琵琶湖の北西、風がまっすぐ吹き抜ける高島市。約2.4kmにわたって続くメタセコイア並木は、季節ごとに色を変え、訪れる人を物語の中へ誘う絶景ロードだ。秋には炎のように赤く燃え、冬には静かな白の世界へ変わり、旅の時間の流れを静かに刻みます。

この並木道のそばには、かつて競馬場を駆けた馬たちが第二の人生をのびやかに過ごす観光牧場があります。“速さ”を追いかけた時間から、“生きる”ことを大切にする時間へ——。
2025年12月4日(木)放送のNHK「あさイチ・いまオシ中継」では、この並木と馬の物語に触れる“体験できる旅”が紹介される予定です。絶景だけでは終わらない、心に触れる旅へ。その魅力をひとつずつ紐解いてご案内します。
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🎄メタセコイア並木とは? — 琵琶湖のほとりに広がる絶景ロード
滋賀県・高島市。琵琶湖の北西に位置するこの地に、約500本ものメタセコイアが作り出す、美しい並木道があります。約2.4kmにわたってまっすぐ延びる並木が、四季の移ろいによってまるで違う表情を見せています。
春、淡い緑が風の中でそよぎ、夏には濃い影を落とす深い緑のトンネルに。秋には燃えるようなオレンジと赤が道を染め、訪れた人を思わず足を止めさせます。

そして冬——白い息が空に溶けるような凍てつく空気の中で、枝に積もる雪が静寂の景色をつくりだすのです。観光写真で見るだけでは伝わらないのは、この並木道の中を歩いたときに感じる“音の消える感覚”。
風の音と土を踏む靴の音だけが響く空間は、まるで時間が少しだけゆっくり流れ始めたかのようです。車で駆け抜けるのも爽快だけれど、歩く速度で見上げる並木の高さは、旅の目的を静かに変えてしまう力があります。

