城下町や古い町並みを歩いていると、なぜだか理由もなく、心がほどけていくことがある。急ぐ必要もなく、ただ足音を聞きながら、次の角を曲がるのが楽しくなる。
宮崎県日南市に残る飫肥(おび)城下町は、そんな感覚を自然と思い出させてくれる場所だ。武家屋敷や石垣、鍵型に折れた道。どれも派手に語られることはないけれど、長い時間をかけて育まれてきた町のリズムが、今も静かに息づいている。
あさイチの中継をきっかけに、「なぜ城下町は歩くだけで楽しいのか?」そんな問いを胸に、飫肥の町を、少しゆっくり歩いてみたい。
宮崎・日南に残る城下町「飫肥」とは?
城下町を歩いていると、なぜか足取りがゆっくりになる。急ぐ理由が見当たらなくて、次の角を曲がるのが、少し楽しみになる。飫肥(おび)は、そんな感覚を自然に思い出させてくれる町だ。
宮崎県日南市に残る飫肥城下町は、江戸時代、伊東氏五万一石の城下として栄えた場所。今も武家屋敷や石垣、白壁の町並みが大切に守られ、重要伝統的建造物群保存地区に指定されている。
とはいえ、いかにも「観光地です」と肩肘張った雰囲気はない。そこにあるのは、人が暮らし、時間が積み重なってきた町の静けさだ。
門をくぐり、石畳を踏みしめると、建物だけでなく、この町で生きてきた人たちの気配まで、そっと残っているように感じられる。だから飫肥は、「見る」城下町ではなく、歩いてこそ心に残る城下町なのかもしれない。
<広告の下に続きます>
武家屋敷に残る、静かな暮らしの気配
武家屋敷と聞くと、格式や威厳、厳かな空気を思い浮かべるかもしれない。けれど、飫肥の武家屋敷に立つと、まず感じるのは静かな生活の温度だ。
高くそびえる建物はない。装飾も控えめで、門や塀は町並みにそっと溶け込んでいる。それでも、不思議と背筋が伸びるのは、ここが「見せるため」ではなく、暮らすためにつくられた空間だからだろう。
庭先に差し込む光や、石垣に残る風雨の跡。それらはすべて、かつてこの場所で日々を重ねていた人たちの証だ。華やかさはない。けれど、落ち着きがある。
歩いていると、自分の足音まで小さくなっていくような気がする。派手な演出がなくても、武家屋敷は語ってくれる。静かに生きることの豊かさを。
<広告の下に続きます>
なぜ城下町は歩くだけで楽しいのか?
城下町を歩いていると、不思議と「次の景色」が気になってくる。それは、道がまっすぐではないからだ。飫肥城下町にも見られる枡形(ますがた)のように、城下町の道は、あえて鍵型に折れ、視界が一気に開かない造りになっている。これは、敵の侵入を防ぐための防御の工夫だった。
けれど現代の私たちにとっては、その仕掛けが、歩く楽しさへと変わっている。角を曲がるたびに、白壁が現れ、石垣が続き、ふっと庭先がのぞく。
景色が少しずつ切り替わることで、町を「消費する」のではなく、味わいながら進む感覚が生まれるのだ。一直線に見通せないからこそ、歩調は自然とゆるむ。先を急ぐ気持ちが消えて、今立っている場所に意識が向く。
城下町が楽しいのは、特別な展示や派手な演出があるからではない。人の動きと感情を、丁寧に想定してつくられている町だからだ。だからこそ、歩いているだけで心が落ち着き、なぜかもう少し先まで行ってみたくなる。
<広告の下に続きます>
あさイチ中継で感じたい、飫肥の魅力
あさイチの中継は、その土地の魅力を、短い時間で切り取って見せてくれる。けれど飫肥の城下町は、一瞬の映像だけでは語りきれない場所だ。
白壁の続く道や、静かに佇む武家屋敷。そこに流れているのは、「すごいでしょう」と主張する景色ではなく、長い時間をかけて積み重なってきた日常だ。
だから中継を見るときは、細かな説明よりも、人の歩き方や、立ち止まる間(ま)に目を向けていたい。カメラがふと外した視線の先に、この町の本当の魅力が映り込むことがあるからだ。
放送をきっかけに知って、あとから地図を開いてみる。写真を見返して、「あの角を曲がった先、どんな景色だったんだろう」と想像する。そんなふうに、中継は旅の入口として、何度でも機能する。
飫肥の魅力は、派手な名所を巡ることではなく、歩く速度を落とし、町のリズムに自分を合わせることにある。画面越しでも、現地を訪れても。その静けさに耳を澄ませたとき、飫肥はきっと、思っていた以上に深く、心に残る町になる。
<広告の下に続きます>
まとめ|歩くことで見えてくる、飫肥という城下町
城下町・飫肥の魅力は、「何かを見せつけてくる」ところにはない。武家屋敷の佇まいも、鍵型に折れた道も、すべてはかつての暮らしの延長として、静かにそこに残っている。
だからこそ、急がずに歩き、立ち止まり、ふと気づいたことを心に留める。その積み重ねが、この町をいっそう深く、味わいのあるものにしてくれる。
あさイチの中継をきっかけに、「こんな場所があったんだ」と感じたなら、それはもう立派な旅の始まりだ。画面越しでも、実際に訪れても、飫肥はきっと、見る人それぞれの速度で迎えてくれる。歩くだけで、少し心が軽くなる。そんな城下町が、宮崎・日南に、静かに息づいている。