小さく刻んだタイや野菜が隠れています。

この食べ方の起源については諸説ありますが、質素倹約を強いられた江戸時代に贅沢しているのを悟られないように、ご飯で具材を隠して食べたという言い伝えもあります。

匹見ワサビと花が咲く前のつぼみや茎を使った、花ワサビの醤油漬けを合わせて食べればご飯が進みます。私もかつて、高校の修学旅行で津和野を訪れたことがあります。ただその時には残念ながらうづめ飯を食べることはできませんでした。

そんな島根の伝統料理を復活させるためにも「匹見わさび」の復活が必要だったのです。

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匹見わさびを使ったお料理が食べられるお店は?

そして日本の代表的な郷土料理として「うずめ飯」は、岐阜県の「さよりめし」、東京都深川の「深川めし」、埼玉県小川町の「忠七めし」、大阪府難波地方の「かやくめし」と並んで「日本五大名飯」のひとつに選定されました。そんな島根の郷土料理が食べたい厳選の4店をご紹介します。

【島根に伝わる郷土料理をいただくなら】森の洋食屋さん ねむの木

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【島根の食材にこだわったフレンチレストラン】レストラン ボンヌママン ノブ

島根県の魅力を発信するフレンチシェフの上田幸治さんは、「ぜひ幻の匹見ワサビを見たい!」と安藤さんのワサビ田を訪れました。そこで上田シェフが目をつけたのがワサビの根だったといいます。

そして島根のフレンチの匠が挑むワサビの香りを活かした “幻の匹見ワサビ”新作が誕生するわけです。

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【津和野 鮎料理の名店】美加登家

四季の移ろいを景観と料理を通して感じ取れるのが「美加登家」の最大の魅力です。その名を全国に知らしめたのは、4月中旬~5月中旬は島根和牛と花山椒鍋会席です。6月〜9月末に提供される天然アユは水質の良い高津川で育ち、渓流の貴婦人とも称される最上級のアユを秘伝の焼き方で仕上げる「アユの塩焼き」をメインに、うるかの塩漬けから、「鮎めし」までアユづくしのコースが堪能できます。

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【ワサビをイタリアンで楽しめる】ピノロッソ

創業30年の島根県津和野町にあるイタリアンレストランです。地元食材を使ったメニューづくりや食育活動、ランチ、カフェ、ディナーや自家製パン、ケーキの販売も行っています。

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まとめ

島根県益田市匹見町の山あいで、静かに蘇ろうとしている幻の「匹見わさび」。自然と共に生き、失われかけた伝統を守る安藤さんの姿からは、食の未来を考えるヒントが見えてきます。わさび田をよみがえらせた情熱と、そこから生まれる味の奥深さ。
ぜひ「食彩の王国」で放送される匹見わさびの復活物語を通じて、日本の食文化の豊かさを感じてみてください。
そしていつか、あなたも匹見町を訪れ、渓流の音とともに育まれたわさびの香りを感じてみてはいかがでしょうか?

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