養殖マグロの常識を変えた!豊後水道の“横綱マグロ”ヨコヅーナ──津久見が挑んだ海の革命【食彩の王国】

豊後水道で育つ“横綱マグロ”ヨコヅーナを盛り付ける料理人の手元|大分県津久見市 BLOG
厳しい潮流が育てた「豊後まぐろ ヨコヅーナ」。津久見の職人たちが誇る、濃厚な赤身ととろける脂の味わい。
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かつて“マグロの街”として名を馳せた大分県・津久見市。しかし遠洋漁業の衰退とともに、港の活気は次第に失われていきました。そんな町に再び海の希望をもたらしたのが、豊後水道で育つ養殖本マグロ「ヨコヅーナ」です。
太平洋の黒潮と瀬戸内海の潮がぶつかる豊後水道は、関アジや関サバを生み出す“海の宝庫”。その厳しい潮流の中で鍛えられたマグロは、引き締まった赤身と、とろけるように上質な脂を併せ持つ逸品として知られています。
“もう一度、海の誇りを取り戻したい”──地元の水産会社が挑んだ10年の研究の末に生まれたヨコヅーナ。そこには、津久見の人々が未来へ託した「海と生きる物語」がありました。

潮が育てる“魚の横綱”──豊後水道という舞台

太平洋から押し寄せる黒潮と、瀬戸内海の穏やかな潮が出会う場所──それが、大分県と愛媛県のあいだに広がる豊後水道です。潮の流れは複雑で速く、水温の寒暖差も大きい。この“過酷な環境”こそが、魚たちを鍛え上げる天然のトレーニング場となっています。

豊後水道は古くから「関アジ」「関サバ」など、全国にその名を知られる高級魚の産地。潮の速さが魚の身を引き締め、旨味を閉じ込めるのです。
その海で新たに誕生した主役──それが“魚の横綱”の名を持つ養殖本マグロ「ヨコヅーナ」。名前の由来はもちろん“横綱”のごとき堂々とした姿と味わい。

その身には、荒波にもまれた海の力強さと、潮の恵みの繊細さが宿っています。豊後水道の自然が作り上げた究極の環境が、まさにこの“横綱マグロ”を生んだのです。

養殖本マグロ「ヨコヅーナ」(出典:「兵殖」)
養殖本マグロ「ヨコヅーナ」(出典:「兵殖」)

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“もう一度、海の誇りを”──津久見の挑戦と10年の軌跡

かつて遠洋マグロ漁の一大基地として栄えた大分県・津久見市。港には世界の海を渡った漁船が行き交い、マグロの水揚げで活気に満ちていました。
しかし、漁師の高齢化と燃料高騰、漁獲制限などが重なり、いつしか“マグロの街”は静かな港町へと姿を変えていったのです。

──「もう一度、海の誇りを取り戻したい」
そんな思いから立ち上がったのが、地元の水産会社「兵殖(ひょうしょく)」でした。彼らが挑んだのは、ただの養殖ではありません。“天然を超える味を育てる”という、前人未到の挑戦でした。

最初の数年は失敗の連続。環境の変化に敏感なマグロが大量死することもありました。理想とする品質にはほど遠く、試行錯誤の日々が続きます。それでも、漁師たちは海を信じ、技術者たちはデータを信じて挑み続けました。

そして研究から10年──潮の流れを読み、エサの配合を見直し、魚の健康を人と同じように管理する“健康診断”の仕組みまで導入。そうして生まれたのが、豊後水道で育つ「豊後まぐろ ヨコヅーナ」でした。

津久見の海に、再び活気が戻った瞬間。それは、失われかけた海の誇りが再び息づいた瞬間でもありました。

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世界初の技術が生んだ味──ヨコヅーナの美味しさの秘密

豊後まぐろ「ヨコヅーナ」が特別と呼ばれる理由は、単に“脂の乗り”や“身の締まり”だけではありません。世界で初めて、配合飼料だけで育て上げた本マグロという事実。それは、養殖技術の限界を押し広げる、革新的な挑戦でした。

マグロは本来、海中を高速で泳ぎ続ける回遊魚。そのため、わずかな環境の変化やストレスにも敏感です。そんなデリケートな魚に最適な栄養バランスを与えるため、「兵殖」は10年にわたってエサの開発に取り組みました。

誕生したのが、ヨコヅーナ専用の配合飼料「ヨコヅナ・フード」。脂質、たんぱく質、ミネラルまで精密に調整し、DHA・EPA・ビタミンEといった“海の栄養”を理想的に含ませました。その結果、天然を超える旨味と栄養価を持つマグロが誕生したのです。

さらに、出荷の際には一本釣りで丁寧に引き上げ、すぐに“活け締め”を行い、マイナス3度の氷温で保管。血抜きから冷却までのわずかな時間も妥協しません。その細やかな管理こそ、赤身の深いコクとトロのとろける食感を支えています。

この海と人の共同作業が生んだ味わいは、ただの「養殖マグロ」という枠を超えて、“新しい日本の海の味”として世界から注目を集めています。

マイナス3度の氷温で処理される「ヨコヅーナ」(出典:「兵殖」)
マイナス3度の氷温で処理される「ヨコヅーナ」(出典:「兵殖」)

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海と人が紡ぐ未来──津久見から広がる“地産地消”の味

津久見の港に吹く潮風には、どこか“再生の香り”が混じるようになりました。豊後まぐろ「ヨコヅーナ」は、いまや津久見の名を再び全国に知らしめ、地元の人々に誇りと活気を取り戻しています。

町では、ヨコヅーナを使った料理を提供する店が増えています。漁師町らしい豪快な“解体ショー”を開催する食事処「亀吉」、上品なそば割烹「はちく」では、繊細な赤身と脂のバランスを活かした一品料理が評判。さらに若い世代の料理人たちも、地元食材と融合させた新たな創作料理に挑んでいます。

大分市のフレンチシェフ・野中丈平さんは、一週間熟成させた赤身に焼き柿を合わせるという、斬新なフレンチを考案。「マグロ=寿司」という枠を軽々と越え、“地産地消のフレンチ”という新しい潮流を生み出しました。

潮が生む海の恵みを、人の技と心が形に変える。その味を通して、津久見の海は再び人々の心と結ばれています。豊後水道の荒波を乗り越えてきたヨコヅーナの物語は、まさに“海と生きる日本の未来”そのもの。

津久見の空にマグロ旗が翻るとき、それは単なる水揚げの合図ではなく──この町の人々が、もう一度「海と共に生きる」ことを誇りに思う瞬間なのです。

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まとめ|海の誇りを未来へ──豊後水道が育てた“横綱マグロ”

かつて遠洋漁業で栄えた津久見の港町。その海にもう一度、希望の灯をともしたのが養殖本マグロ「ヨコヅーナ」でした。黒潮と瀬戸内海が出会う豊後水道という厳しい環境、10年をかけた研究と職人たちの努力、そして新しい食文化を築く料理人たちの挑戦。それぞれの想いが交わることで、津久見の海は再び“命の循環”を取り戻しました。

荒波にもまれて育ったマグロの旨みのように、人々の夢と努力が凝縮されたヨコヅーナは、これからも“日本の食の未来”を照らし続けることでしょう。

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