「あさイチ」で紹介されるという「日本古来のハーブ園」。そう聞いても、すぐに具体的な姿が浮かぶ人は、案外少ないかもしれない。
ハーブといえば、バジルやタイム、ローズマリー。そんな西洋ハーブを思い浮かべる一方で、“日本古来”と言われると、少し首をかしげてしまう。
実は日本にも、昔から暮らしの中で親しまれてきたハーブがある。シソ、ヨモギ、ドクダミ、サンショウ。食卓や庭先、ときには薬として、静かに寄り添ってきた植物たちだ。
2/9のあさイチ中継の舞台は、千葉県・大多喜町。この土地にある「日本古来のハーブ園」とも呼ばれる場所が、2/20に「大多喜有用植物苑」としてリニューアルプレオープンするということで注目を集めている。
和ハーブとは何なのか? そして、なぜ今あらためて“日本のハーブ”が取り上げられるのか?番組のヒントをたどりながら、千葉・大多喜町という土地と、そこに息づくハーブの世界を、少しだけ覗いてみたい。
【放送日:2026年2月9日(月)8:15 -9:55・NHK-総合】
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あさイチ中継のテーマ「日本古来のハーブ園」とは?
「あさイチ」が掲げたテーマは、「日本古来のハーブ園」。けれど、番組の中継時間は限られている。その数分で、植物学的な定義や歴史を詳しく語ることは難しいだろう。だからこそ、この言葉は、学術的な分類というよりも、“日本の暮らしに根づいてきた植物”を指していると考える方が自然だ。
和ハーブと呼ばれる植物は、シソやヨモギ、ドクダミ、サンショウのように、昔から食や手当て、日々の生活の中で使われてきたものが多い。強い香りや刺激で主張するのではなく、静かに、しかし確かに役に立つ存在だった。
今回、中継の舞台として注目されているのが、千葉県・大多喜町。この土地にある「日本古来のハーブ園」とも呼ばれてきた場所が、2月20日に「大多喜有用植物苑」としてリニューアル・プレオープンする。
“ハーブ”という言葉から連想されがちな西洋の香草だけでなく、日本の風土の中で育ち、使われてきた植物にあらためて光を当てる。そのタイミングとしても、今回の中継は象徴的だ。
番組が伝えようとしているのは、珍しい植物や効能の紹介だけではない。「日本古来のハーブ」とは、特別な誰かのための知識ではなく、かつては、どの家のそばにもあった存在だったということ。あさイチの中継は、そんな植物と人との距離を、もう一度近づけるための入口なのかもしれない。
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「和ハーブ」とは何か?――日本人の暮らしに寄り添ってきた植物
和ハーブとは、昔から日本の風土の中で育ち、人々の暮らしに使われてきた有用植物のことを指す。定義としては、一般社団法人 和ハーブ協会が「日本原産で、江戸時代以前から自生していた植物」としている。
といっても、難しい話ではない。シソ、ヨモギ、サンショウ、ミツバ。どれも特別な山奥にある植物ではなく、庭先や畑の縁、道ばたに当たり前のように生えていたものばかりだ。
たとえばドクダミ。独特の匂いは強烈で、子どものころに草むしりをしていて顔をしかめた記憶がある人も多いだろう。けれどそのドクダミは、乾燥させて「十薬」と呼ばれ、解熱や解毒、利尿のために使われてきた。
和ハーブの多くは、香りや効き目が穏やかだ。西洋ハーブのように一気に主張するのではなく、毎日の食事や手当ての中で、少しずつ力を発揮する。だからこそ、和ハーブは「特別なもの」ではなかった。
料理で使い、体調が悪ければ煎じ、子どもがぐずれば手当てをする。暮らしの延長線上に、自然と存在していた植物だった。
現代では、そうした知恵に触れる機会は減った。けれど、懐かしい匂いや記憶をたどっていくと、和ハーブは決して遠い存在ではないことに気づく。
あさイチが伝えようとしている「日本古来のハーブ」とは、新しい健康法や流行ではなく、かつて当たり前だった暮らしの感覚そのものなのかもしれない。
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日本三大薬草と、母から聞いた記憶
和ハーブの話をしていると、よく耳にするのが「日本三大薬草」という言葉だ。ドクダミ、ゲンノショウコ、センブリ。どれも昔から、身近な手当てとして使われてきた植物だ。とはいえ、こうした名前を知識として覚えたというより、「なんとなく聞いたことがある」という人のほうが多いかもしれない。