ただ見るための景色じゃなくて、心が深く息を吸い込むための景色。この場所が、“ただの観光地”ではなく“何度でも訪れたくなる道”として愛される理由は、その静かな圧倒感にあるのかもしれません。
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🎄メタセコイアってどんな木? — 特徴・分類・紅葉の見頃は?
メタセコイアは、スギ科メタセコイア属の落葉針葉樹。日本名では アケボノスギ(曙杉) とも呼ばれる木で、まっすぐに天へ向かって伸びる凛とした姿が特徴です。大人の樹木になると高さは20〜30m、太さは1m以上にも達し、まっすぐ上へ伸びる幹と、規則正しく広がる枝葉が美しい樹形をつくります。細い葉は柔らかく手触りがよく、落葉樹なので季節とともに色を変えていきます。
🍁 季節による色の変化は…
- 春:淡い黄緑の若葉
- 夏:濃い深緑、木陰が涼しく落ちる
- 秋:赤銅色・オレンジへ紅葉(炎が並んでいるような景色に)
- 冬:葉を落として、枝だけの静かなシルエットに
特に紅葉の季節は、11月中旬〜12月上旬が見頃と言われ、光が差し込む角度によって赤・橙・金色のグラデーションが揺れる景色は圧巻です。
🌱 ほんの少しだけ豆知識です
メタセコイアはかつて化石でしか存在が確認されていない“幻の木” でした。1945年に中国で生きた個体が見つかり、“生きた化石”として世界中で注目され、そこから日本にも苗木が広まり、景観樹として植えられるようになった歴史を持ちます。だから、この並木を歩くと「太古から続く命の時間」に包まれたような感覚になるのです。風が葉を揺らす音は、旅人をそっと前へ押し出す鼓動のようです。
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🎄なぜここに並木が誕生した? — 歴史と景観づくりの背景
メタセコイア並木が高島市に誕生したのは、1981年(昭和56年)に遡ります。地元・マキノ町(当時)の農業公園整備事業の一環として、地域の人々の手で苗木が植えられたのが始まりだと言われています。
当時のマキノ町は、農業と観光を両立させながら地域を活性化させたい——そんな強い思いを抱えていました。そこで、農業公園「マキノピックランド」へ向かう道路沿いに、季節の変化を感じられる景観樹として
メタセコイアが選ばれたのです。
なぜメタセコイアだったのか? それは、“まっすぐ伸び、四季を通して道を導く木”という象徴性が、新しい地域の未来を描く希望と重なったからなのではないでしょうか?
景観整備は行政だけの力ではなく、地元の人々や学生、植樹活動に参加した多くのボランティアたちの手によって支えられてきました。人の手で植え、人の手で育て、ゆっくりと成長しながら今の姿へ。約40年という時間の中で、並木道はただの道路から、「地域の誇り」へと姿を変えました。
今では、春の新緑、秋の紅葉、冬の雪景色を求めて全国から多くの人が訪れる人気の撮影スポットとなり、季節の写真集の表紙やテレビ番組のロケ地にも使われるほど。関西圏に住む若者は車やバイクの免許を取ると、「ビワイチ」と称して”びわ湖一周ツーリング”をすることが定番になっていますが、そのルートの途中には必ずこのメタセコイアの並木道を入れ込むのだそうです。
人が植え、時間が育て、景色が人の心を動かす思い出の場所——それがきっとこのメタセコイア並木なのです。
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🏇馬と生きる場所 — 引退馬を支える観光牧場とは?
メタセコイア並木のすぐそばにある観光牧場では、かつて競馬場を走り抜けた馬たちが、第二の人生をゆっくり生きています。高齢やケガが理由でレースを続けられなくなって、競走馬としての役目を終えた馬の多くは、観光牧場や遊園地の乗馬体験、中には馬肉として食用にされるものもいます。全ての馬が余生を穏やかに過ごせる場所へ無事にたどり着けるわけではない——悲しい現実もあります。
そんな中で、この牧場は引退馬の新しい生き方を支える場所として大切な役割を担っているのです。ここに迎えられた馬たちは、競技としての「速さ」を求められる世界から離れ、人との触れ合いや、ゆっくりとした時間の中で“生きるための力”を取り戻していくのです。
スタッフが毎日手をかけ、医療ケアや食事の管理を行い、馬同士の関係にも気を配りながら穏やかな日々を支えています。この牧場を訪れる人たちは、ただ馬に触れるのではなく、命の物語に触れることになるのです。
たとえば乗馬体験のあと、ふと馬の背に残る傷跡を見つけたとき——そこに積み重ねられた時間が、言葉にはならない感情を呼び起こします。優しい瞳でまっすぐこちらを見る馬と向き合った瞬間、訪れた人の心のどこかもきっと静かにほどけていくはずです。
ここは、景色だけを楽しむ旅じゃない。命と向き合う旅。“生きる”ということを確かめる場所なのです。
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🐎ここで体験できること — 乗馬、ふれあい、季節の楽しみ方
メタセコイア並木のそばにある観光牧場では、景色を見るだけで終わらない、“体験として心に残る時間”を過ごすことができます。たとえば、
🐎 乗馬体験(初心者でもOK)
ここでは、乗馬経験のない人でもスタッフが優しくサポートしてくれます。馬の背にゆっくり揺られながら並木道を進むと、視線の高さが変わるだけで世界が穏やかに見えるようになります。馬の体温と呼吸が背中から伝わり、景色と自分がひとつになるような感覚になるのです。
🤝 馬とのふれあい体験
馬に触れたり、おやつをあげたり、実際にブラシで毛並みを整える体験もできます。お互いが最初は少し緊張していても、柔らかな毛の手触りと、優しい瞳のまっすぐな視線が心をすっとほどいてくれます。触れ合ったあと、馬がゆっくりと頭を寄せてくれる瞬間は、言葉のいらない対話そのものです。
🌿 季節の楽しみ方
春は芽吹きの並木の中で深呼吸を、夏は濃い緑のトンネルを馬と進む爽快感を、秋は燃えるような紅葉と毛並みの色のコントラストを、冬は静寂の雪景色の中で、馬の足音だけが響く世界を味わえる。季節によって景色も体験の質も変わりますから、旅人も訪れるたびにまったく違う旅になるのです。
📷 写真スポットとしても人気
並木道を背景に馬と一緒に撮影できる場所もあって、SNSでも話題になる写真が撮れたりもします。ただ撮るための写真ではなく、“その時間を残す”ための写真になるのです。
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🚗アクセス・料金・撮影スポット・注意点
メタセコイア並木と観光牧場は、公共交通と車どちらでもアクセスがしやすい場所にあります。
🚗 アクセス
<電車+バス>
JR湖西線「マキノ駅」下車
→ 湖国バス「マキノ高原線」で約10分
→ 「マキノピックランド」停留所すぐ
<車>
名神高速「京都東IC」より約1時間30分
北陸自動車道「木之本IC」より約30分
※ 並木道沿いに無料駐車場あり(季節により混雑)
観光養老牧場 メタセコイアと馬の森
- 滋賀県高島市マキノ町寺久保833-1
- TEL:0740-20-9060
- 営業時間:9:00~17:00
- 定休日:なし
- URL:https://mhf.tcc-japan.com/
🐴 乗馬体験の料金(目安)
| 体験内容 | 料金 |
|---|---|
| 引き馬(初心者向け・短時間) | 1,000〜2,500円 |
| 外乗(並木道コース) | 5,000〜10,000円前後 |
| 馬のふれあい体験・餌やり | 500〜800円 |
※ 料金は季節とイベントにより変動
※ 予約推奨(土日祝や紅葉シーズンは混雑します)
📷 撮影スポットは?
- 並木中央部の緩いカーブ地点(奥行きが美しい)
- 冬は雪が積もった早朝、光が横から入る時間帯が人気
- 馬と一緒に撮るなら牧場入口の芝生エリアがおすすめ
※ ドローン撮影は原則禁止。
※ 馬の目線やストレスに配慮して距離を保って撮影を。
⚠ 注意点とマナー
- 観光シーズンは車も歩行者も多いので、接触事故に注意してください
- 馬に近づく時はスタッフの指示に従ってください
- フラッシュ撮影・大声・急な動きは厳禁です
- 落葉や植物の持ち帰りは禁止です
ただの“映えるスポット”ではなく、命を大切にする場所であることを忘れずに…
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✍️ まとめ|景色と命が出会う場所で、旅は深くなる
メタセコイア並木の道は、ただの絶景として存在しているわけではありません。四季とともに姿を変え、旅人の心に静かに触れるその景色は、地域の人々の手で植えられ、時間をかけて守られてきたものです。
そしてそのそばでは、かつて速さを競った馬たちが新しい時間を生きている。レースで背負った重さや傷を抱えながら、今は風の中で、静かに呼吸をしている。景色と命が、同じ場所で静かに寄り添っている——それこそが、この地を訪れる理由なのだと思います。
旅は、写真に残る景色だけでは完成しません。触れた心の温度、誰かの想い、命の鼓動、そのすべてが、旅を深く、忘れられないものにしてくれるのではないでしょうか?
目の前の並木の先に、きっと新しい自分が待っています。その道を、ゆっくり歩いてみて欲しいと思います。
