冷たい空気の中で、ふわりと立ち上るそばの香り。神奈川県・秦野市では今、晩秋から冬だけの特別な味わい――“新そば”が旬を迎えています。
丹沢山地の伏流水から生まれる名水100%の地下水。その清らかな水で育ったそばは、青々しい香りとすっきりした甘みを持ち、地元の名店「石庄庵」や「さか間」で、多彩な魅力を放っています。
そして今回の『食彩の王国』(12月13日放送)では、“トリュフの貴公子”として知られる料理人・齋藤義展さんが、黒トリュフ×新そばという前代未聞の挑戦へ――。
名水の里に生きる生産者の想いと、職人の技が織りなす香りの物語。読むだけで、あなたの五感が静かに揺れ始めるはずです。
名水の里・秦野で“新そば”が香る季節
晩秋から冬にかけて――秦野の街には、澄んだ冷たい空気とともに、ふわりとそばの香りが漂い始めます。
神奈川県のほぼ中央、丹沢山地のふもとに位置する秦野市。この土地を語るとき、欠かせないのが地下水の豊かさです。市内の水道水は、なんと100%が丹沢の伏流水。山々が長い時間をかけて磨いた清らかな水は、生活の隅々に流れ、料理の味を静かに底から支えてきました。
そば作りにおいて、水は命。特に収穫したばかりの“新そば”は、香りが立ち、甘みが繊細に際立つため、打ち水の質が味わいを大きく左右します。名水の里・秦野で生まれたそばが“香り高い”と言われる理由は、ここにあります。
この地で育ったそばを味わうことは、清らかな水の記憶を味わうこと。ひと口すすれば、丹沢の森を吹き抜ける風のような、青く凛とした香りが広がります。
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手打ちの名店「石庄庵」──爽やかに香る自家栽培“せいろそば”
秦野を訪れたら、まず味わいたい一杯があります。地元で長く愛される手打ちそばの名店 「石庄庵(せきしょうあん)」。山あいの静かな場所に佇む店の前に立つと、冷たい空気の中に、ほんのりそばの青い香りが溶けていくのがわかります。
石庄庵の人気の理由は、なんといっても 自家栽培のそばの実を使って打つ“せいろそば”。挽きたて、打ちたて、茹でたて――そば本来の香りと甘みを最大限に引き出すために、手間を惜しまず、当たり前のことを丁寧に重ね続けています。
ひと口すすると、清らかな水で育ったそばの 青い香りがすっと鼻に抜け、噛むほどに甘みがじんわりと広がる。まるで丹沢の朝の森を歩くような、凛とした透明感のある味わいです。
さらに石庄庵では、秦野名物の “足長キノコ” を使ったユニークなそば料理も人気。肉厚で歯ごたえがあり、香りの強い足長キノコは、そばの香りと見事に調和し、自然の恵みをまるごと感じられる一皿へと仕上がっています。
静かな店内で、湯気の立つせいろを前にすると、時間がゆっくりほどけていくような心地よさ。その一杯には、秦野の土地と水と、人の手の温度が宿っています。
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登場から1年で話題に!ブランドそば粉「はだの地蔵そば」
秦野の新そば文化を語る上で、今もっとも注目されている存在が “はだの地蔵そば” です。誕生したのは、わずか 1年前――。それでも、香りと甘みの強さ、清らかな後味から“蕎麦のプロ”たちが次々と惚れ込み、全国から視察や取材が相次ぐほどの話題になっています。
特徴は、なんといっても収穫したばかりの新そばの実を丁寧に製粉した鮮度。まだ緑味を残すみずみずしいそばの実は、香りの粒子が生きているため、挽いた瞬間からふわりと立ち上がり、沸き水の湯気に混じって甘く清らかに漂います。
このそば粉の魅力をいち早く見つけ、創作料理として新しい魅力を引き出したのが手打ちの名店 「さか間」。そば粉を使ったなめらかな 「そば豆富」 や、香りの層を重ねる独自の一品料理が評判を呼び、多くの食通が足を運ぶ名店となりました。
“はだの地蔵そば”は、ただの食材ではありません。秦野の土地と水の記憶を閉じ込めた、地域の想いが形になったブランド。その存在は、地元の誇りとして静かに育ち始めています。
