NHKの人気グルメ番組「うまいっ!」。今回の放送では、青森県弘前市の伝統野菜「清水森ナンバ」が登場します。“辛いのに甘い”──そんな不思議な味わいで知られるこの唐辛子は、津軽の自然と人々の手で受け継がれてきた、まさに“地域の宝”。
一度は生産が途絶えかけたものの、地元の農家や行政、大学の協力によって見事に復活。今では青森を代表するブランド唐辛子として全国から注目を集めています。この記事では、「清水森ナンバ」とはどんな唐辛子なのか?その歴史や味の秘密、そして地域の取り組みについて紹介します。
🌶️第1章 清水森ナンバとは?
「清水森ナンバ」は、青森県弘前市清水森地区で古くから栽培されてきた在来種の唐辛子です。その名のとおり、“清水森”という地名と、“ナンバ(唐辛子)”という津軽弁が組み合わさって生まれました。
この唐辛子の歴史は江戸時代にまでさかのぼります。当時は弘前藩の食文化や保存食づくりにも使われ、庶民の間でも親しまれていました。しかし、時代の変化とともに栽培量が減少し、一時は「幻の唐辛子」と呼ばれるほどに姿を消してしまいます。
転機が訪れたのは2000年代。地元農家や弘前大学、そしてJAつがる弘前などが協力し、「清水森ナンバブランド推進協議会」を発足。長い年月をかけて在来種を復活させ、栽培技術や品質基準を確立しました。
現在では、弘前市の特産として青森県内外に出荷されるほか、加工品や調味料にも幅広く利用されて、その名は、津軽の人々の誇りとして再び脚光を浴びています。
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🌶️第2章 なぜ「辛くて甘い」?──味の秘密
清水森ナンバが“辛くて甘い”と言われる理由は、単に辛さが控えめだからではありません。実はこの唐辛子、糖度が非常に高いのです。一般的な唐辛子の糖度が3〜4度ほどとされるのに対し、清水森ナンバは6〜7度にも達することがあります。
これはミカンやトマトに近い甘さ。噛んだ瞬間にピリリとした刺激を感じたあと、ふんわりと口に広がる“自然な甘み”が、この唐辛子の最大の魅力です。
その秘密は、津軽の気候にあります。弘前市を含む津軽平野は、昼夜の寒暖差が大きく、唐辛子が糖分をたっぷり蓄える条件がそろっています。また、晴天の日が多く、実がじっくり熟すまで光を浴びることで、辛みと甘みがバランスよく育まれるのです。
さらに、収穫のタイミングも重要。完熟に近い赤色の実を収穫することで、辛さの奥にほのかな甘みと旨味が引き出されます。熟度を少し早めにすれば辛さが際立ち、完熟させるほど甘みが強くなる──農家はその年の気候や作柄を見ながら、最も美味しいバランスを探り続けています。
この“ピリッと甘い不思議な唐辛子”は、そのまま食べても、炒め物や味噌汁などに加えても、料理全体の味を引き立ててくれる万能調味料のような存在です。
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🌾第3章 生産者と地域の取り組み
「清水森ナンバ」を支えているのは、弘前市清水森地区を中心とした地元農家の人たちです。一度は栽培が途絶えかけたこの在来唐辛子を、もう一度地域の誇りとして復活させたい──。そんな思いから、農家・行政・大学が一丸となって立ち上がりました。
2004年に発足した「清水森ナンバブランド推進協議会」では、弘前大学の研究者たちと協力しながら、在来種の保存・栽培技術の確立・品質基準の統一を進めています。特に、“清水森ナンバ”の種を毎年農家が受け継ぎ、自家採種するという伝統的な方法を大切にしており、“その年の気候を映す味”を守り続けているのです。
この取り組みの中で、地域の若い世代の農家も次々と参入し、栽培面積は少しずつ拡大。現在では、青森県内の道の駅や物産館、ネット通販でも「清水森ナンバ味噌」「七味」「乾燥唐辛子」などが販売されるようになりました。生産者の一人は、地元紙の取材にこう語っています。
「清水森ナンバは、辛いけどやさしい味。
作る人の手間と気持ちがそのまま味になる唐辛子なんです。」
その言葉の通り、清水森ナンバには“作り手の想い”が込められています。気候に左右されやすく、収穫量が安定しない年もある。それでも諦めずに種をまき続ける姿勢が、この唐辛子の味をより深く、温かくしているのです。
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🍽️第4章 “辛いのにやさしい”グルメいろいろ
清水森ナンバの魅力は、そのまま食べておいしいだけではありません。辛さの中に感じるやさしい甘みは、どんな料理にも自然になじみ、青森の食卓に新しい風を吹き込んでいます。
■定番は「清水森ナンバ味噌」
刻んだ清水森ナンバを味噌に練り込んだ「清水森ナンバ味噌」は、ご飯のお供としても、野菜スティックのディップとしても人気。一口目に感じるピリリとした辛さのあと、ふんわりと甘みと香りが広がるバランスの良さが特徴です。

■弘前発の「七味」「一味」も大人気!
弘前市内では、地元の調味料メーカーや個人の工房が清水森ナンバを使った七味唐辛子や一味唐辛子を製造しています。なかには、津軽のりんごやごぼうをブレンドして香りを引き立てるオリジナルレシピも登場。全国の“七味ファン”の間でも注目を集めています。

■意外なコラボ!スイーツやジェラートにも
「清水森ナンバジェラート」は、辛味と甘味の不思議なマリアージュが話題。最初はミルクのまろやかさ、その後にほんのりピリッとした刺激がやってくる、クセになる味わいです。また、スパイシーな香りを生かしたクッキーやチョコレートも登場しており、“唐辛子の新しい楽しみ方”として注目されています。
■通販や道の駅でも購入可能
道の駅「ひろさき」や弘前市の物産館「津軽藩ねぷた村」などでは、清水森ナンバ関連商品が多数販売されています。最近ではAmazonや楽天市場など通販サイトでも入手可能で、「青森の味をおうちで楽しみたい」ファンも増えています。
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🏔️第5章 まとめ:青森の食文化を支える伝統の味
「清水森ナンバ」は、ただの唐辛子ではありません。それは、津軽の厳しい気候の中で生まれ、人と自然の絆の中で受け継がれてきた“物語のある味”です。一度は消えかけた種を守り、もう一度地元に根づかせたのは、農家や研究者、そして地域の人々の想いでした。
その努力が実を結び、今では青森の食文化を象徴する存在へと成長しています。辛さの奥にあるやさしさ、
そして甘みの中に感じる力強さ──。それはまるで、津軽で生きる人々そのもののようです。
番組「うまいっ!」で紹介されることで、きっと多くの人がこの“甘くて辛い不思議な唐辛子”に出会うことでしょう。青森の風土と心が詰まった一粒のナンバが、これからも全国に広がっていくことを願ってやみません。