たとえばドクダミ。庭の隅に生えていて、独特の匂いを放つ、ちょっと厄介な草。けれど乾燥させると「十薬」と呼ばれ、解熱や解毒に使われてきた。
ゲンノショウコは、お腹を壊したときの定番。センブリは、苦いけれど食欲を整える薬草として知られる。こうした知識は、本や図鑑から学ぶというより、誰かから“聞かされる”ものだった。
ボクの母が薬剤師として漢方薬局に勤めていたこともあって、家ではこうした名前がごく自然に飛び交っていた。
「これはドクダミだからね」
「それは苦いけど効くよ」
そんな言葉が、特別な説明もなく、日常の中にあった。ニキビにいいから、と言われてドクダミを煎じたものを飲まされた記憶もある。
その高いデトックス・消炎作用からニキビ治療や肌荒れ改善に効果が期待できる漢方成分で、ボクも中学生の頃、煎じたものを毎晩のように飲まされたものだった。アレは一種の人体実験だったのかもしれない(笑)
正直、おいしいものではなかったけれど、「体にいいもの」という感覚だけは、今でもはっきり残っている。それに飲み続けるうちに一種の愛着まで湧いてくるのだから不思議だ。
和ハーブは、効能を細かく説明されなくても、暮らしの中で「そういうもの」として受け取られてきた存在だった。だからこそ、日本三大薬草という言葉にも、どこか堅苦しさはない。専門知識というより、生活の記憶として受け継がれてきた植物。それが、和ハーブの本当の姿なのかもしれない。
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千葉・大多喜町という土地と、ハーブの相性
和ハーブは、特別な環境で育つ植物ではない。むしろ、人の暮らしと同じ場所で、同じ時間を過ごしてきた植物だ。そう考えると、千葉県・大多喜町という土地は、和ハーブと相性がいい。
房総半島の内陸に位置する大多喜町は、山と里山に囲まれ、水が豊かで、気温の変化も比較的穏やか。昔から人が暮らし、畑をつくり、自然と折り合いをつけてきた場所でもある。
和ハーブが好むのは、人の手がまったく入らない原生林ではない。かといって、完全に人工化された環境でもない。人が手入れをしながら、自然が息づいている場所だ。大多喜町の風景は、まさにその中間にある。
道ばたに草が生え、庭先に木があり、季節ごとに匂いが変わる。和ハーブは、そうした土地のリズムの中でこそ、本来の力を発揮してきた。
2月20日に「大多喜有用植物苑」としてリニューアル・プレオープンを迎えるという動きも、単なる施設更新というより、この土地の植物文化を、もう一度ひらく試みと見ることができる。
あさイチの中継が、もしこの場所を選んだとしたら、それは「珍しいハーブ園」だからではない。日本の暮らしと、植物の距離が、今も感じられる土地だからだろう。
和ハーブは、展示されるためにあるのではない。人が歩き、息をして、思い出を重ねる場所でこそ、自然に語り始める。千葉・大多喜町は、そんな和ハーブの声が、まだ聞こえる場所なのだ。
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なぜ今、“日本古来のハーブ”なのか?
私たちの暮らしは、便利で、清潔で、選択肢にあふれている。薬もサプリも、必要になればすぐ手に入る。それでも、お腹が痛いときにあの独特の匂いの薬(正露丸)を思い出したり、喉がつらいときに決まった一手(フィニッシュコーワAやイソジンうがい薬)に頼ったりする。(”頼り”には個人差があります💦)
理屈より先に、体が覚えている感覚がある。和ハーブも、それに近い存在なのかもしれない。即効性や派手さではなく、「昔から、そうしてきた」という安心感。効能を細かく知らなくても、どこかで信じている感覚だ。
今、あらためて“日本古来のハーブ”が取り上げられる背景には、そんな感覚をもう一度、確かめたい気持ちがあるのだと思う。特別な健康法を探すのではなく、暮らしの中にあった知恵を思い出す。
薬と自然、科学と経験のあいだにあったちょうどいい距離感を、もう一度取り戻す。あさイチの中継が「日本古来のハーブ園」をテーマに選んだのも、新しさを見せたいからではないだろう。忘れかけていたものに、そっと光を当てるためだ。
和ハーブは、効く・効かないを語る前に、「一緒に生きてきた」という事実がある。庭に生え、畑に育ち、ときに匂いを放ちながら、人の暮らしに寄り添ってきた。だから今、もう一度その存在に目を向けることは、過去に戻ることではない。自分たちの足元を、確かめ直すことなのだと思う。