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故郷に花を咲かせたい!そば農家の挑戦
“はだの地蔵そば”の誕生には、秦野でそば作りを続ける 桐山清さんの情熱がありました。かつては農地だった秦野の多くが、宅地化の波に押されるように姿を変えていった中で、桐山さんは思っていました。
「この土地に…もう一度、農の景色を取り戻したい」
仲間と共に立ち上げたのが、地元生産者による 「ふるさと秦野そば組合」。
そばの実には、まだ緑色の若い実を含む新そば特有の香りがあります。その魅力を最大限に引き出すために、収穫のタイミング、乾燥の方法、保管まで徹底的にこだわり、土地の息づかいを逃さないよう育ててきました。手間は増え、効率では勝てない。それでも桐山さんは、笑ってこう言います。
「この土地で育った味が、ちゃんと未来に残ってくれたらいい」
そば畑に立つと、風が丹沢からまっすぐ吹き抜けていきます。その風の先に、故郷の明日へと続く道が静かに伸びているのです。“はだの地蔵そば”には、地元の仲間の祈りのような想いが宿っています。
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“蕎麦懐石の匠”が挑む、黒トリュフ×新そばの衝撃
“はだの地蔵そば”の香りに魅せられ、秦野のそば畑を訪れたのは、東京・目黒で「蕎麦懐石 義」を営む齋藤義展(さいとう よしのぶ)さん。「トリュフの貴公子」と呼ばれる彼は、繊細な香りの層を自在に操る料理人として知られています。初めて“はだの地蔵そば”を口にした瞬間、齋藤さんは驚いたといいます。
「香りが立ちすぎて、トリュフとぶつかるどころか…
対等に並ぶと思った」
通常、黒トリュフは強い存在感を放ち、ほとんどの食材を支配してしまう香りの王。しかし、名水で育った新そばの澄んだ香りは、その個性を受け止め、やわらかく引き立て、調和の余韻を生み出しました。
さらに、秦野の特産である**南国野菜(※おそらく青パパイア:番組で明かされる予定)**を加え、香りのレイヤーを重ねた一皿へ。湯気とともに立ち上がるそばの青い香り、トリュフの濃密な甘い香り、そして野菜が持つ瑞々しい香りが交差し、まるで香りの交響曲のように鼻腔を満たします。
一口味わえば、言葉よりも先に、目を閉じてしまうような衝撃――。“香りのハーモニー”と名付けたくなる、新そばの未来を切り開く挑戦です。
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秦野で味わう“新そばの旅”──名店・生産者・直売所まとめ
名水100%の地下水を抱く、秦野の土地だからこそ生まれた新そばの香り。自家栽培のそばの実で打つ「石庄庵」、“はだの地蔵そば”の魅力を創作料理で広げる「さか間」、そして未来へつなぐ情熱を注ぐ桐山清さんや生産者の仲間たち。さらに、黒トリュフをまとった蕎麦懐石の新たな世界へと挑戦する齋藤義展さんの一皿。
そのどれもが、秦野という土地の水と風、そして人の想いが結ばれた贈り物です。冬の訪れとともに香り立つ“新そば”。湯気の向こうに広がる透明な香りを、あなた自身の五感で味わってみませんか?
📍取材先・店情報まとめ
| 店名 / 組織 | 特徴 | 住所 / TEL |
|---|---|---|
| ふるさと秦野そば組合 | はだの地蔵そば / 生産者組合 | 神奈川県秦野市戸川907 / 090-3138-3865 |
| 蕎麦懐石 義 | 黒トリュフ×蕎麦懐石の新作 | 東京都目黒区三田2-3-20 B1F / 03-6303-1105 |
| 手打ちそば 石庄庵 | 自家栽培そばの“せいろ” / 足長キノコ | 神奈川県秦野市寺山1580 / 0463-82-1222 |
| 手打ちそば さか間 | そば豆富 / 創作料理 | 神奈川県秦野市堀山下1291-4 / 0463-89-2533 |
| はだのじばさんず | 新そばや地元野菜の直売所 | 神奈川県秦野市平沢477 / 0463-81-7707 |